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看護師の部署異動は拒否できる?|断れるかの線引きと異動希望の出し方
目次
- 01内示を受けたら、最初に確かめる3つのもの
- 02断れるかの線引き|判例の基準を看護の場面に当てはめる
- 原則:就業規則に定めがあり、限定の合意がなければ、病院は同意なしに命じられる
- 例外1:職種や勤務地を限定する合意がある
- 例外2:権利の濫用にあたる場合
- 03法律が用意している「配置の配慮・請求」
- 04異動を命じられたとき|断る前に出す「条件つきの相談」
- 05数字で見る異動|相談件数と、看護職の悩みの中での位置
- 06異動を希望するとき|時期・書面・文例
- 07失敗例・よくあるNG
- 08自分で解決できないとき|相談先と持ち物
- 09異動したばかりで合わないとき|原因の切り分け
- 10よくある質問
- Q. 看護師は部署異動を拒否できますか?
- Q. 異動の内示を断ったら、懲戒になりますか?
- Q. 異動希望を出すと、評価が下がりますか?
- Q. 部署異動のストレスは、どのくらいの人が感じていますか?
- 11異動で解決しないとき
- 12まとめ
師長に呼ばれて、来月から別の病棟だと告げられる。理由を聞いても「人員の都合」で終わる。反対に、何度希望を出しても今の部署から動けない。異動は、命じられる側にも願い出る側にも、本人の事情が見えないまま決まりやすい出来事です。
結論から書きます。就業規則に異動を命じる定めがあり、勤務地や職種を限定する合意がなければ、病院は本人の同意なしに異動を命じられるのが原則です。ただし、次のどれかにあたる命令は、権利の濫用(権利を認められた範囲を超えて使うこと)として無効になりえます。
- 業務上の必要性がない
- 必要性があっても、不当な動機・目的でされた
- 本人に、通常甘受すべき程度(ふつうは受け入れるべき範囲)を著しく超える不利益を負わせる
どれにあたるかは個別の事情で決まるので、この記事は「断れる」「断れない」と言い切りません。扱うのは、民間病院の職員が同じ病院(同じ法人)の中で配置転換される場合です。別の法人へ移る出向・転籍や、公務員として働く場合は整理が異なります。
今の状況から、読む場所を選んでください。
| 今の状況 | 読む節 |
|---|---|
| 異動の内示が出て、返事を迫られている | 最初に確かめる3つ → 断れるかの線引き → 断る前に出す「条件つきの相談」。返事が来ないときは「自分で解決できないとき」 |
| 異動を希望しているが、通らない・言い出せない | 異動を希望するとき |
| 異動したが、合わない | 異動したばかりで合わないとき |
| 妊娠・介護の事情で、配置を変えてほしい | 法律が用意している「配置の配慮・請求」 |
| 嫌がらせや報復のような異動に見える | 線引きの表の最終行 → 看護師のパワハラ対処法 |
人間関係が理由の異動の申し出方は人間関係で辞めたいと感じたときの対処法にあるので、ここでは線引きと書面の出し方に絞ります。
内示を受けたら、最初に確かめる3つのもの
返事の前に、手元の書面で次の3つを見ます。口頭の説明だけで判断すると、病院側の言い分が基準になるからです。
| 確かめるもの | 見る場所 | 分かること |
|---|---|---|
| 異動を命じる定め | 就業規則(「業務上の都合により異動を命ずることがある」などの条文) | 病院に異動を命じる根拠があるか |
| 変更の範囲 | 労働条件通知書の「就業の場所」「従事すべき業務」にある「(変更の範囲)」 | 異動先がどこまでありうる契約か |
| 限定する合意 | 求人票、契約書、採用時の説明に「◯◯業務に限る」「◯◯勤務のみ」などの記載があるか | 職種や勤務地を限定する約束があるか |
「変更の範囲」は、2024年4月以降の労働契約の締結時から、労働条件通知書に書くことが決められました(労働基準法施行規則5条)。それより前に入職した人の通知書には、この記載がないことがあります。その場合は就業規則と、採用時の説明を手がかりにします。読み方は看護師の労働条件通知書の見方にまとめています。
