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キャリア

フライトナースになるには|必要な経験・資格とドクターヘリ配備のデータ

ナースひとやすみ 編集部約15分で読めます
目次

「救急で働いているけれど、この先の目標がほしい」「フライトナースは、現実に目指せる仕事なのか」。そう考えている人に、先に答えを書きます。

フライトナースになるには、国家資格ではなく、ドクターヘリの基地病院での救急の経験と院内選考が要ります。 決まった試験はありません。基地病院の看護師として救急の経験を積み、院内で選ばれ、実際の搭乗訓練を経て独り立ちする、という道です。日本航空医療学会フライトナース委員会が2006年に示した選考基準(参考)の目安は、「看護師経験5年以上、救急看護経験3年以上、または同等の能力」です。

ただし枠は小さく、ドクターヘリは46都道府県で57機(2025年度)、基地病院は63病院(2026年3月時点)しかありません。

フライトナースとは——通常の搭乗体制では看護師は1人

厚生労働省の研究班がまとめた『ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準』では、フライトナースを「ドクターヘリに搭乗し、フライトドクターの指示に基づき、現場・搬送中の診療に従事する看護師」としています。ドクターヘリの一般的な搭乗体制は、前方に操縦士1名と整備士1名、後方に医師1名・看護師1名・患者1名・家族1名です。同じ基準では、医師は1〜2名、看護師は1名を通年配置するとされています。

つまり、通常の搭乗体制では、1回のフライトに乗る看護師は1人です。厚生労働省の検討会資料(2026年7月)が挙げるフライトナースの役割は、次のとおりです。

  • 現場と搬送中の看護
  • 診療の補助
  • 医療資器材の管理
  • 搬送先への申し送り
  • 患者の固定や感染管理などの安全管理

初療室と違って、手を貸してくれる看護師の同僚がその場にいません。選考基準が経験年数を重く見るのは、このためだと読めます。

フライトナースになるには——資格ではなく「選考基準」の目安がある

フライトナースには、取れば名乗れる国家資格がありません。代わりに、学会が示した選考基準と、国の研究班が示した要件があります。

日本航空医療学会フライトナース委員会の選考基準(2006年策定、参考)
  1. 看護師経験5年以上、救急看護経験3年以上、または同等の能力が望ましい。リーダーシップがとれる
  2. ACLSプロバイダーおよびJPTECプロバイダー、もしくは同等の知識・技術を有している
  3. 日本航空医療学会が主催するドクターヘリ講習会を受講している

この選考基準は2006年のもので、研究班の基準(令和4年7月改訂の最新版)にも「参考」として載っています。ACLSは心停止などへの二次救命処置、JPTECは病院前の外傷初期対応を学ぶ講習です。リーダーシップが挙がっているのは、現場では少人数の医療クルーで救急隊や運航クルーと連携して動くためだと読めます。研究班の基準でも、フライトナースの教育目標に「救急隊との対応」「操縦士・整備士・運航管理者との協力」が挙がっています。

研究班の基準が示す搭乗看護師の要件は、次の3つです。

  • 救急医療の臨床経験と知識
  • 心肺蘇生法および外傷初期治療についての十分な知識・技術
  • ドクターヘリ事業従事者研修等の受講

いずれも「すべて満たすことが望ましい」という書き方で、全国一律の必須条件ではありません。そのため、実際の選考基準は基地病院ごとに違うことがあります。

選ばれた後の育成も、基準に例が示されています。座学とシミュレーション訓練のあと、指導役のフライトナースと一緒に実際の搬送で搭乗するOJT(このときは看護師が2人で乗ります)を重ねます。独り立ちの判定には、学会が作った実務評価表(17項目を0〜2点で評価)を使う例が示されています。31点以上で、0点の項目がなく、2・9・10番の項目以外はすべて2点が必要(この3項目は1点でも可)と、水準は高めです。

認定看護師の資格は必須ではない

選考基準にも研究班の要件にも、認定看護師の資格は入っていません。日本看護協会の登録者は、救急看護認定看護師(従来のA課程)が1,064名、クリティカルケア認定看護師(B課程)が1,034名です(2025年12月現在)。B課程は特定行為研修を組み込んだ新しい課程で、救急看護と集中ケアが統合された分野です。A課程の認定看護師19,270名のうち、救急看護は約5.5%にとどまります。救急の専門性を示す材料にはなりますが、取らないとフライトナースになれない資格ではありません。認定看護師の人数の全体像は認定看護師・専門看護師は何人いる?で整理しています。

