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クリニック看護師を辞めたいとき|「給料が安いから」では説明できない本当の理由
目次
- 01「クリニックは給料が安い」を、就業先別のデータで検証する
- 02辞めたい理由が給与でないなら、たぶん「人数」
- 03辞めたい気持ちが出たときの3つの手
- 1. 「辞めたい」を「何を減らしたいか」に翻訳する
- 2. 少人数の職場では、相談の相手と順番を間違えない
- 3. 次を決める前に、いま手にしているものを数える
- 04クリニックから動くときによくある失敗例
- 054つの出口を、数字で比べる
- 06よくある疑問 Q&A
- Q. クリニックの給料は本当に安いのですか?
- Q. クリニックの人間関係がつらいのは、自分に問題があるからでしょうか?
- Q. 病院に戻ると、給料は上がりますか?
- Q. クリニックでの経験は、次の職場で評価されますか?
- 07まとめ
- あわせて読みたい記事
クリニックを辞めたいと思ったとき、多くの人がまず「給料が安いから」と言葉にします。でも、公的な調査を開くと少し違う姿が見えてきます。診療所で働く看護職員の基本給月額は病院より高く、賃金への満足度も病院の約1.8倍、時間外労働は病院の6割程度でした。
それでも辞めたいなら、原因は給与ではないところにあります。この記事では、就業先別の賃金・労働時間・満足度のデータで「安いから辛い」という説明を検証したうえで、クリニック特有の消耗がどこから来るのかを数字で示し、病院に戻る・別のクリニックへ移る・施設へ行く・訪問看護へ行くという4つの出口を整理します。この記事は「いまクリニックにいて辞めたい人」に向けたものです。 病院からクリニックへ移る側の話は日勤のみのクリニック転職にまとめています。
「クリニックは給料が安い」を、就業先別のデータで検証する
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」は、正規雇用フルタイムで働く看護職員の賃金を就業先別に集計しています。診療所と病院を並べると次のようになります。
| 項目 | 診療所 | 病院 | 訪問看護ステーション | 介護系サービス |
|---|---|---|---|---|
| 平均基本給月額(2025年1月) | 291,453円(n=71) | 283,304円(n=2,502) | 280,046円(n=637) | 282,972円(n=141) |
| 平均税込給与総額(2025年1月) | 393,454円(n=71) | 409,436円(n=2,502) | 383,262円(n=637) | 373,528円(n=141) |
| 2024年の平均年収 | 535.7万円(n=90) | 576.2万円(n=3,321) | 549.9万円(n=787) | 513.1万円(n=170) |
| 時間外労働時間(1か月・実績) | 9.7時間(n=45) | 15.5時間(n=1,680) | 15.8時間(n=419) | 11.3時間(n=88) |
| 賃金額に「満足」の割合 | 21.7%(n=106) | 11.8%(n=3,662) | 23.6%(n=1,042) | 21.1%(n=195) |
出典: 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」図表37・40・41・42。「満足」は「満足」と「やや満足」の合計。診療所は回答者数が少ないため参考値として読んでください。なお本調査は看護職員への自記式調査で、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の看護師平均年収524.7万円とは調査対象・方法が異なります。ここでは就業先どうしの比較に使います
読み取れることは3つあります。
1つ目。基本給は診療所のほうが高い。 291,453円と283,304円で、約8,000円の差です。「クリニックは基本給から低く抑えられている」という前提は、少なくともこの調査では成り立ちません。
2つ目。それでも年収では約40万円の差がつく。 535.7万円と576.2万円。基本給が高いのに年収で負けるということは、差がついているのは基本給以外の部分——つまり夜勤手当と賞与です。
