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ノウハウ

特定行為研修とは何が増える?修了者数の伸びとキャリア価値

ナースの休憩室 編集部13分で読めます
目次

特定行為研修は、看護師が医師の手順書に基づき38の医療行為を自律的に実施できるようになる制度です。修了者は13,887名(2025年9月時点)、指定研修機関は全47都道府県に474機関。費用は30万〜250万円ですが、診療報酬上の評価が広がり、修了者を求める施設が増えています。

「手順書があれば、看護師の判断で医療行為ができる」

特定行為研修——名前は聞いたことがあっても、「具体的に何ができるようになるの?」「取ったほうがいいの?」と迷っている方は多いのではないでしょうか。

2015年に始まったこの制度は、看護師が医師の手順書に基づいて38の医療行為を自律的に判断・実施できるようになるための研修制度です。たとえば、人工呼吸器の設定変更、中心静脈カテーテルの抜去、脱水の程度に応じた点滴調整など。これまで「医師の指示待ち」だった場面で、看護師自身の判断で動けるようになります。

この記事では、制度の全体像から修了者数の推移、費用、キャリアへの影響まで、データで解説します。

制度の全体像:38行為・21区分

医師の指示待ちなく看護師が自律実施できる行為の範囲38行為・21区分

厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」(2015年)

特定行為研修制度は、2015年10月に保健師助産師看護師法の一部改正に基づいて施行されました。背景には、在宅医療の推進医師の働き方改革があります。

主な特定行為の例

区分具体的な行為例
呼吸器関連気管カニューレの交換、人工呼吸器の設定変更
循環動態関連血管収縮薬や降圧剤の投与量の調整
栄養関連中心静脈カテーテルの抜去
創傷管理関連壊死組織のデブリードマン
術後管理関連術後の鎮痛薬の投与量調整
動脈血液ガス関連動脈血液ガス分析の直接採血

「手順書」とは、医師が事前に作成する包括的な指示書。患者の病状の範囲や実施する行為の手順が記載されており、看護師はその範囲内で自律的に判断します。

修了者数の推移:10年で13,887名に到達

特定行為研修 累計修了者数の推移(各年3月時点)

2020年3月
2,646名
2021年3月
3,307名
2022年3月
4,832名
2023年3月
6,875名
2024年3月
9,135名
2025年3月
11,840名

出典: 厚生労働省医政局看護課調べ(第37回 医道審議会保健師助産師看護師分科会 看護師特定行為・研修部会 資料1、2025年8月)

比較の条件をそろえるため、各年3月時点の累計で並べています。2020年3月の2,646名から2025年3月には11,840名へ、5年で4.5倍。直近1年の増加は2,705名で、これは制度開始以来の最多ペースです。2025年9月時点ではさらに増えて13,887名に達しています。

伸びが加速したのは2022年3月以降で、年間の修了者数が661名(2021年3月まで)から1,525名、2,043名、2,260名、2,705名と一気に跳ね上がりました。医師の働き方改革(2024年4月から時間外労働の上限規制が医師にも適用)に向けて、病院がタスク・シフトの担い手を用意し始めた時期と重なります。

指定研修機関の拡大

指定研修機関数の推移(各年3月時点)

2016年3月
21機関
2018年3月
69機関
2020年3月
191機関
2022年3月
319機関
2024年3月
412機関
2025年3月
462機関

出典: 厚生労働省医政局看護課調べ(第37回 看護師特定行為・研修部会 資料1、2025年8月)

研修機関は2016年3月の21機関から2025年3月には462機関へ。2025年9月時点では474機関となり、全47都道府県に設置済みです(厚生労働省・特定行為研修制度見直しWG)。年間の受け入れ可能人数(定員)は6,717名まで拡大しました。

この数字が受講希望者にとって意味すること: 制度が始まった頃は「受けたくても近くに研修機関がない」状態でしたが、その制約はほぼ解消されています。一方で年間定員6,717名に対し実際の修了者は年2,705名。定員には相当の余裕があるため、募集時期さえ逃さなければ入りにくい研修ではありません。

国が掲げる目標との距離

現行の目標として一次資料で確認できるのは、第8次医療計画(2024〜2029年度)に各都道府県が設定した、特定行為研修修了看護師の就業者数の目標合計 20,479人です(厚生労働省「令和6年度 看護師の特定行為研修に係る実態調査・分析等事業 報告書」)。

