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整形外科看護師を辞めたいとき|きつさの正体をデータで分解し、出口を3方向で整理
目次
- 01「整形外科だからつらい」のか「今の職場だからつらい」のか
- 02整形外科の「辞めたい」を作っている3つの構造
- ① 身体が先に消耗する——これは根性ではなく統計に出る職業リスク
- ② 業務の中心が「手術」ではなく「生活の立て直し」
- ③ 上位の辞めたい理由は、どの科でも変わらない「組織の設計」
- 03辞める前に試せる3つの手
- 1. 身体の負担を「記録」に変えて、配置と機器の交渉材料にする
- 2. 同じ整形外科のまま、機能の違う場所へ移る
- 3. 整形外科の経験を持ったまま、科を変える
- 04整形外科で動くときによくある失敗例
- 054つの出口を、身体負担・夜勤・経験の活き方で比べる
- 06よくある疑問 Q&A
- Q. 整形外科は「きつい科」なのでしょうか?
- Q. 腰が痛いのですが、辞めるしかないですか?
- Q. 整形外科の経験は、他の科に移っても役に立ちますか?
- Q. 異動を申し出ると、評価が下がりませんか?
- 07まとめ
- あわせて読みたい記事
整形外科で「もう続けられないかもしれない」と感じているなら、その気持ちをまず3つに分けてください。身体が先に消耗しているのか、業務の中身が想像と違ったのか、人手と時間外の問題なのか。どれが中心かで、打つ手がまったく変わります。
結論から書きます。辞めたい率を最も大きく動かしているのは診療科ではなく時間外労働の量です。そのうえで整形外科に固有の負荷は、手術の忙しさではなく「身体の消耗」と「業務の中心が生活の立て直しであること」の2点に集中します。この記事は原因の分解と出口の選び方に絞ります。仕事内容・職場タイプの違いは整形外科看護師への転職ガイドにまとめてあります。
「整形外科だからつらい」のか「今の職場だからつらい」のか
日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)は、仕事を辞めたいと思うことがあるかを聞いています。「いつも思う」24.0%と「ときどき思う」55.2%を合わせて79.2%。辞めたいと思いながら働いている人が8割です。
辞めたいと思いながら働いている看護職員の割合(いつも思う24.0%+ときどき思う55.2%)79.2%
日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」問38(2022年)
働く職場別に「いつも思う」だけを見ると、一般病棟27.6%、集中治療室24.3%、手術室23.0%でした。整形外科病棟はこの「一般病棟」に含まれます。つまり公表されている上位3部署の間では、差は4ポイント程度しかありません。
ところが同じ設問を時間外労働の量で切り直すと、差は一気に開きます。
時間外「なし」の13.7%に対し、月60〜70時間未満は42.2%。約3.1倍です。上位3部署の間の違い(一般病棟27.6%と手術室23.0%の4.6ポイント差)とは比べものになりません。
ここから言えることは一つです。「整形外科に向いていないのかもしれない」と考える前に、直近3か月の自分の時間外時間を数字にしてください。同じ整形外科でも、時間外の量が違えば辞めたい確率はまったく別の水準になります。科を変えるべきなのか、職場を変えるべきなのかは、この数字を出さないと決められません。
病院の規模も効きます。日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(回答3,440病院)の2024年度の正規雇用看護職員の離職率は、全体11.0%に対し99床以下13.1%・500床以上10.0%でした。整形外科は一般病院7,003施設のうち4,838施設(69.1%)が標榜する科で(厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」)、中小規模の病院にも広く置かれます。選択肢が広い反面、人が抜けやすい規模帯と重なる点は頭に入れてください。読み方は病院の離職率の見方にまとめています。
整形外科の「辞めたい」を作っている3つの構造
① 身体が先に消耗する——これは根性ではなく統計に出る職業リスク
厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査(令和6年)」第1表によると、休業4日以上の災害性腰痛は全業種で6,291件。そのうち保健衛生業が2,251件で、全体の約36%を占め、業種別で最も多くなっています(保健衛生業には医療保健業のほか社会福祉施設などが含まれます)。
