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お悩み相談

不妊治療と看護師の仕事の両立|夜勤・勤務表との調整と、使える制度・伝え方

ナースひとやすみ 編集部約15分で読めます
目次

不妊治療のための休暇を、すべての職場に義務づける法律はありません。看護師が通院に使えるのは、年次有給休暇と、職場が独自に設けている制度です。妊娠中の人が請求できる夜勤の免除も、治療中はまだ対象になりません。両立の鍵は、勤務表をどう調整するかと、職場に何をどこまで伝えるかです。

勤務表が出たあとで、通院日が決まります。その日が夜勤の入りや夜勤明けにあたると、誰に交代を頼むか、理由をどこまで話すかを考えることになります。通院日は体の周期に合わせるため、前もって決めにくいことがあります。この記事では、使える制度と使えない制度を一次資料で分け、勤務表の調整と伝え方を手順にします。

治療の内容や続け方の判断は、主治医と相談してください。この記事は働き方と制度だけを扱います。資料は2026年10月2〜4日に確認しました。

治療と仕事の両立に悩むのは、珍しいことではない

まず、不妊治療がどのくらい身近になっているかを数字で見ます。

不妊の検査・治療を受けたことがある夫婦(4.4組に1組)22.8%

国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査」2025年調査(妻の年齢50歳未満の初婚どうしの夫婦)

2025年の調査では、不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は22.8%で、2021年の前回調査の22.7%とほぼ同じ水準でした。日本産科婦人科学会の集計では、2024年に体外受精・顕微授精などの生殖補助医療で生まれた子は86,473人で、2023年の85,037人より増えています。

看護師は女性が多い職業です。2024年末の就業看護師1,363,142人のうち、女性は91.3%でした。25〜39歳は約46万5千人で、全体の34.1%を占めます(年齢別は男女計、編集部で合算)。同じ病棟の同僚の中に、治療と仕事の両立に悩んでいる人がいても不思議ではありません。

では、治療をした人はどのくらい仕事と両立できているのでしょうか。

両立できたのは55.3%で、両立できなかった人は合わせて26.1%でした。「治療当時は働いていなかった」18.7%を除いて、働いていた人だけで見ると、両立できなかったのは約32%(26.1÷81.3、編集部計算)です。ただし、26.1%のすべてが仕事を辞めたわけではありません。仕事を辞めたのは10.9%で、残りは治療をやめた人と雇用形態を変えた人です。

この調査は、職種を問わない男女労働者2,000人(離職中の人を含む)への登録モニターのインターネット調査で、看護師に限った数字ではありません。看護師だけを対象にした公的な調査は見つかりませんでした。それでも、両立できなかった人の多くが「仕事」か「治療」のどちらかをあきらめていることは読み取れます。

看護師の両立が難しくなる理由

両立できなかった人は、どんな理由を挙げているのでしょうか。同じ調査の回答(複数回答、n=67)です。

両立できなかった理由割合編集部の見立て(交代制勤務の看護師の場合)
通院時間が読めない、通院日に外せない仕事が入るなど、日程調整が難しい49.3%勤務表が先に決まり、受診日が後から決まる
精神面で負担が大きい44.8%交代を頼むたびに理由を考える負担が重なる
体調・体力面で負担が大きい40.3%夜勤明けの受診や、受診後すぐの勤務が続く
通院回数が多い32.8%月に数回の受診を、休み希望の枠だけでは賄いきれない
職場の理解やサポートが得られない(同率の項目が他に2つ)20.9%休みの相談が、勤務表を作る人にしにくい

出典: 厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」(令和8年3月)図4(割合の列)。右の列は編集部の見立てで、調査の結果ではありません

通院の頻度は、治療の段階で大きく変わります。ハンドブックが示す目安は、女性の場合、月経周期ごとに次のとおりです。

  • 一般不妊治療(タイミング法・人工授精など): 1回1〜2時間程度の通院が2〜6日
  • 生殖補助医療(体外受精・顕微授精など): 1回1〜3時間程度の通院が4〜10日、加えて半日〜1日程度の通院が1〜2日
  • 男性: 0〜半日(手術を伴う場合は1日)

ハンドブックは、一般不妊治療では排卵の周期に合わせた通院が必要なため、前もって予定を決めにくい場合があるとも書いています。上の目安の上限を足すと、生殖補助医療の段階では、ひと周期で10日を超える受診になることもあります(編集部合算)。月に数日の休み希望だけで乗り切るのは難しく、勤務表そのものの組み方を相談する必要が出てきます。

