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ノウハウ

看護師の労働条件通知書の見方|2024年4月に増えた明示事項と承諾前のチェック表

ナースひとやすみ 編集部約14分で読めます
目次

内定のあとに届いた書面を前に、どこから読めばいいか分からない。承諾を急かされているようで、質問していいのかも迷う。見るべきは、賃金、勤務時間と休日、就業の場所と業務の「変更の範囲」です。あいまいな欄は、承諾前にメールで質問します。

労働条件通知書は、職場が労働契約を結ぶときに示す労働条件の書面です(労働基準法15条)。契約期間、就業の場所と業務、始業・終業の時刻や休日、賃金、退職などは、書面で示すことが義務です。本人が希望すれば、メールなどで受け取ることもできます。2024年4月からは、すべての契約で就業の場所と業務の「変更の範囲」、パートや契約職員など期間の定めがある契約では更新上限なども示すことになりました。

厚労省のモデル労働条件通知書の欄に沿って、看護師が見る点と法定の最低基準、承諾前に質問する手順を整理します。法令は、公開日(2026年10月8日)時点で施行されている版を2026年9月25日〜26日に確認しました。2026年10月1日からは、パート・有期の人への明示事項も1つ増えています。

通知書に何を書くかは、法令で決まっている

まず、何が書かれているはずかを押さえます。

区分主な事項根拠
書面で示す(本人が希望すればFAX・メールも可)契約期間/有期契約の更新の基準(更新上限を含む)/就業の場所と従事すべき業務(変更の範囲を含む)/始業・終業の時刻、所定時間外労働の有無、休憩、休日、休暇、交替制/賃金の決め方・計算と支払の方法、締切日と支払日/退職(解雇の事由を含む)労働基準法施行規則5条1項・3項・4項
必ず示す(書面でなくてもよい)昇給同5条1項3号・3項
定めがあれば示す(書面でなくてもよい)退職手当、賞与など臨時の賃金、食費や作業用品の負担、安全衛生、職業訓練、災害補償、表彰・制裁、休職同5条1項ただし書
パート・有期の人に書面で示す昇給・退職手当・賞与の有無、相談窓口。2026年10月1日からは、待遇の相違の内容・理由について説明を求めることができる旨もパートタイム・有期雇用労働法6条、同施行規則2条
無期転換の申込権が生じる有期契約で示す無期転換を申し込めること、無期転換後の労働条件労働基準法施行規則5条5項・6項

職場は、明示する労働条件を事実と異なるものにしてはなりません(同5条2項)。求人票は募集の段階の明示で、求人票と違う条件で契約するときは、変わる内容を示す義務があります(職業安定法5条の3第3項)。求人票の読み方は看護師の求人票の見方にまとめています。

この決まりが守られていない例もあります。労働基準監督署の定期監督等では、2024年に労働条件の明示(労基法15条)の違反が14,250件見つかりました。その年に監督した件数に対する割合は10.0%です(2013年は12.3%)。監督した職場の中での割合で、すべての職場の違反率ではありません。

求人票との食い違いも起きています。ハローワークには2024年度、求人票の記載と実際の労働条件が違うという申出などが3,297件寄せられました。産業別では、医療・福祉が725件で最も多くなっています。内容(延べ)で多いのは、賃金(929件)、就業時間(661件)、職種・仕事の内容(591件)です。ハローワークの求人に限った件数で、求人の多い産業ほど件数も増えやすい点には注意が必要です。それでも、表の事項が通知書に欠けていないか、求人票と同じかを、承諾前に自分で照らし合わせる意味はあります。

2024年4月から増えた4つの明示事項

厚労省のリーフレットは、2024年4月の改正で追加された明示事項を4つに整理しています。

対象追加された明示事項明示のタイミング
すべての労働者就業場所・業務の変更の範囲すべての契約の締結時と、有期契約の更新時
有期契約の人更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容有期契約の締結時と更新時
有期契約の人無期転換を申し込めること無期転換の申込権が生じる更新時
有期契約の人無期転換後の労働条件同上

あわせて、最初の契約のあとに更新上限を新しく設けたり短くしたりする場合は、その理由をあらかじめ説明することが必要になりました(有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準)。常勤の正職員にとって新しいのは、1つ目の「変更の範囲」です。

