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救急看護師の離職と辞めたい理由|暴力報告のある施設85.5%・出動772万件の実態と対処法

ナースの休憩室 編集部2026年9月20日 更新14分で読めます
目次

救急看護師が辞めたい主な原因は、年間772万件に達した救急出動の増加による業務圧迫・患者暴力(施設の85.5%で報告)・トリアージの精神的重圧の三重苦です。ただし救急で培ったスキルは転職市場で高く評価されるため、環境を変えることで負担は大きく軽減できます。


救急看護師が「辞めたい」と感じるのは特別なことじゃない

搬送車のサイレン音が聞こえた瞬間、胸がドキっとする。 3件目の搬送を受けながら、まだ1件目のカルテが書けていない。 休憩室でふと涙がこぼれてしまう。 そんな日が、最近増えていませんか?

救急外来は、他の診療科と違う種類の消耗があります。 「いつ来るか分からない」という予測不能な忙しさ。 ウォークインの患者さんが重なる中での優先順位の判断。 「なぜ待たせるんだ」「何もしていないじゃないか」という、患者・家族からの暴言。

これらのプレッシャーに毎日さらされながら、あなたは今日も現場に立ち続けてきました。

「辞めたい」と思う気持ちは、弱さではありません。 それだけ真剣に仕事に向き合ってきた証拠です。 まず、そのことを認めるところから始めてほしいと思います。

看護師の約8割が「辞めたい」と思いながら働いている79.2%

日本医療労働組合連合会 看護職員の労働実態調査(2022年)

なお、正規雇用看護師全体の離職率は11.0%(日本看護協会 2025年調査・2024年度)です。 離職者の数字だけ見ると一桁台に見えますが、その裏に「辞めたいと思いながら働き続けている」79.2%の声が隠れています。 規模別・地域別の内訳は病院看護師の離職率データにまとめています。 あなたの悩みは、決して特別なことではありません。

そして救急外来は、その負荷が数字にも表れている職場です。同じ調査で「この1年で仕事量が大幅に増えた」と答えた人の割合を職場別に見ると、救急部門は29.7%。一般病棟(29.9%)とほぼ並んで最も高い水準でした。「最近きつくなった」というあなたの実感は、気のせいではありません。

救急看護師が辞めたくなる4つの原因

救急外来がつらいのは、「個人の弱さ」ではなく「構造的な問題」があるからです。 データで整理すると、その理由が見えてきます。

患者・家族からの暴力・暴言

厚生労働科学研究「看護職等が受ける暴力・ハラスメントに対する実態調査と対応策検討に向けた研究」(令和元年度、研究代表者:三木明子)は、全国5,341施設に調査票を配り、941施設から回答を得ました。 その941施設のうち、患者・家族等による身体的暴力・精神的暴力・セクシュアルハラスメントのいずれかの報告があった施設は85.5%にのぼります。

問題は「暴力が起きているか」だけではありません。同じ調査では、その暴力がスタッフに何を残したかも施設単位で集計されています。

暴力・ハラスメントの結果報告があった施設の割合
身体的暴力・精神的暴力・セクハラのいずれかが発生85.5%
身体的な受傷が報告された41.0%
労災の適用があった22.4%
精神的不調が報告された15.6%
暴力が原因で休職した職員がいた5.6%
暴力が原因で離職した職員がいた3.9%

出典: 厚生労働科学研究「看護職等が受ける暴力・ハラスメントに対する実態調査と対応策検討に向けた研究」(令和元年度/941施設回答・回収率17.6%)

この表の読みどころは、85.5%と3.9%の落差です。暴力はほぼどこでも起きているのに、「離職」という形で記録に残るのは25施設に1施設ほど。 つまり大半の暴力被害は、辞めるほどではないものとして職場の中に沈み、統計にも残らないまま個人が抱えています。あなたが「これくらいで騒ぐのは大げさかも」と感じてしまうのは、その構造の中にいるからです。 救急外来は急な発症や家族の不安が重なりやすく、暴力リスクが構造的に高い部門でもあります。同じデータを患者からの暴力という角度で扱った精神科看護師が辞めたいと感じたときの対処法も、記録の残し方の参考になります。

