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企業看護師に転職するには|事業所で働く看護師5,879人のデータと準備の順番

ナースの休憩室 編集部14分で読めます
目次

企業看護師(産業看護職)への転職は、「狙って準備すれば届くが、空席を待っていても順番は来ない」タイプの選択です。理由は数でわかります。全国で事業所に勤める看護師は5,879人。就業看護師1,363,142人の0.4%で、約232人に1人しかいません(厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」2024年末現在)。この記事では、求人がこれほど少ない理由を労働安全衛生法の条文から説明し、年収が実際どう動くのか、40代から何をどの順番で準備するのかを整理します。

事業所で働く看護師は全国5,879人——就業看護師の0.4%

事業所(企業)で働く看護師の実人員5,879人

厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表2(2024年)

就業場所別に並べると、位置づけがはっきりします。

就業場所実人員構成割合
病院895,944人65.7%
診療所194,665人14.3%
介護保険施設等107,984人7.9%
訪問看護ステーション91,022人6.7%
社会福祉施設28,093人2.1%
看護師等学校養成所又は研究機関16,790人1.2%
市区町村8,035人0.6%
事業所5,879人0.4%

出典: 厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表2(2024年末現在)

訪問看護ステーションで働く看護師は事業所勤務の15.5倍です。「訪問看護は求人が多い」と感じている方なら、その15分の1しか枠がない世界だと考えるとイメージが近くなります。

そしてもう1つ、この職場を理解する鍵になる数字があります。同じ「事業所」という就業場所を、職種別に見たものです。

事業所(企業)で働く看護職の内訳

看護師
5,879人
保健師
5,045人
准看護師
1,066人
助産師
61人

出典: 厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」表2(2024年末現在)

看護師と保健師が、ほぼ同数で並んでいます。全国の就業保健師は63,536人で、看護師1,363,142人の21分の1しかいません。それなのに事業所ではほぼ互角——この職場だけ、保健師の密度が異常に高いのです。これは偶然ではなく、法律がそう書いているからです。

なぜ求人が少ないのか——労働安全衛生法に「看護師」は出てこない

企業の健康管理体制は、労働安全衛生法が事業場の規模ごとに決めています。

事業場の規模法律が求めていること根拠
常時50人以上産業医を選任しなければならない(義務)。選任・変更は所轄の労働基準監督署へ届出労働安全衛生法13条1項・同法施行令5条、労働安全衛生規則13条2項
常時50人未満「医師その他厚生労働省令で定める者」に労働者の健康管理等を行わせるよう努めなければならない(努力義務)労働安全衛生法13条の2
同上の「厚生労働省令で定める者」労働者の健康管理等を行うのに必要な知識を有する保健師労働安全衛生規則15条の2

条文に出てくるのは、医師と保健師です。看護師は出てきません。つまり企業にとって看護師は「置かなければならない職種」ではなく、置きたい会社だけが置くポストということになります。5,879人という数字は、ここから生まれています。

裏を返すと、求人が出るのは「法律の最低ラインを超えて健康管理に人を割く会社」です。だから募集が製造業の大規模事業所や、健康経営に投資している企業に偏ります。「企業看護師の求人が見つからない」のは、あなたの経歴のせいではなく、母数がこの構造で決まっているからです。

ただし、この構造には変化の予定が入っています。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)により、これまで50人未満の事業場では努力義務だったストレスチェックが、令和10年(2028年)4月1日から全事業場で義務になります。義務の対象が広がれば、実施と面接指導を回す実務者の需要も広がります。今すぐ求人が増えるという話ではありませんが、3〜4年先を見て準備する理由にはなります。

「企業の求人はいつ出るのか」を1人で待たない

産業保健の求人は公開されないまま決まることがあります。複数の転職サービスに希望を登録しておくと、出た時点で知らせてもらえます。

仕事内容は「労働安全衛生規則14条」から逆算できる

求人票の「健康管理業務」という4文字は、実態を伝えてくれません。企業の産業保健で何が行われるかは、産業医の職務を定めた労働安全衛生規則14条を読むとかなり具体的に見えます。