2位の商業・金融・広告業(1,170件)の約1.9倍です。整形外科病棟は、そのなかでも移乗・体位変換・歩行介助の総量が多い部類に入ります。順序を間違えないでください。身体の使い方が下手だから痛むのではなく、腰痛の発生件数が全業種で最も多い業種の、最も介助量の多い持ち場にいるという話です。
そして厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」は、全介助が必要な対象者について「リフト等を積極的に使用することとし、原則として人力による人の抱上げは行わせないこと」と明記しています。人力の抱え上げが前提の運用になっている職場は、この指針が想定する状態から外れています。つまりこれは「我慢の足りなさ」ではなく、設備と人員配置の問題として言葉にできます。すでに腰の不調を抱えている場合の動き方は腰痛を抱えた看護師の転職を参照してください。
② 業務の中心が「手術」ではなく「生活の立て直し」
骨折で入院した患者の平均在院日数は年齢で大きく違い、75歳以上は35〜64歳の約2.4倍、全傷病平均の約1.6倍の日数を病棟で過ごします(厚生労働省「令和5(2023)年 患者調査の概況」表6。年齢階級別の日数は整形外科看護師への転職ガイドに表で整理しています)。
長くなる理由は帰る場所が整うまでに時間がかかるからで、その間の退院調整と生活支援が、整形外科病棟でいちばん時間を使う仕事になります。
「オペ出しとギプスの科」というイメージで入った人ほど、この落差が「思っていた看護と違う」という形の消耗に変わります。医労連の同調査でも「思うような看護ができず仕事の達成感がない」を辞めたい理由に挙げた人は23.1%(5番目)でした。消耗がこの型なら、必要なのは体力の回復ではなく、期待していた仕事像との差を埋めるか、差の小さい場所へ移るかの判断です。
③ 上位の辞めたい理由は、どの科でも変わらない「組織の設計」
同調査の「仕事を辞めたい主な理由」(3つまで選択)の上位は次のとおりです。
| 辞めたい理由 | 割合 | 整形外科での現れ方 | 個人の努力で動くか |
|---|---|---|---|
| 人手不足で仕事がきつい | 58.1% | 介助量の多い患者が複数重なる日に人が足りない | ほぼ動かない(人員配置) |
| 賃金が安い | 42.6% | 身体的負担に対して手当が見合わない感覚 | ほぼ動かない(給与規定) |
| 思うように休暇が取れない | 32.6% | 手術日・回診日に休みが重ねられない | 小さい |
| 夜勤がつらい | 23.6% | 夜間の転倒対応とコール量 | 中(勤務形態の変更) |
| 思うような看護ができず達成感がない | 23.1% | 退院調整に時間を取られ看護に戻れない | 中(配属領域で変わる) |
| 職場の人間関係 | 20.1% | 少人数の日勤帯で逃げ場がない | 中 |
出典: 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」問39(3つまで選択・回答35,933人)。「整形外科での現れ方」「個人の努力で動くか」は本サイトによる整理です
読み方は一つです。上位3項目はいずれも人員配置と給与規定に属し、個人の頑張りでは動きません。主因がこの3つなら、整形外科を離れても同じ配置の病棟に移れば同じことが起きます。 逆に4位以下が主因なら、勤務形態や配属を変えるだけで景色が変わる余地があります。理由の仕分け方全体は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法に整理しています。
自分の「辞めたい」が、科の問題か職場の問題かを切り分ける
時間外の量・人員配置・移乗補助機器の有無は、求人票には載りません。同じ整形外科でも条件がどこまで違うのかは、内部を知る担当者に複数当たると見えてきます。
辞める前に試せる3つの手
1. 身体の負担を「記録」に変えて、配置と機器の交渉材料にする
痛みやだるさは主観なので、そのまま伝えても「みんなつらい」で流れます。数えられる形にしてください。
- 手順: ①1週間、勤務ごとに「全介助の移乗回数」「2人介助ができなかった回数」「リフト・スライディングシートを使えた回数」を勤務表の余白に正の字で記録する → ②1週間分を合計し、夜勤帯と日勤帯に分ける → ③「原則として人力による人の抱上げは行わせないこと」という腰痛予防対策指針の一文と合わせ、師長に「この回数を減らす方法を相談したい」と切り出す
