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看護師のインシデントレポートの書き方|例文と、責めずに事実を書く手順
目次
- 01書き始める前に:前提と、この手順を使わない場合
- 02なぜ書くのか(インシデントレポートの目的):「評価」ではなく「収集」のための書類
- 03インシデントレポートの書式は5つの欄で考える|全国の報告項目から整理
- 何が報告されているのか
- 04インシデントレポートの書き方5ステップ
- ステップ1:記憶ではなく、看護記録から時系列メモを作る
- ステップ2:③事例の詳細は「見たこと・したこと」だけで書く
- ステップ3:②影響の程度は、「実際」と「仮に」を分けて書く
- ステップ4:④発生要因は「行為」と「背景」を分けて書く
- ステップ5:⑤再発防止策は「動作」で書き、個人の努力に頼らない
- 05インシデントレポートの例文3本|NG→OKで添削(すべて架空の見本)
- 例1:薬剤(薬袋の取り違えに気づいた)【架空】
- 例2:療養上の世話(転倒・転落)【架空】
- 例3:ドレーン・チューブ(点滴ルートの抜去)【架空】
- 06インシデントレポートの失敗例・よくあるNG
- 07書き終えたら:完了の目安と、うまくいかないときの切り分け
- 08よくある質問
- Q. インシデントレポートは誰が書きますか?当事者でなくても書くのですか?
- Q. 患者さんに影響が出なかったときも、書く必要がありますか?
- Q. インシデントで一番多いのは何ですか?
- Q. 氏名は書くのですか?
- Q. 書いた報告書で、自分の評価が下がりませんか?
- 09まとめ
インシデントレポートは、評価や反省を入れずに「事実→影響→背景→再発防止」の順で書きます。「確認不足でした」で終わる報告書は、次の人が同じ場面で同じことをする材料にしかなりません。
勤務が終わってから報告書の前に座っても、何から書けばいいのか分からない。気づけば「申し訳ありません。今後は気をつけます」と打っていて、事実は一行も増えていない。
日本医労連・全大教・自治労連の調査(2022年、加盟組合のある職場の回答35,933人)では、この3年間にミスやニアミスを起こしたことが「ある」人は86.0%でした。20〜24歳は92.8%、50〜59歳でも83.1%です。全国の看護職員を代表する数字ではありませんが、ミスやニアミスは特別な人だけのものではありません。
この記事では、全国の報告事業が使う報告項目に沿って、5つの欄の書き方と、架空の見本3本をNG→OKで示します。ミスが怖い気持ちそのものは新人看護師の「ミスが怖い」を数字で解きほぐす、責任の仕組みは看護師がミスをしたときの責任で扱っているので、ここでは書き方に絞ります。
ミスやニアミスは特別な人だけの経験ではありません。この3年間に起こしたことが「ある」看護職員(加盟組合のある職場の回答)86.0%
日本医労連・全大教・自治労連「2022年看護職員の労働実態調査」問21(回答35,933人)(2022年)
書き始める前に:前提と、この手順を使わない場合
この記事では、患者さんに届く前に気づいた事例も、届いたが軽く済んだ事例も含めて「インシデントレポート」と呼びます。施設によっては、影響の大きい事例を「アクシデント」として分けます。この手順は、患者さんの状態が落ち着き、リーダーや管理者への口頭の報告が済んだあとに書く報告書を想定しています。手元に看護記録(時刻・実施内容・観察結果)と、勤務先の報告様式・提出先・期限があることが前提です。
先に別の対応をする場合- 患者さんが重い状態になった(なりそうな)とき:まず患者さんの安全確保と医師への連絡を行い、そのうえで管理者へ速やかに口頭で報告します。厚生労働省の通知も、重大な事故の発生時には速やかに管理者へ報告することを求めています。報告書はそのあとです
- 針刺し・切創など自分自身のけがのとき:労災の手続きが別にあります。針刺し事故の報告と労災の手続きを先に確認してください