3つ目。時間外労働は診療所のほうが大幅に短い。 9.7時間と15.5時間で、病院の約6割です。
診療所勤務の看護職員の1か月あたり時間外労働時間(病院は15.5時間)9.7時間
日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」図表41(2024年)
※ 差が見えるようグラフの起点は0万円ではありません。最大と最小の差は141.3万円で、バーの長さの比ほど離れていません。
ここで大事なのは、年収差の約40万円は「夜勤をしていない分」でもあるということです。病院に戻れば年収は上がる可能性がありますが、同時に月15.5時間の時間外と夜勤が戻ってきます。給与だけを理由に戻ると、辞めたかったものをまとめて取り戻すことになりかねません。
そして見逃せないのが満足度です。賃金額に「満足(満足+やや満足)」と答えた割合は、診療所21.7%に対し病院11.8%。診療所で働く人のほうが、賃金に納得している割合は高いのです。
つまり「クリニックだから給料が安くてつらい」という説明は、データ上そのままでは成り立ちません。あなたが辞めたい理由は、おそらく別のところにあります。
辞めたい理由が給与でないなら、たぶん「人数」
厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、一般診療所は105,207施設あり、そのうち無床が99,792施設(94.9%)です。一方、厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」では、2024年末時点で診療所に就業している看護師は194,665人、准看護師は76,541人でした。
単純に割り算してみます。
※ 差が見えるようグラフの起点は0人ではありません。最大と最小の差は0.7人で、バーの長さの比ほど離れていません。
実人員でも1施設あたり約2.6人、常勤換算なら約2.1人。これが「クリニックの人間関係がしんどい」と言われることの正体です。
病棟なら、苦手な先輩がいても勤務帯が分かれ、他チームに相談でき、師長という別の窓口があります。看護職員が2〜3人の職場には、そのどれもありません。 合わない人がいれば毎日その人と組みます。体調を崩せば代わりがいません。判断に迷っても、同じ職種で相談できる相手がその人しかいないこともあります。
日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)で、仕事の強い不満・悩み・ストレスの要因(上位2つ選択)を聞いた結果は、「仕事の量の問題」48.7%、「仕事の質の問題」31.8%、「職場の人間関係」22.2%、「夜勤」16.2%でした。病院を含む全体では人間関係は3番目ですが、逃げ場のない2〜3人の職場では、この22.2%の重みが病棟とは比較にならないという点が、クリニック特有の問題です。人間関係が主因の場合の進め方は人間関係で辞めたいと感じたときの対処法にまとめています。
もうひとつ、構造として知っておきたいことがあります。一般診療所の開設者は「医療法人」が47,711施設(45.3%)、「個人」が38,719施設(36.8%)で、この2つで8割を超えます。日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(回答3,440病院)の設置主体別の離職率を見ると、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は医療法人14.0%に対し公立8.0%、国立9.6%でした。病院のデータではありますが、同じ医療機関でも設置主体によって人の抜け方は大きく違うことがわかります。
「人数の少なさ」は、求人票からは読み取れない
看護職員が何人いるか、そのうち常勤は何人か、休むときは誰が代わるのか。クリニックの働きやすさはここでほぼ決まります。内部を知る担当者に数字で確認してください。
辞めたい気持ちが出たときの3つの手
1. 「辞めたい」を「何を減らしたいか」に翻訳する
少人数の職場では、不満が特定の人物に集中しやすくなります。人ではなく条件に翻訳してください。
- 手順: ①直近1か月で「しんどい」と感じた場面を5つ書き出す → ②それぞれを「人(特定の相手との関係)」「量(業務の多さ)」「範囲(本来の業務でないこと)」「先(この先の成長やキャリア)」の4つに分類する → ③いちばん多い分類を1つだけ選ぶ
