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看護師の求人倍率と人手不足の推移|都道府県別のデータで読む転職のしやすさ

ナースひとやすみ 編集部約21分で読めます
目次

求人サイトを開くと、看護師の求人は山ほど並んでいます。「売り手市場」と聞いても、その倍率がどの窓口の数字なのか、自分の地域や条件にも当てはまるのかは分かりにくいものです。ナースセンターの求人倍率は2014年度の2.79倍から2021年度に1.33倍まで下がり、2024年度は2.51倍です。 ハローワークの有効求人倍率は、2026年8月の常用(パートを除く)で2.29倍です。この2つはどちらも2倍を超える売り手寄りの水準ですが、都道府県別の倍率は求職者の少ない県ほど高く出る数字で、そのまま「転職しやすさ」とは読めません。

この記事でわかること
  • ハローワークとナースセンターの倍率が、それぞれ何を数えていて何を含まないか
  • ナースセンターの求人倍率の推移(2009〜2024年度)と、2.51倍に上がった理由
  • 47都道府県の倍率を、母数(求職者数)と人口あたり看護師数とあわせて見る方法
  • 施設・勤務形態・雇用形態で倍率がどう違うか
  • 自分の条件の倍率を調べて、応募先の絞り込みに使う手順

看護師の求人倍率は、どの窓口の数字かで値が変わる

「求人倍率」は、求人の数を求職者の数で割った値です。1を超えれば求人のほうが多く、2なら求職者1人に求人2件の計算になります。ところが看護師の場合、公的に集計されている窓口が複数あり、数える対象が違います。

ハローワーク(有効求人倍率)ナースセンター(求人倍率)
集計元厚生労働省「一般職業紹介状況」日本看護協会 中央ナースセンター(都道府県のナースセンターの登録データ)
数える範囲ハローワークに出された求人と、ハローワークで求職登録した人ナースセンターに登録された求人と、登録した求職者
含まれないもの民間の職業紹介・求人広告・病院への直接応募ハローワーク・民間の職業紹介・求人広告・直接応募
区分名「保健師,助産師,看護師」(職業分類。看護師には准看護師を含む)看護職(保健師・助産師・看護師・准看護師)
最新値2.29倍(2026年8月・常用(パートを除く))2.51倍(2024年度)
使いどころ月ごとの動きと、全職業(職業計)との比較年度ごとの長期推移・都道府県別・施設別
都道府県別労働局ごとに公表。全国の一覧表は確認できなかった報告書に47都道府県の表がある

民間の職業紹介会社の件数は、厚生労働省の「職業紹介事業報告書」に職業別で載っていますが、複数の事業者を併用する人や求人が重複して数えられ、倍率の形では公表されていません。ここで見る倍率は、看護師の転職市場の全体ではなく、公的な窓口に載った求人と求職者だけの比率です。

この数字から言えること、言えないこと

  • 言えること: 公的な窓口に限っても、求人は求職者を上回って推移している。ハローワークでは、全職業より高い水準にある
  • 言えないこと: 「看護師全体で求人が足りない人数」や「民間の紹介会社を使ったときの決まりやすさ」
  • ナースセンターの求職者は、51.0%が未就業または看護職以外で就業中で、年齢階層では60歳以上が19.6%と最多です。現職の看護師が転職先を探すときの競争の厳しさをそのまま映す数字ではありません

求人倍率の推移|ナースセンターは2.0倍を下回ったのが2年だけ

ナースセンターの求人倍率(2024年度)。コロナ前の2016〜2019年度の水準を上回り、2015年度以来の高さ2.51倍

日本看護協会 ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析(2024年度)

ナースセンターの求人倍率は、2009年度から2024年度まで公表されています。2014年度の2.79倍が最も高く、2.0倍を下回ったのは2021年度(1.33倍)と2022年度(1.84倍)の2回だけです。

