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訪問看護ステーションを開業するには|法人・看護職員2.5人・指定申請の要件と、続いている事業所の実態

ナースひとやすみ 編集部約15分で読めます
目次

訪問看護ステーションの開業には、法人、看護職員の常勤換算2.5人以上、管理者、専用の事務室、介護保険の指定が要ります。

常勤換算は、看護職員の勤務時間の合計を、常勤職員の勤務時間で割った人数です。2.5人のうち1人は常勤で、管理者には、常勤で専従の保健師か看護師を置きます。介護保険の指定を受けると、別段の申出をしない限り、健康保険の指定訪問看護事業者の指定もあったものとみなされます。指定は6年ごとに更新します。

開業は増えています。全国訪問看護事業協会の調査では、2025年度(令和7年度)の1年間に2,428か所が新しく開設されました。一方で、同じ年度に960か所が廃止しています。

看護師が独立して自分のステーションを持つことを考えはじめると、まず気になるのは、自分ひとりで始められるのか、始めたあとに続けられるのか、ではないでしょうか。この記事では、始められるかを2026年10月時点の条文で、続けられるかの手がかりを公的調査の数字で確かめます。そのうえで、開業までの手順と、つまずきやすい点を整理します。法人の形・資金調達・報酬の請求といった個別の経営判断は、自治体の担当窓口や税理士などの専門家に相談してください。

開業は増えているが、廃止もある

訪問看護ステーションの数は、2020年から2024年の4年で約1.5倍になりました。

※ 差が見えるようグラフの起点は0ではありません。4年間の増加は約1.5倍(12,393→18,042か所)で、棒の長さの比ほどは変わっていません。

開業が増える一方で、廃止もありました。2025年度(令和7年度)の1年間に開設・廃止した訪問看護ステーションの数は新規2,428か所・廃止960か所

全国訪問看護事業協会「令和8年度 訪問看護ステーション数 調査結果」

開設と廃止は別々に数えた件数です。開設した事業所の何割が続かなかったかを示す数字ではありません。

  • 増えているのは事実です。 厚生労働省の調査では、2024年10月時点で18,042か所、前年から1,619か所(9.9%)増えました。全国訪問看護事業協会の調査では、2026年4月1日現在の稼働が20,051か所で、前年から1,297か所増えています(2つの調査は集計の定義と時点が違うので、数は一致しません)
  • やめる事業所もあります。 2025年度の廃止960か所は、年度初め(2025年4月)の稼働18,754か所の約5.1%にあたります(当サイト算出。分子には年度内に開設して廃止した分も含みます)。廃止のうち87か所は、開設したその年度のうちに廃止しています。開業した年度のうちにやめる事業所もあるので、運転資金は厚めに見ておきます(ステップ4)。廃止の理由(経営の行き詰まり・統合・移転など)は、この調査には載っていません
  • 地域によって、新規も廃止も多くなります。 全国訪問看護事業協会の同じ調査で、人口の多い都府県の例では、大阪府は新規410か所に対し廃止137か所、東京都は新規188か所に対し廃止83か所でした。件数は地域の規模にも比例するので、競合の強さまでは読めません。開業予定地の既存ステーションの数は、ステップ1で自分で調べます
  • 事業所の約3分の2は会社が運営しています。 厚生労働省「令和6(2024)年介護サービス施設・事業所調査の概況」では、開設主体の66.8%が営利法人(会社)で、医療法人18.2%、社団・財団法人5.3%、社会福祉法人4.5%と続きます(2024年10月時点の既存の事業所の構成)。看護師が自分で会社を立てて開業する形は、制度の上で特別なことではありません

開業に必要な要件|介護保険と健康保険で少し違う

訪問看護は、介護保険と医療保険(健康保険など)の両方から報酬が支払われるサービスです。基準もそれぞれの省令で定められていて、看護職員に数える職種と管理者の資格が少し違います。介護保険の人員基準は、省令に従って都道府県が条例で定めています(介護保険法 第74条)。指定都市・中核市で指定を受ける場合は、その市の基準も確認してください。

