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小児科看護師が辞めたいと感じる理由と、経験を活かす転職の選び方

ナースの休憩室 編集部2026年9月20日 更新13分で読めます
目次

「点滴の針を刺すたびに泣き叫ぶ子どもを、必死に押さえる日々」

「ご家族から『もっと丁寧にして』と言われるたびに、胸が詰まる」

「子どもが好きで選んだはずの小児科なのに、出勤するのがつらい」

そう感じている方は、決して少なくありません。辞めたいと感じるのは弱さではなく、小児科という環境の構造的な負荷が積み重なった結果です。

小児科看護師が辞めたいと感じる主な原因は、保護者対応のストレス・子どもの急変や薬用量ミスへの恐怖・少子化による将来不安の3つです。看護師全体の79.2%が辞めたいと思いながら働いており(日本医労連 2022年)、小児科特有の感情労働が消耗を加速させます。

この記事では、辞めたいと感じる原因を公的データで整理したうえで、小児科経験を活かせる具体的な対処法と転職先をお伝えします。


小児科看護師が辞めたいと感じるのは珍しくない

まず知ってほしいのは、辞めたいと感じているのはあなただけではないという事実です。

看護師の約8割が「辞めたい」と思いながら働いている79.2%

日本医療労働組合連合会 看護職員の労働実態調査(2022年)

日本医療労働組合連合会の「2022年 看護職員の労働実態調査」によると、看護師全体の79.2%が「仕事を辞めたい」と思いながら働いています(いつも思う24.0%+ときどき思う55.2%)。約8割が、同じような気持ちを抱えているのです。

日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」では、2024年度の正規雇用看護職員の離職率は11.0%です。毎年、一定数の看護師が職場を離れている現実があり、規模別・地域別の内訳は病院看護師の離職率データにまとめています。

小児科には、一般的な看護師が感じる悩みに加えて、固有の構造的な負荷があります。「自分が弱いから耐えられないんだ」と責める必要はありません。辞めたいと感じるのは、環境の問題です。


小児科看護師が辞めたくなる4つの原因

保護者対応のストレス

小児科の看護では、子ども本人だけでなく、保護者との関わりが大きな比重を占めます。先行研究では、小児看護のストレスとして「家族(保護者)との関わり」が主要なストレス源の一つとして挙げられています(日本小児看護学会誌 2009年)。

子どもの病状への不安から、感情的になる保護者はどうしても出てきます。「もっとちゃんと見てください」「なぜ泣かせるんですか」——そうした言葉の重さは、小児科で働く看護師にしかわからない辛さです。

日本医療労働組合連合会の2022年調査では、「職場の人間関係」を辞めたい理由に挙げた看護師は20.1%(5人に1人)でした。小児科では、この「人間関係」のストレスが保護者との関係によってさらに増幅されやすい環境です。

子どもの急変と薬用量ミスへの恐怖

小児看護の難しさのひとつに、体重あたりの薬用量計算があります。成人と異なり、体重ごとに投与量を計算し直す必要があるため、ダブルチェックの負担が大きくなります。

「計算を間違えたら」という恐怖は、仕事中の緊張感を常に高いところに保ちます。日本医療労働組合連合会の2022年調査によると、「医療・看護事故が続く大きな原因」(上位2つ選択)の1位は「慢性的な人手不足による医療現場の忙しさ」で86.3%。2位の「看護の知識や技術の未熟さ」37.0%を大きく引き離しています。ダブルチェックの相手を探しても誰も手が空いていない——その状況こそが、現場の看護職員自身が挙げる事故の最大要因です。

また、子どもの急変は予兆が読みにくく、一般病棟とは異なる緊張感が日常的に続きます。

子どもの苦痛に向き合う感情労働

痛みを言葉で伝えられない子どもの泣き声、処置のたびに暴れる姿——そうした場面に毎日向き合い続けることは、深い消耗をもたらします。

「子どもが好きだから」という強い動機で小児科を選んだからこそ、苦しむ姿を見るのがたまらなくつらい。この感情的な消耗は、感受性の高い看護師ほど大きくなりやすい傾向があります。感情労働の重さは小児科だけの問題ではなく、精神科看護師が辞めたいと感じたときの対処法でも同じ構造が数字に表れています。

