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治験コーディネーター(CRC)への転職|SMO加盟社のCRC3,369人の36.6%が看護師という現在地

ナースひとやすみ 編集部約15分で読めます
目次

治験コーディネーター(CRC)は、法令が看護師を名指しで想定している数少ない職種です。医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP省令)第2条第18項は「治験協力者」を「治験責任医師又は治験分担医師の指導の下にこれらの者の治験に係る業務に協力する薬剤師、看護師その他の医療関係者」と定義しています。実際の構成も裏づけています。日本SMO協会加盟23社で働くCRC3,369人のうち、看護師(准看護師を含む)は1,233人で36.6%。6年前は臨床検査技師が最多でしたが、2025年時点では看護師が最も多い出身資格です。この記事では、資格の内訳、GCP省令が引いた業務の線、治験の件数という需要の指標、そして年収データが存在しないなかでの判断材料の作り方を整理します。

CRC3,369人のうち1,233人が看護師——最多の出身資格が入れ替わった

まず、いま誰がCRCをやっているのかを見ます。日本SMO協会「日本SMO協会データ2025」(2026年4月実施調査)は、加盟企業のCRCを医療資格別に集計しています。

SMO加盟企業のCRCのうち看護師(准看護師含む)1,233人

日本SMO協会「日本SMO協会データ2025」(2025年)

CRCの医療保有資格の構成比(2025年・n=3,369人)

看護師(准看護師含む)
36.6%(1,233人)
医療資格なし
25.2%(848人)
臨床検査技師
22.1%(743人)
管理栄養士・栄養士
8.0%(269人)
その他
4.7%(157人)
薬剤師
3.5%(119人)

出典: 日本SMO協会「日本SMO協会データ2025」(2026年4月実施調査。加盟23社のCRC 3,369人)

この構成は固定されたものではありません。6年前と並べると、動きがはっきりします。

資格2019年(n=2,709人)2025年(n=3,369人)構成比の変化
看護師(准看護師含む)28.6%(776人)36.6%(1,233人)+8.0pt/+457人
臨床検査技師29.4%(796人)22.1%(743人)-7.3pt/-53人
管理栄養士・栄養士8.5%(230人)8.0%(269人)-0.5pt/+39人
薬剤師4.7%(127人)3.5%(119人)-1.2pt/-8人
その他2.8%(77人)4.7%(157人)+1.9pt/+80人
医療資格なし26.0%(703人)25.2%(848人)-0.8pt/+145人

出典: 日本SMO協会「日本SMO協会データ2025」CRCの医療保有資格区分別推移。構成比の変化は公表値から当サイトが算出

読み取れることは2つあります。1つは、CRCの総数が2,709人から3,369人へ660人増えたぶんの大半(457人)を看護師が占めたこと。臨床検査技師は実数でも減っており、2019年に最多だった資格が入れ替わりました。もう1つは、医療資格なしが25.2%(848人)いることです。4人に1人は医療資格を持たずにCRCをしています。つまり看護師免許は必須条件ではない。にもかかわらず看護師が最多になっているのは、免許が入口の要件だからではなく、業務との相性で選ばれているからだと読むのが正確です。

「治験協力者」の役割は、GCP省令が線を引いている

CRCという呼び名は法令用語ではありません。GCP省令が定めているのは「治験協力者」という位置づけです。求人票の「治験のサポート業務」が具体的に何を指すかは、この条文群を読むと輪郭が出ます。

場面誰の仕事か根拠
被験者への説明と同意の取得治験責任医師等(CRCは実施主体ではない)GCP省令 第50条第1項
説明文書の交付(記載17事項)治験責任医師等同 第51条第1項
同意文書の立会人治験責任医師等・治験協力者はなれない同 第52条第4項
治験審査委員会(IRB)の審議・採決治験責任医師等・治験協力者は参加できない同 第29条第1項第3号
CRCが担う業務の範囲治験責任医師が分担業務の一覧表を作成して決める同 第43条第1項

この表が示しているのは、CRCの仕事が「医師の決定を支える側」に明確に置かれているということです。同意説明の場に同席してスケジュールや来院の段取りを説明することはできても、治験参加の是非を説明して同意を得る主体にはなれません。立会人にもなれず、IRBの採決にも加われない。

一見すると制約の多い立場に見えますが、裏返すと責任の範囲が文書で確定している職種でもあります。GCP省令第43条第1項は「治験責任医師は、当該治験に係る治験分担医師又は治験協力者が存する場合には、分担する業務の一覧表を作成しなければならない」と定めています。病棟のように「気づいた人がやる」で業務が膨らむ構造ではありません。何を任されているかが一覧表で書面化される——病棟の曖昧な業務分担に疲れた人にとって、ここは大きな違いです。

