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ノウハウ

看護師が面接で結婚・出産の予定を聞かれたら|答え方の文例と法律の線引き

ナースひとやすみ 編集部約15分で読めます
目次

採用面接で、結婚の予定や、子どもが生まれたら働き続けるかどうかを女性にだけ質問することは、厚生労働省の指針が男女雇用機会均等法5条で禁止される例に挙げています。結婚・出産の予定を聞かれても、答えるかどうか、どこまで答えるかは、あなたが選べます。夜勤や残業に対応できるかという勤務条件の話に置き換えて答える方法があります。

原文で明記された禁止の範囲、答え方の文例、入職後に守られることと勤続1年未満では使えないことがある制度、相談先を順に整理します。条文は、公開日(2026年10月5日)時点で施行されている版を2026年9月25日に確認しました。

家族に関する質問は、不適切な採用選考でいちばん多い

面接の終盤に「ご結婚のご予定は?」「お子さんができたら続けられそうですか?」と聞かれ、言葉に詰まる。正直に言えば不利になりそうで、断れば印象が悪くなりそうで、どちらも選べない。

厚生労働省の公正採用選考特設サイトには、令和6年度(2024年度)にハローワークで把握した不適切な採用選考854件の内訳が載っています。最も多いのは「家族に関すること」で、41.8%でした。

職種を問わない全国の件数で、「結婚・出産の予定」という区分もありません。それでも、家族や家庭の事情に近い話題が最多です。厚労省は「面接の空気を和らげるために聞いてしまうケースが多いようです」と注意を促しています。面接官は雑談のつもりで聞いていることもあると想定しておくと、慌てずに答え方を選べます。

2024年の妻の平均初婚年齢は29.8歳、第1子出生時の母の平均年齢は31.0歳でした。この年齢をはさむ25〜39歳は、2024年末の就業看護師(男女計)1,363,142人のうち464,871人で、約34%です。就業看護師の3人に1人が、結婚・出産の平均年齢をはさむ年代にいます。

法律と厚労省の資料は、どこまでを問題にしているか

「面接で結婚の予定を聞くのは違法」と言い切る情報もありますが、原文では、女性にだけ聞く形と、男女ともに聞く形で扱いが分かれています。

資料書かれていることこの質問との関係
男女雇用機会均等法 5条募集・採用について、性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない下の指針の土台になる条文
性差別の禁止に関する指針(平成18年厚生労働省告示第614号)採用面接で「結婚の予定の有無、子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無等一定の事項について女性に対してのみ質問すること」を、5条で禁止される例に挙げる女性にだけ聞く形は明記された禁止例
均等法の施行通達(令和8年4月24日 雇均発0424第1号、2026年10月1日適用)指針の「結婚の予定の有無」「子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無」は、男女双方に質問した場合には均等法に違反しないが、公正な採用選考の観点から、このような質問をすること自体望ましくない男女ともに聞く形は均等法違反ではないが、望ましくないとされる
公正採用選考の「14事項」家族に関すること、生活環境・家庭環境などを面接でたずねて把握すると、就職差別につながるおそれがある「結婚・出産の予定」の項目はない。一覧には「これらに限られるわけではありません」と注記がある
職業安定法 5条の5求人者は、応募者の個人情報を業務の目的の達成に必要な範囲内で、目的を明らかにして集める(本人の同意がある場合などを除く)採用に必要な範囲かどうかが基準になる
厚労省の履歴書様式例「配偶者」「配偶者の扶養義務」「扶養家族数」「通勤時間」の欄を設けない。これらに関わることは、残業やオンコールに対応できるかなど勤務条件として面接者全員に確かめる質問例を示す結婚・出産の予定への言及はない。削った欄に関わることは、勤務条件で確かめる形が示されている
男女雇用機会均等法 13条(2026年10月1日施行)応募者などへの性的な言動を防ぐため、相談窓口の整備などを事業主に義務づける予定の質問そのものを名指しした規定ではない。性的な冗談やからかいなどに及べば対象になりうる