読み取れないときは、人事や看護部に「就業規則の異動の条文を見せてください」と頼みます。
断れるかの線引き|判例の基準を看護の場面に当てはめる
原則:就業規則に定めがあり、限定の合意がなければ、病院は同意なしに命じられる
最高裁は、営業所間の転勤命令を家庭の事情で拒んだ従業員の懲戒解雇が争われた事件(東亜ペイント事件、昭和61年7月14日判決)で、この原則を示しました。就業規則に業務上の都合で異動を命じる定めがあり、勤務地を限定する合意がなかったため、会社は個別の同意なしに勤務場所を決められる、という考え方です。裁判所の案内も、配置転換命令について、職種や勤務地が限定されていれば原則として使用者は一方的に変更できないと説明しています(大阪地方裁判所の案内)。
例外1:職種や勤務地を限定する合意がある
令和6年4月26日の最高裁判決は、職種や業務内容を特定のものに限定する合意がある場合、使用者は、本人の個別の同意なしにその合意に反する配置転換を命じる権限を有しない、と判断しました。事案は、福祉用具の改造・製作などを担う技術職として雇われた職員が、総務課の施設管理担当への配置転換を命じられたものです。この判決は命令の権限がないことを示したもので、損害賠償の当否は大阪高等裁判所に差し戻されました。
看護師に当てはめると、争点になりうるのは、病棟間の異動より、看護以外の業務(事務など)への異動や、勤務地を限定した契約の人の別施設への異動です。看護師として採用されたこと自体が職種の限定にあたるかは、契約書面や採用の経緯で決まるため、この記事では判断できません。判断の材料になる書面は、前の節の3つ目の行に挙げたものです。
例外2:権利の濫用にあたる場合
ただし、次のどれかにあたる命令は、権利の濫用(権利を認められた範囲を超えて使うこと)として無効になりえます。
- 業務上の必要性がない
- 必要性があっても、不当な動機・目的でされた
- 本人に、通常甘受すべき程度(ふつうは受け入れるべき範囲)を著しく超える不利益を負わせる
この3つの事情は、東亜ペイント事件の最高裁判決が示した例示で(判決は「…等」と書いています)、限定列挙ではありません。業務上の必要性は、「余人をもって容易に替え難い」ほどの高度なものに限られず、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、業務運営の円滑化などに役立つ点が認められれば肯定される、とされています。編集部の読み方では、病棟の人員の都合や経験を広げる目的は、必要性として認められるハードルが高くありません。争いになりやすいのは、動機と不利益です。
看護の場面に置き換えた整理が次の表です。結論を示す表ではなく、先に見る点と次の一手の目安です。
| 異動の例 | 先に見る点 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 病棟から別の病棟へ | 就業規則の異動の定め。理由が人員配置か。夜勤の回数や通勤など、本人の不利益が増えるか | 通知書と就業規則を確かめ、事情があれば条件つきの相談へ |
| 病棟から外来・訪問看護などへ | 変更の範囲に含まれるか。夜勤の有無や手当の変化 | 範囲外に見えるなら、書面で質問して回答を残す |
| 看護以外の業務(事務など)へ | 職種を限定する合意があるか(令和6年の最高裁判決の論点) | 求人票・契約書・採用時の説明をそろえ、窓口か専門家へ |
| 別の施設・遠方の事業所へ | 同じ法人内か。勤務地の限定。通勤時間、子の養育や家族の介護への影響 | 同じ法人かを確認し、事情を書面で伝える |
| 嫌がらせや報復が疑われる異動 | 動機・目的。時期(相談や申告の直後か)と、記録の有無 | 看護師のパワハラ対処法の手順で記録を取る |
法律が用意している「配置の配慮・請求」
異動の中身によっては、法律が本人の側に手段を用意しています。
- 妊娠中の軽易な業務への転換: 妊娠中の女性が請求したときは、使用者は他の軽易な業務に転換させなければなりません(労働基準法65条3項)。転換先にできる業務があるかは職場の状況によります。夜勤の免除などを含めた手順は看護師が妊娠したときの働き方にあります