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仕事の量を決めるのは、治験の件数

CRCの需要は、国内でどれだけ治験が動いているかで決まります。ここは独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)が件数を公表しています。

年度初回治験計画届(うち医師主導治験)n回治験計画届(うち医師主導治験)治験終了届開発中止届
2014年度151件(20件)450件(33件)498件117件
2020年度186件(10件)603件(60件)440件103件
2023年度161件(8件)377件(32件)390件155件
2024年度192件(10件)394件(39件)462件185件
2025年度221件(9件)467件(28件)465件203件

出典: 独立行政法人医薬品医療機器総合機構「薬物の治験計画届出件数の推移」

2025年度の初回治験計画届221件は、公表されている2014年度以降で最も多い水準です。一方で開発中止届も203件と増えており、新しく始まる治験と、途中で終わる開発が同時に増えているのが実態です。CRCの仕事は、始まった試験を最後まで伴走するだけでなく、中止・終了に伴う書類と被験者対応も含みます。件数の増加は、そのまま業務の増加につながります。

領域の偏りも知っておく価値があります。PMDAの薬効別分類では、2025年度の届出686件のうち抗悪性腫瘍薬が270件(39.4%)を占めました。次いでビタミン・血液・体液用薬等代謝性医薬品94件、中枢神経用薬73件。4割ががん領域という構成です。がん患者さんとの関わりが業務の中心になる可能性が高い、ということを意味します。

規模感の目安も出せます。日本SMO協会加盟23社の契約症例数は99,407症例(うち年度内新規38,058症例)。CRC3,369人で割ると1人あたりおよそ29.5症例です(加盟23社の合算値からの当サイト算出)。1人が1つの試験だけを担当するわけではない、という前提で職場を見てください。

年収——CRCの平均年収を示す公的統計は存在しない

はっきり書きます。CRCの平均年収を集計した公的統計はありません。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」に「治験コーディネーター」という職種区分はなく、日本SMO協会のデータにも給与の項目はありません。転職サイトが示す「CRCの年収は◯◯万円」は、そのサイトの登録者や求人票から作った数字で、母集団も算出方法も公表されていないことがほとんどです。

その代わり、判断に使える確かな材料は3つあります。

指標数値出典
看護師の平均年収(職種全体)約524.7万円(月365,900円+年間賞与856,400円、平均42.1歳)厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別第1表
病院勤務者が2025年1月に受け取った夜勤手当平均32,192円(n=2,072)日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」表207
SMO事業の従業員1人あたり売上高約908万円(売上高50,225百万円÷全従業員5,532人。当サイト算出)日本SMO協会「日本SMO協会データ2025」

3つ目は売上であって給与ではありません。ただし人件費がここから出ている以上、原資の規模感は読み取れます。この数字を見たうえで、「現職の年収から夜勤手当(全国平均で月32,192円、年に約38万6,000円)が消える」という引き算を自分の給与明細で行えば、必要な提示額が具体的になります。夜勤手当の計算手順は看護師が夜勤なしで転職する方法にまとめています。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:「年収は下がらない」という説明を、総額の話だと思い込む

CRCの求人では、基本給に加えて「みなし残業代」「地域手当」「出張手当」が積まれている設計をよく見ます。現職の年収と並べて「ほぼ変わりません」と言われたとき、確認すべきは内訳です。みなし残業が月30時間分含まれていれば、その30時間は働く前提の金額です。出張手当は担当施設が遠方のときだけ出る変動費で、担当替えで消えます。病棟の夜勤手当が「回数×単価」で読めたのに対し、CRCの手当は条件が変わると連動して減る性質のものが混ざります。提示を受けたら、基本給・固定手当・みなし残業の時間数・変動手当を分けて書き出し、「変動部分がゼロになった場合の年収」を計算してください。その額で生活が回るかどうかが、実質的な判断基準になります。

