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看護師が人間関係で辞めたいと感じたときの対処法|データで見る原因と3つの選択肢

ナースの休憩室 編集部2026年9月20日 更新13分で読めます
目次

人間関係で辞めたいと感じるのは、性格の相性の問題ではありません。日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)によると、パワーハラスメントを受けたことが「ある」看護職員は34.5%。そして、その相手として最も多いのは「看護部門の上司」で60.1%でした。3人に1人以上が経験し、その6割が上司からという構図は、個人の相性ではなく権力構造の問題であることを示しています。この記事では、まず自分の状況が法令上のパワーハラスメントに当たるかを確かめる方法を示し、そのうえで記録・相談・異動・転職という4つの手順と、それぞれの落とし穴を整理します。

まず、起きていることをデータの中に置いてみる

看護師の79.2%が「辞めたい」と思いながら働いています(「いつも思う」24.0%+「ときどき思う」55.2%)。仕事を辞めたい主な理由(3つまで選択)では「職場の人間関係」が20.1%で6位に入ります。

パワーハラスメントを受けたことが「ある」看護職員の割合(よくある6.1%+ときどきある28.4%)34.5%

日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(2022年)

より直接的なのが、ハラスメントの実態です。同調査では、パワハラを受けたことが「よくある」6.1%と「ときどきある」28.4%を合わせて34.5%。セクハラも「よくある」1.0%と「ときどきある」14.0%で15.0%でした。

そして「誰から受けたか」を見ると、構図がはっきりします。

パワーハラスメントを受けた相手(該当するものすべて)

看護部門の上司
60.1%
医師
39.9%
同僚
21.4%
患者
20.5%

出典: 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)

パワハラの相手は「看護部門の上司」が60.1%、次いで「医師」39.9%。上位2つはいずれも指示を出す側の立場です。同僚は21.4%にとどまります。「気の合わない人がいる」という話ではなく、指揮命令関係のなかで起きている、というのがデータの示す姿です。

年齢別に見ると、さらにはっきりします。上司からのパワハラを受けた割合は、40〜50歳代で53.0〜56.9%であるのに対し、「25〜29歳」70.7%、「20〜24歳」78.7%。若いほど高く出ています。経験が浅い時期ほど、立場の差が言動に表れやすいということです。

「自分の受け止め方が弱いのかもしれない」と考える必要はありません。 起きていることは、統計的にも構造的にも珍しくない出来事です。


それは法律上の「パワーハラスメント」かもしれない

我慢するか辞めるかの二択で考える前に、確かめてほしいことがあります。職場のパワーハラスメントには法律上の定義があり、事業主には防止措置が義務づけられているという事実です。

厚生労働省の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)によれば、職場のパワーハラスメントとは、次の3つの要素をすべて満たす言動を指します。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

そのうえで、代表的な行為は6つの類型に整理されています。

類型内容
① 身体的な攻撃暴行・傷害
② 精神的な攻撃脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
③ 人間関係からの切り離し隔離・仲間外し・無視
④ 過大な要求業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
⑤ 過小な要求業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えない
⑥ 個の侵害私的なことに過度に立ち入ること

出典: 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)

看護の現場でよく語られる「引き継ぎで必要な情報を教えてもらえない」は④の仕事の妨害に、「挨拶を無視される」「特定の人だけ声をかけられない」は③の人間関係からの切り離しに当たり得ます。日常的に「よくあること」と処理されている行為が、指針の類型に該当する場合があるということです。

そして重要なのが、事業主側の義務です。同じ指針は、事業主が講じなければならない措置として次を挙げています。

  • パワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
  • 相談に応じ適切に対応するために必要な体制を整備すること(相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること)
  • 事後に迅速かつ適切に対応すること
  • 相談者・行為者のプライバシーを保護し、相談したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いをしない旨を定めて周知すること

つまり、あなたの職場には相談窓口が置かれているはずであり、相談したことを理由に不利益な扱いをすることは認められていません。「言ったら立場が悪くなる」という不安は現実的なものですが、それは制度上、起きてはならないこととされているという前提を持って動けます。


手順1:起きていることを記録する

どの選択肢を取るにせよ、出発点は記録です。感情ではなく事実を残します。

記録に含める項目:

  • 日時(何月何日の何時ごろか)
  • 場所(ナースステーション、廊下、カンファレンス室など)
  • 相手(役職と、氏名は自分が分かる表記で)
  • 言動の内容(できるだけ発言をそのまま。要約しない)
  • その場にいた人(立会人がいたかどうか)
  • 業務への影響(引き継ぎが受けられず◯分遅れた、など)

記入例: 「9月3日 16:20 ナースステーション。A主任から、他スタッフ3名の前で『何回言ったら分かるの、あなたのせいで回らない』と約5分間叱責を受けた。立会人:Bさん、Cさん。その後の申し送りで担当患者の情報が共有されず、記録の確認に20分を要した」