データで見る「枠」の数——57機・基地病院63・救命救急センター312

最初に知っておきたいのは枠の小ささです。数字は出典ごとに時点が違うので、年月を添えて書きます。ドクターヘリは46都道府県で57機(2025年度実績)、それを運航する基地病院は2026年3月時点で63病院でした。2つの病院が共同で運航している地域が6か所あるため、機数より病院数が多くなっています。

フライトナースが乗るドクターヘリは、全国で57機

厚生労働省「救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)の現状について」(2026年7月公表。2025年度実績)

ドクターヘリの受諾件数は、導入が進んだ2000年代後半から2010年代前半に大きく増え、2018年度以降は年間2万5千〜2万9千件台で推移しています。なお、調査主体は2019年度を境に変わっています(2018年度までは厚生労働省の地域医療計画課、2019年度以降は日本航空医療学会)。

導入機数は2018年度の53機から2024年度の57機へ、6年で4機しか増えていません。新しい枠が増えるペースは年1機に満たず、新設の基地病院を待つより、既存の基地病院で選ばれる道が中心になると読めます(編集部の見方)。

2024年の救急出動は全国で772万740件でした(消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」)。数え方が違う統計なので目安ですが、ドクターヘリが受けた件数(28,405件)は救急出動全体の0.4%ほどにあたります。ヘリでの救急は、地上の救急搬送を補う限られた手段です。

基地病院を運営主体別に数えると、次のようになります。

基地病院の運営主体(2026年3月時点)病院数給与の決まり方の目安
大学病院(国立・公立・私立)27各大学法人の給与規程
自治体などの公立病院(地方独立行政法人・企業団などを含む)21自治体の条例・給料表、または法人の規程
日本赤十字社の病院6法人の給与規程
国立病院機構の病院3法人の給与規程
その他(済生会・厚生連・社会医療法人など)6各法人の給与規程
合計63

出典:厚生労働省「救急医療用ヘリコプター(ドクターヘリ)の現状について」(2026年7月)の基地病院一覧(2026年3月時点)を編集部が運営主体別に集計

基地病院の4割強は大学病院で、次に公立病院が続きます。救命救急センターは全国に312か所あります(2025年12月までに運営を開始したもの)。基地病院は救命救急センターの中から選ばれるので、63病院はすべて312か所に含まれます。差し引くと、救命救急センターの8割ほどはドクターヘリの基地ではない計算です。「三次救急に転職すればフライトナースに近づく」とは限らない、というのがこの数字の意味です。

もう1つ、運航の状況が変わっています。厚生労働省の検討会の中間とりまとめ(2026年9月30日)によると、2026年9月時点で委託により通年運航されているのは、東京都・大阪府・徳島県を除く43道県の55機です。運航休止や運航事業者の確保が難しくなる事案は、2025年度から一部地域で起きています。検討会は中間とりまとめを公表し、運航休止への対応や機体・人材の確保を引き続き議論しています。目指す基地病院がある地域でヘリが今も運航しているかは、都道府県や病院の公表で見られます。

フライトナースを目指す、今の立ち位置別の次の一手

フライトナースへの道は、資格の数より「どの病院で、何年、救急の経験を積むか」で決まります。判断する順番は次のとおりです。地理の条件は後から変えにくいので、最初に確かめます。

  1. 通勤できる範囲に基地病院があるか(無ければ、転居できるかどうか)
  2. 今の職場が基地病院か(フライトナースは基地病院の看護師の中から選ばれるため)
  3. 経験年数(選考基準の目安は看護師経験5年以上・救急3年以上。選考の中心が救急の経験年数のため)
  4. ACLS・JPTECなどの講習を受けているか(どの行でも並行して受けておくため、最後に回す)

軸1・2の判定には、厚生労働省の基地病院一覧(2026年3月時点)を使います。軸の順に、次のとおり決めます。分かれ目は、編集部の判断です。

あなたの状況次の一手
通勤圏に基地病院がなく、転居できる基地病院の中途採用を調べ、転居して応募する
通勤圏に基地病院がなく、転居できない地元の救急で経験を積む。フライトナースは目標に置かず、救急看護の専門性を高める道で考える
基地病院の救急の部署にいて、看護師5年以上・救急3年以上看護部に希望を伝え、院内選考の条件と時期を聞く
基地病院の救急の部署にいて、救急が3年未満3年に届く時期を数え、届く前に希望を伝えておく
基地病院の救急の部署にいて、看護師5年未満・救急3年以上選考基準の「または同等の能力」に当たるかを、希望を伝えて院内の条件を聞く
基地病院にいるが、救急以外の部署(病棟・外来など)救命救急センターや救急外来への異動希望を出し、救急の経験を積む
基地病院ではない職場の救急の部署にいて、救急が3年以上通勤圏の基地病院の中途採用に応募する。応募前に、育成と選考の条件を聞く
基地病院ではない職場の救急の部署にいて、救急が3年未満今の職場で年数を積む。3年に届いたら、「救急が3年以上」の行(基地病院の中途採用に応募)に進む
基地病院ではない職場で、救急以外の部署(病棟・外来など)救急の経験を積める職場に移る。基地病院の救命救急センターなら、経験を積む場と選考の機会が同じ病院にある

