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看護師が夜勤なしでクリニックへ転職する現実|年収差130万円の内訳と診療科選び
目次
- 01「夜勤がしんどい」は弱さじゃない
- 02病院とクリニック、何がどれだけ違うのか
- 03年収差130万円の内訳を分解する
- 04あなたはクリニック向き?—転職前の整理シート
- 05クリニック転職を成功させる3つのポイント
- 1. 診療科で「夜間対応が残るか」を見分ける
- 2. 売り手市場であることを、焦らない根拠にする
- 3. 「残業ほぼなし」の中身を確認する
- 06失敗例・よくあるNG
- NG① 「夜勤なし」だけで決めて、診療科の特性を調べなかった
- NG② 年収差を「夜勤手当の分だけ」で見積もった
- NG③ 求人票の定性表現を判断材料にした
- 07Q&A
- Q. クリニックに転職すると、必ず年収は下がりますか?
- Q. 夜勤手当がなくなる分だけ減るのではないのですか?
- Q. クリニックなら夜間に呼ばれることはありませんか?
- 08まとめ
夜勤なしでクリニックへ移ると、看護職員の年収は病院の540.8万円から診療所の410.6万円へ、平均で約130万円下がります(厚生労働省「第25回医療経済実態調査」令和6年度)。ただしこの差は夜勤手当だけでは説明できません。内訳を開くと賞与の差が38.8万円、給料(各種手当込み)の差が約91万円で、夜勤手当の全国目安(年約59万円)を引いてもまだ約32万円の開きが残ります。そしてもう1つ、「クリニック=夜間対応なし」も正確ではありません。この記事では、年収差の中身を分解したうえで、夜間対応が残る診療科の見分け方と、残業実態を面接で引き出す手順をまとめます。
「夜勤がしんどい」は弱さじゃない
「夜勤が辛いと感じるのは自分だけだろうか」と思っていませんか。データはそうではないと言っています。
日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)によると、看護師の79.2%が「辞めたい」と思いながら働いています(「いつも思う」24.0%+「ときどき思う」55.2%)。仕事を辞めたい主な理由(3つまで選択)では「夜勤がつらい」が23.6%で第4位に入ります。
「夜勤がつらい」を仕事を辞めたい理由に挙げた看護師の割合(第4位)23.6%
日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(2022年)
病棟の夜勤日数は、三交代で月平均7.2日、二交代で月平均4.3回。三交代では「ひと月9日以上」が39.8%を占めます。この頻度で睡眠サイクルを崩し続ければ、体が音を上げるのは当然のことです。
実際、勤務形態を変えると数字が動きます。同調査で「仕事を辞めたいといつも思う」割合は、日勤のみ17.4%に対し二交代(夜勤16時間以上)27.3%。「強い不満・悩み・ストレスがある」も日勤のみ54.8%に対し三交代69.6%です。夜勤から離れることには、実測できる効果があります。
病院とクリニック、何がどれだけ違うのか
判断材料を1つの表にまとめます。年収・残業・有給・夜勤という軸の違う項目を並べたものです。
| 比較項目 | 病院(一般病院・全体) | クリニック(一般診療所・全体) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 看護職員の年収(給料+賞与) | 540.8万円 | 410.6万円 | 厚生労働省「第25回医療経済実態調査」令和6年度 |
| うち賞与 | 105.2万円 | 66.4万円 | 同上 |
| 夜勤 | あり(三交代で月平均7.2日) | 原則なし(診療科により夜間対応あり) | 日本医療労働組合連合会 2022年 |
| 時間外労働(不払い含む) | 月20時間以上が19.4% | 統計なし(職場差が大きい) | 日本医療労働組合連合会 2022年 |
| 年次有給休暇 | 「10日以上」取得は50.8% | 統計なし(職場差が大きい) | 日本医療労働組合連合会 2022年 |
| 就業看護師の分布 | 69.5% | 14.2% | 厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例」2024年末 |
開設者別に開くと、同じ「クリニック」でも幅があります。
看護職員の平均年収(給料年額+賞与・令和6年度)
出典: 厚生労働省「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和6年度実績)
