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看護師の賃上げはいつ・何%?令和8年度改定のベースアップ評価料と給与明細での確かめ方

ナースひとやすみ 編集部約12分で読めます
目次

2026年6月施行の令和8年度診療報酬改定で、看護職員などの賃上げ目標は2026・2027年度に各3.2%です。ただし医療機関への支援の目標で、個人の昇給の約束ではありません。看護補助者と事務職員の目標は各5.7%で、原資は医療機関が届け出て算定する「ベースアップ評価料」などで手当てされます。自分の給料に反映されているかは、給与明細の基本給と毎月の手当で確かめられます。

「看護師の給料が3.2%上がる」の正確な意味

ニュースで「看護師の賃上げ3.2%」と聞いたのに、給与明細を見ても実感がない。そう感じている人は、まず国が決めた内容の原文を確認しておくと、何を期待してよいかが見えてきます。

2026年度・2027年度それぞれのベースアップの目標。医療機関への支援の目標で、個人の昇給の約束ではない3.2%

厚生労働省「診療報酬改定について」(令和7年12月24日 予算大臣折衝)(2025年)

2025年12月24日の予算大臣折衝で、令和8年度の診療報酬改定率は本体+3.09%(2026・2027年度の平均。2026年度+2.41%、2027年度+3.77%)と決まりました。このうち賃上げ分は+1.70%で、改定率の半分余りが賃上げに向けられています。ただし改定率は医療機関に入る診療報酬全体の上げ幅で、看護師の給料がこの率で上がるという意味ではありません。給料の目安として国が示しているのは、次の3.2%の目標のほうです。原文は「令和8年度及び令和9年度において、それぞれ+3.2%分のベースアップ実現を支援するための措置(看護補助者及び事務職員についてはそれぞれ5.7%)を講じ」となっています。

ここから読み取れるのは、次の3点です。

  • お金が入るのは医療機関:ベースアップ評価料を届け出て算定した医療機関に、賃上げの原資が診療報酬として入ります
  • 目標は職場全体の賃金の引き上げ:対象職員の基本給などの総額を上げる目標で、個人ごとに3.2%を保証する仕組みではありません
  • 定期昇給は含まない:ここでいうベースアップは、給与表そのものの引き上げです(後述)

2022年から続く、看護職員の賃上げの3つの仕組み

看護職員の賃上げを診療報酬で後押しする仕組みは、今回が初めてではありません。3回の措置を並べると、対象が「一部の医療機関の看護職員」から「医療機関で働く幅広い職員」へ広がり、目標の決め方も「収入」から「基本給等(ベースアップ)」に変わってきたことが分かります。

時期仕組み看護職員の賃上げの目標診療報酬の改定率(医療機関に入る報酬の上げ幅)
2022年10月〜看護職員処遇改善評価料(地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関が対象)収入を3%程度(月額平均12,000円相当)引き上げる目標令和4年度改定の本体+0.43%(うち看護の処遇改善のための特例的な対応+0.20%)
2024年6月〜(令和6年度改定)ベースアップ評価料を新設2024年度+2.5%、2025年度+2.0%(計4.5%)本体+0.88%(うち看護職員などのベア対応+0.61%)
2026年6月〜(令和8年度改定)ベースアップ評価料を見直し2026年度+3.2%、2027年度さらに+3.2%(看護補助者・事務職員は各5.7%)本体+3.09%(2年度平均。うち賃上げ分+1.70%)

出典:厚生労働省「診療報酬改定等について」(令和4年度の予算大臣折衝)、「令和6年度診療報酬改定の概要」、「診療報酬改定について」(令和8年度の予算大臣折衝)、「令和8年度診療報酬改定 1.賃上げ対応」

どの措置も「医療機関が届け出て、賃金の改善に充てる」形は共通です。2022年の3%は「収入」について、2024年度以降の目標は「基本給等」についての数字なので、単純に大小は比べられません。

令和8年度改定で変わった5つのこと

変わったこと令和8年度改定後の内容
賃上げの目標2026年度3.2%、2027年度さらに3.2%(看護補助者・事務職員は各5.7%)。令和6年度改定では2024年度2.5%・2025年度2.0%
評価の段階2026年6月〜2027年5月と、2027年6月〜の2段階。2027年度は評価料で得られる額が倍になる設計
夜勤手当看護職員処遇改善評価料とベースアップ評価料の収入を、夜勤手当の増額に使えるようにした
対象職員これまでの看護師・薬剤師・看護補助者などに加え、事務職員や40歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師も対象に
賃上げしない医療機関入院基本料などを減算する規定を新設(例:急性期一般入院料1で1日121点)

出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 1.賃上げ対応」

看護師にとって大きいのは、夜勤手当の扱いです。恒常的に夜間を含む交代制で働く職場の夜勤手当は、毎月決まって支払われる手当と同じように「基本給等」に含めてよいことになりました。賃上げが基本給ではなく、夜勤手当の引き上げとして届く場合もある、ということです。日本看護協会の2025年の調査では、定額の夜勤手当を支給している病院が定める1回あたりの額の平均は、二交代の夜勤で11,470円、三交代の準夜勤で4,300円、深夜勤で5,211円でした(回答病院数は2,602・768・771)。夜勤の回数が多い人ほど、この単価の引き上げが月の収入に響きます。