いちばん多い失敗は、記録を「つらさの証拠」として提出してしまうことです。受け取る側は責められていると感じ、話が感情のやり取りになって終わります。出すべきなのは苦痛の強さではなく、回数と、その回数を減らす具体的な手段です。「移乗介助が週18回あり、うち11回は1人でした。夜勤帯の2人介助を組めるようにするか、スライディングシートを病棟に増やせませんか」という形にしてください。設備の購入は師長の権限外のことが多いので、「今すぐできること」と「来年度の予算で検討してほしいこと」を分けて出すと、少なくとも前者は動きます。また、すでに受診しているなら診断名と就業上の制限を書面でもらっておくと、配置の調整は格段に通りやすくなります。
2. 同じ整形外科のまま、機能の違う場所へ移る
整形外科を離れなくても、急性期病棟・クリニック・回復期では1日の動き方が違います。介助量も夜勤の有無も変わります。
- 見本(面接や見学で聞く質問): 「術後1日目の患者さんを、日勤1人で何人受け持ちますか」「移乗用のリフトやスライディングボードは病棟に何台ありますか」「夜勤帯の看護師は何人体制ですか」「全介助の患者さんは1病棟あたり平均で何人くらいですか」
「整形外科クリニックなら夜勤がないから楽になる」と条件を1つだけ見て決めてしまうのが典型です。外来中心のクリニックは原則日勤のみですが、1日の外来患者数、レントゲン撮影やギプス介助の担当範囲、昼休みの実質的な長さは施設によって大きく違います。夜勤が消えた代わりに、休憩の取れない連続外来が増えることもあります。確認すべきは「夜勤の有無」ではなく、1日の患者数・担当する処置の範囲・休憩の実態の3点セットです。回復期を選ぶ場合も同じで、急変は減りますが移乗と歩行介助の総量はむしろ増えることがあります。身体の消耗が主因なら、回復期は慎重に見てください。日勤のみの選び方は日勤のみのクリニック転職にまとめています。
3. 整形外科の経験を持ったまま、科を変える
整形外科で身につくのは「動かす看護」です。早期離床、疼痛コントロール、転倒予防、退院支援——これらは高齢者医療のどの現場でも直接使われます。
- 手順: ①直近3か月で担当した術式を5つ書き出す → ②それぞれで自分が担当した時期(術前/術直後/退院前)と、実際にやったこと(離床の進め方、疼痛の調整、家族への説明)を1行ずつ足す → ③この5行を職務経歴書の「経験」欄に置き換える
「整形外科しかやってこなかったから潰しがきかない」という思い込みで、応募先を整形外科だけに絞ってしまう人が少なくありません。実際には、75歳以上の骨折患者の平均在院日数45.2日が示すとおり、整形外科病棟の業務時間の多くは高齢者の生活支援に使われています。この経験は回復期リハビリテーション病棟・介護保険施設・訪問看護で評価される中身そのものです。逆に、書類に「整形外科病棟5年」とだけ書いて応募すると、その中身が採用側に伝わりません。術式名と担当時期を具体的に書くところまでやって初めて、経験は移せます。書き方の型は看護師の職務経歴書の書き方を参照してください。
整形外科で動くときによくある失敗例
- 失敗例1: 腰の不調を「気合いの問題」として先送りした → 災害性腰痛は、保健衛生業だけで2024年に2,251件(休業4日以上)報告されている労働災害です。痛みが2週間以上続くなら、まず受診して記録を残してください。記録がないと、配置の調整も労災の相談も後から難しくなります。
- 失敗例2: 時間外時間を数えないまま「整形外科が合わない」と結論づけた → 辞めたい率は時間外なし13.7%から月60〜70時間未満42.2%まで約3.1倍に開きます。科の相性より先に、労働時間を疑ってください。
- 失敗例3: 夜勤の有無だけでクリニックを選んだ → 外来の回転数と処置の範囲、休憩の取れ方は施設差が大きい項目です。1日の患者数と担当業務を必ず数字で聞いてください。
- 失敗例4: 気持ちがいちばん落ちている週に転職先を決めた → 判断力が落ちている時期の決定は、条件の検証を飛ばしがちです。先に休みを確保し、情報収集だけ進めてください。退職を切り出す順番は看護師の退職の伝え方、活動全体の段取りは看護師の転職の流れにまとめています。
4つの出口を、身体負担・夜勤・経験の活き方で比べる
| 出口 | 身体的負担 | 夜勤 | 整形外科経験の活き方 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| 今の病棟に残り、条件を1つ変える | 変わらない(機器・人員が動けば減る) | 現状どおり | そのまま継続 | 人間関係と仕事内容には満足していて、負担の一点だけを下げたい人 |