各行は、上から順に1つだけ当てはまります。4つ目の軸のACLS・JPTECは、どの行でも並行して受けておきます。転居の費用や住まい、家族の事情は、公的な資料に目安が見つからないので(未確認)、自分の場合で見積もってから決めます。

例外も知っておいてください:選考基準は「または同等の能力」と書いており、年数に満たなくても選ばれる病院はありえます。逆に、年数を満たしても枠が空かなければ選ばれません。数字は目安で、合否の条件ではありません。

基地病院の中で目指す場合の手順

  • 手順:①看護部や救命救急センターの師長に、フライトナースを目指していると伝える → ②院内の選考の条件(経験年数、必要な講習、推薦の有無)を聞く → ③ACLS・JPTECなど、条件に入っている講習を受ける(日程と受講料は講習ごとに違うので、主催団体のホームページで調べる) → ④選ばれたら、シミュレーション訓練とOJTに進む
  • 伝え方の見本:「救急の経験を積んで、将来はドクターヘリに乗りたいと考えています。院内で選考の対象になるには、何年目までにどんな経験や講習が必要か教えていただけますか」
⚠️ つまずきやすい落とし穴:希望を伝えないまま年数だけ待つ

院内の選考は公募のように告知されるとは限りません。「経験年数を満たせば声がかかるはず」と待っているうちに、別の看護師の育成が先に始まっていた、ということは起こりえます。口頭で伝えただけで、師長が替わったときに希望が引き継がれていなかった、という場面もありえます。選考の時期や人数は病院ごとに違います。異動の面談や目標面接の場で早めに希望を伝えておくと、必要な講習や配置を前もって調整してもらいやすくなります。希望を出した記録が残るよう、面談シートにも書いておきます。

基地病院へ転職して目指す場合の手順

  • 手順:①厚生労働省の資料の基地病院一覧(2026年3月時点)で、通勤圏の基地病院を探す → ②その病院の看護師募集で、救命救急センターや救急外来への配属があるかを見る(募集は病院のホームページで直接探す方法と、転職サービスの求人で複数の病院を見比べる方法がある) → ③面接で、フライトナースの育成の有無と選考の条件を質問する → ④入職後は、救急の経験年数を積み上げる
  • 面接で聞く見本:「ドクターヘリに搭乗する看護師は、院内でどのように選ばれていますか。中途で入職した看護師が選ばれた例はありますか」
⚠️ つまずきやすい落とし穴:基地病院に入れば救急に配属されると思い込む

基地病院に採用されても、配属先は病院が決めるので、希望の部署に配属されるとは限りません。病棟の欠員を埋めるために一般病棟に配属され、救急に移るまで何年もかかることがあります。求人票の配属欄に「救命救急センター」「救急外来」と書かれているかを見て、書かれていなければ面接で「配属が救急でない場合、異動の希望はいつ出せますか」と聞いておきます。もう1つ、フライトナースの選考で「自院での救急経験」をどう扱うかは病院によって違います。前の職場の救急経験が、そのまま年数として数えられるかを面接で聞いておくと、入職後の見通しのずれを防げます。

救急の職場の種類(初期・二次・三次)の違いと未経験からの入り方は、救急看護師への転職ガイドで詳しくまとめています。

フライトナースの年収——公的な統計は無い

「フライトナースの年収」を調べても、国の統計には出てきません。賃金構造基本統計調査の職種は「看護師」までで、救急やフライトナースに分けた数字は公表されていないからです。

比べる基準にできるのは、看護師全体の平均です。2025年の看護師の平均年収は524.7万円(平均42.1歳)でした(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」をもとに、毎月の給与×12+年間賞与で編集部が算出)。フライトナースも基地病院の職員なので、基本給は基地病院の給与規程で決まります。上の表のとおり、基地病院の運営主体は大学法人・自治体・日本赤十字社などさまざまで、給与の決まり方もそれぞれ違います。自治体病院の看護師の給与の決まり方は公務員看護師の年収と採用で整理しています。

