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看護師が妊娠したときの働き方|夜勤免除・時間外制限の請求手順
目次
- 01妊娠期の看護師は、職場の「例外」ではない
- 02使える制度の一覧——「請求が要るもの」と「要らないもの」
- 03報告と請求——いつ、誰に、何と言うか
- 手順1: 報告の順番を決める
- 手順2: 報告と請求を1回で済ませる
- 手順3: 医師の指導があれば母健連絡カードを使う
- 04職場が動かないときにできること
- 05失敗例・よくあるNG
- NG①: 請求内容を口頭だけで終わらせる
- NG②: 産休・育休明けの働き方を、妊娠中に何も決めずに過ごす
- 06よくある質問
- Q. 妊娠を職場に報告するのは、いつがいいですか?
- Q. 「人手が足りないから夜勤に入って」と言われました。断れますか?
- Q. 夜勤がなくなると給料はどのくらい減りますか?
- Q. 妊婦健診のために休むとき、年次有給休暇を使わないといけませんか?
- Q. 産後はいつから働けますか?
- 07まとめ
妊娠中の夜勤は、師長の配慮を待つものではありません。労働基準法66条3項は「使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない」と定めています。 時間外労働と休日労働も同じ条文の2項で、同じく請求が起点です。
ここに、この分野のいちばんの落とし穴があります。制度には「請求しないと動かないもの」と「請求がなくても職場側の義務になるもの」が混ざっている。 夜勤の免除は前者です。黙っていても外れません。
使える制度を条文と「請求の要否」で一覧にし、報告の順番・言い方・職場が動かないときの相談先までまとめます。体調や妊娠の経過についての判断は主治医の領域なので、ここで扱うのは制度と職場での手続きだけです。
妊娠期の看護師は、職場の「例外」ではない
まず前提を確認します。厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例」によると、2024年末時点の就業看護師は1,363,142人。年齢階級別では25〜29歳177,515人、30〜34歳147,911人、35〜39歳139,445人で、25〜39歳だけで464,871人、全体の約34%を占めます。
看護の職場では、常に3人に1人がこの年代です。妊娠・出産との両立は例外的な事情ではありません。
就業看護師のうち25〜39歳が占める割合(1,363,142人中464,871人)約34%
厚生労働省 令和6年 衛生行政報告例(2024年)
そして、職場側にも受け皿はあります。日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」で、看護職員(正職員)の確保のために導入している働き方を病院に聞いた結果です(複数回答、n=3,502病院)。
看護職員(正職員)の確保のために導入している働き方(病院の導入割合)
出典: 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」図表15(n=3,502病院・複数回答)
「日勤のみ」の働き方を導入している病院は54.7%、「夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる」は44.1%。あなたの病院にも仕組み自体は存在する可能性が半々以上あります。 ないのは制度ではなく、それを起動するあなたの請求かもしれません。
同じ調査では、2024年度に産休・育休で1か月以上の連続休暇を取得した正規雇用看護職員がいた病院は81.2%(3,502病院中2,845病院)でした。これは「81.2%の看護師が産休・育休を取れた」という意味ではなく、病院単位で見れば8割超に取得の前例があるという意味です。前例がある職場なら、手続きの型も残っています。
使える制度の一覧——「請求が要るもの」と「要らないもの」
ここが記事の中心です。条文ごとに、何が起点になるかを整理しました。
| 使える制度 | 根拠 | 起点 | 条文が定めていること |
|---|---|---|---|
| 危険有害業務への就業制限 | 労基法64条の3 | 不要(職場側の義務) | 重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務などに就かせてはならない |
| 妊婦健診を受ける時間の確保 | 均等法12条 | 申出 | 保健指導・健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければならない |
| 医師の指導に基づく勤務の軽減 | 均等法13条1項 | 申出(母健連絡カード) | 指導事項を守れるよう、勤務時間の変更・勤務の軽減等の必要な措置を講じなければならない |
| 軽易な業務への転換 | 労基法65条3項 | 請求 | 他の軽易な業務に転換させなければならない |
| 時間外労働・休日労働の制限 | 労基法66条2項 | 請求 | 時間外労働をさせてはならず、休日に労働させてはならない |
| 深夜業(夜勤)の制限 | 労基法66条3項 | 請求 | 深夜業をさせてはならない |
| 変形労働時間制の適用制限 | 労基法66条1項 | 請求 | 1週40時間・1日8時間を超えて労働させてはならない |
| 産前休業 | 労基法65条1項 | 請求 | 出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)以降、就業させてはならない |
| 産後休業 | 労基法65条2項 | 不要(就業禁止) | 産後8週間は就業させてはならない。産後6週間経過後は、本人が請求し医師が支障ないと認めた業務に限り就業可 |
| 育児時間 | 労基法67条 | 請求 | 生後1年未満の子を育てる女性は、休憩時間のほか1日2回各30分以上を請求できる |
出典: 労働基準法(e-Gov法令検索)/男女雇用機会均等法(同)