要件介護保険(指定居宅サービス等基準)健康保険(指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準)
申請者法人であること(病院・診療所が行う訪問看護を除く)地方公共団体・医療法人・社会福祉法人その他厚生労働大臣が定める者。介護保険の指定があれば、別段の申出をしない限り指定があったものとみなす
看護職員の人数保健師・看護師・准看護師が常勤換算2.5以上、うち1人は常勤保健師・助産師・看護師・准看護師の勤務延時間数÷常勤の勤務時間数が2.5以上、うち1人は常勤
リハビリ職理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は実情に応じた適当数同じ
管理者専従・常勤。保健師または看護師(やむを得ない理由がある場合を除く)。適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技能を有する者専従・常勤。保健師・助産師または看護師(同じく、やむを得ない理由がある場合を除く)。必要な知識及び技能を有する者
事務所必要な広さの専用の事務室と設備・備品。同じ敷地に他の事業所があれば専用の区画で足りる専用の事務室(他の事業の事業所を兼ねる場合は専用の区画)
指定都道府県知事(指定都市・中核市では市長)。6年ごとに更新厚生労働大臣

出典: 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第60〜62条、指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 第2〜4条、介護保険法 第70条・第70条の2・第74条、介護保険法施行規則 第126条の4の2、健康保険法 第88条・第89条(いずれもe-Gov法令検索、2026年10月2日確認)。指定権者の指定都市・中核市は全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーションを開設したい方」による

つまり、実務では次のようになります。

  • 1人では開業できません。 管理者の自分のほかにも看護職員が要ります。たとえば常勤2人(自分を含む)と、常勤の半分の時間働く非常勤1人(0.5人分)で2.5人になります。管理者の自分を人数に数えられるかは、勤務形態によるので窓口で確かめてください
  • 管理者になれるのは保健師か看護師です。 介護保険の基準では、准看護師は看護職員の人数には数えられますが、管理者にはなれません(やむを得ない理由がある場合を除く。どの場合がそれに当たるかは指定権者に確認します)。助産師は健康保険の基準では看護職員・管理者に数えられますが、介護保険の看護職員の範囲には入っていません
  • 管理者は原則として専従です。 管理上支障がなければ、そのステーションの他の職務(訪問に出るなど)を兼ねられます。他の事業所の職務を兼ねられる範囲には条文上の条件があるので、兼務の予定があれば指定権者に確認してください

数字で見る「続いている事業所」の収支差率と看護職員数

続いている事業所の収支差率は平均10.3%ですが、10%を超えるのは延べ訪問回数が月401回以上の区分だけです。以下は、厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査(回答した訪問看護事業所254か所。令和6年度決算)の数字です。

指標数値読み方
看護職員(常勤換算)1事業所あたり5.4人最低基準2.5人の約2倍。ただし平均なので、規模ごとの違いは下の表で見る
介護サービスの収入月347.6万円(2024年度決算を12で割った額)このうち給与費が月243.7万円で、収入の70.1%
収支差率10.3%(2023年度決算は11.9%)補助金を含まない税引前。1年で1.6ポイント下がった

出典: 厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」第6表

平均は、大きな事業所に引っ張られます。同じ調査を、1か月の延べ訪問回数で5つに分けると、次のようになります。

延べ訪問回数(1か月)回答数看護職員(常勤換算)収支差率
100回以下403.4人3.8%
101〜200回423.6人5.0%
201〜300回394.3人2.6%
301〜400回365.6人1.1%
401回以上977.6人13.7%

出典: 厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査結果」第75表(令和6年度決算)

  • 言えること: 平均すると黒字です。看護職員が3〜4人台の3つの区分(訪問300回以下)は、基準の2.5人より少し多い人数で続いていて、収支差率は2.6〜5.0%でした。人件費が収入の7割を占める事業なので、看護職員を採用できるか、辞めずに働き続けてもらえるかが、経営を左右しやすい構造です。当サイトの見方では、開業直後は訪問回数の少ない区分に近いと考えられるので、平均の10.3%より、小さい区分の数字のほうが参考になります
  • 言えないこと: これは調査に回答した、すでに続いている事業所の集計です。開業したばかりの事業所の収支が含まれているとは限らず、廃止した事業所の数字は含まれません。平均や区分の値は、黒字の事業所の割合でもありません。開業1年目に同じ収支になるとは読めません。区分ごとの回答数は36〜97か所と少なく、数か所の違いで値が動きます。また、この調査の収入は「介護サービスの収入」として集計されたものです

