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更年期と看護師の仕事|夜勤がつらいときの受診・制度・相談の進め方

ナースひとやすみ 編集部約13分で読めます
目次

更年期かもしれない不調で看護師の仕事がつらいときは、まず受診し、職場で使える制度と勤務の組み方を相談します。働き方を変えるかどうかは、そのあとで考えても遅くありません。

以前は平気だった夜勤明けに、なかなか体が戻らない。ナースステーションで急に汗が出る。眠れないまま次の勤務に入る。こうした変化を、体力の衰えなのか更年期なのか分からないまま抱えている人もいるでしょう。「年のせい」と言い聞かせて、周りに言い出せないまま過ごす日もあるかもしれません。この記事では、公的な調査の数字で状況を整理し、職場で取れる手を順番に並べます。

看護師として働く人の約半数(47.1%)は40〜59歳で、更年期にかかる年代を含みます。就業の有無を問わない全国の20〜64歳の男女5,000人への厚生労働省の調査(2022年)では、50歳代の女性の38.3%が更年期障害の可能性を考えていましたが、診断を受けた人は9.1%でした。

症状の診断や治療は、医療機関で相談してください。ここでは働き方と職場の制度だけを扱います。資料は2026年10月に確認しました。

看護師の約半数が40〜59歳

更年期は、閉経の前後それぞれ約5年、あわせて10年ほどの期間を指します。厚生労働省の「働く女性の心とからだの応援サイト」によると、日本人の平均閉経年齢は50.5歳で、一般的には45〜55歳ごろです。

看護師の年齢構成を重ねると、この時期を迎える人の多さが分かります。厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2024年末の就業看護師1,363,142人のうち、40〜59歳は641,937人で、全体の47.1%でした(年齢別は男女計、編集部で合算)。一般的な更年期の年齢に近い45〜54歳に絞ると25.7%で、約4人に1人です。就業看護師の91.3%は女性です。

続いて、40〜50歳代の意識を厚生労働省の調査で見ます。「可能性があると考えている」は、受診はしていないが疑っている、周囲から指摘された、別の病気で受診したら可能性を指摘された、の合計です。調査は、これが医療機関での診断ではなく本人の主観であり、他の病気による症状も含まれうると注記しています。

それでも、50歳代の女性では、疑っている人(38.3%)が診断を受けた人(9.1%)の約4倍いました。「更年期かもしれない」と思っていても、診断までは受けていない人が多いことが読み取れます。この調査は就業していない人も含む一般の男女が対象で、看護師に限った公的な調査は見つかりませんでした。

更年期の不調は、仕事のどこに出るのか

厚生労働省の事業者向けマニュアルは、更年期の症状を、ほてり・のぼせ・発汗といった体のものから、イライラ・不安・不眠・気分の落ち込みといった心のものまで幅広いと説明しています。現れ方の個人差も大きいとしています。

看護の仕事に置き換えると、影響が出やすい場面は想像しやすいかもしれません。夜勤の仮眠がとれない、急変対応で汗が止まらない、申し送りに集中しにくい、といった場面です。ただし、夜勤そのものと更年期症状の関係を示す公的な資料は、今回確認できませんでした。つらさの原因を決めつけず、あとの「受診の目安」で整理します。

仕事への影響を金額で示した試算もあります。経済産業省の資料には、ボストン コンサルティング グループによる、女性の更年期症状による経済損失の試算(年間約1.9兆円)が載っています。

損失の内訳金額(年間)
欠勤約1,600億円
パフォーマンスの低下約5,600億円
離職約1兆円
追加の採用活動費用約1,500億円
合計約1.9兆円

出典: 経済産業省ヘルスケア産業課「女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について」(令和6年2月)

これは社会全体の推計で、看護師に限った数字ではありません。内訳で最も大きいのは離職でした。金額は人数と1人あたりの損失で決まるため、離職する人が多いという意味ではありません。それでも、更年期の症状を理由に仕事を辞める人がいることは、この試算の前提に含まれています。

ひとりで抱え込みやすい理由

同じ調査で、更年期の症状があり生活に影響が出ている女性に、誰かに相談しているかを尋ねています。

  • 相談した: 40歳代23.1%、50歳代25.6%
  • 相談しておらず、今後も相談しない/したくない: 40歳代45.5%、50歳代55.0%

50歳代では、半数以上が「相談しない」と答えていました。看護師の40〜50代は、主任や師長として部署をまとめる立場にいることも多い年代です。人手が足りない中で自分の不調を口にするのは、ためらわれるかもしれません。

相談は、辞めるか続けるかの前にできる選択肢です。 次の「受診の目安」と、職場で使える制度を先に確かめておくと、話を切り出しやすくなります。

どこから受診や相談を考えるか|更年期の受診の目安

症状の現れ方は多様で個人差が大きく、どこまでが「よくあること」なのかを自分で線引きするのは難しいものです。その境界は、厚生労働省の事業者向けマニュアルが挙げる受診の目安に委ねます。目安は次の3つです。