- 子の養育・家族の介護への配慮: 配置の変更で就業の場所が変わり、子の養育や家族の介護が難しくなる労働者がいるときは、事業主は状況に配慮しなければなりません(育児・介護休業法26条)。対象は「就業の場所の変更を伴う」配置の変更なので、同じ施設内の病棟間の異動には、そのままは当てはまりません。介護との両立は親の介護と看護師の仕事を両立するにはで扱っています
- ストレスチェックの面接指導後の措置: 医師の意見を聴いたうえで、必要があれば就業場所の変更などの措置を講じることが、事業者に求められています(労働安全衛生法66条の10第6項)。流れはストレスチェックで高ストレスと出たらにあります
配慮の義務は、希望どおりにする義務ではありません。それでも、自分の事情を書面で伝える根拠にはなります。
異動を命じられたとき|断る前に出す「条件つきの相談」
内示を受けたら、返事の前に次の順で動きます。
- 持ち帰る: その場では「確認して、◯日までにお返事します」とだけ答えます。内示の内容は書面かメールで確認し、口頭だけなら日付つきのメモに残します
- 確認する: 異動先、時期、理由、夜勤の回数や勤務形態の変更の有無を聞きます
- 自分の事情と、受けられる条件を書く: 受けられない事情(通勤、養育、介護、体調)と、時期の調整など受けられる条件の両方を書きます。「受けない」だけを書くと、交渉の余地がなくなります
- 回答の期限を聞く: 病院側の返事がいつ来るかを確認し、記録に残します
書面の見本です。丸括弧の部分は、自分の状況に置き換えます。
◯月◯日にご提示いただいた◯◯病棟への異動について、お返事の前に確認させてください。①異動の時期と理由、②夜勤の回数や勤務形態の変更の有無を教えてください。あわせて、私の側の事情として、(例:家族の介護のため、19時以降の勤務が難しい状況)があります。この事情を踏まえて、時期の調整や勤務形態について相談の機会をいただけないでしょうか。ご回答は◯月◯日までにいただけますと助かります。
「断ります」ではなく「相談したい」と書くのは、病院に検討の余地を残すためです。事情が伝われば、時期や勤務形態を調整できる場合があります。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:「断ります」を先に言ってしまう線引きを知ると、納得できない異動に「お断りします」と返したくなります。ところが、東亜ペイント事件は、まさに転勤を拒んだ従業員の懲戒解雇が争われた事件でした。最高裁はその事案で、命令を権利の濫用とはいえないと判断しています。命令が後から無効とされることがあっても、拒否の時点で処分を受けるおそれは残ります。しかも、口頭で「無理です」と言っただけでは、いつ何を理由に断ったのかが残りません。断る前に、事情を書面で伝えて条件の相談を申し入れ、病院の回答を受け取っておくと、後で相談窓口に説明する材料になります。ただし、書面で相談しても処分を受けないとは限りません。断る選択肢をなくすわけではなく、順番を後ろにするという意味です。
返事が来ないとき、または「命令なので」の一言で終わるときは、看護部長や人事部門に同じ内容を宛先を変えて送ります。異動の日が迫っても回答がないときは、内示と自分の申入れの書面をそろえて、その時点で総合労働相談コーナーか弁護士に相談します。従うか拒むかは、個別の事情で結論が変わるため、この記事では決めません。
数字で見る異動|相談件数と、看護職の悩みの中での位置
全産業では異動をめぐる相談が助言・指導やあっせんの手続きまで進んでいますが、看護職員が挙げた強い不満・悩み・ストレスの要因(上位2つ選択)では、配置転換の問題は17項目中11番目でした。3つの調査の数字を並べます。
| 調査 | 数字 | 読み方 |
|---|---|---|
| 厚生労働省「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」 | 民事上の個別労働紛争の相談(内訳延べ327,359件)のうち「出向・配置転換」は12,682件(3.9%)。労働局長の助言・指導の申出(内訳延べ11,382件)では723件(6.4%)、あっせんの申請(内訳延べ4,888件)では168件(3.4%) | 全産業の数字で、看護職に限りません。異動をめぐる相談が、助言・指導やあっせんという公的な手続きまで進んでいます。窓口の利用は特別なことではなく、使い方は後の節にあります |
