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看護師がうつ・メンタル不調で転職を考えるときの進め方|休職・傷病手当金と職場選び
目次
- 01「自分が弱いから」ではないことを、データで確認する
- 02環境が変わると、数字がここまで変わる
- 03動く前に「備える」——休職と傷病手当金
- 休職制度
- 傷病手当金
- 公的な相談先
- 04無理なく転職活動を進める3つのコツ
- ① 最初の連絡で「ペース」を条件として伝える
- ② 求人は「心理的負荷が低い職場」を軸に選ぶ
- ③ 「情報収集フェーズ」で止めておいていい
- 05失敗例・よくあるNG
- NG①:体調が最も悪いタイミングで「逃げるように」決める
- NG②:面接で過去の経緯を詳しく話しすぎる
- NG③:「どこでも同じ」と諦めて動かない
- 06Q&A
- Q. 休職歴があると転職で不利になりますか?
- Q. 転職と休職、どちらを先にすべきですか?
- Q. 看護師の離職率は他の職業より高いのですか?
- 07まとめ
体調がつらいときの転職は、「休む → 備える → 動く」の順番で構いません。急いで職場を決めると、入職後にもう一度同じところへ戻ってしまうことがあるからです。そして知っておいてほしいことがもう1つ。看護師が強いストレスを感じる要因のうち、「仕事への適性の問題」を挙げた人は11.5%にとどまり、上位は「仕事の量」48.7%、「仕事の質」31.8%でした(日本医療労働組合連合会 2022年)。つらさの主因は、あなたの適性ではなく仕事の量と質にあります。 この記事では、それをデータで確認したうえで、休職と傷病手当金の要件、公的な相談窓口、そして心理的負荷の低い職場の選び方を整理します。
「自分が弱いから」ではないことを、データで確認する
日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)によると、看護師の79.2%が「辞めたい」と思いながら働いています(「いつも思う」24.0%+「ときどき思う」55.2%)。
「辞めたい」と思いながら働いている看護師の割合79.2%
日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(2022年)
同じ調査で、仕事に「強い不満、悩み、ストレスがある」と答えた人は65.4%。その要因(上位2つを選択)は次のとおりでした。
強い不満・悩み・ストレスの要因(上位2つを選択)
出典: 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)
注目してほしいのは、最下位が「仕事への適性の問題」(11.5%)だということです。つらいとき、人はまず「自分が看護師に向いていないのでは」と考えがちですが、実際にそう答えた人は1割強にとどまります。大多数が挙げているのは、量(48.7%)と質(31.8%)——つまり、どれだけ抱えているかと、どんな仕事の仕方を強いられているかです。
背景も孤立した話ではありません。同調査では、職場にメンタル障害で休んでいたり治療を受けたりしている職員が「いる」と答えた人が40.6%。4割が、そうした職場で働いています。健康について「不安がある」と答えた人は合計66.8%(不安55.8%+大変不安8.3%+病気がち2.7%)で、「健康である」は33.2%にとどまりました。
環境が変わると、数字がここまで変わる
「自分の受け止め方の問題では」と考えてしまう方に、いちばん見てほしいのがこの数字です。同じ調査を条件別に開くと、「強い不満・悩み・ストレスがある」割合は環境によって倍近く動きます。
| 職場の条件 | 「強いストレスがある」割合 |
|---|---|
| 1か月の時間外労働が「なし」 | 41.3% |
| 同「5〜10時間未満」 | 65.2% |
| 同「10〜20時間未満」 | 71.8% |
| 同「30時間以上」 | 80%超 |
| 日勤の休憩が「きちんと取れている」 | 49.1% |
| 同「あまり取れていない」 | 80.1% |
| 同「全く取れていない」 | 87.6% |
| 勤務形態が「日勤のみ」 | 54.8% |
| 同「三交代」 | 69.6% |
出典: 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)【問28 時間外労働別・休憩時間別・勤務形態別クロス集計】
時間外労働がない人と30時間以上の人で約39ポイント、休憩がきちんと取れている人と全く取れていない人で38.5ポイント。同じ職業、同じ資格でも、置かれた環境でここまで違います。