  • 複数の症状が重なってつらい
  • 日常生活に影響が出ている
  • 気分が落ち込んで何もやる気が起きない

さらに、更年期障害に甲状腺など様々な臓器の異常がともなうことがあり、複数の診療科の対応が必要な場合もあるとしています。「更年期だろう」と自分で決めて我慢するのではなく、受診して他の原因がないかも含めて確かめることが、最初の一歩になります。厚生労働省の応援サイトも「早めに婦人科とつながろう」と呼びかけています。

仕事への影響を振り返るために、次の項目を確かめてみてください。

このチェックは、仕事への影響に気づくためのもので、更年期かどうかを判断するものではありません。気になる項目は、受診や職場に相談するときに伝える材料としてメモしておいてください。

更年期のつらさに、職場でできること3ステップ

ステップ1: 受診して、今の状態を把握する

マニュアルは、職場に配慮を申し出る前に、医療機関を受診して自分の健康状態を把握しておくことが望ましいとしています。受診のときに、必要な配慮の内容を医師と整理しておくと、職場も配慮を決めやすくなります。勤務の様子も伝えると、医師が仕事への影響を判断しやすくなります。

  • 勤務形態(二交代・三交代、夜勤の回数)
  • 症状がつらい時間帯や場面
  • 仕事で困っていること(集中できない、眠れないまま勤務に入るなど)
⚠️ つまずきやすい落とし穴

体調が悪い日の当日に慌てて受診しようとして、勤務表の変更も休みの手配もできないまま、夜勤明けに駆け込むケースです。当日は予約が取れないこともあり、受診できないまま次の勤務に入ることになりがちです。また、自分が勤める病院の婦人科にかかる場合は、受診の事実が同僚に知られうる点も先に考えておく必要があります。受診先は勤務先と別の医療機関にもできます。受診日は勤務表が出る前に決め、時間単位の年休が使えるかを次のステップ2で先に確かめておくと、予約を取りやすくなります。診断書や配慮の依頼では、病名よりも「どんな勤務に配慮が必要か」を医師と整理しておくと、職場に出す情報を絞れます。

ステップ2: 職場で使える制度を確かめる

マニュアルが挙げる制度を、看護師の勤務に当てはめると次のようになります。

制度法律上の扱い看護師の勤務での使い方・確かめること
時間単位の年休労使協定がある場合に年5日以内(労基法39条4項)受診や、体調が悪い日の早退に使う
病気休暇・傷病休暇職場が独自に設ける法定外の休暇有給か無給か、日数を就業規則で確かめる
時差出勤・短時間勤務職場が独自に設ける制度日勤の時間帯の調整として相談する
夜勤の回数・配置の調整更年期を理由に請求できる専用の法定制度はなく、勤務表の組み方の相談連続夜勤を避ける、夜勤明けの翌日を休みにするなど

出典: 厚生労働省「女性特有の健康課題に関する問診を活用した女性の健康管理支援実施マニュアル~事業者向け~」、労働基準法39条

表は民間の病院を前提にしています。公立病院などは、休暇や勤務時間を条例・規則で定めている場合があるため、勤め先の規定を確かめてください。夜勤の行はマニュアルの制度ではなく、編集部が勤務表の相談として加えたものです。

職場の取組はまだ途上です。厚生労働省「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)」(2025年)では、産業保健の取組をしている事業所のうち、更年期障害や月経関連の症状など女性の健康課題への配慮・支援に取り組んでいるのは33.5%でした(2024年は28.9%)。1,000人以上の事業所では72.3%ですが、10〜29人では30.9%です。この調査は全産業の事業所の数字ですが、規模が小さいほど取組が少ない傾向から、診療所や小さな施設では、自分から制度の有無を聞かないと分からない場合があると考えておくと、相談の準備がしやすくなります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

制度を確かめないまま、受診や体調不良のたびに通常の年休を1日単位で使い切ってしまうケースです。年休を使い切ると、体調の悪い日に休む手段が欠勤しかなくなり、評価や収入への影響を気にして無理に出勤することになりがちです。勤め先に時間単位の年休があれば、2〜3時間の受診は時間単位で済ませられます。病気休暇の制度があれば、年休とは別に使える場合もあります。就業規則の休暇の章を確かめ、分からなければ人事の担当者に「使える休暇の一覧」を聞いてから、使う順番を決めてください。

ステップ3: 師長や産業医へ、調整案を伝える(文例つき)

相談の段階では、伝える範囲を自分で決められます。病名や症状を詳しく話さなくても、勤務への影響と頼みたいことが伝われば、調整を進めやすくなります。相談の文例です。

体調の変化があり、受診して経過を見ています。しばらくの間、夜勤を連続で入れないでいただくか、夜勤明けの翌日を休みにしていただけると助かります。受診のために月に1〜2回、時間単位の年休を使いたいと考えています。

相談先は、一般の看護師なら師長や産業医、師長の立場なら看護部長や産業保健の担当者です。産業医がいない小さな職場では、院長や事務長、人事の担当者が窓口になります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

