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看護師の転職回数が多いのは不利?「平均回数」がない理由と職歴の説明のしかた

ナースひとやすみ 編集部約11分で読めます
目次

「看護師の転職回数の平均は◯回」という数字を、公的統計は出していません。厚生労働省にも日本看護協会にも、転職回数を尋ねた調査が見当たらないからです。代わりに分かるのは、看護師の平均勤続年数が9.8年、平均年齢が42.1歳だということ。22歳で免許を取ってから20年で、いまの職場に9.8年。差の10年ほどを別の職場で過ごしている計算になります。この記事は、回数を数える代わりに、自分の職歴をどう位置づけ、どう説明するかを扱います。

「看護師の転職回数の平均」を示した公的統計はありません

転職サイトの記事で「看護師の平均転職回数は◯回」という数字を見かけますが、出典をたどれる公的調査は確認できませんでした。厚生労働省の「雇用動向調査」「賃金構造基本統計調査」「衛生行政報告例」、日本看護協会の「病院看護実態調査」「看護職員の賃金に関する実態調査」、日本看護協会 中央ナースセンターの登録データ分析——いずれにも、転職回数を尋ねる設問はありません。

ですので本記事では「平均◯回」を書きません。代わりに、位置づけを確かめられる代理指標を3つ使います。

代理指標何が分かるか出典
平均勤続年数1つの職場にどれくらい留まるのが標準か厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表
転職入職率1年間に何%の人が転職して入職しているか厚生労働省「令和6年雇用動向調査」
求職者の経験年数分布いま転職市場にいる人はどんな層か日本看護協会 中央ナースセンター「2024年度 ナースセンター登録データに基づく分析報告書」

順に見ていきます。

平均勤続年数9.8年──ひとつの職場に生涯いる職業ではない

看護師の平均勤続年数(企業規模10人以上・男女計、平均年齢42.1歳)9.8年

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表(2025年)

まず、他の働き手と並べます。

区分平均年齢平均勤続年数
看護師42.1歳9.8年
一般労働者(男女計)44.4歳12.7年
一般労働者(女性)43.2歳10.4年

出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表および結果の概要 第2表。いずれも企業規模10人以上。

看護師の9.8年は、一般労働者全体の12.7年より2.9年短い。ただし女性の一般労働者10.4年とは0.6年しか違いません。看護師が特別に転職を繰り返す職種、というわけではないのです。差の大半は、男性を含めた全体平均との比較から生まれています。

企業規模別に見ると、もうひとつのことが分かります。

企業規模平均年齢平均勤続年数労働者数
1,000人以上37.6歳9.8年約34.2万人
100〜999人44.3歳10.3年約42.3万人
10〜99人46.3歳8.1年約13.9万人

出典:同第1表(企業規模計は約90.3万人)。

10〜99人の職場は、平均年齢が46.3歳といちばん高いのに、勤続年数は8.1年でいちばん短い。 平均すると38歳前後で入職している計算で、ここで働く人の多くが他の職場を経てから移ってきたことを示しています。小規模なクリニックや施設は、そもそも中途入職で成り立っている職場なのです。

産業全体の動きも同じ方向です。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」によると、医療・福祉の転職入職率は9.7%(産業計も9.7%)。常勤にあたる一般労働者だけで見ると医療・福祉は9.2%で、産業計の8.3%を0.9ポイント上回ります。1年間に11人に1人が転職して入職してくる業界です。

転職市場にいる看護師の55.4%は、経験10年以上

では、いま実際に職場を探している看護師はどんな層なのか。ナースセンターに常勤希望で登録した看護師(看護経験あり、30,141人)の経験年数の分布です。

ナースセンターに常勤希望で登録した看護師の経験年数(2024年度)

1年未満
2.5%
1〜5年
13.0%
5〜10年
15.5%
10〜15年
13.1%
15〜20年
10.8%
20〜25年
11.4%
25〜30年
8.0%
30〜35年
6.4%
35〜40年
4.0%
40年以上
1.7%

出典: 日本看護協会 中央ナースセンター「2024年度 ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書」表1-7-1(看護師・常勤希望・看護経験あり、n=30,141)(2024年)

※経験年数は必須回答項目ではないため「不明」が13.6%あり、グラフは原表の割合のまま(不明を含む分母)で示しています。表示した10区分の合計は86.4%です。

最も多いのは経験5〜10年の15.5%。そして経験10年以上を合計すると55.4%になります。転職市場にいる看護師の過半数が、10年を超えるキャリアの持ち主だということです。1年未満はわずか2.5%。

この分布が意味するのは単純です。「経験を積んだ人ほど動いている」 のであって、動く人=定着できない人ではありません。あなたの職歴に複数の職場が並んでいるなら、それは同時に複数の環境を知っているということでもあります。

年齢構成そのものは看護師は何歳が多い?年齢構成と転職しやすさで扱っています。

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複数の職場の経験を強みとして並べ直すところから、無料で相談できます。

