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奨学金の返還がきつい看護師へ|減額返還と返還期限猶予の違い、延滞する前の手順
目次
日本学生支援機構(JASSO)の奨学金の返還がきつい看護師が使える制度は、減額返還と返還期限猶予の2つです。減額返還は月々の返還額を減らし、返還期限猶予は返還をいったん止めます。どちらも返す総額が減る制度ではなく、延滞する前に申請するのが前提で、特に減額返還は延滞していると願い出られません。勤務先や自治体の返還支援が使えれば、負担そのものを軽くできることもあります。
給料日に返還額が引き落とされると、手元に残るお金がぐっと減る。引き落とし日の前に残高を確かめて、足りるかどうか身構える月もあるかもしれません。夜勤を減らしたり、休職したりして収入が下がると、なおさら重く感じます。
返還がきついと感じているのは、あなただけではない
JASSOの奨学金を返還している人(2024年度末時点)。返還しながら働くのは珍しいことではない435万人
日本学生支援機構「奨学金事業に関するデータ集」(令和8年1月)(2024年)
JASSO が3か月以上延滞している人に理由を聞いた調査(複数回答)では、「本人の低所得」が62.8%で最も多く、「本人の借入金(JASSO の奨学金以外)の返済」が34.5%で続きました。本人の年収が300万円以下の人は、延滞している人で60.9%、延滞していない人で34.3%です。
この調査の回答率は、延滞している人で8.2%(20,000人中1,648人)と低く、回答者だけの結果です。それでも、返還が苦しくなる大きな理由が収入の低さにあることは読み取れます。収入が一時的に下がったときに使う制度が、次の2つです。
減額返還と返還期限猶予の違い
| 比べる点 | 減額返還 | 返還期限猶予(一般猶予) |
|---|---|---|
| 月々の返還 | 当初の返還月額の2分の1・3分の1・4分の1・3分の2に減る | 認められた期間は返還しない |
| 期間の上限 | 1回の願出で12か月まで。通算15年(180か月) | 通算10年(120か月)。災害・傷病・生活保護受給中・産前産後休業と育児休業などは上限なし |
| 返す総額 | 減らない(返還期間が延びる。第二種の利子の総額は変わらない) | 減らない(元金・利子は免除されず、返還の終わりも先送り) |
| 収入の目安(経済的な理由の場合) | 給与所得者は年間収入400万円以下(扶養する子が2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下) | 経済困難なら、給与所得者は年間収入300万円以下 |
| そのほかの条件 | 延滞していない。口座振替(リレー口座)の加入者。月賦返還 | 災害・傷病・経済困難・失業などで返還が難しい |
| 延滞しているとき | 願い出られない(延滞を解消すれば願い出られる) | 延滞が始まった月から1年ごとに証明書を出せば願い出られる(出せない期間は入金するか、条件の厳しい延滞据置猶予になる) |
| 向く状況の例 | 返還は続けられるが、月額を下げたい(夜勤を減らして収入が下がったなど) | いったん返還を止めたい(育児休業中、病気で休職中、失業中など) |
出典:日本学生支援機構「減額返還制度の概要」「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」「経済困難(一般猶予の申請事由)」(2026年9月26日確認)
収入の目安は、減額返還のほうが広く設定されています。給与所得者で年収が300万円を超えて400万円以下なら、経済困難の猶予の目安には入らなくても、減額返還の目安には入ります。
ここでいう年間収入は、最新の所得証明書に載る「給与収入金額」(税込み。手取りではありません)です。今年から夜勤を減らした、時短勤務にしたなどで収入が下がり、所得証明書の額が目安を超えている場合でも、減収を理由にした申請の方法が案内されています(返還期限猶予では、直近3か月分の給与明細などから年収を試算します)。自分が当てはまるかは、JASSO の各ページか奨学金相談センターで確かめてください。
減額返還の目安は、2024年4月に給与所得者で325万円以下から400万円以下に引き上げられ、4分の1と3分の2の減額も選べるようになりました。以前の基準で「自分は使えない」と思い込んでいた人は、もう一度確かめる価値があります。減額返還では、被扶養者1人につき38万円を収入から差し引けることも覚えておいてください。
ただし、所得連動返還方式を選んでいる人(2017年度以降に採用された第一種奨学金の一部)は、減額返還を申請できません。
延滞している人ほど、制度を知るのが遅かった
同じ JASSO の調査は、2つの制度をいつ知ったかも聞いています。
| 制度を知った時期 | 延滞している人 | 延滞していない人 |
|---|---|---|
| 返還期限猶予を知っている | 80.9% | 62.6% |
| 返還期限猶予を返還が始まる前までに知っていた | 10.9% | 41.7% |
| 減額返還を知っている | 57.4% | 48.9% |
| 減額返還を返還が始まる前までに知っていた | 7.2% | 34.5% |
出典:日本学生支援機構「令和6年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」(2024年12月末に抽出、2025年2月実施。回答は延滞している人1,648人、延滞していない人1,898人)
延滞している人も、制度そのものは多くが知っています。違うのは知った時期です。延滞している人のうち、減額返還を「延滞督促を受けてから知った」人は35.6%、返還期限猶予では50.2%でした。
督促を受けてから減額返還を知っても、まず延滞を解消しないと使えません。制度を知った時期と延滞の関係は相関で、知るのが遅かったから延滞したとまでは言えませんが、「苦しくなる前に知っておく」ことの意味はこの数字からも読み取れます。