- 勤務先の様式や分類が、この記事と違うとき:勤務先の様式が優先です。5つの欄は、様式のどこに何を書くかを考える地図として使ってください
- 事実を変えて書くよう求められたとき:応じずに、医療安全管理者や看護部長など別のルートへ相談します
なぜ書くのか(インシデントレポートの目的):「評価」ではなく「収集」のための書類
インシデントレポートの目的は、個人を評価することではなく、事例を集めて組織の改善策につなげることです。医療法施行規則第1条の11は、病院等の管理者に、事故報告等を生かした改善のための方策を講じることを求めています。運用を示す厚生労働省医政局長通知は、令和8年3月31日の医政発0331第72号「病院等における医療の安全を確保するための措置について」に引き継がれました。事故報告等の改善方策の部分は、平成19年通知(医政発0330010号)の内容が残っており、次のように整理されています。
- 発生した事故等を、医療安全管理委員会などへ報告する
- 指針で定めた範囲と手順に従って事例を集めて分析し、組織としての改善策を立て、情報を共有する
- 改善策は、背景要因と根本原因を分析して検討する
- 事故の報告は、診療録・看護記録等に基づき作成する
通知の対象は事故の報告ですが、インシデントレポートも、記憶や感想ではなく、看護記録に残る事実から書き起こすのが安全です(これは編集部の読み方です)。国の検討会の資料で紹介された研究班の整理も、影響度が比較的小さい事象について「報告する事例を限定的にとらえる姿勢は望ましくなく、報告し学習する文化を高め続けることが望ましい」としています(第3回医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会 資料1、2025年9月)。
インシデントレポートの書式は5つの欄で考える|全国の報告項目から整理
日本医療機能評価機構の「医療事故情報収集等事業」は、全国の医療機関からヒヤリ・ハット事例を集めています。2025年4月からの報告項目を、書き手の目線で編集部が5つにまとめました。院内の様式は施設ごとに違いますが、書く内容の考え方は共通しています。
| 欄 | 何を書くか | 書かないこと |
|---|---|---|
| ① 基本情報 | 発生した時間帯・場所・平日か休日か | 時刻の推測(分からなければ「不明」) |
| ② 影響の程度 | 誤りが患者さんに実施されたか/仮に影響が大きくなった場合の程度(4区分) | 自分で重い・軽いを断定する言葉 |
| ③ 事例の詳細 | 時系列の事実。いつ・どこで・何をして・何が起きたか | 評価(うっかり・不注意)、推測、謝罪 |
| ④ 発生要因 | 職員の行動と、その背景(繁忙・夜間・人員配置・手順など) | 「気が緩んでいた」だけで止めること |
| ⑤ 再発防止策 | 次に同じ場面で、何を・いつ・誰が行うか | 「注意する」「意識する」 |
②の4区分は、「死亡もしくは重篤な状況に至ったと考えられる」「濃厚な治療・処置が必要であったと考えられる」「軽微な治療・処置が必要であったと考えられる」「治療・処置は不要であったと考えられる」です。院内では施設ごとに独自のレベル分類を使うことがあり、どのレベルに当たるかの判定は、安全管理部門など施設の決まりに従います。
何が報告されているのか
全国の事業には、件数だけを集める「発生件数情報」(2025年4〜12月は894,737件)と、詳細を報告する「事例情報」があり、この記事の数値は後者です。2025年(1〜12月)にヒヤリ・ハットの事例情報として報告された14,940件を事例の概要別に見ると、薬剤が5,326件(35.6%)、療養上の世話が3,750件(25.1%)、ドレーン・チューブが1,724件(11.5%)で、上位3区分(計10,800件)が72.3%を占めます。次の例文も、この3区分に合わせました。ただし、これは報告された件数で、現場で起きた件数の割合ではありません。
