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看護補助者の業務範囲|通知と院内規程で決まる線引きと頼み方
目次
- 01看護補助者の業務範囲:通知の原文を読む
- 02現場で看護補助者が担っている業務
- 03自分の病院の院内規程を確かめる
- 04看護補助者に業務を頼む手順
- ステップ1: 規程の範囲内かを確かめる
- ステップ2: 患者の状態を伝えて頼む
- ステップ3: 終わったあとの報告を受ける
- 05看護補助者の人数と定着:頼む相手が増えにくい背景
- 06看護補助者への依頼で起きやすい失敗例・よくあるNG
- 07よくある質問
- Q. 看護補助者にできないこと(してはいけないこと)は何ですか?
- Q. 看護補助者にバイタル測定を頼んでもいいですか?
- Q. 看護補助者と看護助手は違う職種ですか?
- Q. 看護補助者が起こした事故は、頼んだ看護師の責任になりますか?
- Q. 看護補助者の配置や業務の分担が整った職場は、どう見分けますか?
- 08まとめ
配膳、シーツ交換、検体の運搬、物品の補充。気づけば勤務時間の多くを看護以外の仕事に使っていて、記録は時間外に回る。看護補助者さんに頼みたいけれど、どこまで頼んでいいのか分からない。頼みすぎて事故が起きたら、と思うと結局自分でやってしまう。
看護補助者(看護助手)に任せられるのは、療養生活上の世話、環境整備、物品や書類の整理などです。病状の観察、与薬・注射、検温・血圧測定は、通知で看護師が行うものに分類されています。
厚生労働省の通知は 「患者の病状に直接影響のある看護」を、看護師(または看護師の指示を受けた准看護師)が行う としています。個別の業務の範囲は、病院ごとの院内規程で決まります。食事介助・清潔ケア・おむつ交換のように通知が境目を書いていない業務は、患者の状態と院内規程で決まります。
通知は2026年3月5日付(厚労省掲載の訂正後の版)、法令は2026年10月3日に e-Gov 法令検索で確認しました。
看護補助者の業務範囲:通知の原文を読む
看護補助者の業務範囲は、診療報酬の施設基準の通知(入院基本料の届出の取扱い)に書かれています。原文の内容を表にまとめます。
| 区分 | 通知に書かれている業務 | 誰が行うか |
|---|---|---|
| 患者の病状に直接影響のある看護 | ①病状の観察 ②病状の報告 ③身体の清拭、食事、排泄等の世話など療養上の世話 ④診察の介補 ⑤与薬・注射・包帯交換などの治療の介助と処置 ⑥検温、血圧測定、検査検体の採取・測定、検査の介助 ⑦患者・家族への療養上の指導 | 看護師、または看護師の指示を受けた准看護師 |
| 看護補助者の業務 | 原則として療養生活上の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動など)、病室内の環境整備やベッドメーキング、看護用品・消耗品の整理整頓、看護職員が行う書類・伝票の整理と作成の代行、診療録の準備など | 看護補助者(看護師長と看護職員の指導のもとで) |
| 業務範囲の決め方 | 2007年の役割分担通知に基づく院内規程を定め、個別の業務内容を文書で整備する | 病院 |
出典: 厚生労働省保険局医療課長通知「基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(保医発0305第7号、2026年3月5日)別添2
③の「療養上の世話」と、看護補助者の「療養生活上の世話」は、言葉が似ていて混乱しやすいところです。通知は③を含む①〜⑦をまとめて看護師等が行うとし、別の文で補助者の業務を書いています。両者の境目は通知に書かれていません。日本看護協会のガイドライン(2021年度改訂版)は、看護補助者を「看護の専門的判断を要しない看護補助業務」を行う者と位置づけ、直接ケアは、その患者に実施することが療養上の世話には当たらないと看護師が判断し、指示を出した場合に限って補助者が実施できるとしています。以下の整理は、この考え方に沿った筆者のものです。食事・清潔・排泄の世話のうち、患者の状態の観察や判断が要る部分は看護師、決まった手順で行う部分は補助者に頼む、という分け方が現実的です。たとえばおむつ交換なら、皮膚の状態の観察や、病状の変化の判断は看護師が行います。
この線引きの土台には、保健師助産師看護師法があります。看護師は「療養上の世話又は診療の補助」を業とする者で(5条)、看護師でない人がこの業を行うことは禁じられています(31条。医師・保健師・助産師などには別の定めがあります)。看護補助者の業務が「看護職員の指導の下に」と書かれているのは、この枠と矛盾しない形で働く前提だと読めます。