第8次医療計画における特定行為研修修了看護師の就業者数の目標(全都道府県の合計)20,479人

厚生労働省「令和6年度 看護師の特定行為研修に係る実態調査・分析等事業 報告書」(第37回 看護師特定行為・研修部会 資料1)(2025年)

2025年9月時点の修了者13,887名は、この目標のおよそ68%にあたります(編集部算出)。ただし目標は「修了者数」ではなく就業者数、つまり修了したうえで在宅・救急・ICUなど想定された場所で実際に働いている人数です。修了しても活かせる職場にいなければ、この数にはカウントされません。

読者にとっての意味: 国も自治体も「資格を取らせること」ではなく「配置すること」を目標に置いています。だから施設側には、修了者を採用したい・配置したいという実需がある一方で、あなたが今の職場で活かせるかどうかは別問題です。この記事の落とし穴のセクションで最初に扱うのが「活かせる場がなかった」ケースなのは、そのためです。

6つの領域別パッケージ:現場ニーズに直結

2019年の省令改正で「領域別パッケージ研修」が導入されました。関連する複数の特定行為区分をまとめて受講できる仕組みです。

領域別パッケージ想定される活躍の場こんな人に向く
在宅・慢性期訪問看護ステーション、在宅看取り医師が常駐しない現場で判断を求められる
外科術後病棟管理一般病棟の術後管理外科病棟で術後患者を継続的に受け持つ
術中麻酔管理手術室(麻酔科医の補助)オペ室勤務でより深く関わりたい
救急2次・3次救急初療でタイムリーな処置が必要
外科系基本外科系診療全般複数の外科系診療科を横断する
集中治療ICU・重症患者管理人工呼吸器管理・循環動態の調整が日常

出典: 厚生労働省「特定行為研修 領域別パッケージ研修」

自分の活躍領域に合ったパッケージを選ぶことで、必要な区分だけを効率的に取得できます。全21区分を取る必要はありません。

研修の期間・費用:投資はどれくらい?

研修の構成

科目時間数内容
共通科目250時間臨床推論、フィジカルアセスメント、疾病・臨床病態概論など
区分別科目5〜34時間/区分選択した行為区分ごとの知識・実技

期間と費用

項目目安
期間6か月〜2年(1年程度が最多)
費用30万〜250万円(機関・選択区分数で異なる)
eラーニング対応している研修機関あり(働きながら受講可能)

費用を抑える方法

支援制度内容
専門実践教育訓練給付金受講中に教育訓練経費の50%(年間上限40万円)。資格取得等をして修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用されると70%(年間上限56万円)、さらに受講前より賃金が5%以上上がると80%(年間上限64万円)まで
都道府県の助成事業独自の助成制度を設けている自治体がある
所属施設の負担一部の病院では研修費用を施設が負担し、受講中も給与を支給

注意点が2つあります。 ひとつは、専門実践教育訓練給付は厚生労働大臣が指定した講座に限られること。特定行為研修を実施していても指定講座になっていない研修機関があるため、申し込む前に研修機関とハローワークの両方に確認してください。もうひとつは、受講開始前にハローワークでの手続き(受給資格確認)が必要なことです。受講が始まってからでは間に合いません。

所属施設の支援制度は、聞いてみると意外と手厚いケースがあります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:費用を負担したのに、職場で活かせる場がなかった

特定行為研修の費用は30万〜250万円。給付金や施設の補助を使っても、時間の投資まで含めれば決して小さくありません。それでも最も痛いのは、修了後に「使う場面がない」と気づくことです。実際に起きるのは2パターンあります。ひとつは、自施設に手順書を作成・運用できる医師がいないケース。特定行為は医師の手順書があって初めて実施できるため、手順書がなければ資格は書類上のものにとどまります。もうひとつは、そもそも特定行為を必要とする患者層がいない診療科だったケースです。回避法は、受講を申し込む前に看護部長または管理者へ2点を確認すること。「自施設に手順書を作成・運用できる医師がいるか」「修了後に特定行為を実施できる体制を整備する意向があるか」です。整備は未定という答えなら、修了後の転職も選択肢に入れて計画を立ててください。修了者の配置を診療報酬の要件にしている施設(ICU・救急・訪問看護など)であれば、資格がそのまま役割につながります。