つまり、あなたの状況に当てはめると次のようになります。

  • 女性にだけ聞かれたと分かる場合: 指針が名指しする形にあたりえます。ただ、男性の応募者にも聞いているかは、応募者の側からは確かめようがありません
  • 男女ともに聞いている場合: 通達は、均等法には違反しないとしつつ、こうした質問をすること自体が望ましくないとしています。均等法とは別に、上の表の公正採用選考の考え方と職業安定法5条の5も、男女を問わない基準です

個別の事案が問題にあたるかは、事情によって判断されます。面接の場で違法かどうかを争うより、答えを勤務条件に置き換え、気になった点は後で相談するほうが消耗は少なくて済みます。

答え方は3パターン。まず質問を勤務条件に置き換える

この質問の背景には、夜勤や残業に入れるか、長く働いてもらえるかという勤務の見通しがあると考えられます。厚労省が履歴書様式例で配偶者欄などを削る代わりに示した質問例も、残業・休日出勤・オンコールへの対応や配置先、転勤など、勤務条件を確かめるものでした。

聞かれ方置き換える先(勤務条件)答える材料
ご結婚のご予定は?夜勤・残業・休日出勤に入れるか今の時点で対応できる勤務の範囲
お子さんができたら続けますか?長く働く意思があるか働き続けたい意思と、両立の制度を使いながら続けたい考え
ご家族の協力は得られますか?急な欠勤や呼び出しに対応できるか家族構成に触れず、急な休みへの備えを伝える

パターンA: 答えたくないとき

私生活の予定については、お答えを控えさせてください。勤務については、夜勤を含むシフトに入れますし、長く働きたいと考えています。

断ったら、すぐに勤務の見通しを続けます。面接官が確かめたかったことには、これで答えられます。

パターンB: 予定がない、または決まっていないとき

今のところ、具体的な予定はありません。夜勤も含めて、急性期の病棟で経験を積みたいと考えています。

答えるのは「現時点の事実」だけにします。「◯年は結婚しません」のような将来の約束はしません。夜勤の回数に限りがあるなら、「夜勤は月◯回までなら入れます」と範囲で答えます。

パターンC: 予定があり、両立できるか確かめたいとき

予定そのものは言わずに、職場の制度の運用を逆質問で確かめる方法があります。

長く働き続けたいので、差し支えなければ伺います。育児休業から復帰された方は、病棟にいらっしゃいますか。夜勤の免除や短時間勤務は、どのように運用されていますか。

産休・育休の前例がある病院(正規雇用の看護職員が1か月以上休んだ病院)は81.2%

日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(2024年度、n=3,502病院)

前例のある病院が8割を超えるので、運用を尋ねるのは特別な質問ではありません。同じ調査で、看護職員(正職員)の確保のために短時間勤務(育児・介護休業法に定める場合を除く)を導入している病院は39.3%、夜勤の回数や時間、曜日を選べる働き方を導入している病院は44.1%でした。病院によって分かれるので、尋ねる意味があります。

それでも「ご予定があるんですか」と重ねて聞かれたら、次のように返せます。

今の時点でお伝えできることはありません。長く働くために、制度の使われ方を知っておきたいと思って伺いました。

制度の質問そのものが、予定を連想させることはありえます。気になるなら面接では聞かず、内定後に規程の確認として頼む方法もあります(次の章)。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

いちばん避けたいのは、その場を乗り切るために「3年は結婚しません」「子どもはまだ考えていません」と、予定を偽ったり約束したりすることです。予定は変わるものです。入職後の妊娠・出産を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、男女雇用機会均等法9条3項で禁じられています。この条文に、面接で何と答えたかによる例外は書かれていません。それでも面接での約束は、入職後の報告を言い出しにくくし、夜勤免除などの請求をためらう原因になります。予定を言わないことと、偽ることは違います。

入職後に妊娠・出産したら。守られることと、勤続年数で扱いが変わる制度

令和7年度(2025年度)に、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ労働者や事業主などから寄せられた男女雇用機会均等法の相談は21,320件でした。雇用環境・均等部(室)は、均等法や育児・介護休業法などの相談を受ける労働局の部署です。

このうち5,721件が「婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」、2,984件が妊娠中・出産後の健康管理の措置(母性健康管理)の相談です。事業主からの相談も含む件数ですが、令和7年度の1年間だけで、入職後の扱いをめぐる相談がこれだけ寄せられています。 何が守られ、何が勤続年数で変わるかを先に知っておきます。