もう1つは減算です。2026年3月31日時点で入院ベースアップ評価料を届け出ておらず、2024年3月からの継続的な賃上げも確認できないなどの医療機関は、入院基本料などが減算されます。急性期一般入院料1の121点は、1点10円で入院患者1人につき1日1,210円にあたり、賃上げをしない病院の収入が目に見えて減る設計です。継続的に賃上げをしている医療機関の目安は、医師・歯科医師を除く対象職員の基本給等の合計が、2024年3月と比べて2026年度で5.5%(看護補助者・事務職員は8%)以上、2027年度で8.7%(同13.7%)以上とされています。2024年3月からの累計の上げ幅なので、2024年度から賃上げを続けてきた職場ほど満たしやすい基準です。職場全体の合計についての基準で、個人ごとの基準ではありません。

ベースアップと定期昇給は別物

厚生労働省の説明では、ベースアップとは「賃金表の改定により、同じ年齢・職位の者の給与が前年度より引き上がること」です。年齢や勤続年数が増えたことによる引き上げ(定期昇給)は、ベースアップに含まれません。

ベースアップ評価料の収入を充ててよいのは、次の範囲です。

  • 基本給、または毎月決まって支払われる手当の引き上げ(恒常的な交代制勤務の夜勤手当を含む)
  • それに伴って増える賞与・時間外手当・社会保険料の事業主負担分

業績に連動して増える賞与は、ここには含まれません。また、看護職員処遇改善評価料とベースアップ評価料のどちらも、賃金改善の合計額の3分の2以上は、基本給または毎月決まって支払われる手当の引き上げで行うこととされています。

給与明細では「基本給」と「毎月決まって出る手当」(新しく設けられた手当を含む)の欄を見ます。

自分の職場で賃上げが行われているかを確かめる手順

確かめる前に、届け出ている医療機関がどのくらいあるかを知っておくと、見当がつけやすくなります。令和6年度改定のベースアップ評価料(外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ))は、2025年7月7日時点で病院の89.6%(8,045病院中7,207)が届け出ていた一方、医科診療所は40.3%でした。訪問看護ステーション(訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ))は42.9%です。病院勤務なら届け出ている可能性が高く、クリニックや訪問看護では届け出ていない事業所も少なくない、ということです。令和8年度改定では、それまで届け出ていた医療機関も含めて2026年5月中の届出が必要になったため、今の状況は下の手順3の名簿で確かめてください。

  1. 比べる月をそろえる:国が賃上げの実績を確かめるときの基準は、改定前(2026年3月か5月時点)の給与体系です。3月分か5月分の明細と、6月分以降の明細で「基本給」と「毎月決まって出る手当」を比べる。5月分と比べれば4月の定期昇給の分は入りませんが、賃上げを4月から反映した職場では5月分にすでに入っているため、3月分とも比べる
  2. 給与表の改定の知らせを確かめる:賃金規程や給与表の改定、手当の新設の通知が出ていないかを見る
  3. 届出の有無を確かめる:勤務先がベースアップ評価料を届け出ているかは、地方厚生局が公開している「施設基準等の届出受理医療機関名簿」で調べられる。北海道厚生局の名簿(毎月更新)の場合、PDF版では「受理番号」欄に「入ベ62」「外在ベⅠ注」のような略称で、Excel版では「受理届出名称」欄に「入院ベースアップ評価料62」のような正式名称で載っている
  4. 分からなければ事務に聞く:人事や給与の担当に、反映の方法と時期を確認する

聞き方の見本:「令和8年度のベースアップ評価料による賃金改善は、基本給と手当のどちらで、何月分から反映されていますか」

届け出ているか分からないときの見本:「当院はベースアップ評価料を届け出ていますか。届け出ている場合、賃金改善はいつから、どの項目で行われていますか」

ベースアップ評価料を算定する医療機関は、毎年8月に、その年度の賃金改善の中間報告書と前年度の実績報告書を地方厚生局へ出します。報告書には改善前と改善後の基本給等の総額や、賞与の月数の変化を書きます。賃上げの中身は、職場の側で整理されている情報です。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:定期昇給や夜勤回数の変化を賃上げと取り違える

よくあるのは、定期昇給の分と賃上げの分を混ぜて「上がった」「上がっていない」と判断してしまうことです。4月に定期昇給がある職場で3月分の明細と比べると、勤続年数による昇給の分も差に入ります。反対に、総支給額や手取りで比べると、夜勤の回数や残業時間の違いがそのまま差に出ます。夜勤が1回多かっただけの月を賃上げと勘違いしたり、夜勤が減った月を「賃上げが無かった」と受け取ったりしがちです。比べるのは基本給と毎月決まって出る手当の欄だけにし、4月の昇給の通知があれば、その額を差し引いて考えてください。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:3.2%を自分の基本給に掛けて期待額を決める

