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看護師5年目で給料が上がらない理由|新卒との差が縮んだ賃金カーブと打開策

ナースの休憩室 編集部14分で読めます
目次

看護師5年目で「給料が上がらない」と感じるのは、あなたの評価が低いからではありません。日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」によると、2025年度実績で新卒看護師(高卒・3年課程)の平均基本給与額は216,416円、勤続10年(31〜32歳・非管理職)は254,286円。その差は月37,870円しかなく、しかもこの差は2008年度の48,988円から約1万1千円も縮んでいます。伸びているのは初任給のほうで、中堅層の基本給はほとんど動いていない——これが「上がらない」の正体です。

5年目で「上がらない」と感じるのは、気のせいではない

夜勤も受け持ちも1年目とは比べものにならないほど増えた。後輩指導も任されるようになった。それなのに給与明細の基本給は、去年と数千円しか違わない。5年目前後でこの違和感に気づく人はとても多いです。

日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)で「仕事を辞めたい主な理由」(3つまで選択)を見ると、「賃金が安い」は42.6%で2位。1位の「人手不足で仕事がきつい」58.1%に次ぐ大きさです。同じ調査では、辞めたいと思いながら働いている人が79.2%(「いつも思う」24.0%+「ときどき思う」55.2%)にのぼります。給与への不満は、一部の人の贅沢な悩みではなく、現場の多数派が抱えているものです。

ただし「不満を感じている人が多い」で終わらせると何も変わりません。この記事では、昇給がどれくらいの幅で起きているのかを公的データで数字にし、そのうえで収入を動かす手段を3つ比較します。

数字で見る:新卒と勤続10年の差は月37,870円

まず、いま自分がどのあたりにいるのかを把握します。日本看護協会が毎年3,000病院規模で調査している「病院看護実態調査」は、新卒と勤続10年という2点の給与を長期に追いかけている、数少ない公的な時系列データです。

区分平均基本給与額平均税込給与総額
新卒看護師(高卒・3年課程卒)216,416円285,078円
新卒看護師(大卒)221,883円292,527円
勤続10年(31〜32歳・非管理職)254,286円340,278円

出典: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2025年度実績、2026年3月31日公表)図表9

※ 税込給与総額には通勤・住宅・家族・夜勤・当直・処遇改善の各手当が含まれ、時間外手当は含まれません。夜勤は三交代8回(二交代4回)を想定した条件での集計です。

高卒・3年課程卒の新卒と勤続10年を比べると、基本給の差は月37,870円。年収ベースでは税込給与総額の差が月55,200円ですから、賞与を別にしても年間で約66万円の開きがあります。

ここで注意したいのは、この2つは同じ人の10年後ではなく、同じ年に別々の人を調べた断面だということです。それでも「新卒と勤続10年の間に、月4万円弱の階段がある」という目安にはなります。10年で37,870円なら、単純に割って年あたり約3,800円。5年目のあなたが新卒時から月2万円弱しか増えていなくても、それは平均的な動き方だということです。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

「思ったより上がっていない」と気づいた人がまずやりがちなのが、給与明細ではなく年収の振込額だけを3年分見比べることです。振込額には夜勤回数・時間外・扶養や住宅の手当・社会保険料の改定が全部混ざっているため、「去年より2万円増えた」の中身が昇給なのか夜勤が1回増えただけなのかが分かりません。実際、夜勤が月1回増減するだけで年間十数万円動きます。確認すべきは総支給額ではなく、給与明細の基本給の欄だけを3年分並べること。ここが動いていなければ、どれだけ夜勤を増やしても土台は変わっていません。基本給は賞与・退職金・時間外の割増単価の計算基礎にもなるため、ここが止まっていることの影響は毎月の数千円では終わりません。

なぜ上がらないのか——賃金カーブが17年で寝た

「昔から看護師の昇給はこんなものだった」のかというと、そうではありません。同じ調査の長期推移を見ると、上がり方が変わっています。

新卒と勤続10年の平均基本給与額(2008年度→2025年度)

新卒 2008年度
193,907円
新卒 2025年度
216,416円
勤続10年 2008年度
242,895円
勤続10年 2025年度
254,286円