入職後に守られること

  • 解雇その他の不利益な取扱いの禁止: 妊娠・出産、産前産後休業の請求や取得などを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています(男女雇用機会均等法9条3項)
  • 妊娠中・産後1年以内の解雇は無効: ただし、事業主が妊娠・出産等を理由とする解雇ではないと証明した場合は除かれます(同9条4項)
  • 産前産後休業: 出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)からは、請求すれば休めます。産後8週間は原則として就業できません(労働基準法65条)
  • 妊産婦の夜勤・時間外・休日労働の免除: 妊娠中と産後1年以内の女性が請求すれば、使用者は深夜業、時間外労働、休日労働をさせてはなりません(同66条2項・3項)

どれも、条文に勤続期間の条件はありません。

勤続1年未満の扱いは、制度ごとに違う

制度勤続1年未満の人の扱い根拠
産前産後休業勤続期間の条件なし労働基準法65条
妊産婦の深夜業・時間外・休日労働の免除勤続期間の条件なし労働基準法66条
育児休業労使協定があれば、対象外にできる育児・介護休業法6条1項1号
短時間勤務(3歳未満の子)労使協定があれば、対象外にできる同23条1項1号
育児のための深夜業の制限(小学校入学前の子)請求できない同19条1項1号

育児のための深夜業の制限は、子を育てる人が午後10時から午前5時までの勤務を免除してもらう制度です。労使協定は、事業主と、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数を代表する者)が結ぶ書面の取り決めです。育児休業と短時間勤務の除外は、この協定がある職場でだけ起こります。

お金の面では、健康保険の出産手当金は、在職中の被保険者なら加入期間の条件がありません(健康保険法102条)。雇用保険の育児休業給付金は、原則として、育休開始前の2年間に「みなし被保険者期間」が通算12か月以上あることが要件です(雇用保険法61条の7)。前職の加入期間や、産休・病気などで賃金が出なかった期間の数え方は、ハローワークで確かめてください。

内定を承諾する前に確かめる手順

  1. 内定の連絡を受けたら、承諾の返事をする前に、就業規則の育児休業と短時間勤務の規程を見せてもらえるか頼む
  2. 見せてもらえない場合は、育児休業と短時間勤務の対象者の範囲だけを、メールで教えてもらう
  3. 対象者の範囲に「勤続1年未満の者を除く」とあるかを確かめる
  4. 除外がある場合は、入職時期を調整できるか、除外の対象でない制度(産前産後休業、妊産婦の夜勤免除など)で当面の働き方を組めるか、ほかの応募先と比べるかを考える

依頼の文例です。

入職前に、就業規則を拝見することはできますか。特に、育児休業と短時間勤務の対象者の範囲を確認させてください。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

入職してから就業規則を開き、「勤続1年未満の者は育児休業の対象外」と書かれているのを見つけるケースです。面接で「育休の取得実績はあります」と聞いていても、それは勤続の長い職員の話かもしれません。確かめるなら、内定を承諾する前がいちばん動きやすい時期です。承諾したあとは、条件が合わないと分かっても入職を取りやめにくくなります。依頼の文面は規程の確認にとどめ、自分の予定には触れなくて構いません。育休の規程は、子育ての予定がない人にとっても入職前に確かめておく価値のある項目です。

聞かれ方に問題を感じたときの記録と相談先

その場で反論しなくても、あとから相談はできます。まず、記憶が新しいうちに次のことをメモに残します。

  • 面接の日時、対面かオンラインか、面接官の役職
  • 質問の言葉(できるだけそのまま)と、自分の答え
  • ほかの応募者にも同じ質問をしていたかについて、分かっていること

相談先は、何が気になったかで選びます。

気になった点相談先窓口の役割(確認した資料の範囲)
家族・家庭環境など、適性・能力に関係のないことを聞かれた最寄りのハローワーク、または都道府県労働局公正な採用選考を事業主に周知・啓発する
女性だけが結婚・出産の予定を聞かれた都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)事業主への助言・指導・勧告、紛争解決の援助(均等法23条・35条)。調停は募集・採用の紛争を対象外としている(同24条)
面接官から性的な冗談やからかいを受けた応募先の相談窓口(2026年10月1日から整備が義務)、雇用環境・均等部(室)応募者からの相談に応じる体制を事業主が整える
⚠️ つまずきやすい落とし穴