看護師が確かめたい返還支援
JASSO の制度は返す総額を減らしませんが、自治体や勤務先の返還支援は、返還の一部を肩代わりしてくれる仕組みです。
- 自治体の返還支援:2025年6月1日時点で、47都道府県と876市区町村(市区町村の50.3%)が実施しています。2024年度には15,260人が新たに支援を受け始め、支援を受けた人は計33,720人、支援額は約88.0億円でした。支援額を人数で割ると、1人あたり年平均で約26万円です(編集部算出の単純平均)。この調査は、医療系の人材を確保するための取り組みも対象にしています。内閣官房の資料では、支援の例として「その自治体に住む(または働く)こと」を条件にし、返還額の3分の1・2分の1などの割合と上限額を決める形が挙げられています。対象の職種や要件は自治体ごとに違います
- 勤務先の代理返還:勤務先が返還の一部または全部を JASSO に直接送る仕組みで、2021年4月に始まりました。利用する企業等は、2024年5月末の2,023社から2026年3月末には4,852社へと、2倍以上に増えています。ただし業種を問わない数で、医療機関に限った数は公表資料では確認できませんでした
自治体の制度は、JASSO の「地方公共団体の返還支援制度」のページから探せます。代理返還を導入している企業等は、JASSO の「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度検索」で、地域・業種・企業等名から探せます。勤務先の制度は、就業規則や福利厚生の案内、人事の担当で確かめてください。求人を比べるときは、支援の有無に加えて、支援額と期間、対象になる条件、途中で辞めたときの扱いまで確かめておくと、条件どうしを比べやすくなります。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:返還支援があれば、自分の返還を気にしなくてよいと思い込む代理返還は勤務先が JASSO に直接お金を送る仕組みですが、奨学金を返す義務があるのは本人のままです。JASSO の資料では、企業等は本人の債務を保証するものではなく、返還が遅れた場合は通常どおり本人に督促するとしています。また、支援の条件(対象になる期間や金額、途中で辞めたときの扱いなど)は勤務先が決めるもので、本人が条件を満たさなくなっても JASSO は関与しないとされています。支援があると聞いて安心せず、支援額と期間、対象になる条件、退職したときの扱いを確かめ、支援が始まってからもスカラネット・パーソナルで返還残額と請求額を見ておいてください。
病院独自の奨学金や、都道府県の看護師等修学資金は、JASSO とは別の制度です。お礼奉公の条件や途中で辞めるときの扱いは、看護師の奨学金「お礼奉公」がつらいときで整理しています。
延滞する前にやる手順
返還がきついと感じたら、次の順で進めます。
- 返還の状況を確かめる:返還残額と現在の請求額を確認する。JASSO の本人向けサイト「スカラネット・パーソナル」で見られる
- 条件を確かめる:減額返還なら、収入の目安(給与所得者400万円以下など)、延滞していないこと、リレー口座(返還金を口座から引き落とす口座振替)、月賦返還の4点。返還期限猶予なら、願い出る事由(経済困難なら給与所得者で年間収入300万円以下が目安、失業中、育児休業中など)
- どちらを使うか決める:両方の条件を満たすなら、返還を続けられるかどうかで選ぶ(続けられるなら減額返還、止めたいなら返還期限猶予)。JASSO は、将来の負担を軽くするために減額返還の利用をすすめています
- 願い出る:経済困難や失業中などが理由なら、スカラネット・パーソナルから願い出られる(マイナンバーを JASSO に提出済みで、月賦返還中の人)。それ以外は願出用紙を作って郵送する。願い出は、開始を希望する月の3か月前から受け付けているので、早めに出しておける
- 返還支援を探す:住んでいる自治体・働いている自治体と、勤務先の制度を確かめる
相談の見本:分からないときは、JASSO の奨学金相談センター(0570-666-301。9時〜20時、土日祝日・年末年始を除く)に電話できます。「減額返還と返還期限猶予のどちらが使えるか」「自分の場合に必要な証明書は何か」を聞くと、話が早く進みます。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:延滞してから申請しようとする最も避けたいのは、「来月には払えるはず」と連絡しないまま延滞してしまうことです。減額返還は、願い出る時点と審査の時点で延滞していないことが条件なので、延滞が始まると、まず延滞分を払わない限り使えなくなります。スカラネット・パーソナルからの願い出でも、審査の結果が出るまでおおむね2週間かかります。返還がきついと感じた時点が、申請を考えるいちばん早いタイミングです。JASSO も、返還期限猶予について「延滞する前にすみやかに手続き」するよう案内しています。引き落とし日の前に残高が足りないと分かったら、延滞する前に相談センターに連絡してください。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:減額返還中の引き落とし不能と期間切れ減額返還が認められたあとも、気を抜けない点があります。減額返還の期間中に2回続けて口座から引き落とせなかった場合、延滞が始まった時点にさかのぼって減額返還の適用が取り消されます。そのうえで、減額する前の返還月額をもとにした延滞金を加えた額を返すことになります。月額が下がって安心しても、引き落とし口座の残高は毎月確かめてください。また、減額返還は1回12か月までなので、続けて使う場合は期間が終わる前に改めて願い出る必要があります。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:延滞してからの返還期限猶予は、手続きも条件も重くなる返還期限猶予は、減額返還と違って延滞していても願い出る道がありますが、延滞する前より手続きも条件も重くなります。JASSO は、延滞が始まった月から1年ごとに、その期間の事由を証明する書類を出すよう求めています。証明書を出せない期間があれば、その分を入金してから一般猶予を願い出ます。入金も難しい場合は「延滞据置猶予」になりますが、経済困難の目安は給与所得者で年間収入200万円以下と、通常の300万円以下より厳しく、猶予が終わると据え置いた延滞分と延滞金、その月の分をあわせて請求されます。延滞していない場合も一般猶予は1年ごとに願い出る必要があるので、事由が続くなら期間が切れる前に願い出直してください。