  • 健康診断の実施と、その結果にもとづく健康保持のための措置
  • 長時間労働者に対する面接指導と、その結果にもとづく措置
  • ストレスチェックの実施と、高ストレス者への面接指導、その結果にもとづく措置
  • 作業環境の維持管理、作業の管理
  • 健康教育、健康相談その他の健康の保持増進のための措置
  • 衛生教育
  • 労働者の健康障害の原因の調査と再発防止のための措置

企業看護師の日常業務は、このリストを産業医と分担して動かす仕事です。病棟の看護とは、評価の軸がはっきり違います。病棟では「目の前の患者さんが良くなること」が成果ですが、産業保健では「健診の受診率」「面接指導の実施率」「休職からの復職率」といった集団の数字が成果になります。1人ひとりへの声かけも、最終的には数字を動かすために行います。

ここで1つ、資格の実務差を押さえておく必要があります。ストレスチェックの実施者について、厚生労働省は「医師・保健師・一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士・公認心理師など」としています。保健師は免許だけで実施者になれますが、看護師は厚生労働大臣が定める研修を修了していることが前提です。採用側から見ると、同じ人数を雇うなら研修修了済みの人か保健師のほうが、その日から実施体制に組み込めます。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:「臨床経験○年」を強みだと思って職務経歴書を書いてしまう

病棟で10年やってきた方ほど、職務経歴書に「急性期病棟で10年、重症度の高い患者を担当」と書きがちです。ところが採用担当者が読みたいのは、その経験が健康な働く人の集団に対して何ができるかです。急変対応の速さは、健康診断の事後措置や復職面談ではほぼ出番がありません。逆に、病棟で当たり前にやっていた「退院指導で生活習慣を聞き取り、本人が続けられる形に落とし込む」「多職種カンファレンスで方針をすり合わせる」「インシデント報告から再発防止策を作る」といった動きは、そのまま保健指導・産業医との連携・衛生委員会の議題づくりに翻訳できます。書き換えずに提出すると、「病院の人」という印象だけが残って書類で落ちます。応募前に、自分の経験を「集団に対して・予防の段階で・数字で評価される仕事」の言葉に置き換える作業を必ず1回はさんでください。

年収は上がるのか——524.7万円の内訳を分解する

「企業看護師は年収が高い」「いや下がる」の両方をネット上で見かけますが、求人票の月給だけ比べても答えは出ません。平均値の内訳を開くと、何が増えて何が消えるのかがはっきりします。

看護師の平均年収は524.7万円です(きまって支給する現金給与額365,900円×12+年間賞与その他特別給与額856,400円、平均年齢42.1歳。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」企業規模10人以上・男女計)。

内訳金額定義
きまって支給する現金給与額365,900円/月毎月決まって支払われる現金給与の総額
うち所定内給与額333,200円/月上記から超過労働給与額を差し引いた額
差額=超過労働給与額32,700円/月時間外・深夜・休日出勤・宿日直・交替手当
年間賞与その他特別給与額856,400円/年賞与・期末手当等

出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(一般労働者・職種小分類・企業規模計10人以上・男女計)および同調査「主な用語の定義」

この表の3行目が、転職の判断をいちばん左右します。月32,700円、年に約39.2万円が、夜勤・残業・休日出勤に紐づいた部分です。企業看護師は原則として日勤のみ・カレンダー通りの勤務になるので、ここが構造的に消えます。参考までに、日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」で病院が定める二交代制の夜勤手当は1回あたり平均11,815円(表58・病院調査)。月4回なら47,260円で、夜勤を平均より多くこなしている方ほど減り幅は大きくなります。

つまり企業看護師への転職は、基本給が同等でも、年収は40万円前後下がる前提で設計するのが現実的です。そのうえで、土日祝が休みになる、夜勤による体調の波がなくなる、勤務時間が読めるといった部分をどう評価するかという話になります。

なお、同じ調査で保健師の平均年収は551.4万円(きまって支給361,000円×12+年間賞与1,181,800円、平均年齢42.4歳)。看護師より月給は低いのに年収が26.7万円高いのは、賞与が1,181,800円と看護師(856,400円)より32万円以上多いためです。産業保健の領域で腰を据えるなら、保健師免許を取りに行く選択も比較対象になります。詳しくは産業保健師への転職で扱っています。

