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転職ガイド

看護師のUターン・地方移住転職|移住支援金の条件と、年収・物価で決める順番

ナースひとやすみ 編集部約14分で読めます
目次

家賃の更新の知らせが届いたときや、帰省から戻る電車の中で、通勤や家賃の負担、親や地元のことを考えて「戻ろうか」と思う。それでも、年収が下がるのが怖くて決めきれない。看護師のUターン・地方移住は、戻る先を「年収と物価(とくに住居費)」「求人の厚み」「生活の条件」の3つで決め、移住支援金は一度きりの上乗せとして扱うと、判断がぶれません。ただし支援金を使うなら、応募する前に条件を確かめる必要があります。

東京の看護師の平均年収は578.5万円です(厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」から「月の給与×12+年間賞与」で算出)。移住支援金がよく使われている5県と、平均年収が最も低い2県を並べると、年収の差は4〜25%、物価の差は4〜8%でした。物価の安さだけで年収の差が埋まる県は多くありませんが、住居の物価は県によって大きく違います。この記事は、国の移住支援金の対象になる「東京23区に住む、または23区へ通勤している看護師」を主な読者に想定しています。

判断の順番——戻る先の判断と、動く順番を分ける

Uターン・移住では、「どこへ戻るか」の判断と、「どの順番で動くか」の手続きを分けて考えます。

  • 戻る先の判断(3つの軸): 軸1 年収と物価(住居費を含む)→ 軸2 求人の厚み → 軸3 住まい・家族・通勤。生活水準を決める順に並べています
  • 動く順番(手続き): 移住支援金を使うなら、応募の前に対象求人かどうかを確かめる。応募の順番が要件に入る例があり、あとから直せないためです

移住支援金は、単身60万円以内・世帯100万円以内(18歳未満の子ども1人につき最大100万円を加算)で、一度きりの支給です。単身の上限60万円は、表の静岡の年収差(53.7万円)のおよそ1年分、高知の年収差(143.7万円)の約5か月分にあたります。支援金で年収の差を埋めることはできないので、戻る先は3つの軸で決めてください。

軸1 年収の下がり幅と、物価・住居の下がり幅を並べる

東京の看護師の平均年収(算出値)。表の7県はすべてこれより低く、物価で割り引いて上回るのは栃木だけ578.5万円

厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」都道府県別第3表(2025年)

移住支援金の交付件数が多い5県(静岡・群馬・栃木・長野・新潟)と、看護師の平均年収(算出値)が最も低い2県(宮崎・高知)を、東京と並べました。

都道府県看護師の平均年収(算出値)東京との差物価地域差指数(総合)住居の指数物価で割り引いた年収の東京との差
東京578.5万円―104.2129.8―
栃木553.8万円−24.7万円(−4.3%)97.386.4+2.5%
静岡524.8万円−53.7万円(−9.3%)98.292.5−3.7%
群馬523.5万円−55.0万円(−9.5%)96.289.5−2.0%
長野517.7万円−60.8万円(−10.5%)96.989.4−3.8%
新潟489.3万円−89.2万円(−15.4%)97.883.8−9.9%
宮崎443.3万円−135.2万円(−23.4%)98.0101.3−18.5%
高知434.8万円−143.7万円(−24.8%)99.994.8−21.6%

出典: 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」都道府県別第3表(看護師・男女計・企業規模10人以上。平均年収は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出)/総務省「消費者物価地域差指数 2025年結果」(全国平均=100)。右端は「年収÷物価地域差指数」を東京と比べた編集部の算出値

表の読み方は3つです。

  • 物価で割り引いても東京を上回るのは栃木だけ: 静岡・群馬・長野は割り引くと差が2〜4%に縮みます。新潟・宮崎・高知は、割り引いても10〜22%低いままです
  • 住居の物価の差は大きい: 住居の指数は東京129.8に対し、表の県は83.8〜101.3です。総務省の同じ資料でも、東京の物価が全国平均より高い最大の要因は「住居」とされ、住居の最大都道府県間の差は1.64倍(東京都÷岡山県)です
  • 高知は総合の物価がほぼ全国平均: 平均年収は東京より約144万円低い一方、物価地域差指数は99.9です。「地方は生活費が安い」がそのまま当てはまらない例です