読み取ってほしいのは、「病院かクリニックか」より「どの開設者か」のほうが効いている場合があるということです。医療法人立の病院(476.6万円)と、医療法人以外の診療所(482.6万円)では、後者のほうが高くなっています。「病院を辞めたら必ず年収が落ちる」と一括りにせず、応募先の開設形態まで見て比べてください。
なお、この調査の「看護職員」には保健師・助産師・准看護師が含まれます。診療所は病院より准看護師の比率が高いため、平均値の差にはこの職種構成の違いも混ざっています。看護師個人の給与が丸ごと130万円下がる、という意味ではない点に注意してください。
年収差130万円の内訳を分解する
「130万円下がる」と言われても、何が減るのかが分からなければ対策が打てません。分解します。
① 賞与の差:38.8万円病院の看護職員の賞与は年105.2万円、診療所は66.4万円。差は38.8万円で、約130万円の約3割にあたります。クリニックは賞与の原資が診療報酬に直結するため、病院より少なく設定されている職場が多いのが実情です。求人票の「賞与年◯か月」は必ず確認してください。
② 給料(各種手当込み)の差:約91万円医療経済実態調査の「給料」には、扶養手当・時間外勤務手当・通勤手当など、労働の対価として支払われたものがすべて含まれます。夜勤手当もここに入ります。病院435.6万円に対し診療所344.2万円で、差は約91万円です。
③ そのうち夜勤手当で説明できるのは約59万円日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」によると、定額の夜勤手当を支給している病院の夜勤1回あたりの平均額は、二交代制11,470円、三交代制の深夜勤5,211円、準夜勤4,300円。二交代で月4.3回なら年約59万円です。
夜勤1回あたりの定額夜勤手当(2025年調査)
出典: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(定額支給病院の平均。二交代n=2,602/深夜勤n=771/準夜勤n=768)
つまり給料側の差約91万円のうち、夜勤手当が約59万円。残る約32万円は、基本給水準そのものと、前述の職種構成の違いです。 ここが「夜勤手当がなくなるだけだと思っていたのに、想像以上に減った」という誤算の正体になります。
対策は単純で、夜勤手当の減額分だけを計算して安心しないこと。求人票の「月給」と現職の「基本給」を比べ、賞与の月数も並べてください。
あなたはクリニック向き?—転職前の整理シート
クリニックが「正解」かどうかは人によって違います。次の項目は、自分の状況を言葉にするための整理シートです。
このシートは適性を判定するものではありません。転職サービスに相談するとき、この6項目を数字で答えられる状態にしておくと、話が一気に具体的になります。
クリニックの内部情報は、外から確認してもらえます
残業の実態・有給取得率・スタッフの定着率は、求人票からは読めません。複数の転職サービスを比べて、職場訪問をしている担当を選ぶのが近道です。
クリニック転職を成功させる3つのポイント
1. 診療科で「夜間対応が残るか」を見分ける
クリニックの働きやすさは診療科で大きく変わります。
- 整形外科・皮膚科・眼科: 定期通院の患者が中心で業務が安定しやすい。急変が少なくルーティン中心
- 内科・小児科: 季節性があり、感染症の流行期やアレルギーの時期は繁忙になりやすい
- 透析クリニック: 夜間帯の透析を実施している施設では、遅番・準夜帯の勤務が組まれることがある
- 在宅療養支援診療所・訪問看護併設: 24時間対応の体制をとるため、オンコール(夜間携帯待機)が発生しやすい
「夜勤なし」と書かれていても、夜間対応が完全にないとは限りません。確認は次の順番で進めます。
- 求人票の「夜間・緊急対応」「オンコール」の項目を読む(記載がなければ必ず質問する)
- 転職サービスの担当者に「この求人の夜間対応の実態を確認してほしい」と依頼する
- 面接で「夜間対応が発生する頻度と、そのときの対応範囲」を聞く
- 内定時の労働条件通知書に、夜間対応の有無が明記されているかを確認する
求人票の「夜勤なし」は、シフトとしての夜勤帯勤務がないことを意味するだけです。オンコール(夜間携帯待機)や、遅番として20時台まで残る勤務は「夜勤」に数えられていないことがあります。とくに在宅療養支援診療所や訪問看護を併設するクリニックは、24時間の連絡体制が制度上の要件になっているため、誰かが電話を持つ必要があります。参考までに、夜間携帯待機の全国的な実態を見ると、待機した月に実際に出動した回数は「0回」が63.8%、電話を受けた1日の平均本数も「0本」が58.6%でした(日本医療労働組合連合会 2022年)。出動そのものは多くありません。それでも当番の晩は飲酒も遠出もできず、生活は確実に制約されます。判断すべきは「呼ばれるか」ではなく「その晩を自分の生活に組み込めるか」です。面接では「オンコールの有無」だけでなく「月あたりの当番回数」「実際の出動回数の平均」「待機手当と出動手当の額」まで、数字で聞いてください。