| 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(有効回答3,502施設、2025年10月1日時点) | 看護職員(正職員)の人材確保のために「本人の希望の専門領域・部署への配属」を導入している病院は38.7%。「異動がない」働き方を導入している病院は3.8% | 希望を聞く仕組みを制度として掲げる病院は約4割です。「導入していない」病院が希望を聞かないという意味ではありません。異動のない働き方を人材確保策に挙げる病院は、3.8%にとどまります |
| 日本医労連ほか「2022年 看護職員の労働実態調査」(35,933人。加盟組合のある職場の回答で、全国代表ではありません) | 仕事での強い不満・悩み・ストレスが「ある」は65.4%。その人たちが挙げた要因(上位2つ選択)で「配置転換の問題」は5.6% | 2022年調査で、現時点で確認できる最新版です。異動そのものを大きなストレス要因に挙げた人は多くありません |
医労連の要因を並べると、異動の位置が見えます。
この結果から言えることは2つです。1つは、悩みの上位が仕事の量(48.7%)と質(31.8%)で、人間関係(22.2%)が3番目にあること。もう1つは、辞めたい理由の1位が「人手不足で仕事がきつい」(58.1%)で、「職場の人間関係」(20.1%)の約3倍あること(同調査問39、辞めたいと思う人が3つまで選択)です。ただし、5.6%は「異動後に負担を感じた人が少ない」という意味ではありません。選べる項目が多い設問での、上位2つの割合です。
編集部の読み方では、異動で変えやすいのは人間関係や適性の合わなさ、夜勤の負担のような部署ごとの条件で、人手不足そのものは部署を変えても残りえます。異動は、悩みの原因が部署にあるときの手段です。 原因が病院全体の人員にあるなら、希望が通っても同じつらさが続くことがあります。
異動を希望するとき|時期・書面・文例
希望を出す側の手順です。人間関係を理由にする場合の申し出先と、先送りされたときの確かめ方は人間関係で辞めたいと感じたときの対処法に書いたとおりです。ここでは、それ以外の部分を補います。
- 自己申告書や異動希望調査があるかを確認する: 制度のある職場は、その提出が正式な窓口です。時期や様式は職場によって違うので、師長か看護部に聞きます
- 希望の中身を3点に絞る: 希望先(部署)、理由、時期です。理由は「◯◯の経験を積みたい」「◯◯の資格を活かしたい」のように、担当する仕事で書きます
- 書面かメールで出す: 面談で口頭に伝えたあとも、同じ内容を文字にして残します
- 判断の時期を聞く: 「次の異動の判断はいつ頃になりますか」と、期限を確認します
希望の書面の見本です。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:理由に特定の人の名前や不満を書く◯◯病棟の◯◯です。来年度の異動について希望をお伝えします。希望先は◯◯外来です。現在の病棟で◯年間担当してきた◯◯の経験を、◯◯の業務で活かしたいと考えています。希望の時期は◯月以降です。判断のスケジュールを教えていただけますか。
希望理由に「◯◯さんとうまくいかない」「師長の指示が不公平」と書くと、希望の書面が人間関係の苦情として扱われ、異動の話より先に当事者の聞き取りが始まることがあります。事実の整理が済んでいない段階で書くと、後から事実と違うと言われても、書面が残っています。ただし、人間関係が本当の理由なのに隠すという意味ではありません。希望の書面には、次に経験したい仕事を書きます。人間関係の問題そのものは、日時と事実を記録したうえで、別の窓口に相談します。記録の取り方は看護師のパワハラ対処法にあります。
希望が断られたときは、理由を書面かメールで聞き、次の4つを順に確かめます。
- 時期をずらせば可能か(次の異動の周期、欠員が埋まる時期)
- 期間を区切った応援や研修で経験できないか
- 看護部長や人事部門に直接伝える道があるか