ただし、施設基準の通知は、病院が入院基本料を届け出るときの要件として業務の分担を示したものです。個別の行為が看護師の業に当たるかどうかは、行為の態様ごとに判断されます(2005年の医政局長通知も「個別具体的に判断する必要がある」と書いています)。
2007年の役割分担通知(医政発第1228001号)は、空きベッドや離床できる患者のベッドメイキング、物品・検体の運搬と補充、書類の整理、食事の配膳などを、看護職員以外が担える業務の例(いわゆるタスク・シフトの例)として挙げています。検査室などへの移送も、「患者の状態を踏まえ総合的に判断」したうえで補助者を活用できるとしています。
現場で看護補助者が担っている業務
厚生労働科学研究の調査(2019年度、看護管理者1,253人が回答)では、シーツ交換、配膳・下膳、移動・移送、身体の清潔、食事介助、おむつ交換のどれも89%以上の病院で、看護補助者が担っていました。一方、留置カテーテルのバッグの尿の廃棄は48.7%と、病院によって分かれます。
回収率が15.2%の調査で、全国の病院をそのまま代表するとは限らず、7年前の調査でもあります(より新しい同種の調査は、この記事では確認できていません)。それでも、ほとんどの病院で任せている業務と、病院によって扱いが分かれる業務がある ことは分かります。
通知と調査を合わせて、業務を3つに分けると次のようになります。
| 区分 | 業務の例 | 根拠 |
|---|---|---|
| 通知で看護師が行うとされている業務 | 病状の観察と報告、与薬・注射、検温・血圧測定、患者・家族への指導 | 施設基準の通知 別添2 |
| 補助者に任せる例が挙げられている業務 | 空きベッドなどのベッドメイキング、物品・検体の運搬と補充、書類の整理、食事の配膳、検査室などへの移送(状態を踏まえて判断) | 2007年の役割分担通知 |
| 通知が境目を書いておらず、状態や規程で決まる業務 | 食事介助、清潔ケア、おむつ交換、尿バッグの尿の廃棄など | 通知は両者の境目を書いていない(上の筆者の整理)。実施割合は、食事介助・清潔・おむつ交換が約9割、尿バッグの尿の廃棄は48.7% |
自分の病院の院内規程を確かめる
看護補助者の業務範囲は、最終的には院内規程で決まります。通知は、業務範囲について2007年通知に基づく院内規程を定め、個別の業務内容を文書で整備することを求めています。急性期看護補助体制加算を算定している病院では、施設基準として次のことも求められています。
- 看護職員と看護補助者の業務内容と業務範囲を、年1回以上見直す
- 看護補助者は、守秘義務や医療安全・感染防止などを含む基礎知識の院内研修を年1回以上受ける
- 看護職員は、看護補助者との協働の必要性、制度上の位置づけ、自施設の規定と運用などを含む院内研修を年1回以上受けることが望ましい
規程は、病院によって名前や置き場所が違います。看護部の手順書、看護補助者の業務マニュアル、業務一覧、入職時の研修資料などを探します。見当たらなければ、師長か教育担当に「看護補助者の業務範囲を定めた規程(院内規定)は、どこで見られますか」と聞きます。
看護補助者に業務を頼む手順
ステップ1: 規程の範囲内かを確かめる
頼む前に、その業務が院内規程の範囲に入っているかを確かめます。規程にない業務を「いつもやってもらっているから」と頼むと、事故が起きたときに病院として説明が難しくなります。規程が見つからないときは、観察・与薬・検温や血圧測定のように通知で看護師が行うとされている業務は頼まず、師長に範囲を確認してから進めます。
⚠️ つまずきやすい落とし穴 病棟ごとの慣習で、規程にない業務が補助者に回っていることがあります。たとえば、規程では「看護職員と一緒に行う」となっている体位変換を、忙しい時間帯だけ補助者が1人で行っている、というケースです。慣習になっていると、新しく異動してきた看護師も疑問を持たずに頼んでしまいます。気づいたら、その場で個人の判断で頼むのをやめ、リーダーや師長に「規程と運用がずれている業務がある」と伝えます。患者の安全に関わるずれは、見直しの時期を待たずに、医療安全の窓口にも相談します。規程の側を実態に合わせて直すのか、運用を規程に戻すのかを決めるのは病院です。
ステップ2: 患者の状態を伝えて頼む
同じ「移送」でも、患者の状態によって任せられるかが変わります。2007年の通知も、移送は「患者の状態を踏まえ総合的に判断」したうえで補助者を活用できるとしています。頼むときは、業務だけでなく、患者の状態と注意点をセットで伝えます。
- 移送の見本: 「◯号室の◯◯さんの検査室への移送をお願いできますか。車いすで、今朝から状態は落ち着いています。途中で顔色が悪くなったり、気分が悪いと言ったりしたら、無理に進まずすぐ私に連絡してください」
