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お悩み相談

プリセプターがつらいときに読む記事|新人の退職理由データと、ひとりで抱え込まないための手順

ナースの休憩室 編集部11分で読めます
目次

新人が育たない、辞めそうだ、自分の指導が悪いのではないか——プリセプターを任された人がまず抱えるのがこの自責です。ところが日本看護協会の調査で、年度内に辞めた新卒看護師がいた病院の看護管理者に退職理由を尋ねたところ、「教育体制への不満」を挙げた病院は2.5%でした。この記事では、新人が辞める理由のデータと、厚生労働省のガイドラインが本来用意していた「指導者を支える仕組み」を照らし合わせ、抱え込まないための手順を示します。

自分の受け持ちを見ながら新人の手技も見て、記録をチェックし、終業後に振り返りをする。そのあいだ自分の記録は溜まっていく。「教えるのが下手なんじゃないか」と思いながら帰る夜が続くと、指導そのものが怖くなります。


1. 新人が辞める理由を、管理者はどう見ているか

日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2026年3月31日公表)は、2024年度に年度内離職した新卒看護師がいた病院(993病院)の看護管理者に、その主な退職理由を上位5つまで選ぶ形で尋ねています。

新卒看護師の年度内離職の主な理由として「教育体制への不満」を挙げた病院の割合(回答993病院)2.5%

日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」図表7(2024年)

新卒看護師の年度内離職について、看護管理者が挙げた主な退職理由(2024年度・上位5つ選択)

健康上の理由(精神的疾患)
54.6%
適性への不安
46.6%
看護実践能力への不安
44.2%
上司・同僚との人間関係
27.0%
他施設への関心・転職
23.0%
教育体制への不満
2.5%

出典: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」図表7(回答993病院・上位5つ選択)

上位3つは「健康上の理由(精神的疾患)」54.6%、「自分の看護職員としての適性への不安」46.6%、「自分の看護実践能力への不安」44.2%。そして「教育体制への不満」は2.5%です。「上司・同僚との人間関係」も27.0%で4番目にとどまります。

読み方には注意が必要です。これは看護管理者の見立てであり、本人の申告ではありません。自施設の教育体制を低く評価しにくい偏りもあり得ます。

それでも言えることがあります。最も多く挙がるのは、新人自身の内面に関する項目だということです。適性への不安も実践能力への不安も、プリセプター1人の関わり方だけで生まれるものではありません。病床規模別に見ると、500床以上では「健康上の理由(精神的疾患)」が71.2%(他の規模は44.6〜55.8%)と際立ちます。個人には動かせない要素が効いているということです。


2. 同じように指導しても、結果が同じにならない理由

もうひとつ、抱え込む前に知っておきたいデータがあります。

同じ調査の図表6は、2024年度の新卒看護師の年度内離職率を、出身の学校養成所の種別ごとに集計しています(2,070病院)。全体は8.2%で、「大学(看護系大学・大学校)」7.5%、「短期大学(3年課程)」8.1%、「看護師学校養成所(3年課程)」8.7%、「その他(5年一貫教育・高等学校専攻科など)」9.2%、「看護師学校養成所・短期大学(2年課程)」が12.3%でした。

最も低い区分と高い区分の差は4.8ポイント。同じ病院で同じ研修プログラムを受けても、入職前の教育課程によって年度内に辞める割合は変わります。指導する側の力量だけで説明できる幅ではありません。その新人がどの課程から来たかは、あなたが選んだことではないのです。


指導体制は、職場によってここまで違います

実地指導者への研修時間、教育担当者の人数、プリセプターへの面接の有無。同じ「プリセプター制度あり」でも中身は別物です。まずは他の職場の条件を見てみてください。


3. ガイドラインは「指導者を支える側」まで設計していた

厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】」(平成26年2月)は、新人向けの内容だけでなく、実地指導者(プリセプター)を育成し支える仕組みまで明示しています。