不妊治療で使える制度と、使えない制度

「何を頼めるのか」が分からないと、相談の切り出し方も決まりません。法律で決まっているものと、職場しだいのものを分けます。

制度不妊治療に使えるか根拠と注意点
年次有給休暇使える(雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤が条件)労働基準法39条。請求する時季に取れる(病棟の運営に支障があるときは時季を変えられることがある)。入職直後は付与されない場合がある
時間単位の年休職場しだい労使協定がある場合に、年5日以内で時間単位で取れる(労基法39条4項)。受診が1〜2時間で済む日に向く
不妊治療のための休暇・休職職場しだい法律上の義務はない。休暇中の賃金が出るかも、就業規則しだい
時差出勤・短時間勤務・残業免除職場しだい就業規則で確かめる。病棟では日勤の時間帯の調整として相談することになる
夜勤(深夜業)の免除治療中は対象外労基法66条3項の請求権は「妊産婦」(妊娠中と産後1年以内)のもの。妊娠が分かってから請求できる
プライバシーの保護指針に例示ありパワハラ指針は、不妊治療などの機微な個人情報を本人の了解なく他の労働者に暴露することを「個の侵害」の例に挙げている

出典: 労働基準法39条・64条の3・66条、厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」、令和2年厚生労働省告示第5号(パワハラ指針)

表で特に押さえたいのは、夜勤の免除です。妊娠すれば夜勤の免除を請求できます(手順は看護師が妊娠したときの働き方)。けれども治療の段階では、その権利はまだありません。治療中に夜勤を減らしたいときは、権利として求めるのではなく、勤務表の組み方を相談する形になります。

制度がある職場は、まだ少ない

厚生労働省の調査では、不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度等(休暇に限らない)がある企業は26.5%でした(従業員10人以上の企業)。内訳は、制度化が10.6%、個別対応が15.9%です。支援制度等がある企業のうち、休暇制度があるのは47.8%です。

国は、両立に取り組む企業を「くるみんプラス」などとして認定しています。2026年7月末現在の認定は、くるみんプラス85社、プラチナくるみんプラス115社の合計200社でした。このうち法人名に「医療法人」を含むのは5法人です(編集部で一覧を数えた件数。社会福祉法人などは含めていません)。制度がない職場で調整する人も、少なくないと考えられます。 相談の中身を具体的にしておく手順を、次にまとめます。

不妊治療を職場に相談するときの手順

手順は4つです。まず就業規則で使える制度を確かめ、伝える相手と範囲を決めます。次に、必要なら不妊治療連絡カードを使い、勤務表の調整案を持って相談します。

ステップ1: 就業規則で、使える制度を確かめる

相談の前に、就業規則や院内の制度一覧を確かめます。見る項目は次のとおりです。

  • 時間単位・半日単位の年休があるか
  • 不妊治療や多目的に使える特別休暇、休職制度があるか
  • 失効した年休を積み立てる制度があるか
  • 時差出勤・短時間勤務・残業免除の対象に、治療中の人が入るか
  • 治療費の助成など、福利厚生の制度があるか

分からなければ、人事の担当者に「制度の一覧を教えてください」と聞くだけで足ります。理由を言う必要はありません。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

就業規則に制度があっても、自分は使えないことがあります。勤続年数や常勤かどうかが条件になっている場合や、年次有給休暇の付与条件(雇入れから6か月継続勤務、全労働日の8割以上出勤)を満たしていない場合です。制度の名前だけを見て安心せず、「対象者」「勤続年数」の欄まで読んでください。人事に聞くときは「制度の一覧」に加えて、「私の雇用区分で使えるものはどれですか」と具体的に尋ねると、行き違いが減ります。確かめずに受診日を決めてから「この休暇は対象外です」と言われると、急いで年休で埋めるしかなくなります。

ステップ2: 伝える相手と範囲を決める

令和5年度の調査では、不妊治療の経験者・予定者(n=289)の47.1%が、職場に一切伝えていない(伝える予定がない)と答えました。伝えている(伝える予定の)相手は、上司26.6%、同僚23.5%、人事11.8%です。職場でオープンにしていない人(n=267)が伝えない理由で最も多いのは、「伝えなくても支障がないから」(37.1%)です。「周囲に気遣いをしてほしくないから」(33.0%)や「うまくいかなかった時に職場に居づらいから」(27.7%)も挙がっています。