物価地域差指数の「総合」と「住居」は、持ち家の帰属家賃(持ち家を借家とみなした家賃)を含みません。実家に住む、社宅に入るといった住まいの変化は、この指数の外側で効きます。県内でも都市と郡部で年収や家賃は違い、県の平均は目安です。

自分の県で確かめる手順と判断の目安
  1. 賃金構造基本統計調査の都道府県別第3表(e-Stat)で、戻る先の県の看護師の「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与」を出す
  2. 消費者物価地域差指数の別表1で、その県の「総合」と「住居」の指数を見る
  3. 物価で割り引いた差がプラスなら、生活水準は保ちやすい。マイナスなら、東京での家賃(年額)から移住先での住居費(年額)を引いた額が、額面の年収差を上回るかを試算する。上回らないなら、同じ県の中でも年収の高い職場を探すか、戻る先を考え直す

県別の年収の全体像と差が生まれる要因は、親記事の看護師の年収が高い都道府県は?で整理しています。

軸2 求人の厚み——看護師の人数と、移住支援金の使われ方

都道府県人口10万人あたりの看護師数(2024年末)移住支援金の交付件数(2019〜2025年度の累計)
東京938.8人対象外(移住元)
栃木1,033.8人900件(2,005人)
静岡1,045.0人1,465件(3,051人)
群馬1,144.2人1,152件(2,452人)
長野1,252.4人884件(2,141人)
新潟1,157.7人779件(1,636人)
宮崎1,477.9人311件(652人)
高知1,757.8人121件(227人)

出典: 厚生労働省「令和6年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」図4(全国1,101.1人)/内閣府「地方創生移住支援事業 交付実績(令和元年度~7年度)」(2026年3月末時点。2024年度以降は地方就職学生支援事業を含む)

  • 人口10万人あたりの看護師数は、人口に対する看護師の多さ(密度)で、看護師の総数や空いている求人の数ではありません。表の7県はいずれも東京(938.8人)より高く、宮崎・高知は全国(1,101.1人)を3〜6割上回ります。人口のわりに看護師として働く人が多い、つまり地域の規模に比べて看護師の働き口が少なくはない、という背景として読み、実際に応募できるかは下の求人の数で判断します
  • 移住支援金の交付件数は、上位が東京から近い県に集中し、宮崎・高知は少なめです。ただし、看護師の求人がどれだけ対象になっているかは、公表されている交付実績からは分かりません

判断の目安は、通勤できる範囲で、希望の働き方(日勤のみ、夜勤ありなど)の求人が2件以上見つかるかです。比べる相手がいないと、条件を選べないためです。探すのは、移住先の道府県のマッチングサイト(移住支援金の対象求人)と、ハローワークの求人検索です。見つからない場合は、県庁所在地など通勤できる隣の市まで範囲を広げます。

軸3 住まい・家族・通勤

  • 住まい: 実家に住むなら住居費0円、賃貸なら家賃の相場で試算し、軸1の手順3に入れます。年収差を埋められるかは、ここで大きく左右されます
  • 家族: 親の介護や子育てで夜勤が組めないなら、軸2の「2件以上」は日勤のみの求人で数えます。数えられなければ、戻る時期か戻る先を見直します。親の介護と仕事の両立に使える制度は親の介護と看護師の仕事を両立するにはで整理しています
  • 通勤: 求人票の勤務地と住まいの間を地図で測り、片道の時間が今の通勤時間を超えないかを目安にします。車が必要な地域なら車の費用を、雪の多い地域なら冬の所要時間も試算に入れます

移住支援金——使うなら、応募の前に確かめる

移住支援金は、東京23区から東京圏の外などへ移住し、就業などをした人に、都道府県と市町村が共同で支給するものです(地方創生移住支援事業)。看護師に限った制度ではなく、次の条件をすべて満たす必要があります。

金額は上限で、実際の額や受付の有無は自治体ごとに違います。引っ越し費用や、住まいが決まるまでの二重家賃は支援金とは別にかかるので、見積もりを取って予算に入れておきます。民間の転職サービスを通じた応募が対象になるかは、この記事では確認できていません(未確認)。支援金を使うなら、応募の前に移住先の窓口で確かめてください。受け取った支援金は、国税庁の文書回答事例(2019年)で一時所得として扱われ、特別控除50万円を差し引いた残りの2分の1が総所得金額に含まれます(所得税法22条・34条)。