グラフを読むときの注意が2つあります。2015年度は、ナースセンターの登録データの管理システムが4月に変わった年で、求人数・求職者数とも大きく減っています(日本看護協会は、この変更が低下の要因と考えられるとしています)。2021年度は、新型コロナのワクチン接種業務の準備金の支給条件としてeナースセンターへの登録が求められた期間(2021年5月21日〜12月4日)があり、求職者数が13万2,938人に増えています。倍率が1.33倍に下がった年は、日本看護協会がこの登録要件を求職者数を押し上げた要因の一つと考えられるとしており、求職者が一時的に増えた影響が混ざる年です。

2.51倍に上がったのは、求人が増えたからではない

2024年度は、前年度の2.22倍から0.29ポイント上がりました。ただし中身を見ると、求人数は17万5,964人から17万2,522人へ1.96%減っています。倍率が上がったのは、求職者が7万9,151人から6万8,724人へ13.17%減ったからです。求人が増えたと読むと、実態と逆になります。

ハローワークの倍率は、全職業より高い状態が続いている

ハローワークの有効求人倍率は、毎月の参考統計表に「保健師,助産師,看護師」の行があります。月ごとの揺れを避けて、各年8月の原数値を同じ表の中で並べました(職業計は同じ表の「職業計」の行です)。

各年8月看護(常用(パートを除く))職業計(同)看護÷職業計看護(常用(パートを含む))職業計(同)
2023年2.09倍1.23倍1.70倍1.89倍1.17倍
2024年2.27倍1.21倍1.88倍2.02倍1.13倍
2025年2.24倍1.18倍1.90倍1.98倍1.09倍
2026年2.29倍1.17倍1.96倍2.00倍1.06倍

出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況」各年8月分の参考統計表(原数値)。比較は同じ列の中だけで行い、年度平均や季節調整値とは混ぜていません。「職業計」は同じ表の常用の値で、報道される全体の有効求人倍率(季節調整値など)とは対象範囲が違います。

看護の倍率は2.1〜2.3倍の範囲で大きく動いていません。一方で職業計は1.23倍から1.17倍へ下がっているため、看護は全職業の約1.7倍から約2.0倍へ、差が開いています。全体の求人が冷えるなかでも、看護の求人は残っているという読み方ができます。ただし4年分の8月の値で、因果は言えません。この記事で長期の系列を載せているのは、ナースセンターだけです。

記事ごとに倍率が違って見える理由

看護師の求人倍率は、記事や資料によって2倍前後から2.5倍まで(県別では1倍台から9倍台まで)、さまざまな値で出てきます。食い違いの理由は主に5つです。

  • 窓口: ハローワークかナースセンターか。数える求人・求職者が別なので、値は一致しない
  • パートの含め方: 2026年8月は、常用(パートを除く)が2.29倍、含むと2.00倍。2026年3月も、除く2.33倍・含む2.12倍と差がある
  • 地域: 全国か都道府県か。県別は求職者の少ない県で高く出やすく、1倍台から9倍台までばらつく
  • 指標: 有効求人倍率か、新規求人倍率か。数える求人の範囲が違うので、値は一致しない
  • 期間: 月の値か、年度の値か。看護の求人は年度の変わり目に動くため、月で数字が変わる(月ごとの動きは看護師の転職時期はいつがいい?で整理しています)

数字を引くときは、「どの窓口の、いつの、パートを含むか」の3点がそろっているかを確かめてください。


人手不足の大きさ|「足りない人数」は推計の差で、実測ではない

「看護師は人手不足」と言われる根拠の1つが、国の需給見通しです。2019年の中間とりまとめは、2025年の看護職員の需要を188万〜202万人、供給を175万〜182万人と推計しました。2040年に向けた検討会の第1回資料(2026年4月)にある第8次需給見通しの2025年の値は、需要見通しが180万1,633人(都道府県の報告値で、係数等の処理前)、供給見通しが174万6,666人で、差は約5万5,000人(需要の約3%)です。2019年の中間とりまとめの範囲で引き算すると、差は約6万〜27万人と幅があります。

ここでの注意は、この差を「いま足りない人数」と読まないことです。厚生労働省の検討会資料(2026年6月22日)は、2025年の需要推計が「2019年の作成当時の患者の受療率が一貫して変わらないものと仮定」しており、「足下の領域ごとの就業看護職員数と2025年の需要推計値を単純に比較することは困難」と明記しています。