開業までの4ステップ

全国訪問看護事業協会の「訪問看護ステーションを開設したい方」の流れをもとに、条文の要件と合わせて整理しました。

ステップ1: 地域を調べ、自治体に事前相談する

開設予定地の高齢者数、既にある訪問看護ステーションの数、病院・診療所や居宅介護支援事業所の数を調べます。そのうえで、市町村の介護保険の担当と、指定権者(都道府県、または指定都市・中核市)の担当者に、開設の意向・場所・運営方針を説明し、指定申請の手続きを確かめます。事務所は「必要な広さの専用の事務室」と、訪問に必要な設備・備品(記録や請求のための機器を含む)が要るので、候補の物件の図面もこの段階で見てもらいます。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

事前相談の前に、事務所の賃貸契約や内装工事を進めてしまうのは避けてください。同じ敷地に他の事業所がある場合の扱いなど、設備の判断は指定権者の確認を経て決まります。契約してから「この間取りでは専用の事務室と認められない」と分かると、違約金や工事のやり直しが発生することがあります。賃貸借契約の解除条件は、契約前に確認してください。図面の段階で担当者に見てもらい、相談した日時・担当者名・指摘された点を記録しておくと、申請時の食い違いを防げます。

ステップ2: 法人をつくる

株式会社・合同会社・一般社団法人・NPO法人などを設立します。すでに法人がある場合は、定款の事業目的に訪問看護事業を加えます。設立登記の登録免許税は、株式会社が資本金の0.7%(最低15万円)、合同会社が資本金の0.7%(最低6万円)です(国税庁の案内)。一般社団法人・NPO法人などは設立の費用が別なので、法務局や専門家に確認してください。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

法人の形は、設立費用の安さだけで決めないでください。最低額は合同会社のほうが低いですが、資本金が約2,143万円を超えると、株式会社と合同会社はどちらも0.7%で同額です。また、定款の事業目的に訪問看護(介護保険法・健康保険法にもとづく事業)が入っていないと、指定申請の際に定款の変更から必要になることがあります。目的の書き方は、設立前に指定権者の担当者と、登記を依頼する専門家の両方に確かめておくと安全です。

ステップ3: 看護職員と管理者を確保する

常勤換算2.5以上の看護職員(うち1人は常勤)と、常勤で専従の管理者を確保します。自分が管理者になるなら、自分も看護職員の人数に数えられるかを、勤務形態とあわせて担当窓口に確認します。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

看護職員をちょうど2.5人でそろえて開業すると、開業直後に1人が退職したり、長く休んだりしたときに、すぐに基準を下回ります。人員の基準を満たせなくなると、指定権者の勧告や、指定の取消し・効力の停止の対象になりえます(介護保険法 第76条の2・第77条)。経営概況調査では、訪問回数が少ない区分でも看護職員は3.4〜3.6人で、基準より1人ほど多い人数でした。開業時点で基準より何人多く置けるか、1人辞めたときに何週間で補充できるかを、採用の計画に書いておいてください。

ステップ4: 指定を申請し、入金までの資金を確保する

指定権者に介護保険の指定を申請し、指定を受けてから事業を始めます。介護保険の指定を受ければ、別段の申出をしない限り、健康保険の指定もあったものとみなされます(健康保険法 第89条第2項)。申請に必要な書類や受付の日程、審査の期間は指定権者ごとに違うので、開業予定日から逆算して、事前相談の場で確認します。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

資金計画で見落としやすいのは、入金までの時間差です。訪問看護の報酬は、サービスを提供してすぐには入ってきません。日本政策金融公庫のサイトの解説では、売上の入金はサービス提供後2か月以上後になるとしています。全国訪問看護事業協会も、最初の収入は開設3か月後になるため、当面3〜5か月分の人件費を確保しておく必要があるとしています。看護職員の給与は開業した月から毎月出ていくので、利用者が集まる前に手元資金が尽きる、という事態が起こりえます。開設資金の目安として、同じ公庫の解説は訪問介護・訪問看護で800万〜1,500万円くらいとしています(執筆者の目安で出所の記載はなく、地域と人員数で変わります)。

失敗例・よくあるNG

  • NG①: 看護職員2.5人ちょうどで開業する → 1人の退職で基準を下回る。採用計画に「何人多く置くか」「何週間で補充するか」を書いておく
  • NG②: 准看護師を管理者に予定する → 介護保険の基準では、管理者は保健師か看護師。管理者の要件を満たす人を先に決める
  • NG③: 指定の更新を忘れる → 介護保険の指定は6年ごとに更新しないと効力を失う。有効期間の満了日を、開業時に管理表へ書いておく