就業先の制限にも注意が必要です。 同じ文書回答事例は、就業先を「移住支援事業を実施する都道府県が選定した中小企業等」とし、「官公庁、独立行政法人、国又は地方公共団体が設立・出資しているもの等を除く」と注記しています。現行の例では、高知県が対象法人の登録要件(2020年9月24日改正)で「官公庁等」を除き、その「等」に独立行政法人や一部事務組合などの公法人を含むとしています。一方、同県の登録企業一覧(2026年9月25日時点)には医療法人が22件あり、民間の病院は対象になりえます。自治体や独立行政法人が運営する病院の求人は対象外になる可能性が高いので、応募の前に移住先の道府県で確かめてください。

制度の利用件数は、2024年度の3,626件が最多で、2025年度は3,170件でした(2026年3月末時点)。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

あとから直せないのは、応募の順番です。たとえば高知県の案内は、就業の要件として「求人への応募日が、マッチングサイトに移住支援金の対象として掲載された日以降であること」を挙げています。知り合いの紹介で先に病院へ応募し、あとから求人が対象として載っても、要件を満たさないということです。同じ案内は、週20時間以上の無期雇用であること、その法人で申請日から5年以上続けて働く意思があること、転勤や出向ではない新規の雇用であることも求めています。契約職員やパートとして入職すると、対象から外れることがあります。要件の細部は道府県・市町村で違うので、応募の前に、求人票が「移住支援金の対象」として掲載されているかと雇用形態を、移住先の窓口の案内で確かめてください。

ケース別の結論

今の状況結論理由
東京23区の病院で5年以上働き、地方の病院に正職員で移りたい戻る先は軸1〜3で決める。支援金を使うなら、対象求人の掲載を確かめてから応募する支援金は一度きり。応募日・無期雇用・新規雇用が要件に入る例がある
埼玉・千葉・神奈川の実家へ戻る支援金は原則ない前提で、東京での家賃(年額)と年収の差を比べる東京圏は条件不利地域を除き対象外。年収の差は東京比5〜8%、総合の物価の差は1〜4%で、実家なら住居費の差が大きく効く
平均年収の差が20%を超える県へ戻る(宮崎・高知など)住居費の差額(年額)が年収差(135〜144万円)を上回るかを試算する。上回らなければ、同じ県でも年収の高い職場を探す物価で割り引いても18〜22%低い
物価で割り引いた差がプラスの県へ移る(栃木など)生活水準は保ちやすい。支援金の対象求人があれば上乗せになる物価の差が年収の差を上回る
物価で割り引くと差が2〜10%に縮む県へ移る(静岡・群馬・長野・新潟など)住居費の差額(年額)が額面の年収差(54〜89万円)を上回るかを試算する。上回るなら生活水準は保ちやすい額面では9〜15%低いが、住居の指数が東京より大きく低い
子どもを連れて移住する候補の市町村ごとに加算額と受付の上限を確かめ、同じ条件なら加算の大きい市町村を選ぶ加算は子ども1人最大100万円だが、額は自治体が決める
大阪・名古屋など東京圏の外から戻る国の移住支援金は使えない前提で、軸1〜3だけで決める。自治体の独自の支援は移住先で確認する移住元の要件は東京23区の在住か、23区への通勤
23区外(多摩地域など)に住み、23区外の病院に勤めている支援金は対象外の前提で考える同上

動く順番

  1. 自分が移住元の要件を満たすか確かめる: 23区の在住・通勤の期間(通算5年以上・直近1年以上)を、住所と勤務先の履歴から数える
  2. 移住先の道府県のマッチングサイトで対象求人を探す: 看護師の求人が「移住支援金の対象」として載っているかを見る
  3. 掲載を確認してから応募する: 雇用形態(無期雇用か)、勤務時間、夜勤の有無を求人票で確かめる
  4. 内定後に転入する: 入職日と転入日の順番を、移住先の市町村に事前に確認しておく
  5. 転入後1年以内に市町村へ申請する: 必要書類と受付の上限は市町村の案内で確かめる
  6. 申請後の転出と退職の条件を知っておく: 高知県の案内では、申請日から3年未満の転出と1年以内の離職は全額、3年以上5年以内の転出は半額の返還です(やむを得ない事情として認められた場合を除く)