| 整形外科クリニックへ移る | 低〜中(介助量は大きく減る) | 原則なし(施設により当番) | 処置・装具・患者説明として活きる | 身体の消耗が主因で、生活リズムを整えたい人 |
| 回復期リハビリテーション病棟へ移る | 中〜高(移乗・歩行介助は増えることも) | あり | 離床・退院支援がそのまま中心業務になる | 「生活の立て直し」にやりがいを感じている人 |
| 科を変える(外来・健診・訪問看護など) | 職場により大きく変わる | 職場による | 高齢者の生活支援・転倒予防の知識として活きる | 期待と実務のズレが主因の人 |
注: この表は公的統計ではなく、求人区分と整形外科看護の業務内容を踏まえた本サイトの整理です。具体的な負担は施設ごとに異なるため、面接では必ず受け持ち人数と補助機器の台数を確認してください
なお、診療科別の平均年収を公表した公的統計はありません。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」が示すのは看護師全体の平均年収524.7万円(平均年齢42.1歳)という職種単位の数字だけです。移る先を比べるときは「整形外科だからいくら」ではなく、基本給・賞与月数・夜勤回数・手当の4点を自分の条件に当てはめて試算してください。
よくある疑問 Q&A
Q. 整形外科は「きつい科」なのでしょうか?
A. 身体的負担が一定量あるのは事実です。災害性腰痛は保健衛生業が業種別で最多(2024年に2,251件)で、整形外科病棟は移乗・体位変換・歩行介助の多い持ち場にあたります。ただし程度は病棟の機能・人員配置・補助機器の有無で大きく変わります。「整形外科だからきつい」と決める前に、自分の職場の受け持ち人数と機器の台数を確認してください。
Q. 腰が痛いのですが、辞めるしかないですか?
A. 辞める前にできることがあります。厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」は、全介助が必要な対象者についてリフト等の使用を求め、原則として人力による抱上げは行わせないこととしています。移乗回数と1人介助の回数を記録して配置や機器の相談材料にすること、痛みが続くなら受診して就業上の制限を書面でもらうことが先です。そのうえで改善が見込めない場合に、介助量の少ない職場を検討する順番になります。症状の判断や治療については医療機関にご相談ください。
Q. 整形外科の経験は、他の科に移っても役に立ちますか?
A. 役に立ちます。75歳以上の骨折患者の平均在院日数は45.2日で、整形外科病棟の時間の多くは高齢者の生活支援と退院調整に使われています。早期離床・疼痛コントロール・転倒予防・退院支援は、回復期リハビリテーション病棟、介護保険施設、訪問看護のいずれでも直接使う技術です。伝えるときは「整形外科病棟◯年」ではなく、術式名と担当した時期まで分解してください。
Q. 異動を申し出ると、評価が下がりませんか?
A. 制度上の扱いは施設ごとの就業規則によるため一律には言えません。ただし日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」では、看護職員を確保するために導入している働き方として「日勤のみ」54.7%、「夜勤回数や夜勤時間、曜日が選択できる」44.1%、「短時間勤務」39.3%、「本人の希望の専門領域・部署への配属」38.7%が挙がっています。希望配属や勤務形態の調整は、多くの病院が人材確保の手段として制度化しつつある領域です。まず自院の規定を確認してください。
移る前に、受け持ち人数と補助機器の台数を確認する
整形外科の求人は全国に広く分布しますが、介助量と夜勤の実態は施設ごとに大きく違います。数字で聞き出せる相手を見つけておくと、入ってからの落差を避けられます。
まとめ
- 辞めたい率を最も大きく動かすのは診療科ではなく時間外労働。時間外なし13.7%に対し月60〜70時間未満は42.2%で約3.1倍。まず自分の時間外時間を数字にする
- 整形外科に固有の負荷は「身体の消耗」と「業務の中心が生活の立て直しであること」の2点。災害性腰痛は保健衛生業が業種別最多の2,251件(2024年)で、これは根性ではなく職業リスク
- 出口は「今の病棟で条件を1つ変える」「同じ整形外科で機能の違う場所へ移る」「経験を持って科を変える」の3方向。どれを選ぶかは、消耗の主因がどれかで決まる
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