キャリアへの影響:診療報酬上の評価が拡大中

施設での資格手当

特定行為研修修了に対する専用手当を設けている施設はまだ一部にとどまり、手当額は月額数千円〜数万円と幅があります。現時点では、手当だけで「元が取れる」とは言いにくい状況です。

施設側が修了者を求める理由

修了者への需要は「あったら助かる」という現場の感覚だけでなく、制度の設計に組み込まれています。

厚生労働省が第8次医療計画で各都道府県に示した「特定行為研修修了者の就業者数の目標」の算出例には、診療報酬の施設基準に係る看護師以外に2名以上を配置する場合の人数や、総合入院体制加算を算定する医療機関における養成ニーズが明示的に挙げられています(厚生労働省・看護課長通知)。つまり、施設が修了者を何人確保すべきかを考えるとき、診療報酬の施設基準が計算の出発点になっているということです。

算出例として挙げられている領域は3つです。

領域想定される配置
在宅・慢性期看護師が常勤換算5名以上の訪問看護ステーションに各1名以上
新興感染症等の有事対応ICU・救命救急等の集中治療を担う病棟に、施設基準の看護師とは別に2名以上
医療機関のタスク・シフト/シェア医師労働時間短縮計画の作成対象となる医療機関、総合入院体制加算を算定する医療機関

出典: 厚生労働省「医療計画における看護師の特定行為研修の体制の整備等について」(医政看発0331第6号 看護課長通知)

求人を探すときの実用的な意味: この3領域——訪問看護ステーション、ICU・救命救急、医師の働き方改革に取り組む病院——が、修了者を最も必要としている職場です。求人票に「特定行為研修修了者歓迎」と書かれていなくても、この条件に当てはまる施設なら相談する価値があります。なお、どの加算・施設基準で修了者の配置が求められるかは診療報酬改定のたびに変わるため、個別の加算要件は応募先または最新の施設基準で確認してください。

認定看護師B課程との相乗効果

2019年からスタートした認定看護師B課程(新制度)には特定行為研修が組み込まれています。認定看護師+特定行為研修修了というダブルの資格を持つことで、キャリアの選択肢がさらに広がります。

受講を決める前のチェックリスト

特定行為研修を受けるかどうか迷っている方のために、判断のポイントを整理します。

受講をおすすめする人

  • 在宅医療や訪問看護の現場で、医師不在時に判断を求められることが多い
  • ICUや救急で、タイムリーな処置を看護師の判断で行いたい
  • 認定看護師B課程を目指しており、特定行為研修が必須
  • 将来的にナースプラクティショナー的な役割を担いたい

慎重に検討すべき人

  • 6か月〜1年の研修期間を確保することが難しい
  • 所属施設の費用支援が受けられず、自己負担が大きい
  • 現在の診療科で特定行為を活用する場面が少ない

受講前に確認すべきこと

  1. 所属施設の支援制度:研修費用の負担、受講中の給与保障
  2. 教育訓練給付金の対象講座か:研修機関とハローワークの両方に確認(受講開始前の手続きが必要)
  3. 受講後の活用場面:自分の職場・領域で特定行為が必要とされているか
  4. 研修機関の選択:eラーニング対応か、通学可能な距離か
  5. 実習の受け入れ体制:所属施設が実習に協力してくれるか
⚠️ つまずきやすい落とし穴:受講中の異動と、補助金の返還条件を確認していない

特定行為研修は座学だけでは終わりません。区分別科目には実習があり、多くの場合は所属施設の協力が前提になります。ここで見落とされがちなのが研修期間中の異動です。研修途中で職場の都合により配置換えになると、実習に必要な症例が確保できず、研修そのものが中断・延期になるリスクがあります。年度をまたぐ研修では特に起こりやすいので、受講を決める段階で「研修期間中の異動の可能性」を上司に確認し、可能なら人事側にも共有しておいてください。もうひとつ、施設が費用を負担してくれる場合は返還条件の確認が欠かせません。「修了後◯年以内に退職した場合は補助額を返還する」という勤続義務が設定されていることがあり、修了後に転職したくなったタイミングで数十万円の返還義務が発生した、という事例があります。口頭の説明で済ませず、規程の該当条文を書面で見せてもらい、勤続義務期間と返還額の計算方法をメモしておきましょう。転職を考えるなら、その期間から逆算して動く必要があります。