「仕事を辞めたいといつも思う」割合でも同じことが起きています。看護のやりがいを「強く感じる」人は7.4%、「まったく感じない」人は63.1%。8倍以上の開きです。休憩が全く取れていない場合の「いつも辞めたい」は、日勤で43.4%、二交代の休憩で47.7%に跳ね上がります(きちんと取れている場合は20%前後)。
この差は、あなたの心の強さではなく、人員配置と業務量が作っています。離職率のデータについては看護師の離職率はどれくらい?で詳しく扱っています。
動く前に「備える」——休職と傷病手当金
順番として、体調がつらいときにいきなり転職活動を始める必要はありません。まず経済的な足場を確認します。
休職制度
休職は、そのために就業規則に置かれている制度です。「休むと迷惑をかける」と感じる方は多いのですが、無理を続けた結果、回復までにかえって長い時間がかかることもあります。まずは就業規則で、休職できる期間と、その間の給与の扱い(無給か一部支給か)を確認してください。
傷病手当金
休職中に給与が出ない場合、健康保険から傷病手当金を受け取れることがあります。全国健康保険協会(協会けんぽ)が示す支給の条件は次の4つです。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間について給与の支払いがないこと
支給額は標準報酬日額(直近12か月の標準報酬月額の平均÷30)の3分の2、支給期間は支給を開始した日から通算して1年6か月です。
3つ目の「連続する3日間」(待期)には注意が必要です。協会けんぽの説明によれば、連続して2日休んだ後、3日目に出勤した場合、待期3日間は成立しません。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:「辞めてから考えよう」で手当を取り逃がすつらさが限界に達すると、「とにかく辞めてしまいたい」という気持ちが先に立ちます。ところが、在職中に休職して傷病手当金を受け取る道と、先に退職してしまう道では、その後の選択肢がまったく変わります。傷病手当金は在職中に支給要件(待期3日を含む4日以上の労務不能、給与の不支給)を満たしていることが起点になるため、要件を満たす前に自己都合で退職してしまうと、受け取れたはずの給付を失うことがあります。加えて、退職後の雇用保険の基本手当は「働ける状態にあること」が前提であり、療養が必要な状態では受給できません(受給期間の延長申請という手続きがあります)。つまり、退職のタイミングを1か月ずらすだけで、手元に残るお金と回復に使える時間が大きく変わり得るわけです。判断する前に、①勤務先の就業規則で休職期間と給与の扱いを確認する、②加入している健康保険(協会けんぽか健康保険組合か)の窓口に傷病手当金の要件を問い合わせる、③ハローワークで受給期間延長の手続きを確認する——この3つを済ませてから退職日を決めてください。手続きの前後関係だけで、生活の余裕がまったく違ってきます。
公的な相談先
判断を1人で抱えないための窓口として、公的なものがあります。
- こころの耳(厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト): 電話・メール・SNSの相談窓口が設けられています
- 産業保健総合支援センター(各都道府県に設置): 職場の健康管理に関する相談を受け付けています
- 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室): ハラスメントや不利益取扱いに関する相談窓口です
相談することは、何かを決めることとは別です。話を聞いてもらうだけでも選択肢のひとつになります。
人間関係が主な要因になっている場合は看護師が人間関係で辞めたいときの対処法、1年目でつらさを感じている場合は看護師1年目で辞めたいと思ったら読む記事もあわせてご覧ください。
体調に不安があっても、情報を集めるだけなら今日からできます
「まだ転職すると決めていない」「連絡は週1回にしてほしい」と最初に伝えて構いません。複数の転職サービスを比べて、ペースを尊重してくれる担当を選びましょう。
無理なく転職活動を進める3つのコツ
① 最初の連絡で「ペース」を条件として伝える
体調面の事情を隠す必要はありません。むしろ、最初に伝えたほうが的外れな求人が減ります。ただし、伝えるべきは症状の詳細ではなく、求める条件と進め方です。
初回の連絡で伝える文面の見本: 「現在は体調を整えながら情報収集をしている段階で、転職は数か月先を想定しています。連絡は週1回程度、メールでお願いできますか。条件は残業月10時間以内・夜勤なし・急変対応の少ない職場です」