「なぜ待たせるんですか」「ちゃんと診てもらっているんですか」—— そう詰め寄られるたびに、心がすり減っていくのは当然のことです。

救急出動の増加がもたらす業務圧迫

総務省消防庁「令和7年版 救急・救助の現況」(2026年1月公表)によると、2024年(令和6年)中の救急出動件数は772万740件で、前年から7万9,753件(1.0%)増えました。搬送人員も677万1,193人(前年比+12万7,814人、1.9%増)です。 このうち救急自動車による出動件数・搬送人員は、いずれも集計を開始した昭和38年以降で過去最多でした。

増えているのは件数だけではありません。119番通報を受けてから医師に引き継ぐまでの病院収容所要時間は平均約44.6分で、新型コロナ禍前の令和元年と比べて約5.1分延びています。 1件あたりの拘束時間が延びたまま件数が過去最多を更新している——これが「1件の対応が終わる前に次の搬送が入る」状況の正体です。 終わりの見えないベルトコンベアのような感覚は、あなたの処理速度の問題ではなく、入口と出口の両方で起きている変化の結果です。

トリアージの精神的な重さ

「この患者さんを後回しにして、本当に大丈夫だろうか」

この問いを1日に何十回も繰り返す仕事が、トリアージです。 判断が正しくても、精神的な摩耗は積み重なります。 日本医労連(2022年)の調査では、この3年間に仕事上のミスやニアミスを起こしたことが「ある」と答えた看護職員は86.0%。そして「医療・看護事故が続く大きな原因」(上位2つ選択)の1位は「慢性的な人手不足による医療現場の忙しさ」で86.3%と突出していました。2位の「看護の知識や技術の未熟さ」37.0%に、実に49ポイントの差をつけています。 ここが大事な点です。現場の看護職員自身が、事故の主因を個人の技量ではなく人員体制だと見ている。トリアージの判断が怖いとき、私たちはつい「自分の実力不足だ」と考えますが、同僚たちの回答はその逆を指しています。

多科対応と慢性的な残業

救急外来では、内科・外科・小児・精神科など、幅広い疾患に対応しなければなりません。 それだけのスキルを求められながら、労働環境は過酷なままです。 月の時間外労働(不払い残業を含む)が20時間以上に及ぶ看護職員は19.4%にのぼります(日本医労連 2022年)。 急性期病棟・救急外来ではこの割合がさらに高くなりやすい傾向があります。

看護師が仕事を辞めたい主な理由(3つまで選択)

人手不足で仕事がきつい
58.1%
賃金が安い
42.6%
思うように休暇が取れない
32.6%
夜勤がつらい
23.6%
思うような看護ができず達成感がない
23.1%
職場の人間関係
20.1%
家族に負担をかける
13.3%

出典: 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)【問39】(2022年)

救急外来ではこれらの要因が複数重なりやすく、「どれか一つが解消されれば楽になる」という状況にもなりにくいのが現実です。

今すぐ動くべき?救急ナースの"危険サイン"チェック

「辞めたい」という感情には、軽い疲れのレベルから、バーンアウト(燃え尽き症候群)の一歩手前まで、幅があります。 自分の状態を客観的に確認するために、以下のチェックリストを使ってみてください。

※ このチェックリストは気づきの目安であり、医学的な診断ではありません。当てはまる数で状態が決まるものでもありません。精神的な不調が続く場合は、医療機関に相談することも選択肢の一つです。

気になる項目があった方は、次のセクションの対処法を参考にしてみてください。

救急看護師が辞めたいときの3つの対処法

「辞めたい」と感じたとき、取れる道は3つあります。 どれが正解ということはありません。今の自分に合った選択肢を見つけてみてください。

1. 職場内でできることを試す

まず、環境を変えずに改善できることがないか確認してみましょう。

  • 院内の暴力対応マニュアルを確認し、上長に申し出る
  • 働き方の配慮(シフト調整・残業削減)を書面で申し出る
  • 産業医やEAP(従業員支援プログラム)を活用する

改善を試みた事実は、のちに転職活動の場面でも「なぜ転職を選んだか」の説明として活きることがあります。 「職場に相談したが改善されなかった」という経緯は、誠実な転職理由として評価されます。

⚠️ つまずきやすい落とし穴: 改善申請が逆効果になるケース

「患者暴力の対策を強化してほしい」と師長に申し出たところ、「救急は昔からそういうもの」と取り合ってもらえず、むしろ「クレームが多い看護師」というレッテルを貼られてしまう——そうした事例が現場では起きえます。口頭だけで訴えても記録が残らないため、改善されなかった事実が後から証明しにくくなります。対策として、申し出の内容・日時・相手の返答をメモ帳や業務日誌に記録しておくことが重要です。改善されない場合は、師長の上の看護部長や、病院の産業医を経由して申し入れる手順を踏むことで、組織として動きやすくなります。「言ったのに動いてもらえなかった」を防ぐには、記録の積み上げが最善の備えです。