「変更の範囲」の読み方

「変更の範囲」は、今後の見込みも含めた、契約期間中の就業の場所と業務の変更の範囲です(厚労省通達、2023年10月12日)。配置転換や在籍型出向の行き先は含まれます。一方、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修のように一時的に場所や業務が変わる場合は含まれません。通達の定義では、人手が足りない日の臨時の病棟応援のような一時的な変更は、この欄の対象に含まれません。 応援が定期的に組まれているなど、どちらにあたるか分からないときは、承諾前に頻度や扱いを質問します。

厚労省は、限定の程度ごとに記載例を示しています。看護職の通知書に置き換えたときの読み方も並べます。

限定の程度厚労省の記載例看護職での読み方の例
限定なし(変更の範囲)会社の定める営業所/会社の定める業務法人が運営する別の病院・施設や、外来・訪問看護などへの異動を含みうる
一部に限定(変更の範囲)愛知県内/淀川区内地域や施設のまとまりの中で異動がありうる
完全に限定(変更の範囲)変更なし/雇入れ直後の従事すべき業務と同じ採用された施設・業務から動かない前提
一時的に限定(変更の範囲)会社の定める事業所(育児・介護による短時間勤務中は、原則、勤務地の変更を行わないこととする。ただし、労働者が勤務地の変更を申し出た場合はこの限りではない。)事情のある期間だけ範囲が狭まる

出典: 厚生労働省「2024年4月からの労働条件明示のルール変更 備えは大丈夫ですか?」(記載例は同資料から抜粋。看護職での読み方は当サイトによる例示)

厚労省は、限定がない場合でも、できる限り変更の範囲を明確にし、労使でコミュニケーションをとって認識を共有することが重要だとしています。「会社の定める場所」とだけ書かれていたら、どの施設が含まれるのかを承諾前に聞いてかまいません。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

「雇入れ直後」(入職したときの配属先)の欄だけを見て、変更の範囲を読み飛ばすケースです。雇入れ直後に「◯◯病院 3階病棟」とあっても、変更の範囲が「法人の定める施設」なら、入職後に法人内の介護施設や別の病院へ異動する可能性を含んだ契約です。子育てや通勤の事情で勤務地を変えられない人ほど、ここが重要になります。確かめるときは「変更の範囲に含まれる施設を教えてください」と具体的に聞き、答えを書面かメールで受け取ります。限定を希望する場合は、承諾前に「◯◯病院に限定できますか」と相談し、合意した内容を通知書に反映してもらいます。承諾後に範囲を狭めてもらうのは難しくなります。

欄ごとのチェック表

モデル労働条件通知書の主な欄と、看護師が見る点、法定の最低基準を並べます。

欄看護師が見る点法定の最低基準など
契約期間期間の定めの有無。ありなら更新の有無、判断の基準、更新上限有期は更新上限の有無を明示(労基則5条1項1号の2)
就業の場所・業務雇入れ直後の施設・部署と、変更の範囲変更の範囲を明示(同1号の3)
始業・終業の時刻交替制や変形労働時間制なら、日勤・夜勤それぞれの時刻と組み合わせ交替制の勤務時間を書く欄がある
所定時間外労働有・無。有なら、どのくらいあるかを質問する書面で明示(同2号)
休日・休暇休日の決め方、年次有給休暇の日数、時間単位年休の有無6か月継続勤務し8割以上出勤で年休10日(労基法39条)。週30時間未満で週4日以下などのパートは、日数が少ない比例付与
賃金基本給と諸手当(夜勤手当など)の額・計算方法、割増賃金率、締切日と支払日法定労働時間を超える時間外25%以上、月60時間超は50%以上、法定休日35%以上、深夜25%以上(労基法37条・政令)
退職自己都合退職の届出の期限、定年、解雇の事由書面で明示(同4号)
その他社会保険・雇用保険の加入、相談窓口、就業規則を確認できる場所パート・有期は相談窓口などを書面で