- 食事介助の見本: 「◯◯さんの食事介助をお願いします。今朝から状態は落ち着いていて、ゆっくりなら食べられます。むせたり、顔色が変わったりしたら中止して、すぐ私を呼んでください」
⚠️ つまずきやすい落とし穴 「移送お願いします」だけで頼むと、補助者は患者の状態を知らないまま動くことになります。点滴や酸素の有無、転倒のリスク、急変の可能性など、看護師が把握している情報を伝えなければ、補助者は異常に気づけません。また、状態が不安定な患者の移送や食事介助は、そもそも看護師が行うか、付き添う判断が必要です。頼む前に「この患者は今日、補助者に任せてよい状態か」を自分で一度判断します。判断に迷う状態なら、頼まないのが原則です。
ステップ3: 終わったあとの報告を受ける
頼んだ業務が終わったら、報告を受けます。食事介助なら食べた量やむせの有無、清潔ケアなら皮膚の状態で気づいたこと、などです。観察と判断は看護師の役割なので、補助者が気づいたことを看護師が受け取る流れを作っておきます。
- 報告の受け方の見本: 「ありがとうございました。食事はどのくらい食べられましたか。むせたり、いつもと違うところはありましたか」
⚠️ つまずきやすい落とし穴 忙しいと、頼んだまま報告を聞かずに次の業務に移ってしまいます。補助者は「言うほどのことではない」と思った変化を、聞かれなければ伝えないことがあります。食事の時間帯などで毎回聞く時間がとれなければ、頼むときに「いつもと違うことがあったら、どんな小さなことでも教えてください」と先に伝えておきます。「大丈夫でした」だけの報告のときは、「食べた量はどうでしたか」「皮膚に赤みはありませんでしたか」のように、見てほしい項目を挙げて聞き返します。
看護補助者の人数と定着:頼む相手が増えにくい背景
任せる業務を決める前に、頼む相手の状況も知っておきます。厚生労働省の医療施設調査では、2023年10月時点で病院の看護業務補助者は142,639人(常勤換算)、病院の看護師は828,480人でした。看護業務補助者だけで数えると、看護師およそ6人に補助者1人 です。介護福祉士(38,066人)を含めると180,705人で、約4.6人に1人になります。
推移は、100床当たりの人数(看護補助者は看護業務補助者と介護福祉士の合計)で見ます。
同じ資料では、100床当たりの看護師は32.6人(2002年)から55.8人(2020年)に増えました。補助者1人に対する看護師は、約2.5人から約4.3人です(上の数値から算出)。2017年以降は調査が変わり単純には比べられませんが、調査が同じ2017〜2020年でも14.3人から12.9人に減っています。最新は2020年で、以降の推移は確認していません。
看護補助者が定着するかも、頼める相手の数に関わります。日本看護協会の2025年の調査では、2024年度の看護補助者の離職率は次のとおりでした。
| 区分 | 離職率 | 新規採用者のうち年度内に辞めた割合 |
|---|---|---|
| 正規雇用の看護補助者 | 12.7% | 22.4% |
| 非正規雇用の看護補助者 | 26.1% | 35.4% |
| (参考)正規雇用の看護職員 | 11.0% | 新卒8.4%・既卒16.1% |
出典: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査 報告書」表25・表41(非正規には契約終了・派遣期間終了を含む)
正規雇用の看護補助者では、その年度に採用された人の5人に1人以上が年度内に辞めています。非正規の26.1%には契約終了などが含まれ、すべてが自己都合の退職とは限りません。
年度内に辞めた正規の新規採用者について、看護管理者が挙げた主な理由(5つまで複数回答、n=967病院)は、「自分の体力への不安」32.2%、「上司・同僚との人間関係」31.5%、「健康上の理由(身体的疾患)」29.2%の順でした。人間関係の項目は看護師の頼み方との関係を示すものではなく、待遇や体制など個々の看護師では変えにくい要因もあります(待遇面の動きは、看護師の賃上げはいつ・何%?で整理しています)。そのうえで、日々の関わりも職場づくりの一部だと筆者は考えます。
看護補助者への依頼で起きやすい失敗例・よくあるNG
- 「前の病院ではやってもらっていた」業務を頼む → 業務範囲は院内規程で決まるので、病院が変われば範囲も変わります。入職や異動のときは、最初に規程を読みます
- 測定値の評価や、病状の観察・判断を任せる → 観察と判断は、通知で看護師が行うとされています。体温や血圧の測定そのものを補助者に頼めるかは、規程で確かめます(下のよくある質問を参照)
- 看護師ごとに頼む範囲が違う → 同じ病棟でも、人によって頼む業務が違うと、補助者は何を断ってよいか分からなくなります。規程を病棟で共有し、迷う業務は師長に確かめます
