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産婦人科看護師が辞めたいと感じる理由と、経験を活かす次のキャリア

ナースの休憩室 編集部2026年9月20日 更新15分で読めます
目次

「また今夜も呼ばれるかもしれない。でも、いつ呼ばれるかが分からない」——そんな不安を抱えながら、仮眠室で目を閉じたことはありますか。

産婦人科看護師が辞めたいと感じる主な原因は、分娩の予測不能性による夜勤負荷・死産や流産のグリーフケアの精神的重圧・少子化による産科縮小の将来不安の3つです。

そして将来不安については、先に結論をお伝えします。縮小しているのは「分娩を扱う現場」であって、「女性のからだを診る現場」ではありません。 厚生労働省の医療施設調査で、この3年間に産科の診療所は2.8%減、産婦人科は1.5%減となる一方、婦人科の診療所は3.8%増えています。産科を離れることは、キャリアを捨てることとイコールではないのです。

この記事では、辞めたさの正体を切り分ける方法と、産科の中で環境を変える選択肢・他科へ移る選択肢を、それぞれ面接で確認する質問文まで含めてまとめます。


産婦人科看護師が辞めたいと感じるのは珍しくない

深夜2時の緊急帝王切開コール、泣き崩れるお母さんの横で感情を押し殺してそっと寄り添う時間、次の分娩がいつ始まるか分からない緊張感——産婦人科の夜勤には、他の診療科とは異なる種類の過酷さがあります。「生命の誕生に携われる仕事だから頑張れる」と思ってきた。でも、心と体がもう限界に近い——そんな状態でこの記事にたどり着いた方もいると思います。

まず知っておきたいのは、あなたと同じ気持ちを持っている看護師が、数多くいるという事実です。

約8割の看護師が「辞めたい」と思いながら働いている79.2%

日本医療労働組合連合会 看護職員の労働実態調査(2022年)

日本医療労働組合連合会の「2022年 看護職員の労働実態調査」によると、看護師全体の79.2%が「仕事を辞めたい」と思いながら働いています(いつも思う24.0%+ときどき思う55.2%)。約8割が、同じような感情を抱えているのです。

産婦人科は、看護師の中でも特に精神的・身体的負荷が高い部門のひとつです。また、日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」によると、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%です。毎年、一定数の看護師が職場を離れているという現実があります。

「辞めたいと思うのは自分だけ」「弱いから耐えられない」と、自分を責めないでください。産婦人科という環境の構造的な負荷が、こうした感情を生み出しているのです。


産婦人科看護師が辞めたくなる4つの原因

看護師全体に共通する悩みに加えて、産婦人科ならではの4つの要因があります。

分娩の予測不能性と夜勤の過酷さ

産科の現場では、分娩の多くが夜勤帯(夜間・深夜)に発生するとされています。産科夜勤は「分娩がいつ始まるか分からない」状態で過ごすことがほぼ日常です。

日本医療労働組合連合会の2022年調査では、「夜勤がつらい」を辞めたい理由に挙げた看護師は23.6%でした。産科では、分娩が重なる可能性がある分、この負担がさらに増幅されます。

少人数の夜勤体制の中、複数の分娩が同時進行する状況になれば、物理的に手が足りなくなることもあります。「いつ呼ばれるか分からない」という状態が慢性的に続くことで、休息をとっていてもなかなか疲れが回復しない、という悪循環に陥りやすいのです。

死産・流産のグリーフケアによる精神的消耗

産婦人科では、喜びの場面だけでなく、流産・死産という悲しい別れの場面にも立ち会います。

厚生労働省の調査研究(令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「流産や死産を経験した女性に対する心理社会的支援に関する調査研究」)では、当事者の悲嘆がどれだけ長く続くかが数字で示されています。

流産・死産を経験した女性が「辛さ」を感じていた割合割合
直後93.0%
6か月後51.2%
1年経って以降〜現在32.2%
(最も辛かった時期に日常生活への支障があった)67.8%

出典: 厚生労働省 令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「流産や死産を経験した女性に対する心理社会的支援に関する調査研究」(令和3年度「産科医療機関スタッフのための 流産・死産・人工妊娠中絶を経験した女性等への支援の手引き」に掲載)

注目したいのは、1年経ってもなお3人に1人が辛さを抱えているという点です。当事者ですら1年かかる出来事に、あなたは何度も立ち会っている。 そのご家族に寄り添うのが産婦人科看護師の仕事ですが、ケアを提供する側にも同じ場面が繰り返し積み重なります。「もう慣れたはず」と感じないことは異常ではなく、むしろ数字が示す自然な経過に近いのです。