開業を急がないほうがいい場合

次に当てはまるなら、開業の前に準備の期間を取るほうが安全です。

  • 訪問看護の経験がない、または短い: 管理者は「適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技能を有する者」でなければなりません。まず訪問看護ステーションで働き、利用者の受け入れ・医師やケアマネジャーとの連携・請求の流れを経験しておくと、開業後に自分で判断できる範囲が広がります
  • 一緒に働く看護職員の目処が立っていない: 2.5人の基準は、開業時だけでなく運営中も満たし続ける必要があります
  • 数か月分の人件費を手元に用意できない: 入金までの時間差を乗り切れないと、利用者が増える前に資金が尽きます

訪問看護で働いた経験がまだ無い方は、訪問看護に未経験から転職するにはで、何年目から行けるか・給料・オンコールの実際を整理しています。

よくある質問

Q. 看護師1人で訪問看護ステーションを開業できますか?

A. できません。介護保険・健康保険のどちらの基準でも、看護職員は常勤換算2.5以上(うち1人は常勤)が必要です。常勤換算は、看護職員の勤務時間の合計を、常勤職員の勤務時間で割った人数です。

Q. 准看護師でも開業できますか?

A. 准看護師は看護職員の人数に数えられますが、介護保険の基準では管理者は保健師または看護師です(やむを得ない理由がある場合を除く)。法人の代表者になることと管理者になることは別なので、管理者の要件を満たす人を確保できるかを、指定権者に確認してください。

Q. 個人事業主として開業できますか?

A. 介護保険の指定を受ける訪問看護ステーションは、申請者が法人であることが求められます(介護保険法施行規則 第126条の4の2)。株式会社・合同会社・一般社団法人・NPO法人などの形で法人をつくる必要があります。

Q. 健康保険の指定は別に申請するのですか?

A. 介護保険の指定を受けると、別段の申出をしない限り、健康保険の指定訪問看護事業者の指定もあったものとみなされます(みなし指定)。医療保険で請求を始めるまでの手続きは、地方厚生(支)局の案内で確かめてください。

Q. 開業資金はいくらかかりますか?

A. 訪問看護に限った公的統計は、確認できませんでした。目安として、日本政策金融公庫の解説は、訪問介護・訪問看護の開設資金を800万〜1,500万円くらいとしています(執筆者の目安で出所の記載はなく、地域と人員数で変わります)。設備資金に加えて、入金までの数か月分の人件費も見込んでください。

Q. 訪問看護ステーションの収支差率はどのくらいですか?

A. 厚生労働省の令和7年度介護事業経営概況調査(回答254か所、令和6年度決算)では、平均の収支差率は10.3%(補助金を含まない税引前)でした。ただし10%を超えるのは延べ訪問回数が月401回以上の区分(13.7%)だけで、ほかの4区分は1.1〜5.0%でした。調査に回答した、続いている事業所の集計なので、開業1年目の収支や、黒字の事業所の割合を示す数字ではありません。

開業の前に、訪問看護の経験を積める職場を比べておく

管理者として判断するには、訪問看護の現場経験が土台になります。オンコールの体制や教育の仕組みは事業所によって違うので、条件を比べておくと、経験を積む場所を選びやすくなります。

まとめ

  • 要件: 法人であること、看護職員が常勤換算2.5以上(うち1人は常勤)、常勤専従の管理者(介護保険では保健師か看護師)、専用の事務室。そのうえで介護保険の指定を受け、6年ごとに更新する
  • 開業は増えているが、廃止もある: 2025年度は新規2,428か所、廃止960か所。経営概況調査で続いている事業所は、訪問回数が少ない区分でも看護職員が基準より1人ほど多い
  • 次の一手: 自治体への事前相談と、人員計画・資金計画を数字で作ること
    • 事前相談: 候補の物件の図面を持って、指定権者の担当者に見てもらう(ステップ1)
    • 人員計画: 基準より何人多く置くか、1人辞めたら何週間で補充するかを書く(ステップ3)
    • 資金計画: 入金までの3〜5か月分の人件費を入れる(ステップ4)

状況に合わせて、次の記事も参考にしてください。