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お悩み相談

外科看護師を辞めたいとき|「向いてない」の正体を回転の速さと人員配置で分解する

ナースひとやすみ 編集部約11分で読めます
目次

外科病棟にいて「自分には向いていないのかもしれない」と思っているなら、先に数字を2つだけ見てください。十分な看護ができていないと感じている人は、その理由の1位に「人員が少なく業務が過密」(85.3%)を挙げています。「自分の能力や技量の不足」を挙げた人は28.3%で3位、しかも勤続1〜3年未満の52.5%から10〜15年未満の24.4%へと、経験年数とともに半分以下に下がります。

つまり「向いてない」という感覚の大半は、能力ではなく配置と時間の問題として説明がつきます。この記事では、外科病棟のきつさをベッドの回転数と時間外労働のデータで分解し、そのうえで「外科を離れる」「病棟を変える」「今の場所で条件を変える」の3つをどう選び分けるかを整理します。外科経験の市場価値や職場ごとの評価軸は外科看護師への転職ガイドにまとめてあります。

「向いてない」と感じているのは、能力の問題ではない

日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)で、十分な看護が提供できているかを聞いた結果は次のとおりでした。「できていると思う」はわずか2.2%、「大体できていると思う」が30.5%。合わせても32.7%しかありません。

十分な看護が「できていると思う」と答えた看護職員の割合(「大体できている」30.5%を加えても32.7%)2.2%

日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」問35(2022年)

「あまりできていない」「ほとんどできていない」の合計は26.9%で、働く職場別に見ると一般病棟が30.8%と最も高くなっていました(精神病棟28.3%、介護施設27.0%)。外科病棟はこの一般病棟に含まれます。

では、できていないと感じる理由は何か。3つまで選ぶ設問の回答は次のとおりです。

  • 人員が少なく業務が過密: 85.3%
  • 看護業務以外の「その他の業務」が多すぎる: 47.5%
  • 自分の能力や技量の不足: 28.3%

1位が圧倒的です。そして3位の「自分の能力や技量の不足」は、勤続年数で切ると景色が変わります。

勤続1〜3年未満では半数を超える52.5%が「自分の能力不足」を挙げるのに、10〜15年未満では24.4%まで下がります。同じ環境で同じ仕事をしていても、経験が積み上がるにつれて「自分のせいだ」と感じる人は半分以下になるということです。

いま「外科に向いていない」と感じているなら、それが能力の問題なのか、経験年数の問題なのか、人員配置の問題なのかを分けて考えてください。この3つは対処法がまったく違います。

外科病棟の「終わらなさ」は、ベッドの回転数で説明できる

外科の忙しさは業務の種類ではなく、同じベッドを短い間隔で回すことから来ます。平均在院日数そのものの比較は外科看護師への転職ガイドに譲り、ここでは厚生労働省「令和5(2023)年 患者調査の概況」表6の在院日数を「1床が1か月に受け入れる患者数」に換算して、負荷の差を見ます。

傷病平均在院日数1床が1か月に受け入れる患者数(30日÷在院日数)
乳房の悪性新生物9.4日約3.2人
悪性新生物 全体14.4日約2.1人
結腸及び直腸の悪性新生物15.3日約2.0人
参考: 全傷病の平均28.4日約1.1人

出典: 厚生労働省「令和5(2023)年 患者調査の概況」表6(令和5年9月に退院した患者)。右列は平均在院日数から本サイトが算出した単純計算値で、実際には空床期間があるため上限の目安です

同じ1床でも、全傷病の平均なら1か月に約1人、外科が主に扱うがんの入院なら約2人。入院時の説明、術前オリエンテーション、手術、離床、退院指導、記録、家族対応——この一式が、他科のおよそ2倍の回数で回ってくるということです。乳腺のように在院日数の短い領域では約3倍になります。

「業務が終わらない」「振り返る時間がない」という感覚は、ここから生まれています。1人の患者にかける時間が短いのではなく、1か月に相手をする人数そのものが多いのです。

そして、この密度は終業時刻にそのまま出ます。同じ医労連調査によると、日勤の終業時刻「後」に約60分以上の時間外労働をしている人は40.7%(約120分以上も8.4%・2,949人)。働く職場別に見ると次のようになります。

一般病棟の52.4%は、外来・透析の20.4%の約2.6倍、集中治療室の21.1%の約2.5倍です。重症度が最も高い集中治療室より、一般病棟のほうが「定時に帰れない」人の割合は高い。これは看護の難易度ではなく、受け持ち人数と入退院の回数が時間外を作っていることを示しています。