さらに産婦人科という病棟では、「命の誕生」と「命の喪失」が同じ空間・同じ時間軸の中で起きます。隣の分娩室から赤ちゃんの泣き声が聞こえる中で、死産の告知を受けたお母さんの傍らにいる——そうした場面は、心が強い人でも消耗します。グリーフケアの重圧は、産婦人科看護師に特有の精神的負荷です。

助産師との役割分担の曖昧さ

産婦人科では、分娩介助は助産師のみが行える業務です。看護師は分娩の直接介助ができず、補助的な役割にとどまることになります。

「産婦人科で働いているのに、自分の看護は何なのだろう」というアイデンティティの揺らぎを感じている方も少なくありません。助産師と看護師の役割が明確に分かれているようで、実際の現場では境界が曖昧になりやすく、人間関係のストレスに発展することもあります。

日本医療労働組合連合会の2022年調査では、「職場の人間関係」を辞めたい理由に挙げた看護師は20.1%でした。職種間の役割の違いが、日常の関係性に影響を及ぼすことも、産科ならではの課題です。

少子化による産科縮小の将来不安

厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)」によると、年間出生数は686,061人で過去最少、合計特殊出生率は1.15で過去最低。前年の1.20から低下し、ともに9年連続の低下です。

2024年の年間出生数(過去最少・9年連続減)686,061人

厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)」(2024年)

ただし、「出生数が減る=産婦人科看護師の働き先が消える」ではありません。実際に施設数がどう動いているかを見てください。

診療科(一般診療所)令和5年(2023)令和2年(2020)増減
婦人科1,908 施設1,839 施設+69(+3.8%)
産婦人科2,784 施設2,826 施設−42(−1.5%)
産科308 施設317 施設−9(−2.8%)
(参考)一般診療所 全体104,894 施設102,612 施設+2,282(+2.2%)

出典: 厚生労働省「令和5年(2023)医療施設(静態・動態)調査 結果の概況」表6(各年10月1日現在)

減っているのは分娩を扱う側だけです。 分娩を扱わない婦人科は3年で3.8%増え、診療所全体の伸び(2.2%)を上回っています。出生数は減っていても、月経困難症・更年期・不妊・がん検診といった女性のからだに関わる医療の需要は減っていないからです。

これは将来不安の中身を変える数字です。あなたが心配しているのがおそらく「産科がなくなったら働き場所がない」ということなら、実際に起きているのは分娩からの移動であって、領域そのものの消滅ではありません。産科の集約化が進むのは事実ですが、その隣で婦人科という受け皿が増えている。次の章で挙げる「婦人科外来へ移る」という選択肢は、感覚的な提案ではなく、施設数の実データに裏づけられた進路です。

産婦人科では、夜勤の負担(辞めたい理由の23.6%)がとりわけ増幅されます。また職場の人間関係(同20.1%)も、助産師・看護師の役割分担の曖昧さから生じやすい環境です。


限界に近づいているサインをチェック

以下は、あくまで「気づき」のためのリストです。診断ではありません。当てはまるものが多いと感じたら、まずは立ち止まって現在の状況を振り返ってみてください。

当てはまるものが多い場合は、現在の環境を見直す一つの材料として受け止めてみてください。今すぐ転職しなければならないわけではありませんが、「このままでいいか」を一度考えることは大切です。


辞めたいと感じたときの3つの対処法

1. 辛さの根本を言語化してみる

「辞めたい」という気持ちの奥にある原因を、できるだけ具体的に言葉にしてみてください。

  • 夜勤の身体的負荷が限界なのか
  • グリーフケアの精神的消耗が積み重なっているのか
  • 役割の曖昧さや人間関係が原因なのか
  • 少子化による将来不安が大きいのか

原因によって、次のアクションが変わります。「産婦人科そのものが嫌なのか」「今の職場環境が合わないのか」を区別することが、最初のステップです。

⚠️ つまずきやすい落とし穴: 「グリーフケアが辛い」のに「夜勤が原因」と思い込んで職場だけ変えるケース

「夜勤が減れば楽になる」と思って産科クリニックへ移ったものの、死産・流産の場面は件数が少ないだけで引き続き起きます。「また同じ辛さを感じた」と気づいたとき、すでに転職してしまっているために身動きが取りにくくなります。辛さの根本が「死産に立ち会うこと自体」にある場合は、産科から離れることを選択肢に入れる必要があります。一方で「立ち会うこと自体は苦しくないが、心理的サポートを受けながらやりたい」という場合は、グリーフケアの研修制度や定期カウンセリング体制がある施設を選ぶことで継続できるケースもあります。転職前に、自分がどちらのタイプかを整理しておくことが重要です。