今後の見通し:制度改善が加速

厚生労働省は2025年から「特定行為研修制度見直しWG」を設置し、以下の改善を進めています。

  • 柔軟な実習実施:受講者の技量に応じた実習の効率化
  • 既修了科目の免除:追加区分の取得をしやすくする
  • パッケージ研修の拡充:現場ニーズに即した領域を追加

制度の使い勝手を良くする方向で見直しが進んでいるため、これから受講する人ほど負担は軽くなっていくと考えられます。

特定行為研修修了者を求める施設は転職エージェントが把握している

修了者の配置が診療報酬で評価される施設が増加中。資格を活かせる求人をエージェントに無料で相談してみましょう。

失敗例・よくあるNG

NG1:手当が付かない職場に修了後も留まり続けた

特定行為研修修了に対する専用手当を設けている施設はまだ一部にとどまります。修了後も手当がなく、役割も変わらないまま数年が経過するケースがあります。診療報酬上の評価が拡大している現在、修了者の配置を要件とする施設は増加中です。手当・役割の両方が変わらないなら、修了者を積極的に求める施設への転職を検討するのが現実的な選択肢です。

NG2:全区分を一度に取得しようとして研修が長期化・挫折した

特定行為は38行為・21区分あり、全区分を一度に取得しようとすると研修期間・費用ともに最大規模になります。働きながらの受講では負担が大きく、途中で研修を断念するケースも報告されています。領域別パッケージ研修が整備されており、自分の活躍領域に絞って必要な区分から始めることが制度の想定する受け方です。「在宅・慢性期」「救急」など1〜2パッケージから着手する方が現実的です。

NG3:施設の費用補助を受けたが返還条件を把握していなかった

所属施設が研修費用を負担するケースでは、一定期間の勤続義務が設定されていることがあります。修了後に転職したいと思ったときに返還義務が発生し、想定外の出費が生じたという事例があります。補助制度を利用する前に、返還条件(勤続義務期間・返還額の計算方法)を人事・総務に書面で確認することが重要です。

特定行為研修修了者を求める施設は転職エージェントが把握している

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まとめ

特定行為研修は、看護師が医師の手順書にもとづいて38の医療行為を自律的に判断・実施できるようになる制度です。数字で押さえておきたいのは次の4点です。

  • 修了者は13,887名(2025年9月時点)。直近1年で2,705名増と、制度開始以来の最多ペース
  • 指定研修機関は474機関・全47都道府県に設置済み。年間定員6,717名に対し修了者は年2,705名で、定員には余裕がある
  • 費用は30万〜250万円。専門実践教育訓練給付金の指定講座なら受講費用の50%(年間上限40万円)から、条件次第で最大80%(同64万円)まで戻る
  • 第8次医療計画の就業者数目標は20,479人。国が求めているのは資格保有者ではなく「配置されて働いている人」

最後の1点が、受講を考えるうえで一番大事なところです。目標が「就業者数」で置かれているとおり、価値が生まれるのは資格を取った瞬間ではなく、特定行為を実施できる体制のある職場で働いたときです。受講前に自施設の体制を確認し、整っていないなら転職も含めて考える——この順番で検討してください。

「今のスキルにプラスαが欲しい」と感じているなら、在宅・救急・ICU領域では特に有力な選択肢になります。

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参考文献

  1. 厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」2026-09-08 閲覧)
  2. 厚生労働省「特定行為研修とは」2026-09-08 閲覧)
  3. 厚生労働省 第37回 医道審議会保健師助産師看護師分科会 看護師特定行為・研修部会 資料1「特定行為研修制度の現状と見直しについて」(2025年8月4日)2026-09-08 閲覧)
  4. 厚生労働省 第1回 特定行為研修制度見直しワーキンググループ 議事録(修了者数・指定研修機関数・定員の最新値)2026-09-08 閲覧)
  5. 厚生労働省「教育訓練給付金」(専門実践教育訓練の支給率・上限額)2026-09-08 閲覧)
  6. 日本看護協会「特定行為研修」2026-09-08 閲覧)