出典: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」図表10・図表11(高卒・3年課程卒)(2025年)

※ 差が見えるようグラフの起点は0ではありません。実際の差は本文の数値でご確認ください。

17年間の伸びを率にすると、新卒の基本給は+11.6%(193,907円→216,416円、+22,509円)、勤続10年は+4.7%(242,895円→254,286円、+11,391円)。人手不足を背景に初任給の引き上げ競争が起きた一方で、中堅層の水準はほとんど据え置かれてきました。

結果として、新卒と勤続10年の基本給の差は48,988円から37,870円へ、約1万1千円縮んでいます。直近1年でも同じ傾向で、2024年度から2025年度の引き上げ率は新卒(高卒・3年課程)3.2%、大卒2.9%に対し、勤続10年は1.6%でした。

つまり、5年目のあなたが感じている「上がらない」は、個人の頑張りや評価の問題ではなく、新人の入口を上げることを優先してきた業界全体の配分の結果です。個人の努力で傾斜そのものを変えるのは難しい一方、どの階段に乗るかは選び直せます。次章からは、その選択肢を順に見ていきます。

いまの基本給が相場に合っているか、確かめてみませんか

求人票の「モデル年収」ではなく基本給で比べると、いまの職場の位置が見えてきます。

「年収は上がっているはず」の正体

一方で、年収の統計を見ると20代のうちはそれなりに増えているように見えます。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の年齢階級別では、20〜24歳が440.1万円、25〜29歳が501.5万円、ピークの50〜54歳は577.7万円です。20代前半から後半にかけて約61万円増えている計算になります。

この61万円のうち、所定内給与の差で説明できるのはおよそ半分です。基本給が年3,800円ペースで動いていることを踏まえれば、5年間の昇給は月2万円弱=年20万円台。残りは、1年目は賞与が満額支給されないこと、夜勤の回数が少ないこと、時間外が積み上がっていないことが重なって20〜24歳の平均が低く出ている分、つまり賞与・夜勤・時間外という変動部分が埋めている、と考えるのが自然です。なお所定内給与には各種手当も含まれるため、給与明細の基本給の伸びとは一致しません。

だから多くの人が「稼ぐなら夜勤を増やすしかない」という結論にたどり着きます。ところが、その夜勤手当も長く据え置かれてきました。

二交代制の夜勤1回あたり定額夜勤手当の推移

2010年
10,745円
2015年
10,711円
2020年
11,286円
2023年
11,368円
2025年
11,470円

出典: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」図表13(「定額の夜勤手当を支給している」と回答した病院の平均)(2025年)

※ 差が見えるようグラフの起点は0円ではありません。15年間の増加は725円(+6.7%)で、バーの伸びほど金額は動いていません。

2010年の10,745円から2025年の11,470円まで、15年で+725円(+6.7%)。同じ期間に新卒の基本給が1割以上上がったことを考えると、夜勤という負担の値札はほとんど動いていません。「夜勤を増やして収入を補う」という戦略は、身体の負担に対して割に合いにくくなっているということです。

なお、看護師全体の平均年収は524.7万円(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」、きまって支給する現金給与額365,900円×12+年間賞与856,400円、平均年齢42.1歳)。この数字は平均年齢42.1歳の水準なので、5年目の自分と直接比べる相手ではありません。地域による差も大きいため、看護師の年収が高い都道府県で自分の地域の相場を確認してから、いまの条件を評価してください。

給料を上げる3つの手段を比較する

構造が分かったところで、実際に動かせるレバーは3つです。効果が出るまでの時間と、リスクの大きさが違います。

1. まず自分の昇給の実額を測る(所要30分・リスクなし)

何をするにしても、現在地が分からないと判断できません。

  • 手順①:直近3年分の給与明細(4月・5月分)を用意する。4月または5月に昇給が反映される職場が多いため、この月で比べます
  • 手順②:基本給の欄だけを書き出す。例:2023年4月 218,000円/2024年4月 221,500円/2025年4月 224,800円
  • 手順③:差を出す。この例なら年あたり3,400円前後で、業界平均とほぼ同じ動き方です
  • 手順④:就業規則の「昇給」の条項を確認する。「毎年4月に昇給する」と書いてあるか、「会社の業績により行うことがある」と書いてあるかで意味がまったく違います
⚠️ つまずきやすい落とし穴