40代・産業保健未経験から狙うときの3つの準備

事業所で働く看護師5,879人は、常勤換算では4,979.0人です。実人員の約85%で、1人職場や少人数体制が多いことがうかがえます。新卒を育てる余裕がない現場ということでもあり、ここは経験者にとって不利ではありません。看護師全体で見ると40〜49歳は348,658人と最も厚い層です(衛生行政報告例 令和6年、年齢構成の詳細は看護師は何歳が多い?)。年齢そのものが壁になる職場ではありません。

1. 職務経歴書を「集団・予防・数字」の言葉に書き換える

  • 手順: ①直近3年の業務を書き出す → ②それぞれを「対象は誰か(個人/集団)」「段階はどこか(治療/予防)」で分類 → ③予防・集団に寄る経験を上に並べ替える → ④数字を1つ以上入れる

記入見本: 「病棟の年間退院指導を約180件担当。生活習慣の聞き取りから在宅での継続可能な計画に落とし込み、退院後2週間以内の再入院率の低減に取り組みました。多職種カンファレンスの議事進行も担当し、決定事項を全スタッフへ周知する仕組みを整えました」

⚠️ つまずきやすい落とし穴:「健康経営に興味があります」で志望動機を締めてしまう

産業保健の求人は応募者が集まりやすく、志望動機だけで数十通が並びます。そこで「健康経営に興味があり、予防の分野で貢献したい」と書くと、ほぼ全員と同じ文面になります。採用側が知りたいのは興味の有無ではなく、入社後に誰の何をどう回してくれるのかです。具体的には、健診の未受診者にどう声をかけるか、長時間労働者の面接指導をどの順番で組むか、休職者の復職面談で産業医と何を分担するか。求人票に書かれた業務のうち1つを選び、「前職のこの経験を、御社のこの業務にこう当てる」と1文で言い切れる状態にしてから応募してください。興味は前提であって、差にはなりません。

2. ストレスチェック実施者の要件を先に確認する

  • 手順: ①応募先の従業員規模を調べる(50人以上か) → ②求人票に「ストレスチェック実施」「面接指導の調整」が入っているか確認 → ③入っていれば、看護師として実施者要件を満たす研修の受講状況を整理 → ④未受講なら「受講予定」も含めて面接で説明できるようにする
⚠️ つまずきやすい落とし穴:「研修を修了すれば産業看護師になれる」と順番を取り違える

実施者要件は、あくまで「ストレスチェックを実施する立場に立てるかどうか」の要件です。これを満たしたからといって求人が増えるわけでも、採用が確約されるわけでもありません。実際に評価されるのは、受講で得た知識を自社の体制に組み込む説明ができるかのほうです。受講したこと自体を職務経歴書の目立つ位置に書き、業務経験の記述が薄いままだと、「資格は揃っているが実務が想像できない」という評価になります。逆に、現職で衛生委員会の運営や職員の健診事後フォローに関わった経験があるなら、研修の有無より先にそれを書いてください。研修は「あると入りやすい補助線」であって、入場券ではありません。費用と時間をかける前に、応募したい求人が実際にその要件を求めているかを確認しましょう。

3. 「事業所」以外の入口も同時に開けておく

企業の健康管理室に直接入る以外にも、産業保健に近づく道はあります。健診センター、健康保険組合、産業保健サービスを受託している事業者、保健指導を担う委託先などです。いずれも対象は「働いている人」で、扱う業務は健診・保健指導・データ管理と重なります。

  • 手順: ①「企業看護師」だけでなく「産業保健」「保健指導」「健診」でも求人を検索する → ②雇用形態を正社員に限定せず、委託・派遣も条件に入れて件数を比べる → ③2〜3年の経験を積んでから事業所勤務に応募する経路を想定しておく
⚠️ つまずきやすい落とし穴:「正社員・事業所直雇用」だけに絞って1年待ってしまう

母数が5,879人しかない職場を、雇用形態まで絞り込んで探すと、候補がほとんど出てこない期間が続きます。そこで起きるのが「現職を続けながら1年待ったが、結局1件も応募できなかった」という消耗です。産業保健の実務経験は、健診センターや受託事業者でも積めます。そこで1〜2年働き、保健指導の件数やストレスチェック運用の経験を職務経歴書に書ける状態にしてから事業所の求人に応募したほうが、書類の通過率は上がります。「いきなり本命」ではなく「隣から入る」設計に切り替えるだけで、動ける選択肢は何倍にもなります。待っている時間も、キャリアの一部として使ってください。