表から読み取ってほしいことが3つあります。
1つ目。夜勤・時間外・休日労働・軽易業務転換・産前休業は、すべて「請求した場合においては」で始まります。 職場が気づいて外してくれる仕組みではありません。
2つ目。請求の書式は法律で決められていません。 条文は「請求した場合」としか定めていないため、口頭でも成立します。ただし勤務表の作成者まで伝わらないと意味がないので、後から確認できる形(所定の届出書、またはメール)で残すのが実務的です。
3つ目。産後8週間の就業禁止だけは、請求が要りません。 本人が「早く戻りたい」と言っても、産後6週間は働けません。6週間経過後に本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務に限って就業できます。
なお、労働基準法65条・66条・67条に違反した場合、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が定められています(同法119条1号)。請求したのに夜勤に入れられ続ける状態は、職場の配慮不足ではなく法令違反にあたりうる状態です。
報告と請求——いつ、誰に、何と言うか
制度を知ったうえで、実際の段取りです。
手順1: 報告の順番を決める
報告の時期に法律上の決まりはありません。実務では勤務表を組む人(多くは師長)に最初に伝えるのが動きやすい順番です。同僚への周知はそのあと、本人のタイミングで構いません。
勤務表のサイクルを踏まえると、「次の勤務表に反映してほしい月の、希望休締切より前」が現実的な下限になります。
手順2: 報告と請求を1回で済ませる
報告だけして請求を忘れると、勤務表は変わりません。「妊娠しました」と「夜勤を外してください」は別の話なので、同じ場で両方を伝えてください。
伝え方の文例妊娠していることが分かり、出産予定日は◯月◯日です。労働基準法66条3項に基づいて、深夜業の免除を請求します。時間外労働と休日労働の免除も同じくお願いします。◯月の勤務表から反映していただけますか。日勤帯でできる業務は続けたいと考えています。
条文番号を口に出すのは大げさに感じるかもしれませんが、「お願い」ではなく「請求」であることを、一度だけはっきり示しておくほうが後の行き違いが減ります。最後の一文で「続ける意思」を添えるのも大切です。免除の請求と、戦力から降りることはイコールではありません。
手順3: 医師の指導があれば母健連絡カードを使う
主治医から通勤緩和や休憩に関する指導を受けた場合は、母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)で職場に伝えられます。事業主はカードの記載内容に応じて、均等法13条に基づく措置を講じる義務があります。様式は厚生労働省のサイトからダウンロードでき、多くの母子健康手帳にも掲載されています。
口頭で「体がつらい」と伝えるより、医師の指導事項として文書で渡すほうが、職場は動きやすくなります。 判断を個人の我慢比べにしないための道具だと考えてください。
⚠️ つまずきやすい落とし穴「迷惑をかけるから、もう少し落ち着いてから言おう」と報告を先延ばしにするケースが、いちばん多い遠回りです。気持ちは自然なものですが、実務上は損が大きくなります。勤務表は1か月前には組み上がっていることが多く、報告が遅れるほど「もう組んでしまったので今月は入ってもらえますか」という展開になりやすいためです。さらに、夜勤や時間外の免除は請求した時点から先にしか効きません。遡って取り消すことはできないのです。もうひとつ、報告が遅いほど周囲の調整期間が短くなり、結果として「急に言われた」という受け取られ方をしてしまいます。早く伝えることは、自分のためであると同時に、チームへの配慮でもあります。体調や経過について職場に詳しく説明する必要はありません。「出産予定日」と「請求する内容」の2つだけで、手続きは進みます。
制度が動かない職場かどうかを、早めに見極める
請求しても勤務表が変わらない職場は、産休・育休明けの働き方でも同じことが起きがちです。別の職場の条件を知っておくだけでも、判断の材料になります。
職場が動かないときにできること
請求したのに勤務表が変わらないときの段取りです。
- 記録を揃える: 請求した日・方法・相手・返答内容。勤務表の写しも残す
- 書面で出し直す: 口頭で伝えていた場合は、同じ内容をメールや届出書で再提出する
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談する: 均等法・労基法の母性保護に関する相談窓口です。相談は無料で、母健連絡カードの入手先でもあります
「人手が足りないから」と言われたとき、そこで引き下がってしまうのがよくある失敗です。労基法66条3項には、時季変更のような例外規定がありません。年次有給休暇のように「別の日にずらす」余地がある制度とは、条文の作りがそもそも違います。とはいえ、現場で師長と押し問答をしても消耗するだけです。実務的な進め方は、責める形にせず段取りの相談に変えること。「夜勤に入れないぶん、日勤の回数を増やす」「委員会や記録の整理を引き受ける」など、自分が引き受けられる範囲を具体的に示すと、話が「できるかどうか」から「どう組むか」に移ります。それでも動かない場合は、個人の交渉で解決する問題ではありません。記録を持って労働局に相談してください。
失敗例・よくあるNG
NG①: 請求内容を口頭だけで終わらせる
師長には伝わっても、勤務表を作る副師長やリーダーに共有されていないことがあります。所定の届出書がない職場でも、メールで一度送っておけば記録になります。
NG②: 産休・育休明けの働き方を、妊娠中に何も決めずに過ごす
復帰後の勤務形態は、産休に入る前に一度話しておくほうが選択肢が残ります。短時間勤務を導入している病院は39.3%、夜勤の回数や曜日を選べる病院は44.1%です。復帰後の夜勤の扱いや時短の条件は、子育てと両立して夜勤なしで働く方法で制度と職場選びの両面から整理しています。