実績の側を見ると、看護職員の就業者数は2017年の165万7,923人から、2020年に173万4,025人、2023年に174万6,481人と増えました。2017〜2020年は7万6,102人増えたのに対し、2020〜2023年は1万2,456人増にとどまり、伸びは鈍っています。2023年の就業者数(174万6,481人)は、2025年の供給見通し(174万6,666人)にすでに並んでいます。

就業看護師数(2024年末)。前回調査(2022年)より3.9%増えており、総数が減っているわけではない1,363,142人

厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)」

なお、就業者数の推移は保健師・助産師・看護師・准看護師を合わせた看護職員、上のカードは看護師だけの数です。数は増えているのに求人倍率が2倍を超えているのは、「総数が足りない」より「必要とされる場所に届いていない」面もあると読む余地があります。2026年9月14日の第5回検討会の「これまでの御意見のまとめ」にも、事務局が整理した委員の意見として「看護師の需給については、地域や領域による偏在が非常に大きな問題」と記されています。2040年頃までの新しい推計は、この資料の時点では推計方法への意見が整理されている段階で、結果の数値はありません。


都道府県別の求人倍率|高い県が「入りやすい県」とは限らない

ナースセンターの求人倍率は、47都道府県の値が報告書に載っています。自分の県を探せるように、求人数・求職者数とあわせて全部並べました。右端は、同じ都道府県の人口10万人あたり就業看護師数(2024年末)です。※は求職者が1,000人未満の県で、母数が小さく倍率が振れやすいので、倍率と求職者数の列をあわせて見てください。

都道府県求人数(人)求職者数(人)求人倍率(倍)人口10万人あたり就業看護師数(人)
北海道6,6283,6731.801,370.6
青森県1,5013344.49 ※1,158.7
岩手県1,1767551.56 ※1,250.8
宮城県3,0097204.18 ※1,005.6
秋田県9463103.05 ※1,319.1
山形県2,9827334.07 ※1,246.6
福島県2,5951,0862.391,069.1
茨城県4,1345367.71 ※894.8
栃木県3,1788223.87 ※1,033.8
群馬県2,8368923.18 ※1,144.2
埼玉県6,4522,8802.24827.0
千葉県4,4081,9982.21837.0
東京都17,37110,4621.66938.8
神奈川県5,9292,6792.21836.7
新潟県2,6301,0012.631,157.7
富山県1,4936642.25 ※1,375.3
石川県2,0707892.62 ※1,405.7
福井県2,2891,2421.841,324.0
山梨県1,6194793.38 ※1,120.9
長野県2,2958932.57 ※1,252.4
岐阜県5,7292,3052.491,028.7
静岡県7,8173,0622.551,045.0
愛知県15,6783,2844.77968.3
三重県3,2811,6212.021,142.7
滋賀県1,8575793.21 ※994.7
京都府6,1272,4202.531,206.9
大阪府8,1653,0972.641,029.4
兵庫県5,7471,2444.621,139.0
奈良県1,4174183.39 ※1,192.6
和歌山県1,1111229.11 ※1,361.8
鳥取県1,1295711.98 ※1,509.4
島根県1,0862873.78 ※1,414.2
岡山県2,9358133.61 ※1,380.2
広島県4,9971,8832.651,281.0
山口県1,3982146.53 ※1,447.4
徳島県1,3191,0861.211,417.5
香川県1,5121,4901.011,339.9
愛媛県3,0846984.42 ※1,390.4
高知県8261196.94 ※1,757.8
福岡県6,1243,7141.651,306.4
佐賀県6354011.58 ※1,496.6
長崎県3,3291,3422.481,528.0
熊本県2,9191,1752.481,475.7
大分県1,7159501.81 ※1,474.4
宮崎県2,0838422.47 ※1,477.9
鹿児島県2,5351,5221.671,575.9
沖縄県2,4265174.69 ※1,247.9
全国172,52268,7242.511,101.1

出典: 日本看護協会 中央ナースセンター「2024(令和6)年度 ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書」表3-5-1、厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例」(就業看護師)。※は求職者が1,000人未満の県。