「3.2%」を自分の基本給に掛けて、期待する額を決めてしまうのも危うい読み方です。国の目標は医療機関の対象職員全体の賃金についてのもので、配分は職員の規模や構成に応じて医療機関ごとに決まります。評価料の収入は、賞与や社会保険料の事業主負担の増加分にも充てられます。さらに、評価料を届け出ていない医療機関では、この仕組みによる原資そのものが入りません。自分の職場がどう配分したかを確かめる前に、「3.2%上がっていないのはおかしい」と決めつけないほうが、話し合いは進めやすくなります。

賃上げで判断を誤りやすい失敗例

  • 失敗例1:届出受理名簿で勤務先の名前が見つからないだけで「届け出ていない」と決めつける → PDF版の名簿は略称で載っています。Excel版の「受理届出名称」で探すか、事務に確かめてください
  • 失敗例2:人事院勧告の引き上げを、民間病院の給与にも当てはまると考える → 人事院勧告は国家公務員の給与についての勧告で、民間病院の給与を直接決めるものではありません。国立病院機構の職員も、2015年4月から国家公務員ではありません
  • 失敗例3:基本給の欄だけを見て「上がっていない」と判断する → 2026年6月からは、恒常的な交代制勤務の夜勤手当の増額にも評価料の収入を使えます。基本給が同じでも、夜勤手当や毎月の手当が上がっている場合があります

この制度で言えること・言えないこと

言えるのは、国が医療機関に示した目標(2026年度3.2%、2027年度さらに3.2%)と、その原資の仕組み、反映される時期の区切りです。

言えないのは次のことです。

  • 実際に全国で何%上がったか:厚生労働省は、実際に支給される給与(賞与を含む)の賃上げの実績を今後詳しく把握するとしています
  • あなたの職場で何%上がるか:配分は医療機関ごとに違い、届け出ていない医療機関もあります
  • 改定の中身が今後も同じか:実際の経済・物価の動きが見通しから大きく外れ、医療機関の経営に支障が出た場合は、2027年度の予算編成で加減算を含めて調整するとされています

よくある質問

Q. 看護師の給料は本当に3.2%上がりますか?

A. 3.2%は医療機関への支援の目標で、個人の昇給を約束するものではありません。配分は医療機関ごとに違い、届け出ていない医療機関もあります。反映されているかは、給与明細の基本給と毎月の手当で確かめられます。

Q. 賃上げはいつから給料に反映されますか?

A. 令和8年度の診療報酬改定は2026年6月に施行されました。ベースアップ評価料は2026年6月〜2027年5月と、2027年6月以降の2段階で評価されます。給料への反映の方法と月は職場ごとに違うため、給与明細と職場の通知で確かめてください。

Q. クリニックや訪問看護ステーションで働く看護師も対象ですか?

A. 外来・在宅ベースアップ評価料や訪問看護ベースアップ評価料があり、届け出て算定したクリニックや訪問看護ステーションで働く職員は対象になります。届け出ていない事業所では、この仕組みによる原資は入りません。2025年7月時点の届出の割合は、医科診療所で約4割、訪問看護ステーションで約4割でした。

Q. 賃上げされていない気がするときは、どうすればいいですか?

A. 改定前(2026年3月か5月)と6月分以降の給与明細で基本給と毎月の手当を比べ、そのうえで勤務先の人事や給与の担当に、賃金改善の方法と時期を確認するのが確実です。職場の対応の良し悪しは個別の事情で変わるため、この記事では判断できません。

今の基本給・手当の水準を、求人と比べておく

基本給・手当・賞与の月数を求人と並べておくと、今の職場の位置が分かり、判断材料が増えます。

まとめ

  • 令和8年度改定の「3.2%」は、2026年度と2027年度それぞれのベースアップの目標で、医療機関への支援の仕組み。個人の昇給の約束ではない
  • 2026年6月からは夜勤手当の増額にも使えるようになり、2027年6月からは評価料で得られる額が倍になる設計
  • 反映されているかは、改定前(2026年3月か5月)と6月分以降の給与明細で、基本給と毎月の手当を比べて確かめる

状況に合わせて、次の記事も確認できます。

参考文献

  1. 厚生労働省「診療報酬改定について」(令和8年度、令和7年12月24日 予算大臣折衝)(2026-09-25 閲覧)
  2. 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定 1.賃上げ対応」(2026-09-26 閲覧)
  3. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」(2026-09-25 閲覧)
  4. 厚生労働省 中医協資料「賃上げについて(その2)」(中医協 総-5、2026年1月14日)(2026-09-26 閲覧)
  5. 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書」(2026年3月)(2026-09-26 閲覧)
  6. 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要」(2026-09-25 閲覧)
  7. 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ】」(2026-09-25 閲覧)
  8. 厚生労働省「診療報酬改定等について」(令和4年度、令和3年12月22日 予算大臣折衝)(2026-09-26 閲覧)
  9. e-Gov 法令検索「独立行政法人国立病院機構法」(附則 平成26年法律第67号)(2026-09-26 閲覧)
  10. 北海道厚生局「施設基準等の届出事項(届出受理医療機関名簿)」(2026-09-26 閲覧)