回数より「説明の一貫性」──職歴の棚卸しと書き方

採用側が短期離職や転職回数をどう評価するかを示した公的な調査データはありません。したがって「◯回を超えると不利」と断定することはできませんし、この記事でもしません。確実に言えるのは、履歴書・職務経歴書・面接で説明が食い違えば、そこが論点になるということだけです。逆に言えば、一貫していれば論点になりません。

ステップ1:在籍期間を、記憶ではなく記録で確定する

職歴が多いほど、在籍期間の記憶は曖昧になります。書類の日付がずれていると、それだけで確認事項が増えます。記録で確定してください。

  • 雇用保険被保険者証/雇用保険受給資格者証:資格取得日・喪失日が載っています
  • ねんきん定期便・ねんきんネット:厚生年金の加入記録で、事業所ごとの加入期間が分かります
  • 退職時等の証明書:労働基準法第22条第1項により、労働者が使用期間・業務の種類・その事業における地位・賃金・退職の事由について証明書を請求した場合、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと定められています。過去の勤務先に対しても請求できます

ステップ2:各職場を「入った理由・やったこと・出た理由」の3行で書く

職歴の数だけ、この3行を書きます。記入見本はこの形です。

【A病院(急性期・500床)2018.4〜2021.3】
入った理由:新卒。急性期で基礎を身につけるため
やったこと:消化器外科病棟。術後管理、プリセプター補佐(2年目〜)
出た理由:夜勤月5回が続き、体調管理が難しくなった

【Bクリニック(内科・無床)2021.5〜2023.8】
入った理由:夜勤を外して日勤帯で経験を積むため
やったこと:内視鏡介助、健診業務、受付との連携
出た理由:内視鏡以外の看護技術に触れる機会が減った

【C訪問看護ステーション 2023.10〜現在】
入った理由:患者さんの生活まで見る看護に戻りたかった
やったこと:在宅の慢性期管理、ターミナルケア

ステップ3:出た理由の「軸」を1本に揃える

3行を並べると、自分の判断の軸が見えてきます。上の例なら「体を壊さずに、看護技術に触れ続けられる環境を探してきた」という1本の線になります。回数が多いほど、軸が見えたときの説得力は強くなります。 逆に、毎回ばらばらの理由(給料・人間関係・通勤・シフト)が並ぶと、次も同じ理由で辞めるのではと見られます。

軸が見つからないときは、各職場の「出た理由」に共通する言葉を探してください。「時間」「技術」「関わり方」のどれかに寄っていることが多いはずです。伝え方の具体例は看護師の転職理由の伝え方にまとめています。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

職歴が多い人が最もやりがちなのが、短い在籍期間の職場を書かずに済ませることです。しかし雇用保険の加入履歴や年金記録には残るため、入職後の手続きで食い違いが出ます。しかも「隠した」という事実のほうが、在籍期間の短さより重く受け止められます。書いたうえで説明する形にしてください。逆に、すべてを同じ分量で書く必要もありません。履歴書の職歴欄には全件を年月と施設名・部署で淡々と並べ、職務経歴書では直近3〜5年に紙面の8割を割く。これで「隠していない」と「今の自分が何をできるか」の両方が伝わります。在籍が数か月の職場も、行として書いたうえで理由を1行添えるほうが、空白期間として放置するより説明が短く済みます。

履歴書に書ききれないときは、職務経歴書に分ける

履歴書の職歴欄は、施設名・部署・入職と退職の年月を時系列に並べる欄です。行数が足りないときは、履歴書には全件を最小限の情報で並べ、詳細は職務経歴書に回します。職務経歴書は形式が自由なので、職場ごとの記述量を変えられます。

書式と記入例は看護師の履歴書の書き方と、親記事の看護師の職務経歴書の書き方にまとめています。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

職務経歴書を「職歴の羅列」にしてしまうと、転職回数の多さだけが目立つ書類になります。時系列に全職場を並べる編年体式ではなく、経験した業務ごとにまとめるキャリア式(例:「急性期病棟での術後管理 5年」「在宅看護 2年」「内視鏡介助 1年」)にすると、職場の数ではなく経験の幅が先に目に入ります。職場名は各項目の中に括弧書きで添えれば十分です。ただし履歴書のほうは時系列で全件を書くので、両方を並べたときに矛盾しないよう、年月は必ず一致させてください。書式を変えるのは「見せ方」の工夫であって、事実を省くことではありません。

