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転職ガイド

公務員看護師の年収と採用|国立・公立病院でも公務員とは限らない理由

ナースひとやすみ 編集部約12分で読めます
目次

「国立病院や公立病院の看護師は公務員」と思われがちですが、そうとは限りません。公務員として働ける病院は、主に都道府県・市町村が直接運営する病院です。身分によって、給与の決まり方や採用のされ方も変わります。国立病院機構の職員は2015年4月から国家公務員ではなく、公立病院を運営する地方独立行政法人(公営企業型)68法人のうち、職員が地方公務員になるのは2法人だけです(2025年4月1日時点)。

年収の目安は、自治体病院の常勤看護師で約624.7万円(2024年度、平均41歳、編集部算出)、国立病院機構の病院看護師で528.5万円(2024年度実績、平均38.2歳)でした。

国立・公立病院の看護師は、公務員とは限らない

「県立」「市立」と名前に付いていれば公務員のはず、と確かめずに応募するのは、後で触れるとおりよくある失敗です。安定を求めて公的な病院を考えるとき、最初に確かめたいのは「その病院の職員が本当に公務員か」です。身分によって、給与の決まり方、副業などのルール、採用のされ方が変わるからです。病院の開設者ごとに整理します。

開設者病院数(2026年6月末)職員の身分根拠
厚生労働省14国家公務員国の機関
国立病院機構140国家公務員ではない(2015年4月〜)平成26年法律第67号 附則23条・24条
地域医療機能推進機構・労働者健康安全機構・国立高度専門医療研究センター57・30・6国家公務員ではない独立行政法人通則法51条(国家公務員となるのは行政執行法人の職員だけ)
国立大学法人47国家公務員ではない国立大学法人法 附則4条・5条
都道府県・市町村178・574地方公務員(自治体が直接運営する場合)地方公務員法
地方独立行政法人140特定地方独立行政法人だけ地方公務員地方独立行政法人法47条

出典:厚生労働省「医療施設動態調査(令和8年6月末概数)」、総務省「独立行政法人一覧(令和7年4月1日現在)」「地方独立行政法人の設立状況(令和7年4月1日現在)」、e-Gov 法令検索

国が開設する病院のうち、国立病院機構・地域医療機能推進機構などの独立行政法人と、国立大学法人の病院は、職員が国家公務員ではありません。独立行政法人で職員が国家公務員となるのは「行政執行法人」(7法人)だけで、病院を運営する法人は含まれていないからです。

公立病院も同じです。地方独立行政法人のうち病院などを運営する公営企業型は68法人で、職員が地方公務員となる特定地方独立行政法人はそのうち2法人でした。残りの66法人の職員は、法人の職員です。特定地方独立行政法人にあたるかは設立する自治体が定款で定めるので(地方独立行政法人法2条2項)、応募先の募集要項の「身分」の欄で確かめるのが確実です。また、開設者が都道府県や市町村でも、指定管理者制度(地方自治法244条の2)で別の法人が運営している病院では、看護師はその法人に雇われます。

給与の決まり方の違い

公務員かどうかで、給与を決める仕組みが変わります。昇給や賞与の見通しの立てやすさに関わるので、比べる基準の1つめにします。

区分給与を決めるもの賞与比べるときのポイント
地方公務員(自治体が直接運営する病院)各自治体の条例と給料表(地方公務員法24条)。地方公営企業法を全部適用している病院では、給与の種類と基準を条例で定める(同法38条)期末手当・勤勉手当給料表は自治体ごとに違う。全部適用の病院は病院事業の経営の状況も考えて給与を定める
国家公務員(厚生労働省の病院)給与法の医療職俸給表(三)。人事院勧告を受けて法律で改定期末手当・勤勉手当勧告の額は、法律が改正されるまで確定しない
国立病院機構法人の給与規程。国家公務員の給与、民間企業の給与、法人の経営状況などを考慮して決める業績手当(国の期末・勤勉手当に相当)国家公務員の給与を考慮するが、改定は法人が自分の給与規程で行う