外科病棟で「定時で帰れたことがない」なら、それはあなたの段取りが悪いからではありません。構造として、一般病棟がいちばん残る場所です。

「外科が合わない」のか「この病棟が合わない」のかを切り分ける

年間手術件数、術後1日目の受け持ち人数、緊急手術の頻度。同じ「外科病棟」でも数字はまったく違います。求人票に載らない項目こそ、内部を知る担当者に確認する価値があります。

辞める前に答えておきたい3つの問い

1. 「回転が速いこと」が嫌なのか、「人が足りないこと」が嫌なのか

この2つは似ていますが、行き先がまったく違います。回転の速さが嫌なら在院日数の長い領域へ、人手が原因なら同じ外科でも配置の厚い病院へ、という向きになります。

  • 手順: ①直近1か月で「退院指導を省いた」「記録を翌日に回した」場面を思い出して書き出す → ②それぞれに「人がいれば防げた」か「時間の流れが速すぎて無理だった」かの印をつける → ③どちらが多いかを数える
⚠️ つまずきやすい落とし穴

この切り分けを飛ばして「急性期を離れたい」とだけ決めてしまうと、回復期や療養に移ったあとで「暇すぎて物足りない」「達成感がない」と感じて再び動くことになります。実際に多いのは、速さそのものは好きだが人員配置が足りずに雑にならざるを得ない状態への嫌悪です。この場合、必要なのは時間の流れが遅い職場ではなく、同じ速さで人員が厚い職場です。書き出した場面に「人がいれば防げた」の印が多いなら、転職先を探す軸は「急性期かどうか」ではなく「夜勤帯の人数」と「術後1日目の受け持ち人数」になります。

2. 外科を離れたいのか、いまの病棟を離れたいのか

「外科」と名のつく求人は、一般病院7,003施設のうち4,293施設(61.3%)にあります(厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」)。中身は施設ごとに大きく違います。

  • 見本(面接・見学で聞く質問): 「年間の手術件数と、内訳の多い術式を3つ教えてください」「術後1日目の患者さんを日勤1人で何人受け持ちますか」「緊急手術の呼び出しは月に何回くらいありますか」「退院支援はどの職種がどこまで担当していますか」
⚠️ つまずきやすい落とし穴

求人票の「外科病棟」という文字だけで判断して応募すると、入職後に「前より忙しくなった」という結果になりかねません。手術件数が多いこと自体は負担の指標になりません。件数が多くても人員が厚ければ負担は下がり、件数が少なくても夜勤2人体制なら跳ね上がります。件数・人員・緊急対応の頻度は必ずセットで聞いてください。 また、退院支援をどこまで看護師が担うかは施設差が非常に大きい項目です。医療ソーシャルワーカーが常駐して初期から入る病院と、看護師が家族調整まで担う病院では、同じ手術件数でも体感の忙しさが変わります。

3. 何が減れば続けられるのかを、1つだけ決める

「全部つらい」の状態では条件の優先順位が決まらず、目についた求人に流されます。減らす対象を1つに絞ってください。

  • 手順: ①直近3か月の時間外時間・夜勤回数・緊急呼び出し回数を書き出す → ②「これが◯◯まで減れば続けられる」という数字を1つだけ決める → ③その1点を面接で必ず質問する(例「時間外は月平均何時間ですか」)
⚠️ つまずきやすい落とし穴

条件を絞らずに転職すると、交換が起きます。夜勤は減ったが通勤が45分延びた、時間外は減ったが年収が想定以上に下がった、というパターンです。防ぎ方は、辞めたい理由を感情ではなく数字に置き換えることです。時間外が月何時間なら続けられるか、夜勤は月何回までか、年収の下限はいくらか。この3つを先に決めておけば、条件の見栄えがよい求人に引っ張られずに済みます。なお看護師全体の平均年収は524.7万円(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」、平均年齢42.1歳)です。診療科別の平均年収を示す公的統計はないので、比較の基準にはこの職種平均と自分の現在額を使ってください。

外科を離れるか、病棟を変えるかの判断材料

このリストは何かを判定したり診断したりするものではなく、自分の消耗がどこから来ているかを言葉にするための材料です。上の4つに多く当てはまるなら人員配置が中心で、同じ外科でも配置の厚い職場に移ることで変わる余地があります。4つ目だけが強く当てはまるなら、外科の速さ自体は合っていて、業務の分担のしかたを変えるほうが近道かもしれません。理由の仕分け方全体は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法にまとめています。

