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内科看護師を辞めたいとき|「内科は楽」を3つの数字で検証し、出口を整理する

ナースひとやすみ 編集部約12分で読めます
目次

「内科なんだから楽でしょう」と言われるたびに、うまく言い返せないまま消耗していく——内科病棟でいちばんしんどいのは、そのつらさが説明しにくいことかもしれません。手術も急変も派手ではない。でも定時では終わらないし、心も体も削られていく。

結論を先に書きます。内科の負荷は処置の量ではなく、「入院が長い」「患者が高齢」「扱う範囲が広い」の3点に出ます。そして、やりがいを「強く感じる」と答えた人の割合は、働く職場別に見ると一般病棟は8.9%で下から3番目の低い水準にあります。この記事では、その3点を公的統計で検証したうえで、内科経験がどこで活きるかまで整理します。

「内科は楽」を、3つの数字で検証する

① 内科が扱う病気は、入院が長い

厚生労働省「令和5(2023)年 患者調査の概況」表6から、内科系の疾患と外科系の疾患の平均在院日数を並べてみます。

脳血管疾患は68.9日で、悪性新生物の14.4日の約4.8倍。慢性腎臓病57.3日、循環器系の疾患34.6日も、全傷病の平均28.4日を上回ります。

ここが「内科は楽」という言葉のずれる場所です。入退院の回数が少ないことは、仕事が少ないことを意味しません。 同じ患者さんを2か月受け持つということは、食事と排泄の介助、褥瘡の予防、家族との面談、転院先や在宅の調整を、退院の日まで積み上げ続けるということです。外科のように手術という区切りがない分、達成の実感が持ちにくい構造にもなっています。

② 入院患者の4人に3人が65歳以上

同じ患者調査によると、調査日に入院していた推計患者数は1,175.3千人。うち65歳以上が887.2千人で約75%、75歳以上は672.9千人で約57%を占めます。

入院患者のうち65歳以上が占める割合(887.2千人/1,175.3千人)。75歳以上に限っても約57%約75%

厚生労働省「令和5(2023)年 患者調査の概況」表1(2023年)

さらに、主たる傷病が認知症である入院患者は、アルツハイマー病52.7千人と血管性及び詳細不明の認知症22.8千人を合わせて約7.6万人(入院患者全体の約6%)にのぼります。これは「主な病名が認知症の人」だけの数字で、ほかの病気で入院しながら認知症を併せ持つ人は含まれていません。実際の病棟で認知機能の低下した患者さんに向き合う頻度は、この数字よりずっと高いはずです。

つまり内科病棟の実務は、疾患の管理だけでは終わりません。転倒の防止、食事の介助、夜間のせん妄対応、身体拘束をめぐる判断、家族への説明——これらが、投薬や検査と並行して常に走り続けます。「処置が少ないから楽」という見方は、この部分をまるごと数えていません。

③ 「内科」という言葉の守備範囲が広すぎる

内科を標榜する一般病院は7,003施設のうち6,506施設(92.9%)で、全診療科のなかで最多です(厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」)。ところが、その内科は実際には細かく分かれています。

診療科標榜する一般病院数一般病院総数に対する割合
内科6,506施設92.9%
循環器内科4,038施設57.7%
消化器内科(胃腸内科)3,973施設56.7%
呼吸器内科2,811施設40.1%
脳神経内科2,591施設37.0%
糖尿病内科(代謝内科)1,787施設25.5%
腎臓内科1,518施設21.7%
血液内科803施設11.5%

出典: 厚生労働省「令和6(2024)年 医療施設(動態)調査・病院報告の概況」表5(重複計上)。一般病院の総数は7,003施設

多くの病院が内科系を複数標榜しています。混合内科病棟に勤めていれば、心不全・肺炎・糖尿病・腎不全・脳梗塞の患者さんを同じ日勤帯で受け持つことになります。覚える薬も、見るべき数値も、急変の型も、疾患ごとに違います。 専門を絞れないまま広く浅く対応し続ける負荷は、外から見えにくいだけで確かに存在します。

「自分は勉強が足りない」と感じているなら、それは能力ではなくカバー範囲の広さの問題かもしれません。

やりがいを「強く感じる」人は、一般病棟で8.9%と下位3番目

日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)は、看護のやりがいを感じるかを聞いています。全体では「少し感じる」66.2%、「強く感じる」10.8%、「全く感じない」12.8%でした。これを働く職場別に見ると、差がはっきり出ます。

内科病棟が含まれる一般病棟は8.9%。訪問看護の29.1%の約3分の1です。同じ調査で「仕事を辞めたい主な理由」に「思うような看護ができず仕事の達成感がない」を挙げた人は23.1%(3つまで選択で5番目)でした。