⚠️ つまずきやすい落とし穴:「急かされている」と感じたときに黙ってしまう「体調に不安がある」と伝えたのに、次々と求人が送られてきたり「早く決めないと枠が埋まります」と言われたりすることがあります。このとき、多くの人は相手の熱意に押されて黙ってしまい、判断が追いつかないまま面接の日程が入っていきます。体調が不安定な時期にこのペースに巻き込まれると、条件の確認が甘くなり、入職後に「思っていた職場と違う」となる確率が上がります。対処はシンプルで、「今日は判断しません」「次の連絡は◯日以降にしてください」と、期日を切って書面(メール)で伝えることです。口頭より記録が残る形のほうが確実に効きます。それでも連絡の頻度が変わらないなら、そのサービスの利用を止めて別のところに切り替えて構いません。転職サービスは複数を並行して使えますし、途中でやめることに違約金はありません。相手の成果ではなく、自分の体調が判断の基準です。
② 求人は「心理的負荷が低い職場」を軸に選ぶ
給与や知名度より、体調と合うかを優先します。候補になりやすいのは次のような職場です。
- クリニック(外来): 急変が少なく、定時で帰れる職場が多い
- 健診センター: 業務がルーティン化されており、対象者が健常者
- デイサービス・介護施設: 病棟に比べて急変の緊張感が低い
- 訪問看護: 職場内の人間関係ストレスを受けにくい(ただし下記の注意あり)
求人票では次の項目を確認します。
| 確認項目 | 着目ポイント |
|---|---|
| 残業時間 | 年間平均か閑散期の数字かを確認する(繁忙期は2〜3倍になることがある) |
| 夜勤・オンコール | 「日勤のみ」でも夜間の待機がないかを別途確認する |
| 看護職の在籍人数 | 自分が休んだ日に代われる人がいるか |
| 休憩の取得状況 | 実際に何分取れているかを担当者に確認してもらう |
| 定着率 | 直近1年の採用人数と退職人数 |
4つ目を入れているのは理由があります。前掲のとおり、休憩が全く取れていない職場のストレス「ある」割合は87.6%で、きちんと取れている職場(49.1%)の1.8倍です。休憩が取れるかどうかは、待遇欄には出てこないのに体調への影響が最も大きい条件のひとつです。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:「人間関係が嫌だから訪問看護」で選んでしまう訪問看護は職場内の人間関係ストレスが小さい働き方ですが、その代わりに「1人で判断する」時間が長くなります。利用者宅で予期しない状態変化に出会ったとき、その場で相談できる人がそばにいません。同じ調査で訪問看護はやりがいを「強く感じる」割合が29.1%と、一般病棟8.9%の3倍以上あり、働き方として魅力的なのは確かです。しかし、判断の孤独さが負荷になるかどうかは人によって大きく異なります。「何かあったらどうしよう」という予期不安が強い時期には、チームで動けるクリニックや健診センターのほうが安心して働ける場合があります。訪問看護を検討するなら、①同行訪問の期間はどれくらいか、②訪問中に電話で相談できる体制があるか、③新人が独り立ちするまでの平均期間はどれくらいか、の3点を確認してください。オンコールの有無とあわせて聞けば、孤独さの度合いが具体的に見えてきます。
③ 「情報収集フェーズ」で止めておいていい
転職サービスに登録したからといって、転職しなければならないわけではありません。「今はどんな求人があるか知りたいだけ」という段階でも登録できます。
体調に余裕がある日に求人を眺めるだけでも、選択肢があると分かるだけで気持ちが変わることがあります。初回の面談も電話やオンラインで30分程度のことが多く、体力の消耗は小さく済みます。
条件を絞ることに後ろめたさを感じる必要もありません。看護師の平均年収は524.7万円(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」2025年)で、夜勤や残業を外した職場でも、一定の収入を確保できる余地はあります。
失敗例・よくあるNG
NG①:体調が最も悪いタイミングで「逃げるように」決める
「もう限界、今すぐ出たい」という状態で、条件を確認しないまま最初の内定を受けるケースです。転職直後は環境が変わって一時的に楽になりますが、3〜6か月後に新しい職場の負荷が見えてくると「また同じだ」と感じやすくなります。休職して整えてから動く道も、選択肢に入れてください。
NG②:面接で過去の経緯を詳しく話しすぎる
