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看護師が残業の多い職場から転職するには|病院と診療所の残業時間の差と見分け方
目次
「定時で帰れた日が思い出せない」と感じているなら、まず数字で位置を確かめてください。日本看護協会の調査では、正規雇用フルタイム勤務の看護職員が1か月に行った時間外労働は病院で平均15.5時間、診療所で9.7時間でした。差は月5.8時間です。ただし本当の問題は長さだけではありません。病院では15.5時間のうち申請されたのは9.3時間で、6.2時間は申請の段階で消えています。残業を減らしたいなら、時間の長さと「申請されない構造」の両方を見る必要があります。
「残業が多い」の正体は、申請されずに消える時間
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」の個人調査には、実際の時間外労働時間・申請した時間・手当が支払われた時間の3つが並んでいます。ここから「申請されていない時間」を計算しました。
| 就業先 | 実際の時間外労働 | 申請した時間 | 手当が支払われた時間 | 申請されていない時間 |
|---|---|---|---|---|
| 病院(n=1,680) | 15.5時間 | 9.3時間 | 9.1時間 | 6.2時間(40.0%) |
| 訪問看護ステーション(n=419) | 15.8時間 | 11.5時間 | 11.4時間 | 4.3時間(27.2%) |
| 介護系サービス(n=88) | 11.3時間 | 6.6時間 | 6.5時間 | 4.7時間(41.6%) |
| 官公庁(n=39) | 12.4時間 | 8.1時間 | 8.1時間 | 4.3時間(34.7%) |
| 診療所(n=45) | 9.7時間 | 6.6時間 | 6.6時間 | 3.1時間(32.0%) |
| 全体(n=2,344) | 15.1時間 | 9.5時間 | 9.2時間 | 5.6時間(37.1%) |
出典: 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」図表41(2025年1月支給分の算出対象期間)の3列から、「実際の時間外労働 − 申請した時間」を算出。診療所・官公庁は回答者数が少ない点に留意
見てほしいのは、申請した時間と支払われた時間がほとんど同じだということです。病院では9.3時間の申請に対し9.1時間が支払われています。つまり、職場が申請を握りつぶしているというより、申請そのものが行われていないのが実態に近いわけです。
日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)でも、前月の賃金不払い労働が「なし」と答えた人は31.6%にとどまり、約7割に不払い労働がありました。その主な業務(3つまで選択)は「記録」57.9%、「患者への対応」42.3%、「情報収集」41.9%。いずれも勤務時間の前後にはみ出しやすく、「自分の段取りが悪いせい」と感じやすい業務です。時間外の会議・研修にいたっては、超勤として全く扱われていないという回答が42.6%ありました。
病院の残業は、どこでどれだけ発生しているか
同じ調査で、日勤の終業時間「後」の残業を見ると、「なし」は12.8%だけです。約30分以上が73.4%、約60分以上が40.7%、約120分以上も8.4%(2,949人)いました。前月の時間外労働(不払い分を含む)では、20時間以上が19.4%、30時間以上が9.0%、同調査が看護師の過労死ラインと呼ぶ60時間以上も0.7%・253人という結果です。
発生の濃さは配属で大きく変わります。
終業時間後に約60分以上の残業がある人の割合(看護体制別・一般病棟など主な区分を抜粋)
出典: 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」問10(回答35,933人)(2022年)
急性期の一般病棟7対1では55.8%が終業後60分以上残っているのに対し、15対1では23.0%、療養病棟では28.8%。同じ病院という枠の中でも、配属によって倍以上の開きがあります。さらに、残業を除いた拘束時間が9時間を超える日勤が「ある」人は25.3%。休憩が取れずに拘束が延びている分は、残業時間にも計上されません。