なぜ差がつくのか。訪問看護は1人の生活に最後まで伴走し、その結果が見える職場です。一方で一般病棟は、長期入院の患者さんを受け持ちながら、日々の業務に追われて「今日は何ができたのか」を確かめる時間が取れません。在院日数が長いほど、変化はゆっくりで、達成の手応えは薄くなります。

これは「あなたに看護への情熱がない」という話ではありません。手応えが得られにくい構造の場所にいるという話です。達成感を回復したいなら、努力を増やすのではなく、手応えが見える仕組みのある場所を選ぶほうが確実です。

「内科は楽」と言われて、説明できないまま消耗していませんか

受け持ち人数、長期入院患者の割合、退院支援の分担。同じ内科病棟でも数字はまったく違います。求人票に載らない条件こそ、内部を知る担当者に確認する価値があります。

内科病棟の負荷を、言葉にする3つの手

つらさが説明できないまま辞めると、次の職場を選ぶ基準も作れません。まず言語化してください。

1. 「長さ」から来る業務を、回数で数える

内科の負荷は単発の処置ではなく、繰り返しの積み上げです。積み上げは記録しないと見えません。

  • 手順: ①1週間、勤務ごとに「家族への説明・電話」「転院先や在宅の調整に関する連絡」「食事・排泄の全介助」の回数を勤務表の余白に記録する → ②1週間分を合計する → ③受け持ち人数で割って「患者1人あたり週何回」に直す
⚠️ つまずきやすい落とし穴

数えるべき対象を「処置」に寄せてしまうのが典型的な失敗です。採血・点滴・処置の件数だけを数えると、内科病棟の数字は外科より小さく出ます。実際に時間を奪っているのは、記録に残りにくい「調整」と「介助」です。家族からの電話1本が20分、退院前カンファレンスの準備が30分、せん妄の患者さんへの付き添いが夜勤帯で断続的に1時間——こうした時間は業務量の統計にほとんど現れません。だからこそ、自分で数えた回数が交渉の材料になります。師長に伝えるときは「つらい」ではなく「家族対応が週23件あり、うち19件が日勤終了後でした」という形にしてください。

2. 「広さ」の負担は、範囲を絞る相談に変える

混合内科病棟では、疾患ごとに求められる知識が違います。これは経験年数だけでは埋まりません。

  • 見本(師長への相談の切り出し方): 「心不全と糖尿病の受け持ちは慣れてきましたが、血液内科の患者さんは感染管理の判断に自信がありません。半年ほど受け持ちの比率を調整していただくか、どこかで研修の機会をいただけないでしょうか」
⚠️ つまずきやすい落とし穴

「勉強不足なので頑張ります」と自分の努力の問題に引き取ってしまうと、状況は何も変わりません。混合内科病棟で扱う疾患の幅は、一般病院の多くが内科系を複数標榜している以上、個人の努力で狭くなるものではないからです。逆に、範囲を絞る相談を「わがまま」と受け取られないためには、すでにできている領域を先に述べてから、絞りたい領域を1つだけ挙げるのが有効です。全部が不安だと伝えると、配置ではなく適性の話にすり替わります。また、教育体制の有無は転職先を選ぶときの重要な判断材料でもあります。面接では「内科病棟で扱う疾患の幅」と「新しい領域に入るときの教育の仕組み」を必ず聞いてください。

3. 「手応えのなさ」は、見える単位に置き換える

長期入院では変化がゆっくりで、達成感が得にくくなります。見る単位を変えると回復することがあります。

  • 手順: ①受け持ち患者を1人選ぶ → ②入院時と今の「できること」を3項目だけ比べる(食事の形態、移動の方法、家族の受け入れ状況など) → ③変化を看護記録とカンファレンスで言葉にして共有する
⚠️ つまずきやすい落とし穴

これは気の持ちようの話ではないので、効果の範囲を見誤らないでください。手応えの回復で変わるのは「達成感がない」という部分だけです。人員が足りない、時間外が多い、夜勤がつらいといった条件は、見方を変えても1ミリも動きません。日本医療労働組合連合会の同調査で辞めたい理由の上位に挙がったのは「人手不足で仕事がきつい」58.1%、「賃金が安い」42.6%、「思うように休暇が取れない」32.6%で、いずれも人員配置と給与規定に属します。自分の主因がこちら側なら、やりがいの工夫ではなく職場そのものを変える検討に進んでください。理由の仕分け方は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法にまとめています。