割増賃金率の欄は、法定の率を下回っていないかを確かめる欄です。深夜(午後10時〜午前5時)の割増は夜勤で必ず関わるので、夜勤手当とは別に割増がどう扱われるのかも、分からなければ質問します。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

「詳細は就業規則第◯条〜第◯条」とだけ書かれた欄を、中身を見ないまま承諾するケースです。モデル様式でも、始業・終業の時刻、休日、休暇、退職の欄は、詳細を就業規則に委ねる書き方になっています。夜勤の回数の決め方やオンコールの扱い、自己都合退職の届出期限などが、就業規則の側にしか書かれていないこともあります。モデル様式には「就業規則を確認できる場所や方法」を書く欄があります。この欄が空いていたら、承諾前に「参照されている就業規則の条文を拝見できますか」と頼んでください。見られない場合は、気になる条文の内容だけをメールで教えてもらいます。

承諾前に質問と修正を頼む手順

日本看護協会の調査では、2024年度に中途で採用された正規雇用の看護職員(既卒採用者)のうち、同じ年度のうちに辞めた人は16.1%でした。正規雇用の看護職員全体の11.0%、新卒採用者の8.4%より高い水準です。辞めた理由はこの調査からは分かりませんが、入職してから「聞いていた条件と違う」とならないよう、承諾前に条件を書面で特定しておきます。

  1. 3つを並べる: 通知書、求人票、面接のメモを並べ、賃金・就業場所・業務・休日の4項目を突き合わせる(求人票の側の読み方は看護師の求人票の見方)
  2. あいまいな欄に印をつける: 空欄、「会社の定める」とだけある欄、「就業規則による」とだけある欄
  3. 質問はメールで送る: 回答が記録に残る
  4. 修正か書面での回答を頼む: 合意した内容が通知書に反映されたかを確かめてから承諾する
  5. 保存する: モデル様式にも、紛争の未然防止のため保存しておくことを勧める注記があります

質問の文例です。

労働条件通知書をお送りいただき、ありがとうございます。承諾の前に2点確認させてください。①就業の場所の変更の範囲「法人の定める施設」には、どの施設が含まれますか。②夜勤手当の額と、深夜の割増賃金の扱いを教えてください。お手数ですが、メールでご回答いただけますと助かります。

質問の送り先は、応募の経路で変わります。直接応募した場合は、人事担当者へメールで送ります。転職サービスを通して応募した場合は、担当者を通して応募先に確認してもらう方法もあり、自分からは聞きにくい条件の確認や、回答を書面で受け取るための調整を頼めることがあります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

承諾の期限が迫り、質問への回答を待たずに承諾してしまうケースです。内定の連絡と一緒に「◯日までにお返事ください」と言われると、返事を急ぎたくなります。ところが承諾したあとで「変更の範囲には系列の介護施設も含まれます」と回答が届いても、そこから条件を変えてもらうのは難しくなります。期限に間に合いそうにないときは、「労働条件通知書の2点を確認してからお返事したいので、◯日までお待ちいただけますか」と、理由を添えて期限の延長をメールで頼みます。延長への返事も、質問への回答と一緒に保存しておきます。

相談データで見る、書面で残す意味

厚生労働省によると、2025年度の総合労働相談は1,198,010件で、18年連続で100万件を超えました。個々の労働者と事業主の間の民事上のトラブルの相談を内容別に見ると、次のようになります(1回の相談で複数の内容があれば、それぞれに数える延べ件数)。

「労働条件の引き下げ」は33,368件で、前年度より8.2%増えました。労働局長による助言・指導の申出でも、「労働条件の引き下げ」が1,220件で最多です。「雇止め」は15,775件、「出向・配置転換」は12,682件でした。

これらは明示義務の違反の件数ではありません。それでも、賃金、異動の範囲、契約の更新という、通知書が書面で特定する項目をめぐる相談が毎年これだけ寄せられています。最初の条件が書面で特定されていれば、何がどう変わったのかを示す材料になります。

失敗例・よくあるNG

NG1: 口頭で聞いた配属や夜勤回数を、書面に残さない

面接で「希望の病棟に配属します」「夜勤は月4回まで」と言われても、通知書に書かれていなければ後から確かめられません。入職後に師長や人事の担当が替わると、面接での話を知る人がいなくなることもあります。通知書の就業の場所が「法人の定める施設」、勤務の欄が「シフトによる」のままなら、書面の上ではその約束はありません。面接や電話で聞いた内容は、要点をメールで送って返信をもらうか、通知書への記載を頼みます。