「伝えなくても支障がない」のは、勤務の調整が要らない人です。交代制勤務で、受診のたびに勤務表の変更が要る場合は、勤務表を作る人(多くは師長)に何も伝えずに調整するのは難しいでしょう。伝えるなら、相手と範囲を先に決めておきます。

  • 伝える相手: 勤務表を作る師長だけにするか、人事にも伝えるか
  • 伝える内容: 「不妊治療中」と言うか、「定期的な通院が必要」とだけ言うか
  • 共有してよい範囲: 師長から先に、誰に伝えてよいか(主任・同僚に伝えないでほしい、など)
⚠️ つまずきやすい落とし穴

師長にだけ伝えたつもりが、勤務の交代を調整する過程で主任や同僚にも広がってしまうことがあります。悪気のない「どうしたの?」が重なることもあります。相談するときに「この話は師長さんの中だけにとどめてください。勤務の交代をお願いするときは、私用とだけ伝えてもらえると助かります」と、共有してよい範囲を言葉にして頼んでください。パワハラ指針は、不妊治療などの機微な個人情報を本人の了解なく他の労働者に暴露することを、ハラスメントの例に挙げています。広がってしまったときは、院内のハラスメント相談窓口に相談できます。

ステップ3: 不妊治療連絡カードを使う

厚生労働省は「不妊治療連絡カード」の様式を、「不妊治療と仕事との両立のために」のページで公開しています。主治医に、治療の実施(予定)時期と、特に配慮が必要な事項を書いてもらい、職場に出して制度の利用を申し出るためのものです。治療の中身を自分で説明しなくても、必要な配慮だけを伝えられるのが利点です。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

連絡カードは、名称からも書かれた内容からも、不妊治療中だと伝わります。ステップ2で「定期的な通院が必要」とだけ伝えると決めた人が、そのままカードを出すと、伝える範囲の決め方と食い違います。カードを出す前に、人事の担当者に「カードの内容は誰まで共有されますか」と聞き、渡す相手を人事だけにするか、師長までにするかを決めてください。出し方が決まらないうちは、カードを使わず、次のステップ4の調整案だけで師長に相談する方法もあります。

ステップ4: 勤務表の調整案を持って相談する

「休みが必要です」とだけ伝えると、師長も調整の方法を考えにくくなります。調整案を一緒に出すと、話が進みやすくなります。

定期的な通院が必要になり、通院日が直前に決まることがあります。月に2〜6日ほど、日勤の前半か後半に1〜2時間抜けるか、勤務の変更をお願いすることになりそうです。通院が多い時期は夜勤の回数を少し減らしていただくか、通院日の前後に夜勤が入らないように組んでいただけると助かります。時間単位の年休が使えるか、教えていただけますか。

上の文例の「月に2〜6日」「1〜2時間」は、一般不妊治療の目安の数字です。実際の予定は主治医に確認した数字に置き換えてください。

調整案の例です。

  • 受診が集中しそうな週は、夜勤を入れずに日勤を中心に組んでもらう
  • 受診日が決まったら、すぐ連絡できる方法(連絡先・連絡の期限)を決めておく
  • 早出・遅出がある職場なら、日勤の早出・遅出を組み合わせて、受診の時間を作る
  • 時間単位の年休が使えるなら、1〜2時間の受診はそれで充てる
⚠️ つまずきやすい落とし穴

「迷惑をかけたくない」と、受診日が決まってから自分で交代相手を探し続けるケースです。最初は応じてもらえても、生殖補助医療の段階に進むと、ひと周期で受診が10日を超えることもあり、毎回の交代の依頼がそのまま精神的な負担になります。両立できなかった人の44.8%が、理由に「精神面で負担が大きい」を挙げています(交代の依頼に限った設問ではありません)。交代の調整は、勤務表を作る人の仕事でもあります。治療の段階が変わったときは、そのたびに師長と調整の方法を見直してください。

今の職場で調整が難しいときの選択肢

相談しても調整がつかない場合や、病棟の人手が足りず続けるのが難しい場合の選択肢です。

選択肢向いている状況確かめること
院内の部署異動(外来など)今の病院の福利厚生や給与を手放したくない異動先の勤務時間と、受診に抜けられる体制
日勤のみ・夜勤なしの勤務夜勤明けの受診や体調の負担が大きい夜勤手当がなくなったあとの収入
非常勤・パートへの切り替え通院の頻度が高い時期を乗り切りたい健康保険・厚生年金の加入、収入、復帰の条件
転職今の職場では相談自体が難しい時間単位年休・特別休暇の有無と、実際に使われているか。入職後、年休がいつから付くか