2. 産科の中で環境を変える

産婦人科・産科という領域を離れなくても、働き方を変えられる選択肢があります。

  • 産科クリニック(クリニック分娩): 件数が病院より少なく、夜勤の負荷が低下しやすい
  • 産後ケア施設・マタニティホテル: 退院後の母子をサポートする施設。緊急対応が少なく、日勤中心が多い
  • 婦人科外来: 分娩対応がなく、外来診療に集中できる。同じ病院内での異動が可能なケースもある

産科の経験や知識を活かしながら、身体的・精神的負荷を下げる働き方に移行することが可能です。

⚠️ つまずきやすい落とし穴: 産科クリニックへ移ったら、夜勤密度が病院より高かったケース

「病院より規模が小さいから楽なはず」と思って産科クリニックへ転職すると、スタッフ数が少ない分1人当たりの夜勤担当件数が集中し、結果として病院よりも体力的にきつくなることがあります。病院であれば複数の助産師・看護師がシフトに入るため分散しますが、クリニックは少人数体制のため「一晩に複数分娩が重なったとき」の対応が過酷になりやすいです。転職前に「1日の平均分娩件数」「夜勤1回あたりの担当者数」「オンコール体制の有無」を必ず確認し、体制が整っているかを見極めることが重要です。

3. 産科経験を活かして他科へ転職する

産婦人科で培ったスキルは、他の診療科でも高く評価されます。

  • 小児科・NICU: 新生児ケアの経験・母子への関わり方が直結する
  • 保育園・企業内保育所: 乳幼児の健康管理・保護者への対応力が活きる
  • 一般病棟: 急変対応・家族支援・コミュニケーション力が評価される
  • 訪問看護: 褥婦や産後の女性ケアの視点を持った看護師として重宝される

看護師全体の平均年収は524.7万円(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」・2025年)。同じ調査で看護師の月額給与は365,900円、一般労働者(産業計・男女計)は340,600円なので、看護職は全産業の水準を約7%上回っています。産科で培った専門性は、転職市場でもしっかり評価されます。

転職先の選び方で迷ったときは看護師のうつ・メンタル不調と転職の考え方看護師の転職の流れと手順を、病院内での異動や他院への移籍を考えるなら病院の離職率データで見る「辞める人が多い職場」もあわせて参考にしてみてください。小児科への転科を検討している方は小児科看護師が辞めたいと感じる理由に、子どもと関わる現場ならではの負荷をまとめています。

⚠️ つまずきやすい落とし穴: NICUへ転科したが、グリーフケアの負荷が産科より大きかったケース

「赤ちゃんとポジティブに関われる職場へ移りたい」という動機でNICUを選ぶ方がいますが、NICUでも超低出生体重児の長期入院・新生児死亡に立ち会う場面があります。産科での死産・流産とは異なる形で、「生まれたいのちが力尽きる場面」に向き合うことになります。「命の誕生だけに関わりたい」という動機であれば、産後ケア施設や乳幼児健診・保育園看護師など、緊急・終末期対応が少ない職場を選ぶ方が長く働き続けられる可能性があります。転職の目的(何から離れたいのか・何を求めているのか)を言語化してから応募先を絞ることをおすすめします。

産婦人科の経験、次のステップでも活かせます

母子ケア・急変対応・家族支援のスキルを求めている職場は多くあります。まずは選択肢を見てみませんか。


失敗例・よくあるNG

産婦人科看護師が「辞めたい」と感じたときに陥りやすい失敗パターンを3つ紹介します。

NG①:「助産師と関係がうまくいかない」という理由で転職したが、転職先でも職種間の軋轢が続いた

産科特有の「看護師と助産師の役割の曖昧さ」から逃れたくて一般病棟へ転職したものの、今度は「医師と看護師の関係」や「病棟内の先輩後輩の縦社会」に悩む——という声があります。人間関係の摩擦は職種や職場が変わっても形を変えて生じます。転職前に「自分は役割の曖昧さが嫌なのか」「特定の人物との関係が辛いのか」を区別することが重要です。後者であれば、同じ病院内での異動でも改善できる可能性があります。