相談すれば採否をやり直してもらえる、と考えて動くケースです。表のとおり、行政の窓口が担うのは事業主への指導や紛争解決の援助で、選考のやり直しを約束するものではありません。応募を続けるか辞退するかは、相談とは別に自分で決めておきます。行政の窓口に匿名で相談できるか、応募先に名前が伝わるかは、確認した資料に記載がありません。相談の最初に、窓口へ確かめてください。なお、応募先の相談窓口に性的な言動を相談する場合は、相談者のプライバシーを守る措置を講じることが、2026年10月1日から事業主の義務になっています。メモは、質問の言葉や日時などの事実と、自分の受け止めを分けて書くと、相談のときに状況が伝わりやすくなります。

失敗例・よくあるNG

NG1: 文例をそのまま使い、難しい勤務まで引き受ける

「夜勤を含むシフトに入れます」は、実際に入れる人のための文例です。無理な約束をすると、入職後に勤務の相談をしにくくなります。答える材料は「今の時点で対応できる範囲」だけです。

NG2: 予定があることを理由に、応募そのものをあきらめる

産休・育休で1か月以上休んだ正規雇用の看護職員がいた病院は81.2%です。入職後の妊娠・出産を理由とする不利益な取扱いも禁止されています。あきらめる前に、応募先の規程と運用を確かめてください。

よくある質問

Q. 答えないと、不採用になりますか?

A. 採否の理由は外から確かめられないため、断定はできません。厚労省は、採用選考を応募者の適性・能力に基づいた基準で行うよう事業主に求めています。答えを控えたときは、パターンAのように勤務の見通しを続けて伝えます。

Q. 男性の看護師が、結婚・出産の予定を聞かれることもありますか?

A. ありえます。指針の禁止例は「女性に対してのみ」質問する形です。男女双方に聞く場合について、厚労省の通達は、均等法には違反しないとしつつ、こうした質問をすること自体望ましくないとしています。答え方は、この記事の3パターンと同じです。

Q. 子どもがいるか、何歳かを聞かれた場合も同じですか?

A. 同じ考え方で答えられます。指針は、女性についてのみ「子を有していないこと」を採用の条件にしたり、それを満たす人を優先したりすることも禁止例に挙げています。厚労省の履歴書様式例は、扶養家族数の欄も設けていません。急な休みや夜勤への対応など、勤務条件として伝える方法があります。

Q. 面接で聞きにくい育休や夜勤免除の運用は、どう確かめればいいですか?

A. 方法は3つあります。1つ目は面接での逆質問(パターンC)、2つ目は内定後に規程の確認として頼む方法です。3つ目は、転職サービスを使っている場合に、担当者を通じて応募先に確認してもらう方法です。担当者に自分の予定を伝える必要はありません。担当者を通じた質問が応募先にどう伝わるか(誰からの質問として伝わるか)は、確認した資料には記載がないため、頼むときに担当者へ伝え方を確かめてください。有料職業紹介事業者は、原則として求職者から手数料を取れません(職業安定法32条の3第2項)。直接応募した職場には、この方法は使えません。

聞いても答えがあいまいだった運用は、担当者を通して確かめる

面接では聞きにくかった運用も、転職サービスを使っている場合は、担当者に確認を頼む方法があります。頼むときに、自分の予定を伝える必要はありません。

まとめ

  • 女性にだけ聞く形は、指針が名指しする禁止例。男女ともに聞く形も、通達は均等法違反ではないとしつつ、質問自体が望ましくないとしている
  • 答えは勤務条件に置き換える。控える/現時点の事実だけ答える/運用を逆質問する。偽りや約束はしない
  • 勤続1年未満の扱いは制度ごとに違う。均等法9条と労基法65条・66条は勤続期間を問わない。勤続1年未満だと、育児休業・短時間勤務は労使協定があれば対象外にでき、育児のための深夜業の制限(小学校入学前の子)は請求できない
  • 気になったら記録して相談。ハローワーク、雇用環境・均等部(室)、応募先の相談窓口

状況別に、次の記事もあわせてどうぞ。