最も高いのは和歌山県の9.11倍、茨城県の7.71倍、高知県の6.94倍、山口県の6.53倍です。最も低いのは香川県の1.01倍と徳島県の1.21倍でした。ただし、倍率の高い県の多くは、求職者数がごく少ない県です。和歌山県の求職者は122人、高知県は119人にすぎません。

倍率が高く出るのは、看護師の少ない県より求職者の少ない県

この表から、次の手順で4つの集計をしました(表計算ソフトで再現できます)。

  1. 47都道府県を、求職者数が1,000人未満の25県と、1,000人以上の22都道府県に分け、倍率の中央値を比べる(倍率は表の小数第2位までの値を使用。1,000人という区切りは目安)
  2. 求職者数の対数(桁の差をならすため)と倍率の相関係数(ピアソン。−1〜1で、0は関係なし、−1に近いほど一方が多いと他方が少ない)を求める
  3. 人口10万人あたり就業看護師数と倍率の相関係数を求める
  4. 人口あたり看護師数が少ない10都府県と多い10県で、倍率の中央値を比べる

この結果から言えるのは、「看護師が少ない県ほど倍率が高い」という強い関係は、この47県の表からは見えない、ということです。 倍率は求人÷求職者なので、分母の求職者が少ない県で高く出るのは計算上ほぼ当然で、−0.61も「分母が小さい県は倍率が振れやすい」という性質を映します。因果を示す分析ではなく、47点の単純な集計です。

集計(ナースセンター2024年度・47都道府県)結果
倍率の中央値: 求職者1,000人未満の25県 / 1,000人以上の22都道府県3.39倍 / 2.32倍
求職者数(対数)と倍率の相関係数−0.61
人口10万人あたり就業看護師数と倍率の相関係数0.00
倍率の中央値: 看護師が少ない10都府県 / 多い10県2.57倍 / 2.23倍

出典: 上の47都道府県表から当サイトが集計。

求職者が少ない25県の中央値は、多い22都道府県を上回ります。人口あたり看護師数との相関係数は0.00ですが、倍率は看護職、看護師数は看護師だけの値で、対象がそろっていません。看護師が少ない10都府県は埼玉・神奈川・千葉・茨城・東京・愛知・滋賀・宮城・岐阜・大阪、多い10県は徳島・山口・大分・熊本・宮崎・佐賀・鳥取・長崎・鹿児島・高知です。向きは「看護師が少ない県ほど高い」と同じですが差は小さく、相関係数は和歌山・高知・山口のような外れ値で動き、中央値の比較は各群が10県と少ないため、区切り方で動きます。ナースセンターを使う求職者の数は、県ごとの登録の多さにも左右されるため、倍率の差が需給の差を表しているとは限りません。

同じ県でも、窓口が変わると値は変わります。和歌山労働局が公表した2025年4月度の「保健師,助産師,看護師」の有効求人倍率は、常用計で1.61倍(フルタイム1.97倍・パート1.28倍)でした。ナースセンターの9.11倍(2024年度)とは月も年度も違うので同じ土俵の比較ではありませんが、5倍以上の開きがあります。

求職者が1,000人を超える都道府県の中でも差があります。東京都は1.66倍(求職者10,462人)、大阪府は2.64倍(3,097人)、愛知県は4.77倍(3,284人)、兵庫県は4.62倍(1,244人)です。県ごとの年収は看護師の年収が高い都道府県は?、個別の地域は千葉・大阪の記事で扱っています。


施設・雇用形態・職種別の求人倍率|人手不足の濃淡が見える

都道府県別の倍率は母数に左右されやすいので、施設の種類別もあわせて見ます。同じナースセンターの2024年度の値を並べます。

訪問看護ステーションの4.54倍に対し、大病院(500床以上)は1.93倍、無床診療所は1.03倍、健診センターは0.25倍です。全体の2.51倍は、人手が足りない施設と、希望者が集まる施設を含む値だと分かります。ただし、求職者の施設種類は複数回答で、延べ数になっています。回答は必須でなく、「不明」の36,019人も別枠です。このグラフの倍率は全体の2.51倍と同じ基準ではなく、ずれる向きも決められないため、施設同士の順位の目安として使うのが安全です。