搭乗したときの手当があるか、いくらかは、公表されている統計がなく、病院ごとに決まっていると考えられます。フライトナースになると年収が上がるかどうかは、統計がないため判断できません。年収を上げることが主な目的なら、搭乗の手当の有無と額を、求人票や面接で聞いてから決めます。求人票の基本給と夜勤手当の見方は看護師の求人票の見方にまとめています。

フライトナースを目指すときの失敗例

  • 失敗例1:資格を先に集めようとする → 選考基準の中心は救急の経験年数です。講習は「すべて満たすことが望ましい」要件のひとつで、救急の現場にいないまま講習だけ増やしても、選考の対象になりにくくなります
  • 失敗例2:救命救急センターならどこでも同じだと思って転職する → 応募前に、基地病院の一覧(手順①のリンク)に応募先の病院名があるかを見ます
  • 失敗例3:運航の状況を見ないまま地域を決める → 運休が出た地域では、基地病院があってもヘリが飛んでいないことがあります。都道府県や病院の公表を、応募前に読みます
  • 失敗例4:求人に載っていればフライトナースになれると思い込む → 選考は病院ごとに決まり、入職後の院内選考で決まる場合があります。求人票の配属欄と、面接で聞いた育成の条件を、入職前に書き出しておきます

よくある質問

Q. 看護師になって何年目から目指せますか?

A. 学会の選考基準(2006年、参考)の目安は「看護師経験5年以上、救急看護経験3年以上、または同等の能力」です。新卒で基地病院の救命救急センターに入った場合でも、選考の対象になるのは早くて数年後と考えておくのが現実的です。実際の条件は基地病院ごとに違うため、目指す病院で聞いてください。

Q. 基地病院に就職すれば、必ずフライトナースになれますか?

A. なれるとは限りません。通常の搭乗体制では看護師は1人で、フライトナースは基地病院の看護師の中から選ばれます。配属が救急でなかったり、選考の枠が空かなかったりすることもあります。入職前の面接で、育成の有無と選考の条件を質問しておくと見通しを立てやすくなります。

Q. 講習の受講料は、自己負担ですか?

A. 公的な資料には、受講料を個人と病院のどちらが負担するかの定めが見つかりませんでした(未確認)。ACLS・JPTECなどの講習は主催団体ごとに日程と受講料が違うので、主催団体のホームページで調べます。病院が受講を支援するかどうかは、院内で選考の条件を聞くときや面接で、一緒に質問します。

Q. フライトナースは搭乗の専従ですか、兼務ですか?

A. 研究班の基準には、事業者が医師1〜2名・看護師1名を「通年配置」することが書かれています。ただし、搭乗に専従するのか、院内の勤務と兼ねるのかの定めは見つかりませんでした(未確認)。病院ごとに違う可能性があるので、搭乗の頻度と、搭乗しない日の配置を、面接や院内の面談で聞きます。

Q. フライトナースに向く人、向かない人はいますか?

A. 公的な資料に「向いている人」の定義はありません。研究班の基準の教育目標には「救急隊との対応」「操縦士・整備士・運航管理者との協力」が挙がっており、少人数で他職種と連携して判断する場面が多い仕事だと言えます。編集部の見方では、その場面を負担に感じる人や、年収を上げることだけが目的の人は、向かない可能性があります(年収が上がるかどうかは統計がなく判断できないので、搭乗の手当を先に聞いてから決めます)。向き不向きは、目指す病院の看護師に話を聞くのが確実です。

転職して目指すなら、求人の配属先を見比べ、育成の条件は面接で確かめる

応募先を絞るときは、配属先が救急と明記されているかを求人で見比べると判断しやすくなります。育成と選考の条件は面接で聞いて確かめます。基地病院の求人の有無は、サービスや時期によって異なります。

まとめ

  • フライトナースには国家資格がなく、基地病院の看護師として救急の経験を積み、院内で選ばれてOJTを経て独り立ちする。学会の選考基準(2006年、参考)の目安は看護師経験5年以上・救急看護経験3年以上
  • ドクターヘリは46都道府県57機(2025年度)、基地病院は63病院。救命救急センター312か所の多くは基地ではない
  • フライトナース単独の年収統計は無い。給与は基地病院の規程で決まるので、運営主体と求人票の内訳で確かめる
  • 最初の一手は、基地病院の一覧で通勤圏の病院を探し、救急の経験年数を数え、院内か面接で希望と選考の条件を聞くこと

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