返還がきついときの失敗例
- 失敗例1:返還期限猶予を「返さなくてよくなる制度」だと思う → 猶予は返還の先送りで、元金も利子も免除されません。猶予が終われば返還が再開します
- 失敗例2:年収が300万円を超えているから、どの制度も使えないとあきらめる → 経済困難の猶予の目安は給与所得者で300万円以下ですが、減額返還の目安は400万円以下です(扶養する子の人数で上がります)
- 失敗例3:看護師として働けば JASSO の奨学金も免除されると思う → JASSO の返還免除として案内されているのは、本人の死亡や精神・身体の障害による場合などで、看護師として働くことを条件にした免除はありません
よくある質問
Q. 減額返還を使うと、返す総額は増えますか?
A. 増えません。JASSO の説明では、減額返還は返還期間を延ばす制度で、第二種奨学金の利子の総支払額は変わらず、機関保証の場合も保証期間は延びますが保証料の追加徴収はありません。ただし、返還予定総額が減るわけでもありません。
Q. 育児休業中は返還を止められますか?
A. 返還期限猶予の一般猶予には、産前産後休業と育児休業の場合があり、通算10年の上限の対象外です。1回の願出で最大12か月までなので、休業が続くなら1年ごとに願い出ます。勤務先が発行する休業証明書の原本が必要なため、スカラネット・パーソナルからは申請できず、書面で願い出ます。猶予が終わると返還が再開し、返還の終わりも先送りされます。
Q. 看護師として働けば、JASSO の奨学金は免除されますか?
A. 免除されません。看護師として働くことを条件に返還が免除されるのは、都道府県の看護師等修学資金や病院独自の奨学金など、JASSO とは別の制度です。自分の奨学金がどの制度かは、借りたときの書類で確かめてください。
奨学金の返還支援も、働く条件の1つとして確かめる
基本給・手当に加えて、奨学金の返還支援の有無も職場によって違います。待遇を並べて比べる材料を増やしておくと、判断しやすくなります。
まとめ
- 返還がきついときの JASSO の制度は、月額を減らす減額返還(通算15年まで)と、返還を止める返還期限猶予(一般猶予は通算10年まで)
- どちらも返す総額は減らない。減額返還は延滞中には願い出られないので、苦しくなった時点で申請を考える
- 自治体(47都道府県・876市区町村)や勤務先の返還支援は、返還の一部を肩代わりしてくれる。対象と要件を確かめる
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- 病院の奨学金・修学資金とお礼奉公:看護師の奨学金「お礼奉公」がつらいとき
- 額面から手取りを計算する:看護師の手取りの計算
- 看護師の年収の水準:看護師の平均年収
参考文献
- 日本学生支援機構「減額返還制度の概要」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「令和6年4月より減額返還がさらに利用しやすくなりました」(2026-09-25 閲覧)
- 日本学生支援機構「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「経済困難(一般猶予の申請事由)」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「産前休業・産後休業および育児休業(一般猶予の申請事由)」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「減額返還の願出はスカラネット・パーソナルをご利用ください」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「令和6年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」(2026-09-25 閲覧)
- 日本学生支援機構「奨学金事業に関するデータ集」(令和8年1月)(2026-09-25 閲覧)
- 内閣官房地域未来戦略本部事務局「地方公共団体における奨学金返還支援取組状況について(令和7年6月1日時点)」(令和8年3月)(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」(2026-09-25 閲覧)
- 日本学生支援機構「企業等の奨学金返還支援(代理返還)への対応」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度検索」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「延滞している場合の返還期限猶予の申請手続き」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「延滞据置猶予で申請」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「収入・所得を確認する際の注意点」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「経済困難(減額返還制度の申請事由)」(2026-09-26 閲覧)
- 日本学生支援機構「お問い合わせ先一覧」(2026-09-25 閲覧)