患者さんに何も起きていなくても、報告は出されています。「実施の有無」は2025年4月に追加された項目で、4〜12月分だけの集計です。その事例情報8,474件のうち、「誤りがあったが、患者に実施されなかった」は3,189件(37.6%)でした。2024年の集計表(YH-27)では、発見者は報告全体27,272件のうち「当事者本人」が11,652件(42.7%)、「同職種者」が9,902件(36.3%)、「他職種者」が4,030件(14.8%)で、残り6.2%は患者さん・家族・他の患者さん・その他でした。当事者本人が自分で気づいた報告が4割強あります。なお、2025年4月に報告項目が見直されたため、2024年と2025年の件数は比べられません。
インシデントレポートの書き方5ステップ
様式の欄は①から順に並びますが、書く順番は ③事実 → ②影響 → ④背景 → ⑤再発防止です。事実が固まってから、影響と背景を考えます。
ステップ1:記憶ではなく、看護記録から時系列メモを作る
看護記録と指示、実施記録を見ながら、時刻順に1行ずつ書き出します。この段階では文章にしません。「10:15 ◯◯を実施」「10:42 リーダーへ口頭で報告」のように、記録に残る時刻だけを使い、分からない時刻は「不明」と書きます。メモには患者さんの氏名・ID・病室番号など個人が特定できる情報を書かず、勤務先の規程の範囲で、院内の端末や様式の中で作ってください。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:記憶で書き始めて、記録と食い違う勤務の終わりに記憶だけで書くと、時刻や順番が少しずつずれます。「10時ごろ」と書いたのに記録は10時25分、という程度のずれでも、読む側は「どちらが正しいのか」の確認から始めることになり、報告の本題に入れません。あとから食い違いに気づいても、書き換えずに、後述の訂正の手順(元の記載と経緯が分かる形で、勤務先の規程に沿って、迷ったら上司へ相談)に従います。こっそり直すと、書き直しの経緯そのものが疑われやすくなります。看護記録と指示の画面を横に開き、記録に無い時刻は推測で埋めず「不明」と書いてください。
ステップ2:③事例の詳細は「見たこと・したこと」だけで書く
1文ごとに「それは自分が見た・した・聞いたことか」を確かめます。「たぶん」「〜だと思う」は③に書きません(背景は④で扱います)。
- ✕ 「確認不足でした」→ ○ 「手元の薬袋と、リストバンドの氏名の照合をせずに病室に入った」…「確認不足」は評価で、何をしなかったかが分かりません。動作で書くと手を入れる場所が見えます
- ✕ 「急いでいました」→ ○ 「ナースコール2件の対応が重なっていた」…気持ちではなく見た状況で書きます。④の背景(繁忙)の材料にもなります
- ✕ 「患者さんが勝手に動いた」→ ○ 「床に座っている患者さんを、巡視中に発見した」…「勝手に」は評価と推測です。自分が見たことだけなら、本人に確かめなくても書けます
「不注意」「うっかり」「勝手に」は事実ではなく評価です。書いた人が責められているように見えるだけでなく、読む側が事例を「書いた人個人の問題」として受け取る原因になります。もう一つ起きやすいのが、他の人の行動を推測で書くことです。「先輩は気づいていたはずだ」「患者さんはわざと外したと思う」は、本人に確かめていない解釈にすぎません。他の人の言動は、自分が見た・聞いた範囲だけを書き、聞いた内容は「◯◯さんから『◯◯』と聞いた」と、誰が何を言ったかで残します。
ステップ3:②影響の程度は、「実際」と「仮に」を分けて書く