2. 売り手市場であることを、焦らない根拠にする
厚生労働省「職業安定業務統計」によると、看護師・准看護師の有効求人倍率(パートタイムを含む常用労働者)は、職業計を大きく上回って推移しています。
| 年度 | 看護師・准看護師 | 全職業計 |
|---|---|---|
| 2018年度 | 2.35倍 | 1.46倍 |
| 2019年度 | 2.31倍 | 1.41倍 |
| 2020年度 | 2.05倍 | 1.01倍 |
| 2021年度 | 2.12倍 | 1.05倍 |
| 2022年度 | 2.20倍 | 1.19倍 |
出典: 厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」(第195回労働政策審議会職業安定分科会 参考資料、令和5年9月1日)。原資料は厚生労働省「職業安定業務統計」
2022年度で2.20倍。求職者1人に対して2件以上の求人がある状態で、全職業計の1.19倍のおよそ1.8倍です。慌てて条件を妥協する必要はない、というのがこの数字の実務的な意味です。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:倍率が高くても「条件の良い求人」は競争になります2.20倍はあくまで全体の平均です。「残業月10時間以下・土日祝完全休み・夜間対応一切なし・年収450万円以上」といった条件がそろう求人には、当然ながら応募が集まります。倍率の高さを過信して「いつでも決まる」と活動を先送りにしたり、志望動機を用意しないまま応募したりすると、あっさり見送りになります。とくにクリニックは採用人数が1〜2名と少なく、院長との相性が採否を左右する場面もあります。売り手市場が保証してくれるのは「どこかには入れる」ことであって、「行きたい職場に入れる」ことではありません。職務経歴書に外来対応・採血・処置の経験件数を具体的に書き、面接では「なぜ病棟ではなくこの科なのか」を自分の言葉で言えるように準備してください。市場が有利なうちに準備を整えるほど、選べる範囲は広がります。
3. 「残業ほぼなし」の中身を確認する
クリニックの求人票にある「残業ほぼなし」は、診療時間を基準にした表現であることが少なくありません。実際に何時に帰れるかは別の話です。
面接での聞き方の見本: 「直近1か月で、看護師の方の平均退勤時刻は何時ごろでしたか。曜日や時期で差はありますか」
「ほとんどありません」で終わらせず、時刻で答えてもらうのがコツです。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:診療終了=退勤ではありません「18時診療終了、残業ほぼなし」と書かれたクリニックでも、実際には診療後に電子カルテの入力、器具の洗浄と滅菌、翌日の物品準備、患者への電話折り返しなどが続き、退勤が19時を回る職場があります。これらを「残業」として計上しているかどうかは施設ごとにばらばらで、そもそもタイムカードが診療終了時刻で押される運用になっていることさえあります。求人票の残業時間がどの業務までを含んだ数字なのかを、応募前に転職サービス経由で確認してください。あわせて「最終受付時刻」と「診療終了時刻」の差、そして「片付けを含めた実際の退勤時刻」の3つを分けて聞くと、実態が立体的に見えてきます。職場訪問を行っている転職サービスなら、スタッフが何時ごろ建物から出ているかまで把握している場合があります。
失敗例・よくあるNG
NG① 「夜勤なし」だけで決めて、診療科の特性を調べなかった
夜間対応の有無だけを見て決めた結果、感染症の流行期に外来が回らず、以前の病棟勤務と変わらない疲弊を感じたというケースがあります。クリニックの負荷は「夜勤の有無」ではなく「1日あたりの患者数と人員配置」で決まります。見学時に、繁忙時間帯の待合の様子と、その時間の看護師の人数を必ず見てください。
NG② 年収差を「夜勤手当の分だけ」で見積もった
夜勤手当の年額(二交代で約59万円)だけを計算して転職し、実際には賞与も38.8万円分下がって、想定の倍近く減っていたというケースです。賞与・基本給・手当の3つを分けて比較することが唯一の予防策になります。求人票の「年収例」ではなく、「基本給」「賞与◯か月」「各種手当の内訳」を個別に確認してください。
NG③ 求人票の定性表現を判断材料にした
「アットホームな職場」「チームワークを大切にしています」といった表現は、実態を示す情報ではありません。判断に使えるのは、スタッフの平均在籍年数、直近1年の採用・退職人数、看護師の人数と1日の患者数の比といった数えられる情報です。転職サービスの担当者には、この3点を確認してもらってください。