分類せずに動くと、次のクリニックでも同じことが起きます。とくに「人」に分類される項目が多い場合は注意が必要です。2〜3人の職場では、相手が変わっても距離の近さそのものは変わらないからです。「範囲」が多い場合——受付、会計、清掃、在庫管理、レセプトの補助など看護以外の業務が積み上がっている場合は、同じクリニックでも診療科や規模を変えることで大きく改善する余地があります。「先」が多い場合、つまり「このまま続けても技術が落ちていくのでは」という不安が中心なら、クリニック内での解決はほぼ望めません。この場合だけは、環境を変える検討に進むのが現実的です。
2. 少人数の職場では、相談の相手と順番を間違えない
病院と違って、クリニックには看護部長も師長もいません。相談先は院長か事務長のどちらかになります。
- 見本(院長への切り出し方): 「最近、診療後の在庫管理と器材の洗浄で30分ほど残ることが週3回ほどあります。午前の空き時間に回す形にしてもよいでしょうか。診療の流れに影響が出そうなら、別の方法も考えます」
いちばん多い失敗は、同僚に先に相談してしまうことです。2〜3人の職場では話がその日のうちに全員へ伝わり、院長の耳には「辞めたがっている」という形だけが届きます。そこから引き止めと気まずさが同時に始まり、身動きが取れなくなります。順番は院長(または事務長)が先です。また、相談内容は「困っていること」ではなく「こう変えたい」という提案の形にしてください。少人数の職場では、院長自身が労務管理の専門家ではないことがほとんどです。問題を投げられても対応方法を持っていないため、話が止まります。具体的な代替案を添えると、同じ内容でも通る確率が変わります。
3. 次を決める前に、いま手にしているものを数える
クリニックを辞めると、給与以外にも失うものがあります。先に数えてください。
- 手順: ①現在の年収・月の時間外時間・通勤時間・土日の休みの回数・有給の取得実績を紙に書く → ②候補の職場について同じ5項目を聞く → ③1項目ずつ比べて、下がってもよい項目と下げられない項目に印をつける
「年収が上がるなら」で病院に戻ると、時間外が月9.7時間から15.5時間へ、つまり約1.6倍に増える可能性があります。夜勤も戻ります。逆に「夜勤がないなら」で介護系サービスへ移ると、平均年収は診療所535.7万円から513.1万円へ下がる計算になります。どちらが正しいという話ではなく、交換される項目を先に把握しておくかどうかの違いです。比べる項目を5つに固定してから求人を見ると、条件の見栄えに流されずに済みます。転職活動全体の段取りは看護師の転職の流れ、退職の切り出し方は看護師の退職の伝え方を参照してください。
クリニックから動くときによくある失敗例
- 失敗例1: 「給料が安いから」で理由を片づけた → 診療所の基本給月額は291,453円で病院の283,304円より高く、賃金への満足度も21.7%と病院の11.8%を上回ります。年収差の約40万円は夜勤手当と賞与の差です。理由を取り違えると、次の職場選びの基準も間違えます。
- 失敗例2: 同僚に先に相談した → 看護職員が2〜3人の職場では、その日のうちに全員へ伝わります。相談は院長か事務長が先です。
- 失敗例3: 年収だけを見て病院に戻った → 約40万円の上乗せと引き換えに、夜勤と月15.5時間の時間外が戻ります。何を取り戻すかを先に確認してください。
- 失敗例4: 「クリニックはどこも同じ」と考えて、別のクリニックを検討しなかった → 診療科、常勤の人数、レセプトや受付業務の分担、院長の方針によって、同じ「クリニック」でも働き方はまったく違います。残業の多いクリニックの見分け方は残業の多いクリニックからの転職にまとめています。
4つの出口を、数字で比べる
| 出口 | 平均年収の目安 | 1か月の時間外 | 夜勤 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| 病院に戻る | 576.2万円(n=3,321) | 15.5時間 | あり | 技術の維持・教育体制・キャリアの先が主な理由のとき |
| 別のクリニックへ移る | 535.7万円(n=90) | 9.7時間 | 原則なし | 人間関係や業務範囲が主な理由で、生活リズムは維持したいとき |
| 介護保険施設・介護系サービスへ | 513.1万円(n=170) | 11.3時間 | 施設により異なる | 生活支援や看取りに関心があり、人数のいる職場に戻りたいとき |