正直でありたいという気持ちから、休職の経緯を自分から詳細に説明してしまうケースです。現在の勤務可能な範囲について聞かれたことに答えるのは必要ですが、過去の経緯をどこまで話すかは自分で決められます。何をどこまで伝えるかは、応募前に転職サービスの担当者と整理しておくと迷いません。
NG③:「どこでも同じ」と諦めて動かない
「職場を変えても同じことの繰り返しだ」と考えて先送りするケースです。前掲のクロス集計が示すとおり、ストレスの高低は職場の条件で40ポイント近く動きます。「どこでも同じ」は、データの上では成り立ちません。まずは条件を数字にして、いまの職場がその範囲にあるかを照らし合わせるところから始められます。
Q&A
Q. 休職歴があると転職で不利になりますか?
A. 応募先や職種によって扱いは異なります。現在の勤務可能な範囲について問われたことに正確に答えることは必要ですが、過去の経緯をどこまで説明するかは自分で決められます。何をどう伝えるかは、応募前に転職サービスの担当者と整理しておくと、迷いや言い過ぎを防げます。
Q. 転職と休職、どちらを先にすべきですか?
A. 一概には言えませんが、経済的な足場から確認するのが現実的です。在職中に休職して傷病手当金を受け取る道と、先に退職する道では、受けられる給付も手続きも変わります。就業規則の休職規定、健康保険の傷病手当金の要件、ハローワークでの受給期間延長の3点を確認してから、退職日を決めてください。
Q. 看護師の離職率は他の職業より高いのですか?
A. 単純比較はできません。日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」による2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%ですが、これは病院の年間総退職者数を平均職員数で割った数字です。一方、厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」の常用労働者ベースの離職率は全産業計で15.4%、「医療,福祉」で14.6%。定義も対象も異なるため、数字の大小だけで働きやすさを判断することはできません。
ペースを守れる相談先を、複数比べて選びましょう
「連絡は週1回」「判断は数か月先」と最初に伝えて構いません。応じてくれるかどうかは、そのサービスを続けるかの判断材料になります。
まとめ
- つらさの主因は適性ではない: 強いストレスの要因で「仕事への適性」を挙げた人は11.5%。上位は「仕事の量」48.7%、「仕事の質」31.8%でした(日本医療労働組合連合会 2022年)
- 環境で数字は倍近く動く: 「強いストレスがある」割合は、時間外労働なしで41.3%、30時間以上で80%超。休憩がきちんと取れている職場は49.1%、全く取れていない職場は87.6%です
- 動く前に足場を確認する: 休職制度と傷病手当金(標準報酬日額の3分の2、支給開始日から通算1年6か月)の要件を、退職日を決める前に確認してください
- 求人は休憩と人数で見る: 待遇欄に出てこない「休憩が実際に取れるか」「看護職が何人いるか」が、体調への影響では最も大きい条件になります
転職の全体の流れは看護師の転職の流れ、退職の切り出し方は看護師の退職の伝え方、転職サービスの使い方は転職エージェントの使い方で解説しています。
悩みの種類別の対処法は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法まとめにまとめています。
参考文献
- 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(2023年5月11日記者発表資料・報告集)(2026-09-08 閲覧)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」(2026-09-08 閲覧)
- 厚生労働省「こころの耳」働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(2026-09-08 閲覧)
- 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果(2026年3月31日公表)(2026-09-08 閲覧)
- 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」(2026-09-08 閲覧)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026-09-08 閲覧)