「きつい」と言われるのは、看護の忙しさとは別の理由

CRCの負担は、業務の構造から予測できます。

  • 複数の試験を並行して担当する: 1人あたり約29.5症例という規模から分かるとおり、担当は1試験ではありません。プロトコル(治験実施計画書)ごとに手順も検査スケジュールも違うので、頭の切り替えが常時発生します
  • スケジュールが被験者の生活に合わせて動く: 来院日は被験者の都合で決まります。検査の許容窓(ウィンドウ)を外せばプロトコル逸脱になるため、調整の難度が高い場面があります
  • 記録の正確性が成果物そのもの: 症例報告書のもとになるのは原資料です。GCP省令は原資料を「被験者に対する治験薬又は製造販売後臨床試験薬の投与及び診療により得られたデータその他の記録」と位置づけており、書けていないことは行われなかったことになる世界です
  • 医師と依頼者の間に立つ: 治験責任医師の指導の下で動きながら、治験依頼者やモニターからの照会にも応じます。立場としては医療機関側ですが、両者の期待が食い違う場面に居合わせます

裏を返せば、段取りと記録が得意な人には向いている職種です。急変対応の瞬発力ではなく、「何か月も先の予定を逆算して穴を作らない」能力が評価されます。病棟で受け持ち患者のスケジュール管理や委員会の書類仕事を苦にしなかった人は、ここで強みが出ます。

未経験から進めるときの3つの手順

手順1: SMO所属か、院内CRCかを先に決める

CRCには、SMO(治験施設支援機関)に雇用されて複数の医療機関を支援する形と、医療機関に直接雇用される院内CRCの形があります。日本SMO協会のデータが示すのは前者の規模で、加盟23社の全従業員は5,532人、うちSMO業務従業員4,387人、CRCは3,369人です。求人の出方も勤務地の決まり方も違うので、どちらを軸に探すかを先に決めると効率が上がります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴:SMO所属の「勤務地」を、毎日通う場所だと思って応募する

SMOの求人票に書かれている勤務地は、多くの場合その企業の支店やオフィスの所在地です。実際に毎日向かうのは、担当する医療機関です。担当が3施設あれば曜日ごとに行き先が変わり、エリアによっては片道1時間の移動が週に何度も入ります。通勤時間で職場を絞ってきた人ほど、ここで計算が狂います。避けるには、面接で「担当する医療機関は何施設で、どのエリアにありますか」「自宅から最も遠い担当先までの所要時間はどれくらいですか」「移動時間は勤務時間に含まれますか」の3点を必ず聞いてください。3つ目は特に重要で、含まれない運用なら実質の拘束時間が1日1〜2時間伸びます。担当替えで行き先が変わる可能性があることも、あわせて確認しておきます。

手順2: 資格は「入ってから取る」順番で考える

日本SMO協会加盟企業のCRC3,369人のうち、JASMO公認CRCの保有者は1,571人、日本臨床薬理学会認定CRCの保有者は253人です(同協会データ2025。いずれも加盟企業に所属する人の数)。CRC全体の半数以下しか公認資格を持っていないという構成から分かるとおり、資格は入職の前提ではなく、実務を積んでから取るものとして運用されています。応募前に資格取得へ時間を使うより、研修体制のある職場を選ぶほうが現実的です。

手順3: 「使わなくなる技術」を先に受け入れる

CRCは治験協力者であり、診療行為の主体ではありません。GCP省令第50条第1項が同意取得を治験責任医師等の役割と定めているとおり、看護師として培った判断や処置の一部は、この仕事では出番がありません。応募の動機を「看護を続けたい」に置くと、入職後にずれます。「医療の知識を、別の形で使う仕事に移る」という言い換えができているかを、志望動機を書く前に確かめてください。

志望動機の書き出しの見本: 「病棟で受け持ち患者の検査・処置のスケジュール管理を担ってきました。予定を逆算して調整する仕事に手応えがあり、被験者の来院と検査を組み立てるCRCの業務に活かせると考えています」

⚠️ つまずきやすい落とし穴:「治験に興味がある」を志望動機にしてしまう

CRCの面接で「新薬開発に関わりたい」「治験に興味がある」と答える応募者は多く、それだけでは区別がつきません。さらに問題なのは、この動機が業務の実態と噛み合わないことです。CRCの日常は、来院日程の調整、同意説明の同席、症例報告書のもとになる記録の確認、依頼者からの照会対応が中心で、新薬の有効性を考える仕事ではありません。ここに期待を置いたまま入職すると、半年ほどで「思っていた仕事と違う」と感じます。志望動機は「新薬」ではなく「段取りと記録」の側に置いてください。具体的には、病棟で検査出しの順序を組み立てた経験、記録の抜けを防ぐために自分で作った確認手順、委員会の書類をまとめた経験——こうした事実を1つ挙げて、それがCRCのどの業務に接続するかまで書きます。