内科から動くときによくある失敗例

  • 失敗例1: 「内科は楽なはずなのに続かない自分が悪い」と結論づけた → 内科が扱う疾患の平均在院日数は脳血管疾患68.9日・慢性腎臓病57.3日で、悪性新生物14.4日の数倍。入退院が少ないことと業務が少ないことは別です。
  • 失敗例2: 外科や急性期に移れば達成感が戻ると考えた → やりがいを「強く感じる」割合は一般病棟8.9%に対し集中治療室13.0%・手術室12.0%で、差は数ポイントです。大きく違ったのは訪問看護の29.1%でした。移動の方向を間違えないでください。
  • 失敗例3: 疾患の幅の広さを「勉強不足」として一人で抱えた → 混合内科病棟の守備範囲は個人の努力では狭くなりません。範囲を絞る相談か、専門が絞られた職場への移動が現実的な手段です。
  • 失敗例4: 辞めたい理由を特定しないまま転職先を決めた → 人員配置が主因なのか、達成感が主因なのかで行き先が変わります。先に切り分けてから動いてください。段取りは看護師の転職の流れ、退職の切り出し方は看護師の退職の伝え方を参照してください。

内科の経験が効く場所

内科病棟で身につくのは、慢性疾患の管理・高齢者の生活支援・多職種との退院調整です。これは病院の外で最も必要とされている組み合わせでもあります。

移り先内科経験のどこが効くか1人の患者と関わる期間夜勤
訪問看護慢性疾患の管理、家族支援、急変時の判断数か月〜数年原則なし(オンコールあり)
介護保険施設高齢者の生活支援、内服管理、看取り数か月〜数年施設により異なる
透析クリニック慢性腎臓病の知識、体重・血圧の管理数年単位原則なし
健診センター生活習慣病の知識、保健指導単発なし
内科クリニック幅広い common disease への対応力通院単位で継続原則なし(施設により当番)

注: この表は公的統計ではなく、求人区分と内科看護の業務内容を踏まえた本サイトの整理です。具体的な条件は施設ごとに異なります

移り先の選択肢は思っているより広くあります。厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2024年末時点で就業している看護師1,363,142人のうち、病院は895,944人(65.7%)。残りの約3割強は診療所194,665人(14.3%)、介護保険施設等107,984人(7.9%)、訪問看護ステーション91,022人(6.7%)、社会福祉施設28,093人(2.1%)などに分かれています。約47万人が病院以外で働いている計算です。

なお、病院に残る場合も規模は判断材料になります。日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」(回答3,440病院)によると、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は全体11.0%で、99床以下13.1%に対し500床以上10.0%でした。読み方は病院の離職率の見方にまとめています。

よくある疑問 Q&A

Q. 「内科は楽」と言われますが、本当ですか?

A. 処置や手術の頻度という意味では、急性期の外科や集中治療室より少ない傾向があります。ただし内科が扱う疾患の平均在院日数は脳血管疾患68.9日・慢性腎臓病57.3日・循環器系34.6日で、全傷病平均28.4日を上回ります。入退院の回数が少ない代わりに、1人の患者さんに介助・家族対応・退院調整を長期間積み上げます。負荷の種類が違うだけで、量が少ないとは言えません。

Q. 内科病棟でやりがいを感じられません。向いていないのでしょうか?

A. やりがいを「強く感じる」と答えた人の割合は、一般病棟が8.9%で職場別に見ると低い水準です(訪問看護は29.1%)。長期入院では変化がゆるやかで、達成の手応えが得にくい構造があります。個人の情熱の問題として抱え込む前に、手応えが見える職場かどうかという環境の側面も確かめてください。

Q. 内科の経験しかなくても、転職先はありますか?

A. あります。慢性疾患の管理・高齢者の生活支援・退院調整は、訪問看護、介護保険施設、透析クリニック、健診センター、内科クリニックのいずれでも直接使う技術です。2024年末時点で就業看護師1,363,142人のうち病院勤務は65.7%で、残る約47万人は病院以外で働いています。

Q. 混合内科病棟で疾患の幅についていけません。どうすればいいですか?

A. 多くの一般病院が内科系を複数標榜しており(循環器内科57.7%、消化器内科56.7%、呼吸器内科40.1%など)、守備範囲の広さは個人の努力では狭くなりません。できている領域を先に伝えたうえで、受け持ちの比率調整か研修の機会を1つだけ相談するのが現実的です。転職を検討する場合は、面接で「扱う疾患の幅」と「新しい領域に入るときの教育の仕組み」を必ず確認してください。

内科の経験は、病院の外でいちばん必要とされている

慢性疾患の管理と退院調整は、訪問看護・介護施設・透析・健診のいずれでも評価される組み合わせです。どの条件なら続けられるかを整理してから求人を見てください。

まとめ

  • 内科の負荷は「入院が長い」「患者が高齢」「扱う範囲が広い」の3点。脳血管疾患の平均在院日数68.9日は悪性新生物14.4日の約4.8倍で、入退院が少ないことは業務が少ないことを意味しない
  • 入院患者の約75%が65歳以上、約57%が75歳以上。疾患の管理と並行して、転倒防止・食事介助・せん妄対応・家族説明が常時走る
  • やりがいを「強く感じる」割合は一般病棟8.9%で、訪問看護29.1%の約3分の1。手応えが得にくいのは情熱の問題ではなく構造の問題

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