出典:地方公務員法24条、地方公営企業法38条・39条、独立行政法人国立病院機構「役職員の報酬・給与等について(令和6年度)」

地方公務員の給与は、生計費や、国・ほかの自治体・民間の給与などを考えて条例で定めると法律で決まっています。病院事業は、原則として地方公営企業法の財務の規定だけが適用されますが、条例で同法を全部適用している病院の看護師は「企業職員」になり、地方公務員法24条ではなく地方公営企業法38条が適用されます。この場合は、生計費などに加えて病院事業の経営の状況も考えて給与を定めることになっています。国立病院機構も、国家公務員の給与を考慮して給与を決める仕組みです。2024年度には、大卒程度の初任給を国家公務員(2023年度)と同程度の水準に引き上げ、基本給表を全号俸で最低2.3%程度引き上げたと公表しています。

年収で比べると、どのくらい違うか

公務員の看護師の年収は、総務省が毎年まとめる地方公営企業の決算から、職種別に確かめられます。

自治体病院の常勤看護師の年収の目安。看護師全体(524.7万円)より約100万円高い水準(平均41歳。調査の年度と算出方法が違うため目安)約624.7万円

総務省「令和6年度地方公営企業年鑑」病院事業 職種別給与に関する調をもとに編集部が算出(期末・勤勉手当を含む平均給与月額×12)(2024年)

比べる数字平均年収の目安平均年齢何の数字か
自治体病院の常勤看護師(総務省「令和6年度地方公営企業年鑑」)約624.7万円41歳2024年度の平均給与月額(期末・勤勉手当を月あたりに含む)×12(編集部算出)
国立病院機構の病院看護師(同機構の公表資料)528.5万円38.2歳2024年度の年間給与額の実績(年俸制の看護部長を除く)
看護師全体(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」)524.7万円42.1歳2025年6月の現金給与額×12+2024年の賞与(編集部算出)

自治体病院で働く常勤の看護師は154,046人で、平均給与月額は520,568円でした。内訳は、基本給(給料・扶養手当・地域手当)が313,288円、手当が207,280円です。手当には、期末・勤勉手当117,632円(月あたり)、特殊勤務手当30,325円、時間外勤務手当27,159円などが含まれます。

平均年齢がほぼ同じ看護師全体(42.1歳)と比べると、自治体病院の看護師は約100万円高い水準です。ただし調査の年度と給与の数え方が違うため、差の大きさは目安として見てください。総務省の別の調査(地方公務員給与実態調査、2025年4月1日時点)で看護・保健職の給与から試算しても約626万円で、近い水準でした。

運営する自治体の種類でも違いがあります。

自治体病院の常勤看護師の年収の目安(経営主体別・2024年度)

町村(平均46歳)
596.6万円
組合(平均42歳)
606.8万円
市(平均41歳)
615.2万円
指定都市(平均38歳)
639.0万円
都道府県(平均40歳)
640.3万円

出典: 総務省「令和6年度地方公営企業年鑑」第3章 病院事業 総括表(13)職種別給与(平均給与月額)に関する調。平均給与月額×12で編集部が算出。看護師の人数は都道府県53,011人・指定都市15,291人・市63,619人・町村5,206人・組合16,919人。平均年齢は会計年度任用職員を含む(2024年)

※ 差が見えるよう、グラフの起点は0円ではありません。

平均年齢が最も高い町村(46歳)の年収が最も低く、年齢の順には並んでいません。自治体の種類ごとの差には年齢以外の要素が効いていると読めますが、この表からは理由までは分かりません。

国立病院機構では、通勤手当を除いた職位別の年間給与が、看護師497.7万円(平均36.6歳)、看護師長721.1万円(平均49.5歳)でした。平均年齢が違う数字どうしなので、年齢をそろえずに「どこが一番高い」とは言えません。

採用のされ方の違い

地方公務員の採用は、地方公務員法17条の2で決まっています。人事委員会を置く自治体では競争試験が原則で、人事委員会規則で定める場合は「選考」によることもできます。人事委員会を置かない自治体では、競争試験か選考のどちらかです。総務省の初任給の調査では、看護師は「選考採用」の区分で集計されています。試験の内容、年齢の要件、募集の時期は、自治体や病院局ごとに違うため、応募先の募集要項で確かめるしかありません。