⚠️ つまずきやすい落とし穴:記憶が薄れてから、まとめて書こうとする

多くの人は、限界に近づいてから「これまでのことを整理しよう」と考えます。ところがその時点では、いつ・誰が・どう言ったかの細部がすでに曖昧になっています。「毎日のようにきつく言われました」という説明は、相談を受ける側にとっては判断材料になりません。逆に、日時と発言が具体的に並んだ記録は、それだけで状況の深刻さを伝えます。書くのは1件につき2〜3行で十分なので、その日のうちにスマートフォンのメモに残す習慣にしてください。職場のパソコンや業務用端末ではなく、自分の私物に残すこと。退職時にアクセスできなくなるのを防ぐためです。あわせて、シフト表・勤務記録・業務日誌など、その日そこにいたことを示す資料も手元に控えておくと、記録の裏づけになります。なお、会話の録音は、自分が当事者である会話であれば一般に問題になりにくいとされていますが、就業規則で禁止されている場合や、患者の情報が含まれる場面では扱いが変わります。実施の前に、労働局や労働組合など外部の窓口で確認しておくと安全です。


手順2:相談先を「職場の中」と「外」の両方持つ

職場の中の相談先

社内の相談窓口: 前述のとおり、事業主には相談窓口を定めて周知する義務があります。就業規則やイントラネットで、窓口の担当部署を確認してください。

産業医: 常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任が義務づけられています(労働安全衛生法第13条)。多くの病院が該当します。申し込み窓口は人事部や健康管理室であることが一般的です。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:師長を最初の相談相手にしてしまう

「まず直属の上司に」と考えるのは自然ですが、データが示すとおりパワハラの相手として最も多いのは看護部門の上司(60.1%)です。師長が当事者である、あるいは当事者と近い関係にある場合、相談の内容がそのまま相手に伝わり、無視や業務上の嫌がらせが強まることがあります。段階を踏むこと自体が目的ではないので、問題の深刻さに応じて、最初から看護部長・人事部門・社内の相談窓口へ持っていく選択肢を持っておいてください。 相談する際は、手順1の記録を印刷か画面で示しながら話すと、感情論として処理されにくくなります。また、産業医に相談する場合は、冒頭で「今日話した内容のうち、どこまでが職場に共有されますか」と確認してから本題に入ってください。産業医には守秘義務がありますが、就業上の措置が必要と判断された事項は事業者に伝わることがあります。何が伝わるかを先に把握しておけば、話す範囲を自分で決められます。

職場の外の相談先

職場の中で出口がふさがっている場合は、外部の公的窓口があります。

  • 総合労働相談コーナー(各都道府県労働局・労働基準監督署内に設置): あらゆる分野の労働問題について無料で相談できます
  • 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室): ハラスメントや不利益取扱いに関する相談・助言・指導を担当します
  • こころの耳(厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト): 電話・メール・SNSの相談窓口があります

手順3:部署異動を申し出る

特定の人や病棟の雰囲気が原因なら、同一法人内の異動で解決する場合があります。看護師としてのキャリアが途切れず、退職にともなう手続きも不要です。

進め方:

  1. 異動希望の申し出先を決める(師長が当事者に近い場合は、看護部長または人事部門へ直接)
  2. 理由は感情ではなく業務への影響で伝える(見本: 「現在の病棟で情報共有が滞る場面が続いており、患者対応に支障が出ています。環境を変えて業務に集中したいと考えています」)
  3. 希望する異動先を具体的に示す(病棟名・外来・訪問看護部門など)
  4. 申し出から回答まで数週間かかることを前提に、並行して外部の求人情報の収集も始めておく
⚠️ つまずきやすい落とし穴:異動が「先送り」で終わる

異動の希望を出したあと、「今は人員が足りないから、次の期に検討する」と言われたまま数か月が過ぎるのはよくあることです。悪意がなくても、シフトを組む側にとって人を動かすのは負担が大きく、優先順位が上がりにくいからです。防ぐには、申し出の時点で時期を数字で置くのが有効です。「次の異動時期はいつですか」「その判断はいつごろ伺えますか」と、回答の期限を確認して記録に残してください。あわせて、口頭ではなくメールや所定の希望調査票など、記録が残る形で出しておくこと。そして最も大切なのは、異動の返事を待つあいだも外の選択肢を並行して見ておくことです。異動が通ればそれでよく、通らなければ次の手がすでに動いている——この状態を作っておくと、返事の遅れが焦りに変わりにくくなります。


外の選択肢を並行して見ておくと、待つ時間が楽になります

職場の人間関係の実態(定着率・師長の人柄・スタッフの雰囲気)は求人票には載りません。職場訪問をしている転職サービスを複数比べて、情報収集から始めてみてください。


手順4:転職を検討するときの見極め方

異動も相談も機能しない場合、環境そのものを変えるのが根本的な解決になります。大切なのは「次の職場で繰り返さない」ことです。

確認すべきは、求人票に載らない3点です。

  1. 定着率を数字で聞く: 「直近1年間の看護師の採用人数と退職人数を教えていただけますか」。人数で聞くと、率だけでは見えない出入りの激しさが分かります
  2. 転職サービスの担当者に内部情報を求める: 職場訪問をしている担当なら、師長のマネジメントの傾向やスタッフの年齢構成を把握していることがあります
  3. 職場見学で観察する: すれ違うスタッフ同士が挨拶をするか、ナースステーションの声のトーン、掲示物や物品の整理状態。見学時の空気は、入職後もおおむね続きます