雇用形態では、常勤は3.00倍で求人が求職者の約3倍、非常勤は2.21倍、臨時雇用は0.85倍で求職者のほうが多くなっています。常勤の求人は求職者より多く出ている一方、臨時雇用の枠は希望者に対して少ない、という違いです。職種の第一希望別では、看護師が2.82倍、准看護師が1.83倍で、准看護師を希望する人向けの求人は看護師より相対的に少なくなっています。助産師は1.14倍、保健師は0.60倍で、保健師は求人より求職者のほうが多い状況です。行政保健師・産業保健師の働き方は、行政保健師への転職・産業保健師への転職で整理しています。

勤務形態別では、夜勤のある3交代制・2交代制の倍率が日勤のみ(2.67倍)を大きく上回って出ています。ただし求職者の勤務形態も必須回答ではなく、「不明」の32,365人が分母から外れているため、夜勤のある求人の倍率は過大です。夜勤のある職場の人手が足りない傾向は読み取れますが、倍率の数値そのものは条件の判断に使わないほうが安全です(夜勤の有無で働き先を選ぶ手順は看護師の働き先一覧にあります)。


自分の条件の倍率を調べて、応募先の絞り込みに使う手順

全体の倍率を知っても、応募先は決まりません。使えるのは、自分が探す施設・勤務形態・地域の倍率と、その母数です。実際に開ける資料だけで調べる手順を示します。

  1. 窓口を決める: 公的な窓口の動きを見たいなら、ハローワークは厚生労働省の月次「一般職業紹介状況」の参考統計表、ナースセンターは日本看護協会の分析報告書を使う
  2. 地域の倍率を調べる: 「(県名)労働局 職業別 有効求人倍率」で検索して出てくる、労働局公表の職業別(中分類)の有効求人・求職・求人倍率のPDF(この記事の和歌山の例は参考文献にあります)で、「保健師,助産師,看護師」の行を見る。フルタイム、パート、常用計が別に出ているので、探す雇用形態の列を読む
  3. 施設の倍率を調べる: 分析報告書の第3章「3.求人倍率」で、施設種類別(表3-4-1)と勤務形態別(表3-2-1)を見る。倍率と一緒に求人数・求職者数も控える
  4. 応募先の候補を数件に絞る(件数に決まりはありません): 倍率の高い施設を優先するのではなく、条件が合う候補を求人票で比べる。比べ方は看護師の求人票の見方が使える
  5. 定着の数字を確かめる: 面接や見学で、直近の中途入職者の人数と、そのうち残っている人数を質問する。規模別の離職率は看護師の離職率・定着率で確認できる

⚠️ つまずきやすい落とし穴: 倍率の高い県や施設を見つけると、「そこなら決まりやすい」と考えて応募先を絞りたくなります。けれど、倍率が高いのは求人に対して応募が少ないという意味で、その理由は人手が足りないから、給与や勤務が敬遠されているから、辞める人が多く常に募集しているから、のどれでも成り立ちます。回避するには、倍率を見たあとに求人票の夜勤回数・休日と、面接で聞く中途入職者の定着を必ず確認し、窓口を変えた倍率(ハローワークとナースセンター)でも同じ傾向かを見てください。倍率は応募先を探す入口にとどめ、決める材料は条件の側に置くのが安全です。


求人倍率を見て動くときの失敗例

  • 失敗例1: 全国の2倍台を見て、自分の条件の倍率を見ない → 無床診療所は1.03倍、健診センターは0.25倍で、2倍台は当てはまりません。探す施設の倍率を先に確認する
  • 失敗例2: 母数の小さい県の9倍台を根拠に転居を決める → 求職者122人の倍率で、窓口や時期を変えると値が大きく変わる(前掲の和歌山の例)。母数と窓口を確認してから判断する
  • 失敗例3: 倍率の高い施設を「入りやすいから」と選び、辞める人が多い職場に入る → 求人が余る理由を面接で質問し、直近の退職者数を確かめる。千葉県のように求人が多くても中途入職者の離職率が高い県もあります(千葉の看護師転職ガイド)