国立病院機構や地方独立行政法人(特定を除く)、国立大学法人の病院は、公務員の採用試験の対象ではなく、それぞれの法人が看護師を採用します。

初任給の水準は、国家公務員の看護師(短大3卒)が医療職俸給表(三)の2級5号俸で263,400円(2026年9月時点の給与法の額。2026年8月の人事院勧告は274,400円への引き上げを勧告)、都道府県の看護師(短大3卒)の初任給基準額の平均が252,350円(2025年4月1日時点)です。詳しい比べ方は看護師の初任給で整理しています。

働き方のルールの違い(副業など)

地方公務員は、任命権者の許可を受けなければ、報酬を得てほかの仕事をすることができません(地方公務員法38条。パートタイムの会計年度任用職員などの非常勤職員は対象外)。休日に単発のアルバイトをしたい人は、許可が必要です。法人の職員の場合は、それぞれの就業規則で決まります。副業のルールは看護師の副業で詳しく扱っています。

状況別の選び方

重視すること候補になる病院理由と注意点
公務員の身分と、条例で決まる給与都道府県・市町村が直接運営する病院地方公務員。職種別の給与は総務省の地方公営企業年鑑で公表される。副業は許可制
国家公務員に準じた給与体系と、全国規模の法人国立病院機構140病院。公務員ではないが、給与は国家公務員の給与などを考慮して決まる
公立病院で働くこと(身分にはこだわらない)地方独立行政法人の病院多くは法人の職員。給与は法人の規程で決まる
副業や兼業をしたい公務員以外の法人の病院就業規則で可否を確認する

向いている人:給与が条例や給料表で決まり、先の見通しを立てやすいことを重視する人は、自治体が直接運営する病院が候補になります。

向いていない人:「公務員の身分」そのものを求めているのに、国立病院機構や多くの地方独立行政法人を選ぶと、想定と違うことになります。副業を前提に考えている人は、公務員の許可制が負担になります。

公務員看護師を目指すときの手順

  1. 運営主体を確かめる:開設者だけでなく、自治体の直営か、地方独立行政法人か、指定管理者かを確かめる
  2. 身分を確かめる:募集要項で「地方公務員」「法人の職員」のどちらかを読む
  3. 給与の仕組みを確かめる:給料表、期末・勤勉手当(または法人の賞与)、地域手当や夜勤の手当
  4. 採用の方法を確かめる:選考の内容、年齢などの要件、募集の時期
⚠️ つまずきやすい落とし穴:「県立」「市立」の名前だけで身分を判断する

病院の名前だけで身分を判断するのは危険です。「県立」「市立」と付いていても、地方独立行政法人が運営していて、職員は法人の職員という病院は少なくありません。総務省の調べでは、公営企業型の地方独立行政法人68法人のうち、職員が地方公務員になるのは2法人でした。応募してから「公務員ではなかった」と気づくと、退職金の制度や副業のルールの前提が変わってしまいます。募集要項の「身分」「雇用主」の欄と、運営する法人の名前を、応募の前に必ず確かめてください。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:平均の年収を自分に提示された給与と比べる

総務省の平均や、この記事の年収の目安を、自分に提示された給与と直接比べるのもよくある失敗です。自治体病院の看護師の約624.7万円は、平均41歳・平均経験年数15年の集団の数字で、時間外勤務手当や特殊勤務手当も含みます。採用されたばかりの人の給与は、この平均よりずっと低いところから始まります。採用される人の給与は、給料表のどの級・号俸から始まるかで決まり、前の職場での経験年数の扱いは自治体の規則によります。比べるなら、応募先の給料表で自分が何級何号俸になるかを確認してください。