NG2: 有期契約で「更新する場合があり得る」だけを見て安心する

更新の判断の基準と、更新上限の欄まで読みます。「通算契約期間◯年まで」とあれば、その時点で契約が終わりうるということです。

NG3: 受け取った通知書を保存しない

入職後に条件が変わったときや、求人票との違いに気づいたとき、最初の条件を示す書面が手元にないと話が進みません。紙もメールも、退職したあともしばらくは残しておきます。退職後に賃金や条件を確かめる場面もあります。

よくある質問

Q. 雇用契約書しかもらっていません。労働条件通知書は別に必要ですか?

A. 労働基準法施行規則が求めているのは、定められた事項が明らかになる書面の交付で、書類の名前は定められていません。雇用契約書に必要な事項がすべて書かれていれば、それで足りると考えられます。欄が足りない場合は、足りない事項を書面で示してもらいます。

Q. 通知書がメールやPDFで届きました。問題ありませんか?

A. 本人が希望した場合は、FAXや電子メールなどで示すこともできます。ただし、受け取った人が出力して書面を作れるものに限られます(労働基準法施行規則5条4項)。届いたファイルは保存しておいてください。

Q. パートや契約職員の場合、何を確かめればいいですか?

A. 常勤と同じ欄に加えて、更新の基準と更新上限、無期転換の欄を確かめます。昇給・退職手当・賞与の有無と相談窓口も書面の事項で、2026年10月1日からは、正社員との待遇の違いの内容や理由について説明を求めることができる旨も加わりました。厚労省の2021年の調査では、待遇について説明を求めたことがあるパート・有期の人は15.1%にとどまり、求めなかった理由には「説明を求めやすい雰囲気がないから」(10.3%)もありました。説明を求めた人の79.7%は、説明を受けて納得しています。通知書の相談窓口の欄は、誰に聞けばよいかの手がかりになります。

Q. 通知書をなかなかもらえません。どこに相談できますか?

A. まず「承諾の前に、労働条件通知書を書面でいただけますか」と依頼します。それでも受け取れないときは、総合労働相談コーナーに相談できます。厚労省の「令和7年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、都道府県労働局や労働基準監督署、駅近くの建物など全国378か所(2026年4月1日現在)にあり、あらゆる労働問題の相談を1か所で受けています。2025年度の相談119万8,010件のうち、法制度の問い合わせが78万3,579件(延べ)と最も多く、「通知書をもらえないのは決まりどおりか」を確かめるだけの相談にも使えます。

Q. 入職後に、通知書と実際の条件が違っていたら?

A. 労働基準法15条2項は、明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は即時に労働契約を解除できると定めています。ただし当てはまるかは個別の事情によるため、まず通知書と実際の違いを書き出し、総合労働相談コーナーで確かめてください。

通知書で気になった点は、担当者に確認してもらう方法もある

自分からは言い出しにくい条件の修正や、承諾の期限の延長も、転職サービスを使っている場合は担当者を通して相談する方法があります。

まとめ

  • 書面で示す事項は決まっている: 契約期間、就業の場所と業務、始業・終業の時刻と休日、賃金、退職。本人が希望すればメールも可
  • 2024年4月から「変更の範囲」: 限定なし・一部限定・完全限定・一時的限定の4パターン。臨時の病棟応援など一時的な変更は含まれない(通達の定義)
  • 欄ごとに法定の基準と照らす: 割増率は法定時間外25%、月60時間超50%、法定休日35%、深夜25%以上。年休は6か月継続勤務・8割以上出勤で10日(週30時間未満で週4日以下などのパートは比例付与)
  • 承諾前にメールで質問し、書面で残す: 回答が記録に残るメールで聞き、合意した内容が通知書に反映されたかを確かめてから承諾する
  • 2026年10月1日から、パート・有期の明示事項が1つ増えた: 待遇の違いについて説明を求めることができる旨も書面で示される

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