転職回数が多い人ほど、先に確認しておきたい制度

職場を移るときに損をしやすいポイントが2つあります。

雇用保険の算定基礎期間は、条件次第で通算される

失業保険の給付日数を決める「算定基礎期間」は、前の職場の被保険者期間と通算されます。雇用保険法第22条第3項は、通算のうえで次の期間を除くと定めています。

  • 直前に被保険者でなくなった日が、次に被保険者となった日の前1年の期間内にないとき(=離職から再就職までが1年を超えたとき)より前の期間
  • 基本手当または特例一時金の支給を受けたことがあるときの、その受給資格に係る離職日以前の期間
  • 教育訓練休暇給付金の支給を受けた場合の、その休暇の開始日前の期間と休暇の期間(第3号)
  • 育児休業給付金・出生時育児休業給付金の支給に係る休業の期間(第4号)

裏を返せば、離職から1年以内に次の職場に入り、その間に基本手当を受け取っておらず、育児休業給付などの除外期間に当たらなければ、過去の期間は積み上がっていきます。3か所を3年ずつでも、条件を満たしていれば9年分です。手続きの全体像は看護師の失業保険と退職後の手続きをご覧ください。

退職金は職場ごとにリセットされる

一方、退職金は通算されません。移るたびに勤続年数はゼロから数え直しです。医療・福祉では自己都合退職で退職一時金を受け取るのに必要な最低勤続年数を「3年以上」とする職場が74.5%あるため、3年未満での移動を繰り返すと、そのつど受給資格に届かないことになります。詳しくは看護師の退職金相場で解説しています。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

転職回数が多い人が見落としやすいのが、この2つの制度の「向き」が逆だということです。雇用保険は条件を満たせば積み上がるのに、退職金は移るたびにリセットされる。だから「辞めるかどうか」を考えるとき、雇用保険の心配はあまり要らない一方で、退職金の受給ラインは毎回確認する必要があります。特に入職から2年10か月前後で迷っているなら、退職日を数か月ずらすだけで結果が変わることがあります。次の職場の入職日は交渉できる余地があるので、内定の段階で「◯月◯日からの入職は可能か」を先に確認してください。順番を逆にして退職日を先に確定させると、この調整ができなくなります。

転職回数をめぐるよくある失敗

  • 失敗例1:回数を減らして見せようと、短期の職場を職歴から外した → 雇用保険と年金の記録に残るため、入職後に食い違いが発覚します。書いたうえで1行の説明を添えるほうが、はるかに短く済みます。
  • 失敗例2:辞めた理由を職場ごとに変えて説明した → 前掲の3ステップのとおり、軸を1本に揃えてください。ばらばらの理由が並ぶと「次も同じ」と読まれます。
  • 失敗例3:「回数が多いから選べない」と思い込み、条件を下げて決めた → 転職市場にいる看護師の55.4%は経験10年以上、医療・福祉の転職入職率は9.7%です。同じ選び方を繰り返さないための見極め方は看護師のブラック病院の見分け方、転職直後に合わないと感じたときの判断は看護師が転職に失敗して辞めたいときを参考にしてください。

よくある質問

Q. 看護師の平均転職回数は何回ですか?

A. 転職回数を尋ねた公的な調査が見当たらないため、平均回数は分かりません。代わりに参照できるのが平均勤続年数で、看護師は9.8年(平均年齢42.1歳、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」)。一般労働者の女性10.4年とほぼ同水準です。「平均◯回」と書かれた数字を見かけたら、出典と調査年を確認してください。

Q. 転職3回目ですが、不利になりますか?

A. 採用側が転職回数をどう評価するかを示した公的データはないため、「不利になる」とも「ならない」とも断定できません。確実なのは、履歴書・職務経歴書・面接で説明が食い違うと、そこが確認事項になるということです。各職場の「入った理由・やったこと・出た理由」を3行で書き出し、出た理由の軸を1本に揃えてください。

Q. 職歴が多くて履歴書の欄に収まりません。

A. 履歴書の職歴欄には全件を施設名・部署・年月の最小限で並べ、詳細は職務経歴書に分けます。職務経歴書は形式が自由なので、時系列ではなく経験業務ごとにまとめるキャリア式にすると、職場の数より経験の幅が先に伝わります。両方の年月が一致していることだけ、必ず確認してください。

次は「軸に合う職場」を選ぶために

これまでの職歴から共通する条件を洗い出して、合う求人を絞り込めます。

まとめ

  • 「看護師の平均転職回数」を示した公的統計はありません。 見かけた数字は出典と調査年を確認してください。
  • 看護師の平均勤続年数は9.8年(平均年齢42.1歳)。 一般労働者の女性10.4年とほぼ同水準で、特別に短いわけではありません。
  • 転職市場にいる看護師の55.4%は経験10年以上。 1年未満は2.5%にすぎません。動いているのは経験を積んだ層です。
  • 回数ではなく、説明の一貫性が論点になります。 記録で在籍期間を確定し、各職場を3行で書き、出た理由の軸を1本に揃えてください。
  • 雇用保険は条件次第で通算、退職金はリセット。 制度の向きが逆なので、退職日の設定だけは毎回確認する価値があります。

職歴の書き方そのものは、親記事の看護師の職務経歴書の書き方|テンプレート・自己PR例文つきにまとめています。