⚠️ つまずきやすい落とし穴: 「売り手市場だから、条件は強気に出せる」と考えるのも注意が必要です。全体の倍率は平均で、希望が重なる施設には応募が集まります。前述のとおり、施設によっては求職者のほうが多く、人気の集まる条件では競争が強まります。応募前に、どの条件を優先し、どれを譲れるかを紙に書き出し、譲れない条件は絞り込む(目安は2つ程度)と動きやすくなります。そのうえで、求人の少ない条件は応募の時期を早め、複数の応募先を並行させると、結果が出るまでの時間を短くしやすくなります。


Q&A

Q. 看護師の求人倍率は、いまいくつですか?

A. ハローワークの有効求人倍率(保健師,助産師,看護師)は、2026年8月で常用(パートを除く)2.29倍、パートを含めると2.00倍です。同じ表の職業計は1.17倍(パートを除く)でした。ナースセンター(看護職全体)は2024年度で2.51倍です。窓口と期間が違う値なので、並べて高低を比べないでください。

Q. 看護師の求人倍率は、上がっていますか?下がっていますか?

A. 長期の推移を追えるのは、この記事ではナースセンターだけです。ナースセンターは2014年度の2.79倍から2021年度に1.33倍まで下がり、2024年度は2.51倍です。ハローワークは各年8月の常用(パートを除く)の4年分が2.09〜2.29倍で、大きくは動いていません。

Q. 求人倍率が高い都道府県は、転職しやすいですか?

A. 一概には言えません。都道府県別の倍率は求職者数が少ない県ほど高く出る傾向があり、当サイトの47都道府県の集計では、人口あたり看護師数との強い関係は見えませんでした。県の倍率は目安にとどめ、探す施設や勤務形態の倍率と、求人票の条件で判断してください。

Q. 民間の転職サービスを使うと、数字は変わりますか?

A. 民間の紹介会社が扱う求人と求職者は、ハローワークとナースセンターの倍率に含まれていません。件数は厚生労働省の職業紹介事業報告書に職業別で載っていますが、複数の事業者の併用による重複があり、倍率としては公表されていないため、民間を使ったときの決まりやすさは、公表されている倍率の数字からは言えません。費用や連絡の頻度はサービスごとに異なり、当サイトでは確認していません。複数の窓口の求人を見比べることは、判断材料を増やす方法の1つです。

Q. 求人倍率が下がったら、転職は難しくなりますか?

A. 倍率は全体の需給の目安で、あなたの条件に合う求人があるかは別です。ナースセンターの倍率が1.33倍まで下がった2021年度も、求職者が一時的に増えた影響が混ざっていました。倍率の上下より、希望の施設・勤務形態・地域で求人が出ているかを確かめるほうが、転職の判断には役立ちます。


自分の条件の求人が、どれくらいあるかを確かめておく

まだ転職するか決めていなくても、希望の施設・勤務形態・地域の求人を見比べておくと、倍率の数字を自分の状況に引き寄せて判断しやすくなります。

まとめ|倍率は「入口の目安」。決める材料は自分の条件の側に置く

  • 看護師の求人倍率は、窓口によって値が違う。ハローワークは2.29倍(2026年8月・常用(パートを除く))、ナースセンターは2.51倍(2024年度)で、どちらも民間の紹介を含まない
  • ナースセンターの2.51倍は、求人が増えたのではなく、求職者が13.17%減ったことで上がった
  • 都道府県別の倍率は、求職者の少ない県ほど高く出る。人口あたり看護師数との強い関係は見えず、「高い県=入りやすい県」とは読めない
  • 「足りない人数」は2019年作成の推計の差で、実測ではない。就業看護職員は2023年に174万6,481人と増えており、検討会でも地域や領域による偏在が指摘されている
  • 施設の種類で倍率は訪問看護4.54倍〜健診センター0.25倍と開く(順位の目安)。自分の条件の倍率と母数を調べ、応募先は求人票と定着の数字で決める

次の一歩として、状況に合わせて読む記事を選んでください。