全国の報告項目は、「誤りが患者さんに実施されたか(実施されなかった/実施された)」と、「仮に影響が大きくなった場合の程度(4区分)」の2つを聞いています。届く前に気づいた場合、前者は「実施されなかった」を選びます。後者は「もしそのまま実施されていたら」の程度ですが、区分の判定は施設の決まり(リーダーや安全管理部門)に従います。自分が書くのは、判定の材料になる事実です。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:何も起きなかったから「影響なし」で終わらせる患者さんに変化がなかったとき、影響の欄を空白にしたり「影響なし」の一言で済ませたりする報告書があります。しかし、仮の程度が「濃厚な治療・処置が必要」以上とされた事例は、2025年4〜12月の事例情報8,474件のうち647件(7.6%)あります(実施の有無を問わない集計)。「仮に」の視点で書いておくと、安全管理部門は、頻度は低くても起きたら重い事例を見つけやすくなります。逆に「軽微だから書かなくていい」と自分で省くと、その事例は集計から消えます。区分は自分だけで断定せず、事実と患者さんのその後の状態(観察・医師の指示)をそのまま書いて、判定はリーダーや安全管理部門に任せてください。
ステップ4:④発生要因は「行為」と「背景」を分けて書く
全国の報告項目は、発生要因を2段で聞いています。
- (a) 事例に関わった職員の要因:確認漏れ・不足、観察漏れ・不足、報告漏れ・不足、判断の誤り、手順・ルールの不遵守、記録・入力の不備、コミュニケーション不足
- (b) (a)の背景:ヒューマンファクター(知識不足・疲労・普段と異なる心理状態など)/発生時の状況(繁忙・タイムプレッシャー、時間外・夜間・休祝日、普段と異なる業務)/環境・設備/管理的な要因(教育・訓練、手順・ルール、人員配置)/患者側の要因
「確認漏れ・不足」は、起きたことの名前です。なぜ確認が抜けたのかは、(b)の背景に書きます。次のグラフは、2024年のヒヤリ・ハット事例情報(27,272件、全職種)で、要因が選ばれた割合を件数から計算し直したものです。報告者が選んだ要因で、真の原因の割合ではありません。選択肢の名前は、2025年4月の変更前の旧名です。
確認に関する要因は報告の66.9%で選ばれ、突出しています。一方、ルールの不備(4.9%)と仕組み(4.7%)は5%前後です。このグラフから言えるのは、報告者が選ぶ要因は個人の行動に偏って見える、というところまでです。仕組みの不備が実際に少ないのか、背景まで書けていないのかは区別できません。だからこそ、報告書では(b)の背景を意識して書く意味があります。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:(a)の「確認漏れ・不足」だけで書き終える行為だけを書いた報告書は、「次から確認を増やします」という再発防止策にしかつながりません。確認の回数を増やすだけでは、背景が残ったままです。確認が抜けた背景に、同じ時間に処置と配薬が重なる、同姓の患者さんが同じ病棟にいる、確認の手順が文書になっていない、といった事情があれば、そこに手を入れるほうが再発を防ぎやすくなります。背景は言い訳ではなく、再発防止策の材料です。(b)の選択肢を上から読み、事実として当てはまるものだけを書き足してください。
ステップ5:⑤再発防止策は「動作」で書き、個人の努力に頼らない
いつ・誰が・何をするかが分かる動作で書きます。✕「今後は注意する」「確認を徹底する」→ ○「配薬は、薬袋とリストバンドを患者さん1名ずつ声に出して照合する」。自分1人で決められない仕組みの変更は、「〜を検討してほしい」という提案として書きます。決めるのは委員会や管理者です。
⚠️ つまずきやすい落とし穴:個人の動作か仕組みの提案か、どちらか一方だけを書く再発防止策に「配薬時に声に出して照合する」という自分の動作だけを書くと、事例は個人の注意の問題として扱われ、同じ場面は次の担当者にも起こります。反対に「同姓の患者さんの薬袋は別トレイに分けてほしい」という提案だけを書くと、委員会や管理者が検討して決まるまでの間、現場では何も変わりません。提案が採用されないこともあります。そのため、次の勤務からできる自分の動作を1つと、環境や手順を変える提案を1つ、組み合わせて書いてください。提案を採用するかどうかを決めるのは委員会や管理者で、あなたが書いた事実と提案は、その検討の材料になります。