NG②:グリーフケアの消耗を「慣れれば大丈夫」と放置し、感情が麻痺してしまった

「死産の場面にも何度か立ち会えば慣れる」と自分に言い聞かせ、辛さを感じなくなってきた頃に「ものすごく疲れているのに何も感じない」という状態になった、という声があります。前述の調査では、当事者ですら1年経って3割が辛さを抱えています。それに繰り返し立ち会う側が「何も感じなくなった」としたら、それを回復のしるしと決めつけないでおきたいところです。産科のグリーフケアに特化したデブリーフィング(経験の振り返り)やスーパービジョンの機会が職場にあるかを確認し、無い場合は院外の看護師向けメンタルサポートや産業カウンセラーに話してみることも選択肢の一つです。職場を選ぶ基準として「振り返りの場があるか」を面接で聞いておくと、次の職場での消耗を減らせます。

NG③:少子化不安で焦って転職し、「産科経験がない職場」でやり直しになった

「産科が縮小したら働き場所がなくなる」という将来不安から急いで転職を決めたものの、選んだ転職先が自分のスキルとかみ合わず、実質的に新人に近い状態からのスタートになったケースがあります。産科経験は他科でも十分に評価されますが、応募先が何のスキルを求めているかを確認せずに動くとミスマッチになりやすいです。転職エージェントを使い、「産科経験のどの部分が評価されるか」を整理してから求人を絞ることをおすすめします。

よくある疑問 Q&A

Q. 産婦人科の経験は他の科で評価されますか?

A. はい、十分に評価されます。産婦人科での経験で身につく「急変への対応力」「家族(パートナー・祖父母)への説明・支援」「新生児・乳幼児ケア」「グリーフケアの姿勢」は、小児科・NICU・訪問看護・一般病棟など幅広い職場で活きます。「産科しかできない」と思わず、自分のスキルの幅広さに自信を持ってください。

Q. 少子化で産科看護師の需要は減っていますか?

A. 分娩を扱う施設が減っているのは事実です。厚生労働省の医療施設調査では、産科の診療所は3年間で2.8%減、産婦人科は1.5%減でした。ただし同じ3年間で、婦人科の診療所は3.8%増えています(診療所全体の伸びは2.2%)。減っているのは「分娩の現場」であって、「女性のからだを診る現場」ではありません。月経困難症・更年期・不妊・がん検診といった需要は出生数と連動しないためです。産後ケア施設の整備も進んでおり、「産科の経験が使えなくなる」という心配は、少なくとも施設数のデータからは裏づけられません。

Q. 産婦人科を辞めたいと思うのは「命の現場に向いていない」ということですか?

A. そうではありません。辞めたいという気持ちは、「向いていない」のではなく「消耗している」サインです。むしろ、真剣にケアに向き合ってきたからこそ精神的・身体的に消耗するのであり、それは「向いている人」がたどりやすい道でもあります。今の環境が合わないと感じることと、看護師として母子に関わること自体が嫌いなこととは、別の話です。

まずは選択肢を広げることから始めてみませんか

産婦人科の経験は、多くの職場で求められています。今すぐ転職しなくてもいい。まず情報を集めるだけでも、気持ちが楽になることがあります。


まとめ:産婦人科の経験は「あなたの強み」です

産婦人科看護師が「辞めたい」と感じる背景には、次の4つの構造的な要因があります。

  • 分娩の予測不能性: 夜勤帯に集中しやすい分娩の負荷
  • グリーフケアの精神的消耗: 死産・流産を経験した女性の93.0%が直後に、32.2%は1年経っても辛さを感じる(厚労省 令和2年度調査研究)。当事者が1年かかる出来事に、あなたは繰り返し立ち会っている
  • 役割の曖昧さ: 助産師との分業が人間関係の複雑さにつながる
  • 少子化の将来不安: 2024年出生数686,061人(過去最少)、合計特殊出生率1.15(過去最低)。ただし縮小しているのは分娩を扱う現場で、婦人科の診療所は3年で3.8%増えている

辞めたいという気持ちは、あなたが弱いからではありません。産婦人科という環境の特殊性が生み出す、ごく自然な反応です。

あなたの状況に合わせて、次のステップを探してみてください。

悩みの種類別の対処法は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法まとめにまとめています。

参考文献

  1. 厚生労働省「令和5年(2023)医療施設(静態・動態)調査 結果の概況」表62026-09-08 閲覧)
  2. 厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」2026-09-08 閲覧)
  3. 厚生労働省 令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「流産や死産を経験した女性に対する心理社会的支援に関する調査研究」(令和3年度「産科医療機関スタッフのための支援の手引き」所収)2026-09-08 閲覧)
  4. 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」報告集(回答35,933人)2026-09-08 閲覧)
  5. 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果(2024年度データ・2026年3月公表)2026-09-07 閲覧)
  6. 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」2026-09-08 閲覧)