看取りを経験したNICU看護師を対象にした研究では、9.8%が二次的外傷性ストレス(STS)の高リスク群に該当したと報告されています(「看取り体験がNICU看護師に与える二次的外傷性ストレス」小児保健研究79巻4号、2020年)。子どもの苦痛や死に向き合い続ける感情労働の負荷は、測定できる形で現れているということです。

少子化による将来不安

2024年の出生数は686,173人(厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)」2025年9月公表)で、過去最少を更新しました。小児科病棟の統廃合や縮小が一部で進んでおり、「このまま小児科にいて大丈夫だろうか」という漠然とした不安を感じる看護師が増えています。

将来のキャリアへの不安は、日々の仕事への意欲にも影響します。「頑張っても、この職場が数年後になくなるかもしれない」という感覚は、モチベーションを維持することを難しくします。

看護師が仕事を辞めたい主な理由(3つまで選択)

人手不足で仕事がきつい
58.1%
賃金が安い
42.6%
思うように休暇が取れない
32.6%
夜勤がつらい
23.6%
思うような看護ができず達成感がない
23.1%
職場の人間関係
20.1%
家族に負担をかける
13.3%

出典: 日本医療労働組合連合会「2022年 看護職員の労働実態調査」(回答35,933人)【問39】(2022年)

辞めたい理由の6番目「職場の人間関係」(20.1%)は、小児科では保護者との関係という形で増幅されます。同じ調査では、この3年間に仕事上のミスやニアミスを起こしたことが「ある」と答えた看護職員が86.0%にのぼり、20〜24歳では92.8%でした。体重あたりの薬用量計算を毎回やり直す小児科で「間違えたら」という恐怖が消えないのは、あなただけの問題ではありません。これは個人の資質ではなく、小児科という職場の構造的な特性です。


「向いていないのかも」と感じたら確認したいサイン

「辞めたい」という気持ちが一時的なものか、それとも環境の見直しが必要なサインなのか——以下のチェックリストで確認してみてください。

このチェックリストは気づきの目安であり、医学的な診断ではありません。当てはまる数で状態が決まるものでもありません。精神的な不調が続く場合は、医療機関に相談することも選択肢の一つです。

気になる項目があった方は、現在の環境を見直すことを具体的に考え始めるタイミングかもしれません。「もう少し頑張れば変わるかも」と先送りしてきた気持ちと向き合う機会として、活用してみてください。


辞めたいと感じたときの3つの対処法

1. 「何が辛いか」を分解して整理する

辞めたいという気持ちの根本にある原因を明確にすることが、最初のステップです。保護者対応が主な原因なのか、急変や薬用量ミスへの恐怖なのか、子どもの苦しむ姿への感情的消耗なのか、それとも少子化への将来不安なのか——原因によって、取るべき行動は大きく変わります。

メンタル面で限界に近づいている場合は、転職より先に心身の回復を優先することが大切です。うつ・メンタル不調を抱える看護師の転職もあわせて読んでみてください。

⚠️ 原因分解の落とし穴:二次的外傷性ストレス(STS)を「自分が弱いから」と誤解する

保護者対応や急変への恐怖より先に、「子どもの苦しむ姿を毎日見続けること」による消耗が限界に達しているケースがあります。これは二次的外傷性ストレス(STS)と呼ばれ、他者の苦痛や外傷体験に繰り返しさらされることで生じる心理的ダメージです。看取りを経験したNICU看護師の9.8%が高リスク群に該当したという研究もあります(小児保健研究79巻4号、2020年)。

「二次的外傷性ストレス」という言葉を知っておくと、相談の場で自分の状態を伝えやすくなります。

こうした状態が続くとき、「メンタルが弱いから」と一人で抱え込む必要はありません。まずは職場の産業医・臨床心理士、または外部の相談窓口(こころの耳・厚生労働省)に連絡することをおすすめします。転職の検討はその後でも遅くありません。

2. 小児科の中で環境を変える

同じ小児科でも、NICU・小児外来・乳児健診・保育園看護師と、業務内容は大きく異なります。病棟からクリニックの小児科に転職することで、保護者対応の質や頻度が変わることもあります。

