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看護師の転職で給料を交渉する手順|相場の調べ方と場面別の言い回し見本
目次
看護師の給料交渉は、内定が出てから始めるものではありません。水準はその前の2つの場面でほぼ決まります。結果を分けるのは度胸ではなく、自分の現在値を分解できているかと定義を説明できる数字を持っているかです。材料のそろえ方、場面ごとの言い回し、最後に書面で確定させる手順まで順に説明します。
交渉は内定後ではなく、初回面談から始まっている
| 場面 | やること | 伝える・聞く内容 |
|---|---|---|
| ① 初回面談・登録時 | 希望額のレンジを伝える | 下限の額と、その根拠 |
| ② 面接 | 条件の前提を確認する | 基本給の額、賞与の実績月数、夜勤回数、固定残業代(一定時間分の残業代を定額で月給に含める仕組み)の有無 |
| ③ 内定後 | 書面で確定させる | 労働条件通知書と、そこに載らない項目 |
※ この表は法令ではなく、各段で確認できることを編集部が整理したものです。
多くの人が③だけを交渉だと思っていますが、③でできるのは確認と最終調整です。水準は①と②で決まります。
ステップ1:自分の給与を3つに分解する
「だいたい年450万くらい」では比較になりません。直近12か月の給与明細と源泉徴収票を用意し、次の手順で1枚にまとめます。
- 手順①:固定(基本給・資格手当・役職手当など毎月同額)/変動(夜勤手当・時間外・休日)/賞与(源泉徴収票の年額)に分ける
- 手順②:変動の内訳を数える(夜勤は月何回でいくらか、時間外は月何時間か)
- 手順③:次の見本の形に書き出す
⚠️ つまずきやすい落とし穴固定:基本給 231,000 円+資格手当 5,000 円=236,000 円/変動:夜勤4回 46,000 円+時間外12時間 26,000 円/賞与:年 892,000 円 → 年収 約 462 万円(うち変動分 約 86 万円)
分解せずに年収の総額だけで交渉に入ると、希望額を言った瞬間に足元をすくわれます。「年収480万円を希望します」と伝えると、応募先が夜勤5回・時間外20時間を前提にその額を用意してくることがあるためです。額面は希望どおりでも、夜勤が1回増えていれば時間あたりの賃金は下がっています。「固定236,000円は下回りたくない」という伝え方なら、変動を増やして帳尻を合わせる回答は出てきません。分解の目的は金額を釣り上げることではなく、どこを守りたいのかを相手にも分かる形にすることです。
ステップ2:相場と照らして、根拠のある額にする
希望額に「なぜその額か」が付くと、話の性質が要望から検討に変わります。照らす先は公的データです。
| 比べる軸 | 数値 | 出典(年次) |
|---|---|---|
| 全国平均年収(全年齢・平均42.1歳) | 524.7万円(月額365,900円×12+年間賞与856,400円) | 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」 |
| 勤続10年(31〜32歳・非管理職)の基本給 | 254,286円 | 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」図表9 |
| 同・税込給与総額(時間外手当を除く) | 340,278円 | 同 図表9 |
| 二交代夜勤1回あたりの定額手当(病院ごとの平均) | 11,470円 | 同 図表13 |
| 都道府県差(最高〜最低) | 滋賀585.3万円 〜 高知434.8万円 | 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」 |
全国平均524.7万円は平均年齢42.1歳の水準で、20代・30代がそのまま目標にする数字ではありません。年代の近い物差しは勤続10年(31〜32歳)の基本給254,286円・税込給与総額340,278円のほうです。地域差も150万円あるため、看護師の年収が高い都道府県で自県の水準を見てから決めてください。伝えるのは1点ではなくレンジにします。「下限=いまの固定給」「上限=地域相場の上位」なら、相手は幅の中で調整できます。