なお、職場の規模も無関係ではありません。日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(回答3,440病院)によると、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は全体11.0%で、99床以下13.1%に対し500床以上10.0%でした。急性期の外科は大規模病院に集まりやすく、この点では人の抜けにくい層と重なります。読み方は病院の離職率の見方を参照してください。

外科から動くときによくある失敗例

  • 失敗例1: 「自分の技量不足」と結論づけて、一人で抱え込んだ → 十分な看護ができない理由の1位は「人員が少なく業務が過密」85.3%で、「自分の能力や技量の不足」は28.3%の3位。しかも勤続1〜3年未満52.5%から10〜15年未満24.4%へ下がります。時間が解決する部分と、配置でしか解決しない部分を分けてください。
  • 失敗例2: 「急性期を離れれば楽になる」と考えて、在院日数の長い職場へ移った → 回転の速さが原因でなく人員不足が原因だった場合、移った先でも同じことが起きます。先に原因を切り分けてください。
  • 失敗例3: 手術室やICUへの異動を「静かになる」と期待した → 終業後60分以上の時間外は手術室33.4%・集中治療室21.1%で一般病棟より低いものの、オンコールや受け持ち比率という別種の負担があります。移る前に手術室看護師を辞めたいと感じたときやICU看護師を辞めたいと感じたときで実態を確認してください。
  • 失敗例4: 職務経歴書に「外科病棟5年」とだけ書いた → 採用側は配属先を決められません。臓器・術式・担当した時期まで分解すると評価が変わります。書き方は看護師の職務経歴書の書き方にまとめています。

よくある疑問 Q&A

Q. 外科病棟が「きつい」と言われるのは、具体的に何がきついのですか?

A. 業務の種類より回転の速さです。がんの入院の平均在院日数は14.4日で全傷病平均28.4日の約半分なので、同じ1床が1か月に受け入れる患者数はおよそ2倍になります。入院時説明・術前オリエンテーション・離床・退院指導・記録の一式が2倍の回数で回ってくる計算です。日勤の終業後60分以上の時間外がある人の割合も、一般病棟が52.4%で職場別の最多でした。

Q. 「外科に向いていない」と感じます。辞めるべきでしょうか?

A. 判断の前に、その感覚が能力・経験年数・人員配置のどれから来ているかを分けてください。十分な看護ができない理由で「自分の能力や技量の不足」を挙げた人は勤続1〜3年未満で52.5%、10〜15年未満で24.4%と、経験年数とともに半分以下になります。同じ環境でも時間が解決する部分があるということです。一方で「人員が少なく業務が過密」85.3%は個人の努力では動きません。後者が主因なら、配置の厚い職場を探すほうが現実的です。

Q. 外科から転科すると、これまでの経験は無駄になりますか?

A. なりません。術後合併症の早期発見、ドレーン・ライン管理、創傷管理、短い日数での退院指導は、ICU・外来化学療法室・訪問看護・クリニックのいずれでも使う技術です。ただし「外科病棟◯年」という書き方では伝わらないため、臓器名・術式名・担当した時期(術前/術直後/退院前)まで具体化してください。転科先ごとの評価軸は外科看護師への転職ガイドで整理しています。

Q. 同じ外科でも、病院によって忙しさは違いますか?

A. 違います。外科を標榜する一般病院は4,293施設(一般病院の61.3%)あり、年間手術件数・術式の構成・夜勤帯の人数・退院支援の分担はいずれも施設差の大きい項目です。件数が多くても人員が厚ければ負担は下がり、件数が少なくても夜勤2人体制なら上がります。求人票の科名ではなく、この4点を数字で確認してください。

同じ「外科病棟」でも、人員配置は求人票に載らない

術後1日目の受け持ち人数、夜勤帯の人数、緊急手術の頻度、退院支援の分担。この4点を聞き出せる相手を確保してから動くと、入職後の落差を避けられます。

まとめ

  • 「向いてない」と感じる原因の大半は配置と時間。十分な看護ができない理由の1位は「人員が少なく業務が過密」85.3%で、「自分の能力や技量の不足」28.3%は勤続1〜3年未満52.5%から10〜15年未満24.4%へ半減する
  • 外科のきつさはベッドの回転数。がんの入院の平均在院日数14.4日は全傷病平均28.4日の約半分で、1床が1か月に受け入れる患者数はおよそ2倍。日勤の終業後60分以上の時間外は一般病棟が52.4%で職場別最多
  • 動く前に「回転の速さが嫌なのか、人が足りないのが嫌なのか」を切り分け、減らしたい条件を1つだけ数字で決める

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