「年のせいだから」「みんな同じだから」と、自分でも不調を軽く伝えてしまい、調整が何も決まらないケースです。相談の場で遠慮して「少しつらいだけなので大丈夫です」と言うと、相手は対応の必要がないと受け取ります。マニュアルは、職場が配慮を判断するときは、主治医の診断や助言に基づいた就業上の配慮の内容を、本人から聞き取ることを原則としています。つまり「何に困っていて、何をしてほしいか」を具体的に言わないと、職場も動けません。

働き方を変える選択肢

職場で調整しても負担が続く場合は、働き方そのものを見直す選択肢もあります。

選択肢向いている状況確かめること
夜勤の回数を減らす夜勤明けの回復が追いつかない夜勤手当が減ったあとの収入
院内の部署異動(外来など)今の病院の待遇を手放したくない異動先の勤務時間と業務量
日勤のみ・夜勤なしの職場夜勤そのものの負担が大きい職場の種類ごとの収入と業務の違い
パート・短時間勤務体調の波が大きく、勤務時間を減らしたい時給、社会保険の加入、年収の変化

50代のパートの時給と年収の変わり方は50代看護師のパート転職で、夜勤のない職場の種類は看護師が夜勤なしで転職する方法で比べています。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

いちばんつらい時期に、勢いで退職を決めてしまうケースです。受診して状態が落ち着けば、今の職場で続けられる場合もあります。一方、退職すると、病院の福利厚生や退職金の勤続年数がそこで止まる場合があり、50代での再就職では条件を一から交渉し直しになることもあります。辞めるかどうかは、受診と職場への相談を試し、勤務を調整しても負担が変わらないと分かってから決めても遅くありません。退職を考え始めたら、決める前に就業規則で退職金の算定条件と退職の申出の期限を確かめておくと、慌てずに済みます。

失敗例・よくあるNG

NG1: 受診せずに「更年期だろう」と決めつける

不調の原因を自分で決めて、様子を見続けるパターンです。他の原因が隠れていることもあります。看護師だからこそ、自分の体は後回しにしがちです。一度は受診して確かめてください。

NG2: 不調を隠して夜勤を続け、ある日突然休む

誰にも伝えずに勤務を続け、限界が来て急に長く休むことになる場合です。周囲にとっても調整が難しくなります。早めに「夜勤の連続を避けたい」とだけでも伝えておくと、勤務表の段階で調整できます。

よくある質問

Q. 男性看護師にも更年期はありますか?

A. 厚生労働省の調査では、男性で更年期障害の可能性があると考えている人は、40歳代で8.2%、50歳代で14.3%でした。経済産業省の資料は、男性の更年期障害は病態が複雑で、まだ十分に解明されていないとしています。気になる症状があれば、受診して相談してください。

Q. 師長の立場で、自分の不調を部下に知られたくないとき、誰に相談できますか?

A. 相談先は、看護部長や産業医、人事の担当者です。病名まで伝えず、頼みたいことだけを伝える方法もあります。管理職を続けるかどうかで迷っている場合は、看護師長・主任を辞めたいときも参考になります。

Q. 健康診断の問診で「はい」と答えたら、職場に伝わりますか?

A. 厚生労働省は2026年1月、一般健康診断の問診票に女性特有の健康課題の質問を加える際のマニュアルを公表しました。推奨されている質問は「女性特有の健康課題(月経困難症、月経前症候群、更年期障害など)で職場において困っていることがありますか」で、事業者の義務ではなく任意で行われます。マニュアルでは、回答は健診機関から職場に直接提供されず、「はい」と答えた人には健診の医師が情報提供や受診の勧めを行うとしています。受診者が少ない職場などでは、個人が特定されないよう集計の扱いにも配慮するとしています。ただし、勤め先の病院が健診機関を兼ねて自院で職員健診を行う場合は、問診票を見る人が同じ職場の人になりえます。受ける前に、誰が見るのかを健診の担当者に確かめてください。勤め先の健診にこの質問があれば、相談のきっかけにできます。

Q. 更年期のつらさで、看護師を辞めたほうがいいでしょうか?

A. 辞めるかどうかは人によって違い、一概には言えません。ただ、決める前に、受診、時間単位の年休や勤務の調整、部署異動の順に試す方法があります。50代で辞めたいと感じたときの判断材料は、50代の看護師が辞めたいと感じたときで数字とともに整理しています。

夜勤の少ない働き方も、選択肢として比べておく

受診や勤務の調整を試しても負担が続くときは、夜勤の少ない職場や短時間の働き方があるかを比べておくと、続けるか変えるかを判断しやすくなります。すぐに辞めるためではなく、選択肢を知っておくための情報集めとして使えます。

まとめ

  • 看護師の約半数が40〜59歳: 47.1%(45〜54歳では25.7%)。調査対象の50歳代の女性では38.3%が更年期障害の「可能性がある」と考え、診断は9.1%
  • 相談しない人が多い: 症状があり生活に影響が出ている50歳代の女性の55.0%が「相談しない」
  • 最初は受診: 他の病気の可能性も含めて状態を確かめ、必要な配慮を医師と整理しておく
  • 職場で使えるものから試す: 時間単位の年休、病気休暇、夜勤の組み方の相談。働き方を変えるのはそのあとでよい

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