⚠️ つまずきやすい落とし穴出所の書かれていない「看護師の平均年収◯◯万円」をそのまま根拠にすると、調査年も対象も夜勤の有無も答えられず逆効果になります。公的調査でも同じで、何の平均かを説明できるかどうかが分かれ目です。「524.7万円は平均年齢42.1歳の水準なので基準にしていません。年代の近い指標として日本看護協会の勤続10年の税込給与総額340,278円を見ています」と言えれば、調べただけでなく読めている人だと伝わります。根拠は多いほど強いのではなく、定義を説明できる数字を1〜2本持つほうが効きます。
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ステップ3:場面別の言い回し見本
① 初回面談・登録時(レンジと下限を伝える)② 面接(額ではなく前提を聞く)「現職は固定給が236,000円、年収が約462万円です。夜勤は月4回で、ここは維持できる範囲だと思っています。固定給236,000円は下回らない前提で、年収470〜500万円のあたりで探していただけますか」
③ 内定後(増額ではなく確認から入る)「求人票の月給のうち、基本給はいくらになりますか。固定残業代が含まれている場合は、何時間分かもあわせて教えてください」 「モデル年収に記載の賞与は、直近3年の支給実績では何か月でしたか」
④ エージェント経由(代行してもらう)「前向きに検討したいので、基本給と賞与の前提を書面で確認させてください。そのうえで、経験年数の評価について一度ご相談できればと思っています」
「基本給を◯円まで見ていただけないか確認をお願いできますか。難しい場合は、夜勤回数か入職日の調整でも構いません」
④のように代替案をセットで渡すと、断られて終わりになりにくくなります。担当者とのやりとりの進め方は看護師の転職エージェントの使い方にまとめています。
⚠️ つまずきやすい落とし穴「現職の不満」を交渉の理由にすると、ほぼ通りません。「いまの職場は給料が安すぎて」と言えば、相手が受け取るのは「待遇に不満を持つと辞める人かもしれない」という印象だからです。同じ内容でも「夜勤4回を続けながら固定給を◯円まで上げられる環境を探しています」と条件の形にすれば、話はすり合わせに戻ります。他院の内定を引き合いに競わせるやり方も、地域内で人のつながりが濃い看護の世界では避けたほうが無難です。伝えるのは過去への不満ではなく、これからの条件だと考えてください。
給与以外に動かせる条件もある
基本給が動かないときでも、交渉の余地は残っています。
病院が人材確保のために導入している働き方(複数回答・交渉の対象になりうる項目を抜粋)
出典: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」図表15(n=3,502)(2025年)
夜勤回数や曜日を選べる仕組みは44.1%、配属先の希望を反映する仕組みは38.7%の病院にあります。すでに制度がある条件は、例外をお願いするのではなく「その制度の対象になりますか」と聞くだけで済みます。基本給の増額より通りやすいのはこちらです。入職日や試用期間中の給与の扱いも同じ形で切り出せます。
最後に書面で確定させる
口頭の合意は担当者が代わると残りません。労働基準法第15条により、使用者は労働条件を明示する義務があり、労働基準法施行規則第5条の次の項目は書面の交付(本人が希望すればメール等も可)で示さなければなりません。
| 書面で明示される項目 | 見るポイント |
|---|---|
| ① 労働契約の期間 | 期間の定めの有無、試用期間の長さと条件 |
| ② 有期契約を更新する場合の基準 | 更新上限の有無(2024年4月から明示事項) |
| ③ 就業の場所・従事すべき業務 | 変更の範囲(2024年4月から追加。異動の想定範囲) |
| ④ 始業・終業時刻、休憩、休日等 | 所定労働時間、夜勤の時間帯、休日数 |
| ⑤ 賃金、昇給 | 基本給の額、各手当の額、固定残業代の有無と時間数 |
| ⑥ 退職に関する事項 | 退職の申し出期限、解雇事由 |