- 法人内の別の施設へ出る道があるか
失敗例・よくあるNG
- 理由を聞かずに受け入れ、あとで辞めたいと思う: 異動の理由と期間を聞かないまま受けると、「いつまでこの部署か」が見えず不安が長引きます。異動の目的(欠員の補充か育成か)と、見直しの時期を確認しておきます
- 同僚から聞いた話だけで判断する: 「前の人は断れなかった」は、その人の契約と事情の話です。自分の就業規則と通知書で確かめます
- 書面を残さずに口頭で何度も頼む: 「前に言いました」では、いつ何を伝えたかが分かりません。申入れと回答は、日付のある形で残します
自分で解決できないとき|相談先と持ち物
内示の理由に納得できない、書面で相談しても動かない、不利益な扱いを感じる。そのような場面では、病院の外の窓口を使えます。
総合労働相談コーナー(都道府県労働局や労働基準監督署などに全国378か所、2026年4月1日現在)では、解雇、賃金引下げ、いじめ・嫌がらせなど、労働問題全般を専門の相談員に面談か電話で相談できます。予約は不要で、利用は無料です。プライバシーの保護に配慮した対応をするとされています(厚生労働省)。47都道府県で割ると1都道府県あたり平均約8か所です。勤務先の外に、予約なしで話せる窓口が各地にあるということです。
行くときの持ち物は、次のとおりです。
- 労働条件通知書、雇用契約書
- 就業規則の異動の条文(写しか写真)
- 内示のメールや、日付つきのメモ
- 自分が出した書面と、病院の回答
労働局には、労働局長が解決の方向を示す「助言・指導」と、紛争調整委員会のあっせん委員が話し合いを促す「あっせん」の制度もあります。申し出の可否や結果は、個別の事情によります。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:窓口に「命令が無効かどうかの判定」を期待して行く総合労働相談コーナーは、制度の案内と、助言・指導やあっせんへの入口です。助言・指導は解決の方向を示す制度、あっせんは話し合いを促す制度で、異動命令が有効か無効かを決める場ではありません。法的な最終判断は裁判所の役割です。この違いを知らずに行くと、「相談したのに何も決まらなかった」という行き違いになり、書類が足りないまま2度3度と通うことになります。最初に「どんな手続きがあるか」を聞く場だと考え、上の書類を1回で見せられるようにそろえておくと、相談員も手続きを案内しやすくなります。懲戒処分や解雇を告げられたとき、限定合意の有無が争点になるときは、弁護士や法テラス(日本司法支援センター)など法律の専門家に、同じ書類を持って相談します。この記事は一般的な情報で、個別の事案の判断ではありません。
異動したばかりで合わないとき|原因の切り分け
「部署異動 辞めたい」と感じる前に、つらさの中身を分けます。次の表は編集部の整理で、結論ではありません。
| つらさの中身 | 変わり方 | 最初の一手 |
|---|---|---|
| 手順・機器・疾患に慣れていない | 期間とともに変わりやすい | 困っている業務を具体的に挙げ、同行や教育の期間を師長に相談する。◯週間後に見直す日を決める |
| 特定の人との関係 | 条件の調整で変わる余地がある | 日時と事実を記録し、人間関係の記事の手順へ |
| 夜勤や勤務形態が変わった | 内示のときの確認事項に戻る | 変更の内容を書面で確かめ、事情があれば調整を相談する |
| 人手不足による仕事の量 | 編集部の読み方では、異動では変わりにくい | 病院全体の問題として、相談窓口や外の選択肢も並べて考える |
異動して1か月、夜勤の回数が増えて疲れが抜けない日が続いているのに、「新しい部署はこんなもの」と考えて何も伝えずに過ごす。内示のときに確認していれば調整できた夜勤の回数や、特定の人との関係のつらさが、記録も相談もないまま3か月たってしまう。時期を逃すと、「いまさら言われても」と受け取られやすくなります。回避するには、つらさを上の表の4行のどれかに分けて、日付つきでメモします。そのうえで、師長と「◯週間後に見直す」と日を決めます。見直す日があれば、耐える期間に区切りが付き、続けるか動くかを日付のある事実で判断できます。