制度として用意されているはずのものガイドラインの記述
役割に就く前の研修研修プログラムの例は前年度の10〜12月に12時間、1〜3月に6時間、就任後の5月・10月・3月に3時間×3回(計27時間)。内容は組織の教育システム/新人看護師の現状/学習理論と教育評価/メンタルサポート支援/看護技術の指導方法/実際と振り返り
指導者の負担を軽くするための面接「実地指導者に対する研修においては、指導者としての不安・負担感を軽減することを目的として、各部署の所属長又は教育担当者による面接や支援のための研修を定期的に実施する必要があるといわれている」
相談できる上位の役割教育担当者は「実地指導者への助言及び指導」を行う者。配置は各部署に1名以上が望ましい
関係がこじれたときの調整役教育担当者の到達目標に「新人看護職員同士、実地指導者同士の意見交換や情報共有の場を設定し、新人看護職員の実地指導者との関係調整と支援ができる」が含まれる
相談すること自体が到達項目実地指導者に求められる「姿勢・態度」に「新人看護職員との関わりや指導上で、困難や問題と感じた場合は、教育担当者や部署管理者へ相談、助言を求めることができる」が挙げられている

(出典:厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】」平成26年2月 Ⅲ. 実地指導者の育成/Ⅳ. 教育担当者の育成)

最後の行が重要です。困ったときに相談することは、プリセプターの「できていないこと」ではなく、到達目標として書かれている項目そのものです。ひとりで解決しようとするほうが、ガイドラインの想定から外れています。

では、あなたは27時間の研修を受け、前年度から準備をし、定期的な面接を受けてから役割に就いたでしょうか。「いいえ」なら、足りていないのは能力ではなく手前にあるはずだった仕組みです。

日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)で、辞めたい理由の1位は「人手不足で仕事がきつい」58.1%、5位に「思うような看護ができず仕事の達成感がない」23.1%。指導を担いながら自分の受け持ちも回す構造は、この2つの真ん中にあります。


4. 抱え込まないための3つの手順

手順1:指導の記録を「新人のため」ではなく「自分のため」に残す

指導記録は新人の評価のために書かれます。そこに自分の側の条件を1行足してください。

  • 記入見本:「9/18 日勤。受け持ち6名+新人指導。9:00 採血の見学、10:30 点滴更新の実施見守り。振り返り17:40〜18:10(時間外)。この日フォローに入れた時間は計約50分。自分の記録は19:20まで」

足す項目は3つだけです。その日フォローに使えた実時間/時間外になった分/同時に持っていた受け持ち人数。これがあると、「手が回らない」が「1日50分しか確保できていない」に変わります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:新人の到達度だけを書いて、自分の条件を書かない

指導記録は評価シートの形をしているため、新人について「できた/できない」を書く欄しかありません。そのまま書き続けると、半年後に残るのは「新人が到達していない」という記録だけになり、読み返すたびに自分の指導が否定されているように感じます。ところが実際には、受け持ち6名を抱えながら1日50分しか関われていない、という条件のほうが結果を左右しています。条件を残しておけば、面談で「関わる時間が足りていない」という話ができます。欄がなければ自分の手帳に3行だけ並行して残してください。誰かを責めるためではなく、事実を自分の側からも記録しておくためです。

手順2:教育担当者に「関係調整」を名指しで依頼する

ガイドライン上、実地指導者と新人の関係調整は教育担当者の到達目標に含まれています。つまり、これは依頼していい仕事です。

  • 依頼の見本:「Aさんとの振り返りで、私からの指摘が萎縮につながっている感触があります。ガイドラインでいう関係調整の部分をお願いしたいのですが、一度同席して見ていただけませんか。そのうえで、私の伝え方で変えたほうがよい点を教えてください」

「うまくいっていません」ではなく、同席という具体的な行為を依頼するのがポイントです。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:「相談=力量不足の申告」と受け取られることを恐れる

プリセプターを任される人ほど「相談したら、任せられないと思われる」と考えます。3年目前後で初めて役割に就いた場合、自分の評価が気になるのは当然です。しかしガイドラインは、困難を感じたときに教育担当者や部署管理者へ相談・助言を求めることを、実地指導者の姿勢・態度として明記しています。相談は制度上の想定内の行動です。それでも言い出しにくいときは、評価の話から切り離し「新人の到達を早めるために」という枠で持っていってください。主語を自分ではなく新人に置くと通りやすくなります。「見ておくね」で終わったら、日付を決めて再度依頼を。

手順3:できないことは、できない理由ごと返す

「これもお願い」が積み上がるのは、断り方が「できません」の一語になるからです。理由と代案をセットにすれば、引き受ける範囲を自分で決められます。

  • 返し方の見本:「今週はAさんの夜勤同行が2回入っているので、委員会の資料作成は来週でもよいでしょうか。もし今週中が必要でしたら、同行を1回、別の方にお願いできないか相談させてください」
⚠️ つまずきやすい落とし穴:全部引き受けて、時間外で調整してしまう