就業規則に「昇給あり」と書いてあることを、昇給額の約束と受け取ってしまう人がいます。多くの規程は「昇給は原則として年1回行う。ただし経営状況等により実施しないことがある」という書き方で、金額は定めていません。号俸表がある公的病院なら1号あたりの金額が決まっていますが、民間では号俸表そのものが非公開のことも珍しくありません。ここで確認すべきは「上がるかどうか」ではなく「いくら上がってきたか」の実績です。人事や上司に聞くなら、「私の評価」ではなく「この等級の標準的な昇給額」という聞き方にすると、個人の評価の話にすり替わらずに済みます。

2. 基本給と手当を動かす(半年〜数年・職場に残る選択)

いまの職場に残ったまま収入を上げるなら、手当か等級を動かすことになります。

  • 資格・研修:認定看護師、専門看護師、特定行為研修の修了などで資格手当が付く職場があります。金額と支給条件は職場ごとに違うため、受講を決める前に「自院で手当の対象になるか」「月いくらか」を就業規則・給与規程で確認します
  • 役職:主任・副師長への昇任は等級が変わるため、手当ではなく基本給の土台が動きます。ただし時間外手当の扱いが変わる職場もあるため、昇任後の総支給を先に試算します
  • 夜勤専従・シフトの変更:短期的には効果が大きい一方、前述のとおり単価は横ばいです

問い合わせの見本:「特定行為研修の受講を検討しています。修了した場合、当院の給与規程で資格手当の対象になりますか。対象なら月額と、支給開始の時期を教えてください」

⚠️ つまずきやすい落とし穴

「資格を取れば給料が上がる」と信じて費用と時間を投じたのに、自院には該当する手当がなかった、というケースが起きます。認定看護師教育課程は受講料だけで数十万円、加えて数か月の就業調整が必要です。手当が月5,000円なら、回収に何年かかるかを先に計算しておく必要があります。逆に「自院に手当はないが、転職市場で評価される」という判断で取るのはまったく問題ありません。大事なのは、費用と回収期間を数字にしてから動くこと。取得後に「思っていたのと違う」となると、費用も時間も戻ってきません。奨学金や研修費の返還義務が付くケースもあるため、支援制度を使う場合は返還条件も同時に確認します。

3. 基本給のベースを入れ替える(1〜3か月・条件は事前に確定できる)

年3,800円の階段を上り続けるより、階段そのものを乗り換えるほうが幅が大きくなることがあります。ただし「転職すれば上がる」わけではありません。判断できるのは、比べ方を間違えなかった場合だけです。

  • 手順①:いまの基本給と、夜勤回数・時間外時間を書き出す(手順1で作った表がそのまま使えます)
  • 手順②:求人票の「月給◯◯万円」が基本給なのか、諸手当込みなのかを分けて読む。「モデル年収」は夜勤◯回・賞与◯か月の前提付きの試算値です
  • 手順③:気になる求人について、基本給・賞与の実績月数・夜勤回数の前提・固定残業代の有無を質問する
  • 手順④:内定後、労働条件通知書で基本給の額を確認してから承諾する

条件面の具体的な聞き方や、内定後の確認の進め方は看護師の転職で給料を交渉する方法にまとめています。「そもそも給与の高い職場はどこにあるのか」を規模・地域・勤務形態から探したい場合は給料が安いと感じる看護師の高給与転職が参考になります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

年収の総額だけで比較して、夜勤回数の前提が違うことを見落とす失敗が非常に多いです。「年収540万円」と書かれた求人が月5回の夜勤を前提にしていて、いまの職場が月4回なら、増えた1回分は収入ではなく労働の追加です。二交代の夜勤手当は平均11,470円ですから、月1回の差は年間約14万円。この分を引いてから比べないと、「転職したのに体が楽にならず、手取りもほぼ同じ」という結果になります。求人票に前提が書いていなければ、面接で「モデル年収の夜勤回数と賞与の月数は、何を前提にした数字ですか」と必ず確認してください。答えられない、あるいは曖昧にされる場合は、その数字を判断材料から外すのが安全です。