PICUやNICUなど集中治療領域への異動を打診されている場合は、ICU看護師を辞めたいと感じたらで集中治療の負荷の実態も確認しておくと判断しやすくなります。大規模病院の小児科はチーム体制が充実しており、1人への負担が分散される環境が整っている場合が多いです。「今の小児科が辛い」のであって、「小児科という仕事が嫌いになった」わけではないと感じるなら、まず環境を変えることを考えてみてください。

⚠️ 環境変更の落とし穴:大規模病院の小児科に移ったら急変頻度が上がり逆に消耗した

「今の小規模クリニックより大病院のほうがチームでサポートし合える」と考えて転職した結果、三次救急対応・PICU(小児集中治療室)・超低出生体重児ケアなど、急変リスクの高い業務が増えて消耗が深まるケースがあります。大規模病院は教育体制・人員数・設備が充実している反面、扱う重症度も高くなります。「チーム体制を求めているのか」「重症度を下げたいのか」を明確に区別してから転職先を選ぶことが大切です。転職エージェントに「急変への恐怖が主な退職理由」と正直に伝えると、急変頻度の少ない部門(外来・健診・保育園)を優先して提案してもらいやすくなります。

3. 小児科経験を活かせる他領域への転職

小児科での経験は、他の診療科でも高く評価されます。具体的な選択肢を見てみましょう。

  • 保育園看護師: 子どもとの関わりを続けながら、医療処置の負担が大幅に軽減されます
  • 産科・産婦人科: 母子ケアのスキルが直接活き、小児科との親和性が高い職場です
  • 一般病棟(成人): 小児科で培った観察力・コミュニケーション力・細かな変化への気づきは高く評価されます
  • 企業内保育所・学校保健: 子どもに関わりながら夜勤なしで働けます

看護師の平均年収は524.7万円(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」2025年)で、全給与所得者の平均給与478万円(国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」2024年分)の約1.1倍、金額にして約47万円上回ります。転職先の選択肢を広げることで、条件を下げずに環境を改善できる可能性があります。

転職の全体的な流れを確認したい方は、看護師の転職の流れを参考にしてみてください。

⚠️ 転職先選びの落とし穴:「産科なら小児科と似ているから大丈夫」と準備不足で入職する

小児科から産科・産婦人科への転職は親和性が高いように見えますが、業務の重点が大きく異なります。産科では正常分娩の介助・授乳支援・褥婦のメンタルケアが中心であり、NICUや小児病棟で培った急変対応力・薬用量計算の細かさとは別のスキルが求められます。「子どもに関わる」という共通点だけで選ぶと、入職後に「想定と違う」と感じやすくなります。転職前に以下を確認しておくと安心です。

  • 配属予定の部署(産科病棟・外来・周産期集中治療室など)はどこか
  • 分娩介助の研修期間と到達目標はどう設定されているか
  • 小児科経験者の採用実績・定着状況はどうか

産科の現場を経験したことがない場合は、見学や転職エージェントを通じた現場情報の収集を事前に行うことをおすすめします。

小児科の経験、次のステップでも活かせます

保育園看護師・産科・一般病棟など、小児科経験者を求めている職場は多くあります。まずは選択肢を見てみるだけでも気持ちが楽になります。


よくある疑問 Q&A

Q. 小児科の経験しかなくても成人の病棟で働けますか?

A. 働けるケースは多くあります。小児科で培った「バイタルサインの微細な変化を読み取る力」「言葉にできない訴えを察する観察力」は、成人の患者さんにも通用するスキルです。復帰研修制度のある病院もあるので、転職エージェントに相談してみてください。

Q. 少子化で小児科看護師の需要は減っていますか?

A. 病棟の統廃合は一部で進んでいますが、小児科経験者のスキル自体への需要は減っていません。保育園看護師・学校保健・産科・NICUなど、子どもに関わる仕事の選択肢は幅広く存在します。2024年の出生数は686,173人(厚生労働省「人口動態統計(確定数)」2024年)で過去最少ですが、「少数の子どもにより手厚いケアを」という方向で看護の質が求められています。

Q. 小児科を辞めたいと思うのは「子ども好きじゃない」ということですか?

A. まったくそんなことはありません。「子どもが好きだからこそ、苦しむ姿を見るのがつらい」というのは、むしろ感受性の高さの表れです。辞めたいと感じるのは子どもへの愛情の問題ではなく、環境の負荷が自分の限界を超えている状態です。気持ちが薄れてきたように感じても、それは消耗のサインです。