すべて引き受けて終業後に片づけるやり方は、短期的には摩擦が少ないため定着しやすいものです。しかし続けると業務量が表に出なくなり、「あの人は回せている」という前提で次の仕事が乗ります。時間外で処理された分は勤務表にも指導記録にも残らないため、負担の根拠が消えます。断るのが難しければ、せめてかかった時間を記録に残してください。「振り返り17:40〜18:10」と書いてあれば、それは業務として存在したことになります。医労連の調査では回答者の40.6%が「メンタル障害で休んだり治療を受けている職員がいる」職場で働いていると答えています。


5. よくある失敗例

失敗例1:新人の前で「私も分からない」と言えず、調べ直す時間を自分で作る

分からないことを持ち帰って翌日答えるのは誠実ですが、毎回やると負担が積み上がります。「一緒に調べよう」とその場でマニュアルを開くほうが、新人も調べ方を学べます。

失敗例2:担当を外してほしいと申し出るとき、理由を「自分に向いていない」だけにする

適性の話にすると、返ってくるのは「みんな最初はそうだよ」で終わりがちです。手順1の記録を出し、確保できている指導時間と時間外の実数で話すと、体制の話に移せます。


よくある質問

Q. プリセプターを断ることはできますか?

A. 打診の段階で条件を確認し、交渉することはできます。確認したいのは、実地指導者研修を受けられるか、教育担当者は誰か、指導中の受け持ち人数を減らす調整があるか の3点。「引き受けますが、この3点を整えてください」という形にすると通りやすくなります。

Q. 担当した新人が辞めてしまいました。自分の責任でしょうか。

A. データ上、そう結論づける根拠は薄いといえます。看護管理者が挙げた新卒の主な退職理由で「教育体制への不満」は2.5%、「上司・同僚との人間関係」は27.0%。上位は本人の健康や不安に関する項目です。年度内離職率も出身の教育課程によって7.5%から12.3%まで開きます。振り返るなら、自分の関わり方より先に確保できていた指導時間と受け持ち人数を見てください。

Q. 3年目でプリセプターは早すぎませんか?

A. 何年目から、という全国共通の基準はありません。ガイドラインは実地指導者を「看護職員として必要な基本的知識、技術、態度を有し、教育的指導ができる者であることが望ましい」としているだけです。重要なのは年次より、研修と支援が付いているかどうかです。3年目特有の負荷は看護師3年目が「つらい」と感じる理由で整理しています。

Q. 指導がつらくて、看護師を続ける自信がなくなりました。

A. 指導役の負担と、看護師という仕事の適性は切り離して考えてください。プリセプターの負担は配置と体制の問題であり、部署異動や役割の交代で変わり得ます。心身の不調が続く場合は、勤務先の産業医に相談することも選択肢のひとつです。悩みの種類別の整理は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法まとめにまとめています。


「指導者を支える仕組み」があるかで職場を選ぶ

実地指導者研修の有無と時間数、教育担当者の人数、指導期間中の受け持ち調整。この3点を質問項目にすると、職場ごとの差がはっきり出ます。

まとめ

  • 「教育体制への不満」は2.5%:看護管理者の見立ての上位は、精神的疾患による健康上の理由54.6%、適性への不安46.6%、実践能力への不安44.2%。人間関係は27.0%です
  • 結果は指導の巧拙だけで決まらない:新卒の年度内離職率は出身の教育課程で7.5%〜12.3%と4.8ポイント開きます
  • 相談は到達目標に書かれている:ガイドラインは、困難を感じたら教育担当者や部署管理者へ相談・助言を求めることを実地指導者の姿勢・態度として明記しています
  • 本来は27時間の研修と定期的な面接がセットだった:無いまま役割に就いているなら、足りていないのは能力ではなく仕組みです

今日はまず、指導に使えた実時間を1行書くところから。指導を受ける側の視点は新人看護師の人間関係がつらいときの考え方と相談先にまとめています。3分の働き方タイプ診断も匿名・登録不要で使えます。

参考文献

  1. 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果(2026年3月31日公表・図表6/図表7/図表8)2026-09-20 閲覧)
  2. 厚生労働省「新人看護職員研修ガイドライン【改訂版】」(平成26年2月)Ⅲ. 実地指導者の育成/Ⅳ. 教育担当者の育成2026-09-20 閲覧)
  3. 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」報告集(問23・問39)2026-09-20 閲覧)