2. メンタルの回復を最優先にする

出勤するたびに涙が出る、食欲がない、眠れないという状態が2週間以上続いている場合は、まず医療機関への相談をおすすめします。 転職活動は、心身が安定してからでも遅くありません。

「辞める」と「休む」は、別の選択肢です。 休職制度・傷病手当金(1日あたり標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2。2022年1月の改正で、支給開始日から通算して1年6か月まで受け取れるようになりました)を使いながら回復を優先することが、長期的には正しい判断になることも多いです。途中で復職した期間は日数に算入されないため、段階的に復帰しても残りを使えます。

うつやメンタル不調を抱えながら転職を考えている方には、こちらの記事も参考になります。 うつ・メンタル不調を抱えながら転職を考える方へ

⚠️ つまずきやすい落とし穴: 「少し落ち着いた」タイミングで動き始めて再燃するケース

「先週より楽になったから大丈夫」と思って復帰を急ぎ、搬送のサイレン音を聞いた瞬間に体が固まってしまう——回復の途中で以前と同じ刺激に触れて調子を崩す人は少なくありません。復帰の時期やフルシフトに戻すペースは自分の感覚だけで決めず、主治医や産業医の判断に従ってください。必要であれば、軽業務や短時間勤務から段階的に戻す形を職場に相談します。その際は「最初の2週間は日勤のみ・受け持ち数を減らす」のように条件を具体的に書き出し、上司と書面で確認しておくと、現場の善意任せにならずに済みます。焦って復帰して調子を崩すと、次に休む期間がさらに長引くこともあります。

3. 救急以外のキャリアを具体的に考える

「救急以外に何ができるか分からない」という声をよく聞きます。 しかし実際には、救急外来で培ったスキルは幅広い職場で高く評価されます。

転職先の例として、以下が挙げられます。

  • 内科・外科クリニックの急患対応:トリアージ経験が直結する
  • 訪問看護ステーション:急変対応力が在宅でも頼りにされる
  • 産業看護師:フィジカルアセスメント能力が活きる
  • ICU・HCU:救急との親和性が高く、キャリアの幅が広がる

看護師の平均年収は524.7万円(厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査 2025年)で、給与所得者全体の平均給与478万円(国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」2024年分)の約1.1倍、金額にして約47万円上回っています。 この数字は「救急を離れたら給与が下がって当然」と先回りして諦めないための目安として使ってください。救急外来での実務経験を持つ看護師は、この水準以上での転職が期待できるケースも多くあります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴: 「救急スキル=忙しい職場で通用する」と過信してミスマッチが起きるケース

救急の「瞬発力」と、ICUや訪問看護が求める「継続的な観察・丁寧なアセスメント」は、力の入れどころが異なります。救急外来では「次が来る前に片付ける」速度重視の判断が習慣になっているため、ICUで「なぜこのタイミングで観察を変えたのか」という記録の深さを求められたとき、戸惑う方がいます。転職前に、応募先がどういう看護観を重視するかを転職エージェントや求人票で確認し、自分のペースや得意なアセスメントスタイルと合うかを見極めることが大切です。職場見学や短期バイトでの事前確認も有効な手段です。

ICUへの転科を検討している方は、こちらも参考にしてみてください。 ICU看護師を辞めたいと感じたら

転職の全体の流れを把握したい方はこちら。 看護師の転職の流れ

救急の経験、他の職場でも十分に活きます

トリアージ・急変対応・多科対応——これらのスキルを求めている職場は、あなたが思っている以上にあります。まずは選択肢を見てみるだけでも、気持ちが少し楽になります。

失敗例・よくあるNG

救急看護師が「辞めたい」と感じたときに、実際にありがちな失敗パターンをまとめます。同じミスをしないための参考にしてみてください。

NG①:院内暴力を「慣れ」で黙認し続けた結果、PTSDに近い症状が出た

「救急だから仕方ない」「他のスタッフも我慢している」と思い、暴言・暴力を記録せずに流し続けたケースです。半年後に搬送受け入れの声がかかるだけで動悸が起きるようになり、休職を余儀なくされます。暴力は1件目から記録し、師長・看護部に都度報告する習慣を持つことが大切です。暴力対応記録は、病院に改善を求める際の根拠になるだけでなく、労災申請の際にも必要な証拠になります。