出典: 労働基準法第15条、労働基準法施行規則第5条(2024年4月1日施行の改正を含む。昇給は書面明示の対象外)
見落としやすいのは、賞与と退職手当が書面交付の義務対象ではないことです。「賞与4か月」と聞いていたのに通知書に記載がない状況は制度上ありえます。口頭の前提は「◯◯という理解で相違ないでしょうか」とメールを送り、返信で記録を残してください。なお、明示された条件が事実と違っていた場合、労働者は即時に労働契約を解除できると同法第15条第2項が定めています。内定後の段取りは看護師の内定後の手続きにあります。
⚠️ つまずきやすい落とし穴通知書を受け取っても「月給300,000円」の一行しか見ずに承諾してしまう人が少なくありません。この300,000円に固定残業代が30時間分含まれていれば、実質の基本給は大きく下がります。固定残業代を採用する求人は、若者雇用促進法に基づく指針により、求人票へ①固定残業代を除いた基本給の額 ②時間数と金額の計算方法 ③その時間を超えた分は追加で支払う旨の3点すべてを明示することが求められています。3点がそろっていない求人票は、それ自体が確認のサインです。あわせて③の「変更の範囲」も読んでください。広い範囲が書かれていれば系列施設への異動があり得ると分かり、「訪問看護で応募したのに1年後に病棟へ」というずれを事前に防げます。
やってはいけないNG例
- NG1:内定承諾後に増額を持ち出した → 承諾は合意の成立です。条件の話は承諾前に終える。迷うなら承諾期限の延長を相談する
- NG2:「いくらでもいいので早く決めたい」と伝えた → 相手は下限で提示せざるを得ません。急ぐ事情があっても下限だけは示す
- NG3:年収の総額だけで比べた → 夜勤回数・時間外・賞与の前提をそろえないと比較になりません。背景は看護師5年目で給料が上がらない理由で扱っています
- NG4:口頭の合意で入職日を迎えた → 書面かメールに残す。担当者の異動で前提が消えることがあります
よくある質問
Q. 看護師の転職で給料交渉をすると、印象が悪くなりませんか?
A. 条件のすり合わせは採用手続きの一部です。印象を左右するのは交渉したかどうかではなく、根拠と伝え方です。現職の不満を理由にせず、現在の固定給と希望レンジを数字で示せば、確認の会話として進みます。
Q. 交渉すれば給料は上がりますか?
A. 上がるとは限りません。給与テーブルが固定されている公的病院などでは、経験年数の換算以外に動かせる余地がほとんどない場合もあります。その場合でも夜勤回数や配属先、入職日は相談できることがあり、夜勤回数・時間・曜日を選べる仕組みは44.1%の病院にあります(日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」)。
Q. 希望額はいつ伝えるのがよいですか?
A. 初回面談や登録の段階です。下限と根拠を先に伝えると、紹介される求人自体がその水準で絞られます。内定後に初めて額の話を出すと、選考をやり直す形になり調整が難しくなります。
Q. 提示された条件が面接で聞いた話と違っていたらどうすればよいですか?
A. 書面と、聞いていた内容の記録を突き合わせて相違点を伝えます。労働基準法第15条第2項では、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定められています。入職後に気づいた場合もこの条文が根拠になります。
条件交渉を代行してもらうという選択肢もあります
言い出しにくい金額の話は、担当者を通すと進めやすくなることがあります。
まとめ
- 水準は①初回面談と②面接でほぼ決まります。③内定後にできるのは確認と最終調整です
- 材料は「固定・変動・賞与」への分解。守るのは年収の総額ではなく固定給の下限です
- 根拠は定義を説明できる数字を1〜2本。524.7万円は平均年齢42.1歳の水準なので、勤続10年の基本給254,286円のほうが使いやすい物差しです
- 基本給が動かなくても、夜勤回数(44.1%)や配属先(38.7%)など既にある制度は相談できます。最後は書面で確定させ、義務対象外の賞与はメールで記録に残します
転職活動全体の流れは看護師の転職活動の流れで確認できます。