小児科看護師が転職・異動でやりがちな失敗例

小児科固有の状況でよく起きる3つのNGパターンをまとめます。同じ失敗を避けるための確認に使ってください。

NG1:保護者クレームへの疲弊をそのままにして「慣れるしかない」と続ける

保護者対応のストレスは、「対応スキルを磨けばいつか慣れる」という性質のものではありません。先行研究でも、小児看護師のストレスとして保護者との関わりが主要因として繰り返し挙げられています(日本小児看護学会誌 2009年)。クレーム対応の記録や振り返りを師長と一緒に行う仕組みがない職場では、個人が対応を丸ごと抱え込む構造が変わりません。「どの職場でも同じ」と思い込む前に、同じ小児科でも「クリニックか病棟か」「個室対応が多いか」「師長が介入する文化があるか」によって状況は大きく異なることを確認してみてください。

NG2:STS(二次的外傷性ストレス)の症状を無視して転職活動に入り、面接でうまく話せなくなる

子どもの苦痛体験への反復さらされにより生じるSTSは、集中力・判断力・感情の安定性にも影響します。心身が消耗した状態のまま転職活動に入ると、面接で「なぜ辞めたいのか」を整理して伝えることが難しくなり、「ネガティブな印象を与えてしまった」と感じて自信をさらに失うという悪循環が起きやすくなります。転職を考える前に、まず2〜4週間の有給取得・産業医面談・外部相談の利用などで心身を整える時間を取ることを優先してください。

NG3:少子化不安を理由に「小児科のスキルはもう使えない」と思い込み、選択肢を狭める

少子化による小児科病棟の統廃合が一部で報じられているため、「小児科経験に将来性がない」と早合点して転職先の選択肢を必要以上に狭めてしまうケースがあります。しかし、小児科で身につく「体重あたりの薬用量計算の正確さ」「非言語コミュニケーションの読み取り」「家族全体を視野に入れたケア」は、NICU・小児外来・保育園看護・産科・成人病棟のいずれでも通用する横断的スキルです。「小児科病棟が減る」ことと「小児科経験が活かせなくなる」ことは同じではありません。

まずは「どんな選択肢があるか」を知るだけでOK

小児科での経験は保育園・産科・一般病棟など多くの職場で活きます。転職のプロに相談することで、思っていなかった選択肢が見えることもあります。

まとめ:小児科の経験は「あなたの強み」です

この記事でお伝えしたかったことを3点にまとめます。

  • 小児科看護師が辞めたいと感じる背景には構造的な要因がある: 保護者対応・急変恐怖・感情労働・少子化不安は、個人の弱さではなく環境の特性です。看護師の79.2%が辞めたいと思いながら働いており、あなたが特別なわけではありません
  • 「辞める・異動する・環境を変える」の選択肢を冷静に整理することが第一歩: 何が辛いかを分解することで、取るべき行動が見えてきます。先送りせず、向き合う機会を作ってみてください
  • 小児科経験は観察力・コミュニケーション力・母子ケアのスキルとして幅広く活きる: 保育園看護師・産科・一般病棟など、小児科経験者を必要としている職場は多く存在します

「今の状況を変えたい」と思ったとき、まず「どんな選択肢があるのか」を知ることから始めてみてください。

次のステップへ

悩みの種類別の対処法は看護師が「辞めたい」と感じたときの対処法まとめにまとめています。

参考文献

  1. 日本看護協会「2025年 病院看護実態調査」結果(2024年度データ、2026年3月公表)2026-09-08 閲覧)
  2. 2022年 看護職員の労働実態調査|日本医療労働組合連合会(2023年5月発表、回答35,933人)2026-09-08 閲覧)
  3. 令和7年賃金構造基本統計調査|厚生労働省(2025年、2026年3月公表)2026-09-08 閲覧)
  4. 令和6年分 民間給与実態統計調査|国税庁(2025年9月公表)2026-09-08 閲覧)
  5. 令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省(2025年9月公表)2026-09-08 閲覧)
  6. 「看取り体験がNICU看護師に与える二次的外傷性ストレス」小児保健研究 79巻4号 353-362(2020年)2026-09-08 閲覧)
  7. 小児看護領域で働く看護師のストレスに関する文献検討|日本小児看護学会誌 18巻1号(2009年)2026-09-08 閲覧)