よくある質問
Q. 看護補助者にできないこと(してはいけないこと)は何ですか?
A. 通知で看護師が行うとされている病状の観察、与薬・注射、検温・血圧測定などは、看護補助者の業務として挙げられていません。看護師でない人が療養上の世話や診療の補助を業として行うことは、保健師助産師看護師法31条で禁じられています。
食事介助・清潔ケア・おむつ交換のように通知が境目を書いていない業務は、患者の状態と院内規程で決まります。日本看護協会のガイドラインは、療養上の世話に当たらないと看護師が判断して指示した場合に限り、補助者が直接ケアを行えるとしています。
Q. 看護補助者にバイタル測定を頼んでもいいですか?
A. 施設基準の通知では、検温・血圧測定は看護師(または指示を受けた准看護師)が行うものとされています。測定そのものを補助者に頼めるかは病院の院内規程で決まり、規程に明記がなければ頼まず、師長に確認します。
2005年の医政局長通知(医政発第0726005号)は、体温計で腋の下や外耳道で測る検温や、自動血圧測定器での血圧測定を「原則として医行為ではない」ものとして挙げています。ただし、この通知の対象は医療機関以外の高齢者介護・障害者介護の現場等です。病院の病棟での扱いは、院内規程で決まります。
規程に明記されている場合も、対象の患者、使う機器、測定値が基準を外れたときの報告先まで決まっていることが前提です。測定値をどう読むかの判断は、どの場合も看護師の役割です。
Q. 看護補助者と看護助手は違う職種ですか?
A. 病院によって呼び方が違うだけで、施設基準の通知では「看護補助者」としてまとめて扱われています。
Q. 看護補助者が起こした事故は、頼んだ看護師の責任になりますか?
A. 一概には言えません。一般に、業務が院内規程の範囲内だったか、患者の状態を踏まえて任せる判断が適切だったか、必要な指示や情報を伝えていたかなどが、個別の事情に照らして問われます。実際に事故が起きたときは、医療安全管理の部署や、必要に応じて弁護士などの専門家に相談してください。看護師が問われうる責任の種類は、看護師がミスをしたときの責任で整理しています。
Q. 看護補助者の配置や業務の分担が整った職場は、どう見分けますか?
A. 面接や見学で、業務範囲を定めた規程の有無と年1回以上の見直し、補助者の基礎知識の院内研修、看護職員向けの協働研修を確かめられます。ただし先に、今の職場で規程と運用のずれを師長に伝え、改善を試せるかが分かれ目です。
伝えても取り合われない、見直しの場がないといった場合に、移る選択肢を考えます。急性期看護補助体制加算を算定している病院では、規程の見直しと補助者の基礎知識研修は施設基準で求められ、看護職員向けの協働研修は望ましいとされています。
見学時の質問例は、急性期以外の病棟の違いでも紹介しています。転職支援サービスの費用や手続きの条件はサービスごとに違い、この記事では確認していません。
業務の分担が整った職場を、条件から比べておく
看護補助者の配置や業務の分担は、病院によって大きく違います。今の職場で改善が難しいと感じたら、条件に合う職場があるかを確かめておくのも一つの方法です。
まとめ
- 病状の観察、治療の介助と処置、検温・血圧測定など「患者の病状に直接影響のある看護」は、通知で看護師が行うとされています。看護補助者は、看護職員の指導のもとで療養生活上の世話、環境整備、物品や書類の整理を担います
- 個別の業務の範囲は院内規程で決まります。急性期看護補助体制加算を算定する病院では、業務範囲を年1回以上見直すことが求められています
- 頼むときは、規程の範囲を確かめ、患者の状態を伝え、終わったら報告を受けます
- 補助者の人数は看護師ほど増えておらず、正規の新規採用者の5人に1人以上が年度内に辞めています。頼み方と報告の受け方が定着に影響するかは調査では確認できませんが、日々の関わりの一部だと筆者は考えます
次に読む記事を、状況に合わせて選べます。
- 医師から看護師へのタスク・シフト(特定行為)を知りたい → 特定行為研修のメリット・デメリット
- 病棟ごとの配置の違いを知りたい → 急性期以外の病棟の違い
- 残業の多い職場から移りたい → 看護師が残業の多い職場から転職するには