失敗例・よくあるNG

NG①:「企業看護師は楽」という前提で入り、1人職場の重さに驚く

常勤換算4,979.0人という数字が示すとおり、多くは少人数、しばしば1人での運営です。判断を相談できる看護職が社内にいないことも珍しくありません。急変対応の頻度は下がりますが、「決めるのが自分しかいない」負荷は上がります。応募前に「看護職は何人いるか」「産業医は嘱託か常勤か、月何回来社するか」を必ず確認してください。

NG②:年収を「月給の比較」だけで判断する

求人票の月給が現職と同額でも、夜勤と残業が消えれば手取りは下がります。比較するなら、直近12か月の源泉徴収票の支払金額と求人票の想定年収を突き合わせてください。

NG③:産業保健の経験がないまま「産業医の代わり」を期待されて疲弊する

産業医の来社が月1回で、それ以外の期間の判断を看護職に委ねようとする企業があります。面接の段階で「産業医の来社頻度」「就業判定は誰が行うか」「困ったときの相談先」を聞いておくと、入社後の役割のずれを防げます。役割が不明確なまま入ると、責任だけが残ります。

Q&A

Q. 企業看護師になるのに保健師免許は必須ですか?

A. 必須ではありません。実際に事業所で働く看護師は5,879人います(厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例」2024年末現在)。ただし労働安全衛生規則15条の2は、50人未満の事業場で健康管理等を行う者として保健師を挙げており、ストレスチェックの実施者も保健師は免許だけで該当します。看護師の場合は厚生労働大臣が定める研修の修了が前提になるため、同じ求人で保健師と競合すると不利になる場面はあります。

Q. 40代・未経験からでも企業看護師に転職できますか?

A. 年齢そのものが壁になる職場ではありません。事業所勤務は常勤換算4,979.0人(実人員5,879人)と少人数体制が多く、新人育成より即戦力が求められる傾向があります。40代の看護師は全国で348,658人と最も厚い層で、経験の翻訳さえできていれば土俵に乗ります。40代の転職全般の考え方は40代で看護師を辞めたいと感じたときの選択肢で扱っています。

Q. 企業看護師になると年収はどれくらい下がりますか?

A. 一律には言えませんが、平均値から逆算すると目安は立ちます。看護師の給与のうち、時間外・深夜・休日出勤・宿日直・交替手当にあたる超過労働給与額は月32,700円(年約39.2万円)で、夜勤と残業がなくなる分がここに相当します(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」)。

求人が少ない職種こそ、探し方で差がつきます

産業保健の求人は公開前に決まることがあります。条件を登録して待つ体制を複数作っておくと、出たときに動けます。

まとめ

  • 母数は5,879人(就業看護師の0.4%): 訪問看護ステーション勤務の15分の1。求人が見つからないのは経歴の問題ではなく、構造の問題です
  • 法律が名指ししているのは医師と保健師: 労働安全衛生法13条・13条の2と労働安全衛生規則15条の2に看護師は出てきません。企業看護師は「置きたい会社が置くポスト」です
  • 年収は月32,700円の超過労働給与額が消える前提で設計する: 年約39.2万円。求人票の月給だけで判断しないでください
  • 3〜4年先には追い風がある: 令和10年4月から50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化されます(改正労働安全衛生法・令和7年法律第33号)

転職の全体の段取りは看護師の転職の流れ、夜勤のない働き方全般の比較は夜勤なしで働ける看護師の職場で解説しています。

参考文献

  1. 厚生労働省「令和6年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」(2025年7月29日公表)2026-09-20 閲覧)
  2. 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「産業医を選任していますか?」(労働安全衛生法13条・13条の2、労働安全衛生規則14条・15条の2 参照条文つき)2026-09-20 閲覧)
  3. 厚生労働省「ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策」(改正労働安全衛生法・令和7年法律第33号による50人未満事業場への義務化)2026-09-20 閲覧)
  4. 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況・主な用語の定義2026-09-20 閲覧)
  5. 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」報告書2026-09-20 閲覧)