NG②:「夜勤なし訪問看護」へ転職したが、孤独な判断に耐えられなかった

救急のチームで動く環境に慣れているため、訪問看護の「一人で患者宅に入り、急変を自分だけで判断する」場面に強いストレスを感じるケースがあります。「夜勤がなくなる=楽になる」とだけ考えて転職すると、業務の質が根本的に異なることに気づくのが入職後になります。転職前に、一日同行体験や見学で「判断の孤独さ」を実感しておくことが有効です。

NG③:体調が改善しないまま転職活動を急ぎ、条件だけで職場を選んだ

バーンアウト気味の状態で「とにかく今の職場から出たい」と焦り、給与・休日日数・立地だけで転職先を決めてしまうケースです。入職後3か月以内に「こんなはずじゃなかった」と感じ、再び転職を検討する悪循環に陥りやすくなります。転職活動中は、求人票の条件面だけでなく、「どんな患者層を担当するか」「急変時のサポート体制はあるか」など、働き方の中身を確認する余裕を持つことが重要です。

よくある疑問 Q&A

Q. 救急の経験は他の診療科で評価されますか?

A. 救急経験は他の診療科で高く評価されます。トリアージ能力・フィジカルアセスメント・多科疾患への対応力は、急性期病棟・訪問看護・クリニックなど幅広い職場で求められるスキルです。「救急しかやっていないから通用しないかも」と感じる方は多いですが、実際には逆です。ただし、応募先が求める具体的な経験とのマッチングが重要なので、転職エージェントに確認するのが確実です。

Q. 辞める前にやっておくべきことはありますか?

A. 辞めると決める前に、準備しておくと安心なことが3つあります。①在職中に転職活動を始めること、②退職の意向は1〜2か月前に伝えること、③引き継ぎ計画を整理することです。退職の切り出し方については退職の伝え方ガイド、円満な辞め方については円満退職のコツもあわせて参考にしてください。

Q. 救急経験を活かして夜勤なしで働く方法はありますか?

A. 夜勤がつらいのは、救急では特に深刻な問題ですよね。選択肢はいくつかあります。日勤のみの救急クリニックや、訪問看護の日勤専属、産業看護師などが選択肢です。夜勤がなくなることで生活リズムが安定し、心身の回復を実感する方も多いです。夜勤なしの転職先探しについては夜勤なしで働ける職場の探し方も参考になります。

まずは「どんな選択肢があるか」を知るだけでOK

転職を決めていなくても大丈夫。救急経験を活かせる求人を見るだけで、「ここ以外にも道がある」と実感できます。

まとめ:救急経験は「あなたの強み」です

最後に、この記事で一番伝えたかったことをまとめます。

  1. 辞めたいと感じる背景には構造的な要因がある:搬送件数の増加・患者暴力・トリアージ負担という、個人の努力では解消しきれない問題が重なっています。
  2. 「辞める・休む・異動」の3択を冷静に整理することが最初の一歩:感情が高ぶっているときは、選択肢を広げてから判断するのが大切です。
  3. 救急経験は汎用性が高く、次のキャリアでも活かせる:トリアージ・急変対応・フィジカルアセスメントは、幅広い職場で求められるスキルです。

「辞めたい」という気持ちを持ちながら働き続けることは、長期的には本人にも患者さんにもよくありません。 まずは自分の状態を正直に見つめ、必要なら一歩を踏み出してみてください。

次のステップへ

悩みの種類別の対処法は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法まとめにまとめています。

参考文献

  1. 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果(2024年度データ、2026年3月公表)2026-09-08 閲覧)
  2. 2022年 看護職員の労働実態調査|日本医療労働組合連合会(2023年5月発表、回答35,933人)2026-09-08 閲覧)
  3. 令和7年版 救急・救助の現況|総務省消防庁(令和6年中の実績、2026年1月公表)2026-09-08 閲覧)
  4. 看護職等が受ける暴力・ハラスメントに対する実態調査と対応策検討に向けた研究(令和元年度)|厚生労働科学研究成果データベース2026-09-08 閲覧)
  5. 令和7年賃金構造基本統計調査|厚生労働省(2025年、2026年3月公表)2026-09-08 閲覧)
  6. 令和6年分 民間給与実態統計調査|国税庁(2025年9月公表)2026-09-08 閲覧)
  7. 傷病手当金|全国健康保険協会(協会けんぽ)2026-09-08 閲覧)