雇用形態を変えた人は調査で7.4%でした(先のグラフでは、両立できなかった側に数えています)。働き方を変えるのは、辞めるか治療をやめるかの二択にしないための方法でもあります。夜勤なしの職場の種類と収入の変化は、看護師が夜勤なしで転職する方法で比べています。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

治療に集中するために急いで退職し、その後の健康保険や収入の見通しが立たなくなるケースです。不妊治療は令和4年4月から保険適用になっていますが、先進医療などの保険外の費用がかかることもあります。退職すると、勤務先の健康保険から国民健康保険などへの切り替えが必要になり、職場独自の治療費の助成もなくなります。辞める前に、まず院内の異動や非常勤への切り替えができるかを確かめてください。転職するなら、入職直後は年休が付かない場合があるため、内定前に時間単位年休や特別休暇の有無、年休がいつから付くかを確かめます。面接で結婚や出産の予定を聞かれたときの答え方は、看護師が面接で結婚・出産の予定を聞かれたらにまとめています。

失敗例・よくあるNG

NG1: 夜勤の免除を「権利」として求めて、話がこじれる

妊娠中の人の夜勤免除の請求権を、治療中にも使えると考えて求めてしまうケースです。治療中は請求権がないため、話が平行線になりがちです。「通院日の前後に夜勤が入らないように組んでほしい」という、具体的な調整の相談に切り替えてください。

NG2: 年休を使い切ってから相談する

年休を受診で使い切ってから相談すると、選べる手が減ります。相談は、治療を始める前か、生殖補助医療に進むなど通院が増えると分かった時点で行うのが理想です。

よくある質問

Q. 職場に伝えないと、制度は使えませんか?

A. 制度によって違います。年次有給休暇は、通院にも使える休暇です。一方、職場独自の不妊治療休暇などは、申請の方法が就業規則で決まっています。不妊治療連絡カード(主治医が配慮事項を書く厚生労働省の様式)のように、治療中であることを示す書類を求められることもあります。その場合も、伝える相手と共有してよい範囲を、人事の担当者と先に決めておけます。

Q. 男性看護師で、パートナーが治療中です。何か使えますか?

A. 男性看護師も、年次有給休暇(雇入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していることが条件)は使えます。時間単位の年休は、労使協定がある職場だけです。職場独自の制度が男性も対象かは、就業規則で確かめてください。厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」(令和8年3月)は、男性も女性の周期に合わせた通院や治療への参加が求められる場合があるとしており、男性の通院日数の目安は0〜半日(手術を伴う場合は1日)です。

Q. 治療がうまくいかなかったときに、職場に居づらくなりませんか?

A. 結果まで共有する必要はありません。最初の相談の時点で「経過や結果については、こちらから話すまで聞かないでもらえると助かります」と伝えておく方法があります。令和5年度の調査でも、職場でオープンにしていない人の27.7%が、伝えない理由に「うまくいかなかった時に職場に居づらいから」を挙げています。

Q. 相談したら、不利な扱いを受けました。どこに相談できますか?

A. 院内の相談窓口のほか、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や、総合労働相談コーナーに相談できます。厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」(令和8年3月)は、不妊治療をしていることを理由にした嫌がらせや不利益な取扱いが、ハラスメントに該当する場合もあるとしています。ハラスメントの記録の取り方は看護師のパワハラ対処法が参考になります。

働き方の違う職場を、比べておく

院内の異動や非常勤への切り替えを確かめても調整がつかないときは、働き方の違う職場の情報を集めておくと、選択肢が見えやすくなります。働き方を変えるかを決める前の下調べとして使えます。

まとめ

  • 法定の不妊治療休暇はない: 使えるのは年休と職場独自の制度。時間単位の年休は労使協定がある職場だけ
  • 夜勤の免除は妊娠してから: 治療中は請求権がないため、勤務表の組み方として相談する
  • 通院は月経周期ごとに数日から、10日を超えることも: 段階が変わるたびに、師長と調整の方法を見直す
  • 伝える範囲は自分で決める: 師長に伝える内容と、共有してよい相手を言葉にして頼む。連絡カードも使える

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