| 訪問看護ステーションへ | 549.9万円(n=787) | 15.8時間 | 原則なし(オンコールあり) | 1人で判断する裁量を求めていて、慢性疾患の管理経験があるとき |
出典: 年収・時間外は日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」図表40・41(正規雇用フルタイム勤務)。「夜勤」「向いているケース」は本サイトの整理で、具体的な条件は施設ごとに異なります
数字で見ると、診療所から移った場合に年収が上がるのは病院と訪問看護の方向です。ただし病院は時間外と夜勤が戻り、訪問看護は時間外15.8時間とオンコール対応が加わります。年収が上がる方向は、いずれも時間の負担が増える方向だと覚えておいてください。
介護保険施設や訪問看護への移動を具体的に考えている方は、介護施設の看護師を辞めたいと感じたときと訪問看護を辞めたいと感じたときで、それぞれの現場でどんな消耗が起きるかを先に確認しておくと、期待とのズレを防げます。理由の仕分け方全体は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法にまとめています。
よくある疑問 Q&A
Q. クリニックの給料は本当に安いのですか?
A. 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」では、診療所勤務者の平均基本給月額は291,453円で病院の283,304円より高く、平均年収は535.7万円で病院の576.2万円より約40万円低い結果でした。基本給が高いのに年収で下回るのは、夜勤手当と賞与の差によるものと考えられます。「安い」というより「夜勤の分がない」という表現のほうが実態に近いといえます。ただし診療所の回答者数は少ないため、参考値として読んでください。
Q. クリニックの人間関係がつらいのは、自分に問題があるからでしょうか?
A. 構造の影響が大きいと考えられます。診療所に就業する看護師194,665人・准看護師76,541人を一般診療所105,207施設で割ると、1施設あたり実人員で約2.6人、常勤換算で約2.1人という計算になります。勤務帯が分かれない、代わりがいない、相談できる同職種が限られるという条件は、個人の相性とは別に生まれるものです。
Q. 病院に戻ると、給料は上がりますか?
A. 同調査の平均で見ると年収は約40万円上がる計算になりますが、同時に時間外労働は月9.7時間から15.5時間へ増え、夜勤も戻ります。上がった分が何と引き換えなのかを先に確認してください。戻る場合は、病床規模や設置主体によって離職率が違う点も判断材料になります(日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」では2024年度の正規雇用看護職員の離職率が医療法人14.0%・公立8.0%)。読み方は病院の離職率の見方にまとめています。
Q. クリニックでの経験は、次の職場で評価されますか?
A. 評価されます。外来での問診と患者説明、処置の手際、検査の介助、院内の在庫・器材管理、予約や受付との連携は、別のクリニック、健診センター、外来部門、介護保険施設のいずれでも使う技術です。伝えるときは「クリニック勤務◯年」ではなく、診療科・1日の患者数・担当していた処置の範囲まで具体化してください。
同じ「クリニック」でも、常勤の人数と業務の範囲はまったく違う
看護職員の人数、レセプトや受付の分担、休むときの体制。この3点が違えば働き方は別物です。複数のサービスに同じ質問を投げて、答えの差を見てください。
まとめ
- 「クリニックは給料が安い」はデータ上そのままでは成り立たない。診療所の平均基本給月額291,453円は病院283,304円より高く、賃金への満足度も21.7%と病院の11.8%を上回る。年収差の約40万円は夜勤手当と賞与の差
- クリニック特有の消耗は人数から来る。診療所1施設あたりの看護職員は実人員で約2.6人、常勤換算で約2.1人。勤務帯が分かれず、代わりがおらず、相談できる同職種が限られる
- 出口は病院回帰・別のクリニック・施設や訪問看護の3方向。年収が上がる方向はいずれも時間の負担が増える方向なので、交換される項目を先に数える
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