Q&A
Q. クリニックに転職すると、必ず年収は下がりますか?
A. 平均で見れば下がります。厚生労働省「第25回医療経済実態調査」(令和6年度)では、看護職員の年収は一般病院の全体で540.8万円、一般診療所の全体で410.6万円でした。ただし開設者による幅が大きく、医療法人以外の診療所(482.6万円)は医療法人立の病院(476.6万円)を上回っています。応募先の開設形態まで見て比較してください。
Q. 夜勤手当がなくなる分だけ減るのではないのですか?
A. それだけでは説明できません。約130万円の差のうち、賞与の差が38.8万円、給料(各種手当込み)の差が約91万円です。夜勤手当の全国目安(二交代で年約59万円)を引いても、約32万円の開きが残ります。基本給水準の違いと、診療所で准看護師の比率が高いという職種構成の違いが背景にあります。
Q. クリニックなら夜間に呼ばれることはありませんか?
A. 診療科と体制によります。在宅療養支援診療所や訪問看護を併設するクリニックは24時間の連絡体制が要件となるため、オンコールが発生しやすい形態です。夜間帯の透析を行う施設では遅番勤務が組まれることもあります。求人票に記載がなければ、必ず面接で確認してください。
夜勤なしのクリニック求人、条件を数字にしてから探しましょう
「夜間対応なし・年収◯万円以上・残業月◯時間以内」まで固めて伝えると、紹介の精度が変わります。相談は無料なので、複数のサービスを比べてみてください。
まとめ
- 夜勤の負担は個人の弱さではない: 三交代で月平均7.2日の夜勤があり、23.6%が「夜勤がつらい」を辞めたい理由に挙げています。日勤のみに変えると「いつも辞めたい」は27.3%から17.4%へ下がります
- 年収差約130万円の中身を知る: 賞与38.8万円+給料約91万円。夜勤手当(年約59万円)だけでは説明できません。賞与の月数と基本給を分けて比較してください
- 「病院かクリニックか」より開設者で見る: 医療法人以外の診療所482.6万円は、医療法人立の病院476.6万円を上回ります
- 「夜勤なし」は「夜間対応なし」ではない: 在宅療養支援診療所や訪問看護併設ではオンコールが発生します。当番回数・出動回数・手当額まで数字で確認しましょう
夜勤なしの選択肢を職場タイプごとに比べたい方は看護師が夜勤なしで転職する方法、東京での求人事情は看護師が東京で夜勤なし転職を実現する方法をご覧ください。子育てとの両立を軸に探している方は看護師が子育てと両立して夜勤なしで働く方法が参考になります。退職の切り出し方は看護師の退職の伝え方、面接対策は看護師の面接質問と答え方で扱っています。
参考文献
- 厚生労働省「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」(令和7年11月26日公表・令和6年度実績)(2026-09-08 閲覧)
- 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(2023年5月11日記者発表資料)(2026-09-08 閲覧)
- 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果(2026年3月31日公表)(2026-09-08 閲覧)
- 厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」(第195回労働政策審議会職業安定分科会 参考資料・令和5年9月1日)(2026-09-08 閲覧)
- 厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(2026-09-08 閲覧)