失敗例・よくあるNG

  • 失敗例1: 「日勤のみ・土日休み」だけを条件に決めた → 被験者の来院は生活の都合に合わせて設定されるため、施設によっては夕方以降や土曜の対応が発生します。募集条件の文言ではなく、「実際に発生している来院対応の時間帯」を面接で確認してください
  • 失敗例2: 担当施設の数と移動時間を確認しなかった → SMO所属の場合、複数の医療機関を回ります。求人票の勤務地は所属オフィスであって、日々の行き先ではありません。担当エリアの広さと1日の移動時間を必ず聞きます
  • 失敗例3: がん領域が中心になることを想定していなかった → 2025年度の治験計画届出686件のうち抗悪性腫瘍薬が270件(39.4%)を占めます。がん患者さんと長く関わる可能性が高い仕事です。自分がその領域に向き合えるかを、応募前に考えておいてください

Q&A

Q. 看護師免許がないとCRCにはなれませんか?

A. 免許は必須ではありません。日本SMO協会「日本SMO協会データ2025」によると、加盟企業のCRC3,369人のうち25.2%(848人)は医療資格を持っていません。ただし、GCP省令第2条第18項は治験協力者を「薬剤師、看護師その他の医療関係者」と定義しており、医療職が想定されている職種であることも事実です。実際の構成でも看護師が36.6%(1,233人)で最多。免許は要件ではないが、有利には働くというのが数字の読み方です。

Q. CRCの年収はどのくらいですか?

A. CRCの平均年収を示す公的統計は存在しません。「賃金構造基本統計調査」に該当する職種区分がなく、日本SMO協会のデータにも給与項目がないためです。判断に使えるのは、現職からの引き算です。看護師の平均年収は524.7万円(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」)、病院勤務者が2025年1月に受け取った夜勤手当は平均32,192円(日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」表207)。夜勤がなくなる前提で、自分の給与明細から減る額を出し、提示額と並べて判断してください。求人ごとにみなし残業や出張手当の設計が異なるため、総額ではなく内訳で比べることが重要です。

Q. 何年目の看護師ならCRCに移れますか?

A. 経験年数の公的な基準はなく、施設・企業ごとに異なります。業務の性質から考えると、判断材料は年数そのものより「検査や処置のスケジュールを自分で組み立てた経験があるか」「記録を正確に残す習慣があるか」です。GCP省令第43条第1項により、CRCが担う業務は治験責任医師が作成する分担業務一覧表で決まります。任された範囲を正確に、期日どおりに実行できるかが問われる仕事だと理解したうえで、自分の経験をそこに翻訳できるかを考えてください。転職活動全体の進め方は看護師の転職の流れを参照してください。

求人の母数が限られる職種ほど、早めの情報収集が効く

CRCの求人は常時大量に出るものではありません。条件を登録して複数のサービスから声がかかる状態にしておくと、募集のタイミングを逃しにくくなります。

まとめ

  • 看護師はCRCの最多の出身資格: 加盟23社のCRC3,369人のうち36.6%(1,233人)。2019年の28.6%(776人)から8.0ポイント伸び、最多だった臨床検査技師と入れ替わりました
  • 免許は必須ではない: 25.2%(848人)は医療資格を持たずにCRCをしています。看護師が多いのは要件だからではなく、業務との相性です
  • 役割はGCP省令が確定させている: 同意説明の主体は治験責任医師等(第50条第1項)、立会人にはなれず(第52条第4項)、IRBの採決にも加われません(第29条第1項第3号)。一方で担当業務は分担業務一覧表で書面化されます(第43条第1項)
  • 需要は治験の件数で動く: 2025年度の初回治験計画届は221件で、公表されている2014年度以降の最多水準。うち抗悪性腫瘍薬が39.4%を占めます
  • 年収データは存在しない: 公的統計にも団体調査にもありません。夜勤手当(全国平均で月32,192円)が消える前提で、自分の明細から必要額を出してください

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参考文献

  1. 医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)第2条・第29条・第43条・第50条・第51条・第52条(e-Gov 法令検索)(2026-09-20 閲覧)
  2. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)「治験計画届出件数」(薬物の治験計画届出件数の推移・薬効別分類、2014年度〜2025年度)(2026-09-20 閲覧)
  3. 日本SMO協会「日本SMO協会データ2025」(2026年4月実施調査・2026年6月公表)(2026-09-20 閲覧)
  4. 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況(職種別第1表は e-Stat 掲載)(2026-09-20 閲覧)
  5. 日本看護協会「2024年度 看護職員の賃金に関する実態調査」報告書(表207)(2026-09-20 閲覧)