やりがちな失敗

  • 失敗例1:基本給ではなく総支給額で職場を比べた → 夜勤・時間外・固定残業代を除いた基本給で比べる。基本給は賞与と退職金の計算基礎にもなるため、同じ総支給でも生涯の差が大きくなります
  • 失敗例2:「昇給あり」を昇給額の約束と受け取った → 規程の文言ではなく、過去3年の実績額で判断する
  • 失敗例3:資格取得の費用と手当を比べずに走り出した → 受講料・就業調整・返還条件と、手当の月額・支給開始時期を先に並べる
  • 失敗例4:不満が限界に達してから動き出した → 在職中に相場を調べておけば、条件を比べる余裕が残ります。辞めたい気持ちの整理そのものは看護師が辞めたいときの対処法で扱っています

よくある質問

Q. 看護師の昇給は1年あたりいくらが普通ですか?

A. 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」の新卒(高卒・3年課程)216,416円と勤続10年254,286円の差から単純計算すると、基本給ベースで年あたり約3,800円が目安です。ただしこれは別々の人を同じ年に調べた断面からの推計で、実際の昇給額は職場の給与規程によって大きく変わります。自分の実額は給与明細の基本給を3年分並べると確認できます。

Q. 5年目の看護師の年収はどのくらいですか?

A. 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の年齢階級別では25〜29歳が501.5万円です。ただしこれは夜勤回数・時間外・賞与を含む平均で、地域差も大きい数字です。全国平均の524.7万円(同調査)は平均年齢42.1歳の水準なので、5年目と比べる相手としては適切ではありません。

Q. 基本給が上がらないと、具体的に何が困るのですか?

A. 基本給は賞与の計算基礎、退職金の算定基礎、時間外・休日労働の割増賃金の単価に影響します。手当で総支給が同じでも、基本給が低い職場では賞与や退職金で差がつきます。求人を比べるときに基本給の欄を確認すべきなのは、この波及があるためです。

Q. 夜勤を増やせば収入は増えますか?

A. 増えますが、単価は長く据え置かれています。二交代制の夜勤1回あたりの定額手当は2010年の10,745円から2025年の11,470円と、15年で725円しか上がっていません(日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」図表13)。同じ期間に新卒の基本給が11.6%上がったことと比べると、負担に対する見返りは相対的に小さくなっています。

Q. 転職すれば必ず給料は上がりますか?

A. 必ず上がるとは言えません。日本看護協会の調査でも施設の種類によって給与水準は異なり、夜勤の有無で大きく変わります。上がるかどうかは、いまの基本給と応募先の基本給を同じ条件(夜勤回数・賞与月数)に揃えて比べて初めて判断できます。総額だけの比較は誤りのもとです。

基本給で比べる求人の探し方を相談する

夜勤回数や賞与の前提をそろえて比較するところから、無料で相談できます。

まとめ

  • 新卒(高卒・3年課程)と勤続10年の平均基本給与額の差は月37,870円。年に直すと約3,800円ペースで、5年目で「上がらない」と感じるのは平均的な動き方です
  • この差は2008年度の48,988円から約1万1千円縮んでいます。初任給が17年で11.6%上がる一方、勤続10年は4.7%。賃金カーブが寝たことが「上がらない」の構造的な原因です
  • 夜勤手当も2010年から15年で+725円と横ばい。夜勤を増やして補う戦略は、身体の負担に対して割に合いにくくなっています
  • 動かせるのは「実額を測る」「手当・等級を動かす」「基本給のベースを入れ替える」の3つ。いずれも最初の一歩は、給与明細の基本給を3年分並べることです

給与の水準は個人の努力より、どの階段に乗っているかで決まる部分が大きいものです。自分がいまどの階段にいるのかを数字で確認するところから始めてみてください。年収の地域差は看護師の年収が高い都道府県、働き方全体の見直しは看護師が辞めたいときの対処法、年代ごとの位置づけは看護師の年齢分布で確認できます。