よくある質問
Q. 妊娠を職場に報告するのは、いつがいいですか?
A. 法律上の決まりはありません。実務では、勤務表を組む人に早めに伝えるほど調整が効きます。夜勤や時間外の免除は請求した時点から先にしか効かないため、「次の勤務表に反映してほしい月の、希望休締切より前」が現実的な目安になります。体調や妊娠の経過を詳しく説明する必要はなく、出産予定日と請求する内容を伝えれば手続きは進みます。
Q. 「人手が足りないから夜勤に入って」と言われました。断れますか?
A. 労働基準法66条3項に、年次有給休暇のような時季変更の規定はありません。請求済みであることを改めて書面で示し、それでも変わらない場合は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談するという方法があります。請求した日付と返答の記録を残しておいてください。
Q. 夜勤がなくなると給料はどのくらい減りますか?
A. 夜勤手当と時間外手当の分が減ります。金額は施設の手当額と回数で決まるため、一般論では出せません。直近12か月の給与明細から、夜勤手当と時間外手当の合計を自分で計算してください。 これが減る上限の目安になります。年休や産休期間中の扱いも含めて、収入の見通しを早めに立てておくと判断がぶれません。
Q. 妊婦健診のために休むとき、年次有給休暇を使わないといけませんか?
A. 均等法12条は、事業主に対して健康診査・保健指導を受けるために必要な時間を確保できるようにする義務を課しています。その時間を有給とするか無給とするかまでは法律で定められておらず、就業規則の定めによります。まず自分の職場の規程を確認し、通院休暇のような制度があるかを見てください。年休を使う場合の申請の通し方は有給が取れないときの対処法にまとめています。
Q. 産後はいつから働けますか?
A. 産後8週間は就業させてはならないと定められています(労働基準法65条2項)。本人の請求を要しない就業禁止で、「早く戻りたい」と申し出ても変わりません。ただし産後6週間を経過したあとは、本人が請求し医師が支障がないと認めた業務に就くことは差し支えないとされています。
復帰後の働き方まで含めて、条件を比べておく
夜勤の回数を選べるか、短時間勤務が実際に使われているか。求人票では分からない運用の実態は、転職サービスの担当者が確認してくれます。
まとめ
- 夜勤免除は請求権: 労基法66条3項。「請求した場合においては、深夜業をさせてはならない」。黙っていても外れない
- 請求の要否を切り分ける: 夜勤・時間外・休日・軽易業務転換・産前休業は請求が起点。危険有害業務の制限と産後8週間の就業禁止は請求が要らない
- 報告と請求を1回で済ませる: 出産予定日と請求内容を、勤務表を組む人に、希望休の締切より前に。記録の残る形で
- 職場側にも受け皿はある: 日勤のみを導入する病院は54.7%、夜勤の回数や曜日を選べる病院は44.1%。産休・育休の前例がある病院は81.2%
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参考文献
- 労働基準法 第64条の3・第65条・第66条・第67条・第119条/e-Gov法令検索(2026-09-20 閲覧)
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第12条・第13条/e-Gov法令検索(2026-09-20 閲覧)
- 厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」母健連絡カードについて(2026-09-20 閲覧)
- 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果(図表15 導入している働き方、図表16 理由別休職状況/n=3,502病院)(2026-09-20 閲覧)
- 厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表3 年齢階級別にみた就業保健師等(2026-09-20 閲覧)