インシデントレポートの例文3本|NG→OKで添削(すべて架空の見本)
以下の3本は、この記事のために一から作った架空の見本です。実在の事例や、公開されている報告事例を加工したものではありません。①基本情報は省き、②〜⑤を抜き出しています。
例1:薬剤(薬袋の取り違えに気づいた)【架空】
NG:「確認不足でした。同じ名字だと分かっていたのに気が緩んでいました。今後は気をつけます。」
OK- ② 影響:誤りは患者さんに実施されなかった。区分はリーダーと相談して選ぶ
- ③ 事実:「8:10、病室で内服薬を渡す前にリストバンドを照合した際、手元の薬袋が別の患者さんのものだと気づいた。薬袋の名字は同じで、下の名前だけが異なる。薬は渡していない。8:12、リーダーへ口頭で報告した」
- ④ 要因:行為=薬袋の下の名前の照合が、病室に入る前になかった。背景=同姓の患者さんが同じ病棟にいた/2名分の薬袋を同じトレイに載せていた/配薬の時間帯に検温とナースコール対応が重なっていた
- ⑤ 防止策:「同姓の患者さんの薬袋は別トレイに分け、目印を付けることを提案する。配薬時は、薬袋とリストバンドを1名ずつ声に出して照合する」
例2:療養上の世話(転倒・転落)【架空】
NG:「巡視を怠り、患者さんを転倒させてしまった。もっと頻回に訪室すべきだった。」
OK- ② 影響:実施された。観察できた内容(意識・外傷)は③に書き、区分は施設の基準で選ぶ
- ③ 事実:「2:10、巡視中に、ベッド脇の床に座っている患者さんを発見した。前回の訪室は0:40。意識は清明で、疼痛の訴えと外傷は確認できなかった。2:15、当直医へ報告し、指示に従って経過を観察した。ナースコールは鳴っていない」
- ④ 要因:行為=巡視の間隔が空いた。背景=夜勤の人員が2名で、1:00〜2:00に別の患者さんの対応が続き、巡視の時刻が後ろにずれた/離床を知らせる機器は使っていなかった
- ⑤ 防止策:「転倒リスクのある患者さんの巡視時刻を、申し送りに明記する。離床を知らせる機器の適用を、病棟カンファレンスで検討してほしい(提案)」
例3:ドレーン・チューブ(点滴ルートの抜去)【架空】
NG:「固定が甘かったので抜けてしまった。次からしっかり固定する。」
OK- ② 影響:実施された。出血量と点滴の遅れは③に書き、区分は施設の基準で選ぶ
- ③ 事実:「15:30、清拭と寝衣交換を行った。16:00、訪室時に末梢静脈ルートが抜けているのを発見した。刺入部の出血は少量で、圧迫して止血した。16:10、リーダーへ報告し、再挿入した。点滴は約30分遅れで再開した」
- ④ 要因:行為=寝衣交換のあとにルートを確認しなかった。背景=刺入部は前腕で、寝衣の袖を通す際にルートが触れる位置にあった/固定位置とたるみを、寝衣交換の前後に確認する手順が決まっていなかった
- ⑤ 防止策:「自分は、寝衣交換のあとにルートの固定とたるみを目で追って確認する。同じ確認を病棟の手順に加えるよう提案する」
3本とも、NGは「何が起きたか」が分からず、OKは次に同じ場面が来たとき手を入れる場所が分かります。
インシデントレポートの失敗例・よくあるNG
最後の1つは、報告書の質ではなく行為の問題になります。訂正が必要なときは、元の記載と訂正の経緯があとから分かる形で、勤務先の規程に沿って行い、迷ったら書き換える前に上司や記録の担当者に相談してください。
書き終えたら:完了の目安と、うまくいかないときの切り分け
完了の目安:①〜⑤が埋まっている(分からない項目は空欄でなく「不明」)/③に評価語と推測が入っていない/時刻が看護記録と一致している/⑤が動作で書かれ、提出先(リーダー・安全管理部門)に出した。
- 何から書くか分からない:看護記録を時刻順に並べるステップ1だけ先にやる。文章は後
- 事実と推測が混ざる:1文ごとに「見た・した・聞いたか」を確かめ、「思った」ことは③から外す。外した推測が背景に当たるなら、事実として確かめられる形にして④に回す