内定から入職までの手続きは看護師の内定後の手続き完全ガイド、全体のスケジュールは看護師の転職活動の流れも参考になります。

⚠️ つまずきやすい落とし穴

「年度が替わる4月に入職して、落ち着いてから申請しよう」と先延ばしにして、転入から1年を過ぎてしまうケースに注意してください。申請は転入後1年以内が条件です。市町村によっては年度内に受け付ける件数に上限があり、高知県の案内もその旨を書いています。入職と転入の日程が決まった時点で市町村の窓口に連絡し、受付の状況と必要書類を聞いておくと安全です。もう1つは、戻ったあとに職場が合わなかった場合です。高知県の例では、申請日から1年以内に要件を満たす職を辞めると全額返還の対象になります。支援金は、少なくとも1年ほどは使わずに残しておくと、万一のときに慌てずに済みます。

失敗例・よくあるNG

  • NG①: 総合の物価指数だけを見て、住居費を試算しない → 住居の指数は東京129.8に対し表の県は83.8〜101.3。実家か賃貸かで、年収差を埋められるかが変わる
  • NG②: 公立病院の求人に応募してから、支援金を申請しようとする → 高知県の例では、官公庁等(独立行政法人などの公法人を含む)は対象法人から除かれる。応募前に対象求人かを確かめる
  • NG③: 支援金を受け取ってすぐに辞める → 高知県の例では、申請日から1年以内の離職は全額返還の対象

よくある質問

Q. 移住支援金は、看護師でももらえますか?

A. 看護師でも対象になりえます。国の案内では、就業先は道府県が選んでマッチングサイトに載せた求人とされ、移住元(23区の在住・通勤)、移住先(東京圏外など)、就業の3つに加えて、転入後1年以内の申請と5年以上の居住の意思も求められます。病院の求人が対象として載っているかは道府県によって違うため、移住先のマッチングサイトで確かめてください。最終的に対象になるかは、移住先の市町村が判断します。

Q. 埼玉や千葉の実家に戻る場合も、移住支援金はもらえますか?

A. 東京圏(東京・埼玉・千葉・神奈川)は、条件不利地域に指定された市町村を除いて移住先の対象外です。千葉県の銚子市や館山市、埼玉県の秩父市など、条件不利地域の市町村へ戻る場合は対象になることがあります。

Q. 公立病院に就職する場合も、移住支援金の対象になりますか?

A. 対象外になる可能性が高いと考えてください。国税庁の文書回答事例(2019年)は就業先から「官公庁、独立行政法人、国又は地方公共団体が設立・出資しているもの等」を除いていて、高知県の現行の登録要件も「官公庁等」(独立行政法人や一部事務組合などの公法人を含む)を除いています。ほかの道府県の扱いは、移住先のマッチングサイトと窓口で確認してください。

Q. 移住支援金には税金がかかりますか?

A. 国税庁の文書回答事例では、一時所得として扱われています。特別控除50万円を差し引いた残りの2分の1が総所得金額に含まれます。ほかの一時所得と合算するため、確定申告の要否は税務署で確認してください。

Q. 転職先を先に決めてから引っ越すのと、引っ越してから探すのは、どちらがいいですか?

A. 移住支援金を使うなら、対象求人への就業が条件なので、求人を先に決める順番のほうが、対象外になる事態を避けやすくなります。支援金を使わない場合でも、年収と勤務条件が決まってから住まいを決めるほうが、軸1の試算がしやすくなります。

戻る先の求人の条件を、応募の前に比べておく

夜勤の有無や雇用形態は、同じ県の中でも病院ごとに違います。支援金を使う場合は、応募の前にマッチングサイトで対象かどうかを確かめたうえで、求人の条件を比べておくと選びやすくなります。

まとめ

  • 戻る先は3つの軸で決める: 年収と物価(とくに住居費)、求人の厚み、住まい・家族・通勤。支援金は一度きりの上乗せ
  • 物価で割り引いても差が残る県が多い: 表の県で東京を上回るのは栃木だけ。差を埋める鍵は住居費で、実家か賃貸かで結論が変わる
  • 支援金を使うなら、応募の前に確かめる: 23区の在住・通勤の期間、対象求人の掲載、無期雇用。公立病院などの公的な病院は対象外になる可能性が高い
  • 申請は転入後1年以内: 早期の転出や離職は返還の対象になる

県別の年収の全体像は、親記事の看護師の年収が高い都道府県は?で確認できます。状況に合わせて、次の記事も参考にしてください。