なお、この調査の回答者は約7割が国立・公立・公的病院の勤務者で、労働組合のある職場が中心です。診療所の実態を代表する数字ではない点は押さえておいてください。
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クリニックに移ると、残業はどれだけ減るのか
冒頭の表のとおり、診療所の時間外労働は月9.7時間で、病院の15.5時間より5.8時間少ない結果でした。年間に直すと約70時間の差です。申請されていない時間も3.1時間(32.0%)と病院の6.2時間より小さく、時間の長さと申請漏れの両方で条件が良く見えます。
ただし注意点が2つあります。ひとつは回答者が45人と少ないこと。診療所の全体像を示す数字としては弱く、施設ごとのばらつきは確実に大きいと考えるべきです。もうひとつは、月9.7時間はゼロではないということ。診療所でも月に10時間近い時間外労働が発生しており、「クリニック=定時で帰れる」という前提は成り立ちません。
診療所で働く看護師は194,665人と、就業看護師全体の14.3%を占めます(厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表2、2024年末)。受け皿としては十分な規模がある一方、その中で定時に帰れる職場を見分ける作業は自分でやるしかありません。年収がどう変わるかは看護師が夜勤なしでクリニックへ転職する現実で扱っています。
定時で帰れる職場を見分ける3つの手順
1. 診療終了時刻と終業時刻の差を数える
クリニックの残業は、たいてい診療終了後の片付け・記録・器材準備で発生します。
- 手順①:求人票の勤務時間(例 9:00〜18:00)と、施設サイトの診療時間(例 9:00〜18:00)を並べる
- 手順②:この2つが同じなら、最後の患者さんの対応が終わった時点ですでに終業時刻です。片付けの時間が勤務時間に入っていません
- 手順③:診療終了が17:30で終業が18:00なら、30分は片付けに充てられている設計だと読めます
- 手順④:差が0分または受付終了時刻しか書かれていない求人は、面接で「診療終了から退勤までの実際の流れ」を聞く
「残業ほぼなし」「残業月5時間程度」という記載を、そのまま実績値だと受け取ってしまうのが最も多い失敗です。この数字が申請ベースであれば、申請されていない時間は最初から含まれていません。病院では実際の時間外労働15.5時間に対し申請は9.3時間でしたから、同じ構造なら「月5時間」の裏に実際はその1.5倍以上がある可能性があります。確認すべきは平均値ではなく、その数字が何から集計されたかです。「その残業時間は、タイムカードの打刻からですか、それとも申請された時間の集計ですか」と聞けば、職場の管理のしかたまで見えてきます。答えに詰まる場合は、記録が残っていないサインでもあります。
2. 36協定と固定残業代を確認する
時間外労働をさせるには36協定の締結・届出が必要で、労働基準法により上限が定められています。
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 原則 | 月45時間・年360時間(時間外労働。休日労働は含まない) |
| 特別条項がある場合 | 時間外労働は年720時間以内 |
| 同上 | 時間外労働+休日労働は月100時間未満、2〜6か月平均で月80時間以内 |
| 同上 | 月45時間を超えられるのは年6か月まで |
出典: 厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(労働基準法第36条。違反には6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)
聞き方の見本はこうです。
⚠️ つまずきやすい落とし穴「36協定は締結されていますか。特別条項の有無と、直近の月平均の時間外労働時間を教えていただけますか」 「固定残業代がある場合、何時間分でいくらか、超過分は追加で支給されますか」