- 書く時間が取れない:師長やリーダーに、書く時間の確保を相談する。報告書の作成が時間外になる場合の考え方は、看護師の残業代が出ないときで整理しています
よくある質問
Q. インシデントレポートは誰が書きますか?当事者でなくても書くのですか?
A. 誰が書くかは施設の規定によります。日本医療機能評価機構の2024年の集計表(YH-27)では、発見者が「当事者本人」の報告は42.7%で、残りの57.3%は同職種者・他職種者・患者さんなど、当事者以外が見つけたものでした。見つけた側として書く場面もあるので、リーダーに「誰が書く様式か」を確認してください。
Q. 患者さんに影響が出なかったときも、書く必要がありますか?
A. 患者さんに実施される前に気づいた事例も、全国の報告事業では報告されています。2025年4〜12月の事例情報8,474件のうち、「誤りがあったが、患者に実施されなかった」事例は3,189件(37.6%)でした。ただし、報告の対象範囲は施設の指針で決まっているので、勤務先の基準を確認してください。
Q. インシデントで一番多いのは何ですか?
A. 日本医療機能評価機構の事業に2025年に報告されたヒヤリ・ハットの事例情報14,940件を事例の概要別に見ると、薬剤が5,326件(35.6%)、療養上の世話が3,750件(25.1%)、ドレーン・チューブが1,724件(11.5%)の順でした。ただし、これは報告された件数の内訳で、現場で起きた件数の割合ではありません。
Q. 氏名は書くのですか?
A. 全国の報告項目は、患者さんの年齢・性別・疾患名と、職員の職種・経験年数・配属期間を聞く形で、氏名の欄はありません。院内の様式は施設ごとに違うので、氏名やイニシャルの扱いは勤務先の決まりに従ってください。
Q. 書いた報告書で、自分の評価が下がりませんか?
A. 厚生労働省の通知上、報告書は事例を集めて改善策につなげるための材料で、個人を採点する書類ではありません。ただし運用は職場で違い、報告したことで個人だけが責められる職場もあります。その状態が続くなら、体制の問題です。報告のしやすさそのものは外から見えにくい部分ですが、人員配置・離職率・夜勤の負荷など、公的資料で確かめられる指標の見方は看護師のブラック病院の見分け方で整理しています。
人員配置や夜勤の負荷を、条件から比べておく
報告のしやすさは求人票だけでは分かりにくい部分です。まだ転職するか決めていなくても、確認できる条件を比べておくと判断しやすくなります。
まとめ
- 報告書は、評価ではなく収集のための書類:通知は、事例を集めて分析し、背景要因と根本原因から改善策を立てることを求めています。通知は事故の報告を「診療録・看護記録等に基づき作成する」としています。
- 5つの欄を埋める:基本情報・影響の程度・事実・発生要因(行為と背景)・再発防止策。事実には評価と推測を入れない
- 確認の抜けだけで止めない:2024年は確認に関する要因が66.9%で選ばれていますが、背景を書くほど、再発防止策が具体的になります
- 書く前に、報告が先:患者さんの安全確保と口頭の報告が終わってから書く
状況に合わせて、次の記事も参考にしてください。
- ミスが怖い気持ちから整理したい → 新人看護師の「ミスが怖い」を数字で解きほぐす
- 責任や賠償保険の仕組みを知りたい → 看護師がミスをしたときの責任
- 自分が針刺し・切創のけがをした → 針刺し事故の報告と労災の手続き
- 報告書の作成が時間外になる → 看護師の残業代が出ないとき
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