公的病院を選ぶときの失敗例

  • 失敗例1:「国立病院なら公務員」と思って応募する → 国立病院機構の職員は2015年4月から、国立大学法人の病院の職員は法人化のときから、国家公務員ではありません
  • 失敗例2:公務員の病院に移っても、休日のアルバイトを任命権者の許可を得ずに続ける → 地方公務員が報酬を得てほかの仕事をするには、任命権者の許可が要ります(地方公務員法38条)
  • 失敗例3:一般行政職の公務員試験と同じ対策をする → 看護師は選考の区分で採用されることがあり、内容は募集要項で確かめます

よくある質問

Q. 国立病院機構の看護師は公務員ですか?

A. 公務員ではありません。国立病院機構の職員は、独立行政法人制度の見直しに伴う法改正(平成26年法律第67号)の附則により、2015年4月1日から国家公務員の身分を失っています。給与は、国家公務員の給与や民間の給与、法人の経営状況などを考慮して法人が決めています。

Q. 県立・市立病院の看護師は公務員ですか?

A. 都道府県や市町村が直接運営する病院であれば、看護師は地方公務員です。ただし「県立」「市立」という名前でも、地方独立行政法人(公営企業型)が運営している場合、職員が地方公務員になるのは68法人のうち2法人だけで、残りは法人の職員です。指定管理者制度で別の法人が運営している病院では、その法人に雇われます。運営主体と身分は、募集要項の「身分」「雇用主」の欄で確かめてください。

Q. 公務員の看護師の年収は、民間より高いですか?

A. 平均では高い水準です。総務省の地方公営企業年鑑から計算した自治体病院の常勤看護師の年収の目安は約624.7万円(平均41歳)で、看護師全体の524.7万円(平均42.1歳)より約100万円高く出ます。ただし調査の年度と数え方が違うため、個々の病院の給与は給料表や募集要項で確かめてください。

Q. 公務員の看護師になるには、試験が必要ですか?

A. 地方公務員の採用は、競争試験または選考で行われます(地方公務員法17条の2)。看護師は選考の区分で採用されることがあり、試験の内容や年齢の要件は自治体ごとに違います。応募先の募集要項で確認してください。

法人が運営する公的病院の求人は、条件がそれぞれ違います

国立病院機構や地方独立行政法人などの病院は、給与や賞与の決まり方が法人ごとに違います。自治体の採用試験とは別に、法人の求人も並べて比べると選びやすくなります。

まとめ

  • 国立病院機構・国立大学法人・多くの地方独立行政法人の病院の看護師は、公務員ではない。公務員として働けるのは主に自治体が直接運営する病院
  • 自治体病院の常勤看護師の年収の目安は約624.7万円(2024年度、平均41歳)、国立病院機構の病院看護師は528.5万円(2024年度実績、平均38.2歳)
  • 応募の前に、運営主体・身分・給与の仕組み・採用の方法を募集要項で確かめる

状況に合わせて、次の記事も確認できます。

参考文献

  1. 総務省「令和6年度地方公営企業年鑑」第3章 事業別 6.病院事業(2026-09-25 閲覧)
  2. 総務省「令和7年地方公務員給与実態調査結果等の概要」(2026-09-25 閲覧)
  3. 独立行政法人国立病院機構「役職員の報酬・給与等について(令和6年度)」(2026-09-25 閲覧)
  4. 厚生労働省「医療施設動態調査(令和8年6月末概数)」(2026-09-25 閲覧)
  5. 総務省「地方独立行政法人の設立状況(令和7年4月1日現在)」(2026-09-25 閲覧)
  6. 総務省「独立行政法人一覧(令和7年4月1日現在)」(2026-09-25 閲覧)
  7. e-Gov 法令検索「地方公務員法」(2026-09-25 閲覧)
  8. e-Gov 法令検索「地方公営企業法」(2026-09-26 閲覧)
  9. 人事院「令和8年 人事院勧告」(2026年8月7日)(2026-09-26 閲覧)
  10. e-Gov 法令検索「独立行政法人国立病院機構法」(2026-09-25 閲覧)
  11. e-Gov 法令検索「地方独立行政法人法」(2026-09-25 閲覧)
  12. 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者 職種(e-Stat)(2026-09-25 閲覧)