固定残業代を「残業代が最初から付いてくるお得な仕組み」と受け取るのは危険です。月30時間分の固定残業代が設定されていれば、それは30時間の残業を織り込んだ運営だという宣言でもあります。診療所の平均が月9.7時間であることを考えると、30時間分の設定はその職場の残業が長いことを示す手がかりになります。加えて、固定残業代を採用する求人は、若者雇用促進法に基づく指針により「固定残業代を除いた基本給の額」「時間数と金額の計算方法」「その時間を超えた分は追加で支払う旨」の3点を明示することが求められています。この3点がそろっていない求人票は、それ自体が確認すべきサインです。
3. 記録と片付けが誰の時間かを聞く
不払い労働の主な業務の1位は「記録」57.9%でした。ここが勤務時間内に収まる設計かどうかが分かれ目になります。
⚠️ つまずきやすい落とし穴「電子カルテの記録は、診療時間内に入力する運用ですか。診療終了後になることが多いですか」 「終業後の片付けや翌日の準備は、勤務時間に含まれていますか」 「時間外になったとき、申請は誰がどのタイミングで出す運用ですか」
面接で「残業はありますか」とだけ聞くと、「ほとんどないですよ」で会話が終わります。有無を聞けば有無しか返ってきません。聞くべきは運用です。「申請は誰がいつ出すのか」「打刻はどのタイミングか」を尋ねると、その職場が時間をどう管理しているかが具体的に見えてきます。申請を上司の承認制にしていて、しかも承認の基準が曖昧な職場では、申請しづらい空気が生まれやすくなります。逆に打刻と申請が連動している職場なら、申請漏れは起きにくい設計です。残業の多さは人の問題ではなく仕組みの問題であることが多いので、仕組みを聞くのが近道です。
よくある失敗
- 失敗例1:「残業ほぼなし」の表記を実績値だと思った → 何から集計した数字かを確認する。申請ベースなら実態はそれより長い可能性があります
- 失敗例2:固定残業代の時間数を見なかった → 30時間分なら、その職場は30時間の残業を前提にしています
- 失敗例3:診療時間と勤務時間を照らし合わせなかった → 両者が同じなら、片付けの時間が勤務時間に入っていません
- 失敗例4:残業だけを見て休日の条件を確認しなかった → 定時で帰れても休日が合わなければ予定は立ちません。看護師が土日休みの職場へ転職するにはもあわせてご覧ください
よくある質問
Q. 看護師の残業時間は平均どのくらいですか?
A. 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」図表41では、正規雇用フルタイム勤務者の1か月の時間外労働は全体平均15.1時間、病院15.5時間、診療所9.7時間でした。ただしこのうち申請された時間は全体で9.5時間にとどまり、5.6時間(37.1%)は申請されていません。
Q. クリニックに転職すれば残業はなくなりますか?
A. なくなるとは言えません。同じ調査で診療所の時間外労働は月9.7時間で、病院より5.8時間少ないものの、ゼロではありません。回答者も45人と少なく、施設ごとのばらつきは大きいと考えられます。診療終了時刻と終業時刻の差、固定残業代の時間数、記録を入力するタイミングを個別に確認してください。
Q. サービス残業が当たり前の職場かどうかは、面接でどう見分けますか?
A. 「残業はありますか」ではなく運用を聞きます。「時間外の申請は誰がいつ出す運用ですか」「打刻はどのタイミングですか」「記録は診療時間内に入力しますか」の3つが有効です。日本医療労働組合連合会の調査では不払い労働の主な業務の1位が「記録」57.9%で、記録をいつ書くかがそのまま申請の有無に直結しています。
定時で帰れる職場かどうか、条件の詰め方から相談できます
36協定や固定残業代の確認は、担当者を通すと聞きやすくなることがあります。
まとめ
- 時間外労働は病院で月15.5時間、診療所で9.7時間。差は月5.8時間、年約70時間です
- 病院では15.5時間のうち申請されたのは9.3時間。申請された分はほぼ全額支払われており、問題は「払われない」より前の申請されない6.2時間にあります
- 病院内でも配属差が大きく、終業後60分以上の残業がある人は一般病棟7対1で55.8%、15対1で23.0%です
- 見分ける順番は、①診療終了時刻と終業時刻の差 ②36協定と固定残業代の時間数 ③記録と片付けが勤務時間に入っているか。面接では有無ではなく運用を聞いてください
勤務条件全体の見直しは看護師が夜勤なしで転職する方法で整理しています。