「どこでも同じ」と言われることがありますが、これは事実ではありません。前掲の調査でも、仕事に強いストレスが「ある」割合は、日勤のみで54.8%、三交代で69.6%と勤務形態で15ポイント近く違い、休憩が「きちんと取れている」職場では49.1%、「全く取れていない」職場では87.6%と、40ポイント近い開きがあります。職場によって数字は明確に変わります。

離職率の全体像は看護師の離職率はどれくらい?、転職の進め方全体は看護師の転職の流れで解説しています。


失敗例・よくあるNG

失敗例1: 怒りのまま即日退職・無断欠勤してしまう

「もう限界、明日から行かない」という気持ちは理解できます。ただ、無断欠勤や手続きを踏まない退職は、雇用保険の給付の扱いや次の職場への説明で不利に働くことがあります。就業規則の退職予告期間を確認し、書面で届け出るのが基本です。出勤が難しい状態なら、師長ではなく人事部門へ電話し、休職の手続きを先に確認する方法もあります。

失敗例2: 記録を残さないまま相談し、「様子を見ましょう」で終わる

事実の記録がないまま相談すると、「認識の違い」として処理されがちです。手順1の記録を持って臨むだけで、話の受け取られ方が変わります。

失敗例3: 焦って最初の内定を受け、また同じ環境に入る

「早く離れたい」という気持ちから、定着率も雰囲気も確認せずに決めてしまうケースです。転職後にまた人間関係で消耗すると、時間も精神的な余力も二重に失われます。見学と定着率の確認は、急いでいるときほど省かないでください。


よくある質問

Q. 人間関係が理由の転職は、面接でどう説明すればよいですか?

A. 「人間関係が辛かった」とだけ伝えると、面接官が「同じことが起きるのでは」と受け取る可能性があります。事実を述べたうえで、次に何を求めているかに軸足を置くのが実務的です。見本: 「前職では情報共有が滞りやすく、患者対応に支障が出る場面がありました。チームで確認し合える体制のある職場で働きたいと考えています」。転職サービスを使っている場合は、担当者と表現を一緒に整理しておくと安心です。

Q. 「どこでも同じ」と言われました。本当ですか?

A. データの上では成り立ちません。強いストレスが「ある」割合は、休憩がきちんと取れている職場で49.1%、全く取れていない職場で87.6%(日本医療労働組合連合会 2022年)。職場の条件によって40ポイント近く動きます。「どこでも同じ」は、引き止めたい側の言葉であることが少なくありません。

Q. 相談したことで不利益な扱いを受けたら、どうすればよいですか?

A. 厚生労働省の指針は、ハラスメントの相談等を理由として解雇その他の不利益な取扱いをしない旨を定め、労働者に周知することを事業主の義務としています。実際に不利益な扱いを受けた場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や、労働局・労働基準監督署内の総合労働相談コーナーが相談先になります。相談の際も、手順1の記録が判断材料になります。


今の職場だけが選択肢ではないことを、数字で確かめてみませんか

定着率・スタッフ構成・見学の可否——確認したい項目を先に決めて相談すると、比較がしやすくなります。相談は無料なので、複数のサービスを比べてみてください。

まとめ

  • これは相性の問題ではない: パワハラを受けたことが「ある」看護職員は34.5%、相手の60.1%が看護部門の上司、39.9%が医師。指揮命令関係のなかで起きています
  • 法律上の定義と、事業主の義務がある: 3要素をすべて満たす言動がパワーハラスメントで、「無視」「仕事の妨害」も6類型に含まれます。事業主には相談窓口の整備義務があり、相談を理由とする不利益な取扱いは認められていません
  • 最初にやることは記録: 日時・場所・相手・発言・立会人・業務への影響。その日のうちに、私物のメモに残してください
  • 相談先は中と外の両方を持つ: 社内の相談窓口・産業医(常時50人以上の事業場は選任義務)に加え、総合労働相談コーナーや都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)があります
  • 「どこでも同じ」は事実ではない: 休憩の取れる職場と取れない職場で、強いストレスの割合は40ポイント近く違います

メンタルの不調が出てきている方は看護師がうつ・メンタル不調で転職を考えるときの進め方、1年目でつらさを感じている方は看護師1年目で辞めたいと思ったら読む記事、退職の伝え方は看護師の退職の伝え方をご覧ください。

悩みの種類別の対処法は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法まとめにまとめています。

参考文献

  1. 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(2023年5月11日記者発表資料)2026-09-08 閲覧)
  2. 厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)2026-09-08 閲覧)
  3. 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」2026-09-08 閲覧)
  4. 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果(2026年3月31日公表)2026-09-08 閲覧)
  5. 厚生労働省「こころの耳」働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト2026-09-08 閲覧)