体調に出ているときは、産業医や医療機関に相談します。
よくある質問
Q. 看護師は部署異動を拒否できますか?
A. 就業規則に異動を命じる定めがあり、勤務地や職種を限定する合意がなければ、病院は本人の同意なしに異動を命じられるのが原則です。ただし、「業務上の必要性がない」「必要性があっても、不当な動機・目的でされた」「本人に、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる」のどれかにあたる命令は、権利の濫用(権利を認められた範囲を超えて使うこと)として無効になりえます。どれにあたるかは個別の事情で決まるため、断る前に事情を書面で伝えて条件を相談し、迷うときは総合労働相談コーナーや弁護士に相談します。
Q. 異動の内示を断ったら、懲戒になりますか?
A. 命令が有効な場合に拒否を続ければ、懲戒の対象になりえます。東亜ペイント事件も、転勤を拒んだ従業員の懲戒解雇が争われた事案でした。命令が有効かどうかは、就業規則、限定の合意、必要性、本人の不利益といった事情で決まります。断る前に事情を書面で伝えて条件を相談し、迷うときは総合労働相談コーナーや弁護士に相談します。後から事情を説明しやすくなりますが、懲戒を受けないとは限りません。
Q. 異動希望を出すと、評価が下がりますか?
A. 評価への影響は職場の運用によるため、一般論では言えません。気になるときは、自己申告書や異動希望調査が制度としてあるかを、師長か看護部に聞きます。制度のある職場なら、希望を出すこと自体が想定された手続きです。希望を書面で出し、判断の時期を聞いておくと、後で経緯を確認できます。
Q. 部署異動のストレスは、どのくらいの人が感じていますか?
A. 日本医労連ほかの2022年調査では、強い不満・悩み・ストレスが「ある」と答えた人が挙げた要因(上位2つ選択)のうち、「配置転換の問題」は5.6%でした。ただし、異動後に負担を感じた人が少ないという意味ではありません。この調査は、加盟組合のある職場の回答で、全国代表ではありません。
異動で解決しないとき
つらさの中心が人手不足や病院全体の方針にある、希望を出しても判断の時期が示されない、異動後も同じ種類の問題が続く。そのようなときは、異動では原因が変わらない可能性があります。残る選択肢は、休む、相談窓口を使う、外の職場へ移る、のどれかです。理由別の出口の選び方は、看護師が辞めたいと思ったときの対処法にまとめています。
異動で変わらない悩みは、外の職場と比べて確かめる
異動で変えられるのは、部署の環境です。人手不足や病院の方針が原因なら、異動後も残ることがあります。まだ転職すると決めていなくても、選択肢を比較しておくと判断しやすくなります。
まとめ
- 返事の前に、就業規則、労働条件通知書の「変更の範囲」、限定の合意の3つを確かめる
- 就業規則に定めがあり、限定の合意がなければ、病院は同意なしに異動を命じられるのが原則。必要性がない、不当な動機・目的、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益のどれかなら、権利の濫用になりうる
- 限定の合意がある場合、その範囲を超える変更は同意なしにはできない。看護師としての採用が職種の限定にあたるかは、契約書面や採用の経緯で決まる
- 断る前に、事情と受けられる条件を書面で伝え、判断はその回答を受けてから決める。回答がないまま異動日が迫るときは、窓口か弁護士へ
- 異動希望は、希望先・理由・時期を担当する仕事の言葉で書き、書面で出して判断の時期を聞く
- 自分で解決できないときは、書類を持って総合労働相談コーナー(無料・予約不要)へ。懲戒や解雇を告げられたときは、弁護士や法テラスにも
状況別の次の読みものです。
- 異動の原因が人間関係なら: 人間関係で辞めたいと感じたときの対処法
- 嫌がらせが疑われるなら: 看護師のパワハラ対処法
- 異動以外の出口も含めて考えるなら: 看護師が辞めたいと思ったときの対処法
- 妊娠・介護の事情で配置を変えたいなら: 看護師が妊娠したときの働き方、親の介護と看護師の仕事を両立するには
- 異動後の不調が続くなら: ストレスチェックで高ストレスと出たら